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『ワルキューレ』 70点

2009-03-26 19:37:59 | goo映画レビュー

ワルキューレ

2008年/アメリカ=ドイツ

ネタバレ

Real Mission Impossible

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 歴史上の‘イコン’となっている人物を扱っている作品としてスティーヴン・ソダーバーグ監督のチェ・ゲバラの2部作が公開されたばかりであるが、『ワルキューレ』も1944年7月20日のヒトラー暗殺未遂事件を史実に沿って描いたものである。
 『ワルキューレ』はヒトラーが主役ではないが、ヒトラー暗殺計画の中心人物であるクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐が主人公である以上、彼の対立相手であるヒトラーも描かなければならない。ブルーノ・ガンツがヒトラーを演じた『ヒトラー~最後の12日間~』(オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督 2004年)や『わが教え子、ヒトラー』(ダニー・レヴィ監督 2007年)など最近はヒトラーの既成イメージを壊すように描く作品もでてきているのだが、残念ながら『ワルキューレ』のヒトラーは今までの‘強持て’のイメージをなぞっているだけである。これが問題である理由は、ヒトラーのイメージが変わらないのであるならば、その対立相手であるシュタウフェンベルク大佐のイメージも変わりようが無いからである。シュタウフェンベルク大佐は本当に‘良心’と‘忠誠心’の間で葛藤した末に‘良心’に従ってヒトラーを暗殺しようとしたのだろうか? 本気でヒトラーを暗殺するつもりでいたのならば何故彼は確実にヒトラーを仕留めるために‘自爆’しなかったのだろうか? 大佐に‘野心’はなかったのだろうか? ヒトラーの生存が確認されても大佐についていく人がいなかったのはヒトラーに‘強持て’以外の魅力があったのではないのか? せっかくの大作であるのに結局全ては謎のままであり、‘イコン’を壊せなかったという点に関して言えばチェ・ゲバラの2部作と同じであり、つまり失敗(=Mission Impossible)ということである(もっともシュタウフェンベルク大佐の‘負の側面’も描くことにするとなると撮影許可が下りなかっただろうが)。
 しかしこの作品を単にサスペンス映画として観るのならば、本当の意味での‘ミッション・インポッシブル’として相応に楽しめるものには仕上がっている。
 ヒトラーを‘正確に’描くことはいまだに難しいことであり、トム・クルーズに期待し過ぎてはいけなかったのである。(『ナチスと映画』 飯田道子著 中公新書参照)


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