MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ヒメアノ~ル』

2018-11-15 00:28:59 | goo映画レビュー

原題:『ヒメアノ~ル』
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
撮影:志田貴之
出演:森田剛/濱田岳/佐津川愛美/ムロツヨシ/駒木根隆介/山田真歩/大竹まこと
2016年/日本

無力な「良い思い出」について

 上映開始後45分あたりで奥手な岡田と同僚の安藤と、カフェで働くユカのほのぼのとした三角関係から岡田とユカが付き合うようになり、ユカのストーカーで岡田の高校の同級生だった森田正一がそれをユカの部屋の外で確認した後に、唐突にタイトルクレジットが流れストーリーは森田の猟奇的な殺人ショーへと劇的に変化する。
 高校時代に自分をいじめていた河島を一緒にいじめられていた和草浩介と共に卒業時に復讐として殺戮して以来、父親の後を継いでホテルで働いている和草に金を無心しながらダラダラと生きていた森田はユカに目をつけており、ユカと付き合うようになった岡田を殺すために和草に電話をして一緒に殺そうともちかけたのであるが、それを知った和草の恋人の久美子が和草と共に森田を殺そうと企んだものの、逆に殺されてしまう。
 森田は歯止めが効かなくなり赤の他人の家に入り込んで夫婦を殺害し、食事を取り、訪ねてきた警官も殺して拳銃を奪い、ユカの隣人も射殺し、安藤も撃たれて重傷を負う。岡田の母親から岡田の住所を聞いてユカを襲うのであるが、そこへ岡田が戻って来て取っ組み合った2人はガラス窓を割って二階から落ちてしまう。
 森田は岡田を人質にとって車を奪って、逃走をはかるのであるが、道路の真ん中にいた犬を避けようとしたためにハンドルを切り損ない、2人の乗った車は電柱に激突してしまう。あれだけ平気で人を殺せる森田が何故犬を避けようとしたのか。それはかつて森田が飼っていた犬にそっくりだったからで、同時に森田はかつて岡田と一緒に自分の家でゲームをして遊んでいた頃を思い出す。それまで森田は岡田が河島に加担して自分をいじめていたことを忘れていたのである。それは森田にとって岡田が数少ない「良い思い出」のままにしておきたかったからに違いないのではあるが、「良い思い出」が森田の中に芽生えた要因は森田が右足を失い他人に危害を加えられなくなったからなのであり、決して「良い思い出」が森田の狂気を止めた訳ではないのである。


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