MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

2018-05-07 22:29:13 | goo映画レビュー

原題:『I, Tonya』
監督:クレイグ・ガレスピー
脚本:スティーヴン・ロジャース
撮影:ニコラス・カラカトサニス
出演:マーゴット・ロビー/セバスチャン・スタン/アリソン・ジャネイ/ジュリアンヌ・ニコルソン
2017年/アメリカ

「跳梁跋扈」の魅力について

 アメリカの女子フィギュアスケート選手のトーニャ・ハーディングの半生を描いた物語が本人や母親のラヴォナ・ゴールデンや元夫のジェフ・ギルーリーのインタビューなどを交えながら再現されているのであるが、暴力と憎しみが渦巻く生活の中であれだけの結果を残せたことは奇跡と言えるのではないだろうか。
 ハーディングが審査員の一人に直談判するシーンが印象的である。彼はハーディングに「私たちはアメリカの見本的な家族像を望んでいるのだが、あなたはそれを演じることを拒絶している」と言うのである。確かにハードロックを選曲してしまうハーディングに健全な家族像を演じることは無理だったのだが、間違いなくハーディングは「もう一つ」の典型的なアメリカの家族像を体現していたはずなのである。
 しかし日本人の観客にとっては見逃せないシーンがある。1992年のアルベールビルオリンピックにおいてメダルを取った日本人選手は佐藤有香ではなく伊藤みどりである。これはリサーチ不足なのか、あるいはトリプルアクセルを巡るトーニャ・ハーディングに対する「忖度」なのかよく分からないのだが、それぐらいの「いい加減さ」がハーディングと同様に本作の魅力なのではあろう。
 エンディング曲はイギー・ポップではなくスージー・アンド・ザ・バンシーズのカヴァーによる「パッセンジャー」である。ハーディングの立場に立ったように和訳しておきたい。

「The Passenger」 Siouxsie and The Banshees 日本語訳

私は旅人
私は色々と乗り継いで
裏町を通っていく
空に現れる星々は
深淵の明るい空を見せる
今夜はとても素敵に見えるはず

私は旅人
車のフロントガラスの下で座っている
窓を通して見るととても明るい
今夜は星が眩しいから
荒れ果てた裏町から見る空は
深淵で明るい
今夜は全てが良く見えて
思わず歌ってしまう

車に乗るならば
私たちは旅人になり
今夜は街を走り抜けて
荒れ果てた裏町を見て
深淵で明るい空を見て
輝きを増した星を見るだろう
それらの星は今夜私たちのために生まれたんだ

旅人よ
乗り心地はどうだろう
旅人よ
次々と乗り継いでいく
窓を通じて彼は何を見るのか?
道路標識や深淵の空を
今夜輝く星を
荒れ果てた裏町を
曲がりくねった海沿いの大通りを見る
全てはあなたと私のために作られたのよ
その全てがあなたと私のために作られたのよ
だって全てはあなたと私だけに相応しいのだから
だから乗っていきましょう
私のものを見せてあげるから
思わず歌ってしまう

Siouxsie And The Banshees - The Passenger


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