MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『果てなき路』 100点

2012-06-02 23:53:35 | goo映画レビュー

果てなき路

2011年/アメリカ

ネタバレ

映画を壊す快感について

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 『果てなき路』は、原題を深読みするならば、その通りに、一度観ただけでは内容が理解できないほどに錯綜しているストーリー展開ではあるが、そもそも特別に作品を分析するような趣味は持ち合わせておらず、あくまでも娯楽として映画を楽しんでいる者としては、そのようなスタンスで思いついたことを書き連ねておきたい。
 ストーリーの粗筋としては、主人公の映画監督であるミッチェル・ヘイヴンが、かつてノースカロライナで起こった事件をもとにした映画を制作している。その映画のヒロインであるヴェルマ・デュラン役の女優を探していたミッチェルはネットで見つけた、ローレル・グラハムという新人の女優を気に入り、偶然ローマで出会い抜擢する。
 しかし実は、このノースカロライナで実際に起こった事件が、計画殺人事件であることが公になることを恐れていた黒幕がおり、ローレル・グラハムは彼らの仲間であり、ミッチェルと親密になることで、なにげなく脚本を計画殺人事件から、ヴェルマ・デュランの苦悩の物語へ導く。
 ローレルたちの計略は上手く運んでいるように見えたが、事件の真相を追っていた保険調査員のブルーノ・ブラザートンが、不自然に高額な映画製作費から、ローレルを疑い始め、悲劇のクライマックスを迎えることになる。
 『断絶』(1971年)が衝撃的だった理由の一つとして、ラストで画面が止まり、そのフィルムが燃え出すところにある。いままで描いてきたことは全部フィクションであることを明確にしてしまうそのラストは‘自己否定’と見做されたからである。本作のクライマックスで、ローレルと一緒に過ごしていたミッチェルの部屋に、ブルーノが訪ねてきて、ラム酒を飲んだ勢いでローレルを銃殺してしまい、次にミッチェルがブルーノを銃殺した後のシーンを思い出してみる。ミッチェルはデジタルカメラを手に取り、ブルーノとローレルの死体を映し出し、やがてホテルを取り囲むパトカーを窓から映し出すのであるが、もしもミッチェルが、警官が警告するように、拳銃のつもりでデジタルカメラを持っていたとするならば、そのデジタルカメラのターゲットは、警官たちではなく、パトカーを映す前に映りこんでしまった、本作の撮影スタッフであろう。このワンカットで、『果てなき路』は『断絶』同様に全てが‘作り物’であると暴露してしまうのであるのだが、それでもエンドクレジットで「A True Story」だと強弁するのは、それが本来ならば見てはいけないものであり、「A True Story」と断りが入るものは必ず、それまで見ていなかったものだからであろう。『レディ・イヴ』(プレストン・スタージェス監督 1941年)、『第七の封印』(イングマール・ベルイマン監督 1957年)、『ミツバチのささやき』(ビクトル・エリセ監督 1973年)の引用のみならず、『孤独な場所で』(ニコラス・レイ監督 1950年)を登場人物に言及させている映画通のモンテ・ヘルマン監督は冒頭でDVDの映像から本作を始めて、ラストは本作を‘ポスター化’するように徹底的に映画を壊そうと試みる。
 『果てなき路』は、女性に魅了されてしまった主人公が描かれているという点において『アンナと過ごした4日間』(イエジー・スコリモフスキ監督 2008年)を思い出させる。17年ぶりの復帰作だったスコリモフスキ監督は当時70歳であるが、21年ぶりに復帰したモンテ・ヘルマン監督は78歳である。黒沢清監督の『果てなき路』の惹句を引用してみる。「車と拳銃と飛行機大爆発で観客の目を釘づけにする・・・そんな映画を撮りたい・・・ということをそのまま映画にすることがいかに甘美で困難か。ヘルマンが到達した境地とはそういうものなのだろう。」黒沢監督が見逃していることが一つある。マニキュアをつけてドライヤーで乾かす、あるいは黒いストッキングを身に着けるシャニン・ソサモンの媚態である。黒沢監督がスコリモフスキやヘルマンに学ぶべきことは、老いてなお逞しいそのような‘ドスケベ’ぶりなのであるが、‘ドスケベ’を学ぶ術などあるのだろうか?


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最速の“職場復帰”

2012-06-02 00:06:16 | Weblog

男装い女性と交際、その兄を暴行した刑務官の女(読売新聞) - goo ニュース

 男性を装って女性と交際していたけれど、昨年末に女性であることを打ち明けたところ

別れ話になり、もめてしまったという容疑者の高野舞は福島県の女性刑務所である

福島刑務支所の看守らしい。つまり本人の希望が叶ってその仕事に就いていたのかどうか

定かではないが、女性には不自由ない生活環境だったのであるが、不幸なことに同僚を除く

相手は全員犯罪者である。しかし元交際相手の女性の兄につかみかかるなど暴行容疑で

現行犯逮捕された高野舞は別の形ですぐに“職場復帰”することになるのだろうが、たぶん

同じ犯罪者として喜んで迎えられる可能性よりも、立場の逆転的なこととゲイ的なことにより

手荒い歓迎を受けることになるだろう。


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