「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

李栄薫『反日種族主義』(文藝春秋刊)を読む

2020-01-08 16:41:53 | 錬義堂通信
【連載】 錬義堂通信 ③ (『日本の息吹』県民版 令和2年1月号)
       
李栄薫『反日種族主義』(文藝春秋刊)を読む

 韓国でこの夏に出版され、十一万部を超えるベストセラーになった李栄薫編著『反日種族主義 大韓民国危機の根源』の日本語版が十一月に出版されたので、早速購入して読んだ。

 プロローグは「嘘の国」として、嘘をつく国民・政治・学問・裁判という驚くべき国民性への嘆きから始まっている。李栄薫博士を始めとする六人の執筆者は、日本統治・慰安婦・徴用工・竹島等の諸問題を実証的に検証する中で韓国政府が主張する歴史観の虚構性を完璧に論破している。二十二の論文が掲載されているが其々十頁前後で読み易い。李博士は現在ソウル大経済学部教授を退官した後、現在は李承晩学堂の校長を務めている。韓国建国の父であり反日主義の元祖とも云うべき李承晩の学堂の責任者が「反日種族主義」を糾弾している点に意味がある。

 「反日種族主義」とは「日本と韓国を、奪い奪われる殺し殺される関係にある、野蛮な二つの種族として捉え」韓国人の祖先達を無知で無力な存在、日本人の祖先達を邪悪で暴力的な存在と規定している、その歴史の観方を言う。李博士は叫ぶ「我々の祖先達はそんなに無力で無知だったのか」と。現在の利益の為に過去を全否定する事はアイデンティテイーの喪失に繋がり、その先には未来が描けない。「反日種族主義」に立脚する文在寅政権は、李承晩が生み出した大韓民国自体の存在さえも否定している。その危機感が根底には貫いている。

 私は十五年位前に中国で人民解放軍の大佐と歴史認識を巡って議論した事があるが、その大佐は「南京大虐殺の事は言いたくない。それを認めれば、吾々の祖先達が大虐殺を止められなかった無力な存在だった事を証明する事になるから。」と、語った。その時の大佐も李博士も、自らに繋がる祖先達の歴史を単なる被害者としては見たくないとの、真っ当なる歴史観の持ち主である。
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