一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『ワイルド・ローズ』 ……やはりジェシー・バックリーは凄かった!……

2020年07月04日 | 映画


47歳の若さで急逝したミュージカル女優ジュディ・ガーランドを描いた映画『ジュディ 虹の彼方に』(2020年3月6日公開)のレビューを書いたのは、今年(2020年)の3月14日だった。
新型コロナウイルスの感染がじわじわと日本列島全体に広がりつつあった頃に見た映画で、
そういう意味でも強く印象に残っている作品であった。
ジュディ・ガーランドを演じたレネー・ゼルウィガーの演技は素晴らしく、
最初、私は、このレビューのサブタイトルを、

……レネー・ゼルウィガーの圧巻の演技と歌声……

としようと思っていたのだが、
『ジュディ 虹の彼方に』には、もう一人、私の心を鷲づかみにした女優がいて、
映画の後半は、彼女ばかりを見ていたような気がする。
その女優の名は、ジェシー・バックリー。
そして、あろうことか、私はレビューのサブタイトルを、

……ジェシー・バックリーに魅せられてしまった……

にしてしまったのだ。
その経緯を、
少し長くなるが、『ジュディ 虹の彼方に』のレビューから引用したいと思う。


……………………………………………………


レニー・ゼルウィガーにすっかり魅了されてしまった私であったが、
この作品には、もう一人、私の心を鷲づかみにした女優がいた。
それは、
ジュディの世話係・ロザリン・ワイルダーを演じたジェシー・バックリー。
最初は気難しい顔をしているので、


〈ジュディと敵対関係になる女性かな?〉
と思って見ていたら、
ジュディのことを真剣に考え、サポートする姿に感動させられた。


ジェシー・バックリーという女優は知らなかったが、
私好みの顔で、(コラコラ)


中盤以降は彼女の顔ばかり見ていた。


映画の公式サイトのキャスト欄を見ると、次のように記されていた。

ジェシー・バックリー(JESSIE BUCKLEY)
1989年12月28日 アイルランド生まれ。
これまで主にテレビシリーズに出演してきた。主な作品はBBCで話題となった「戦争と平和」(2016)、歴史ドラマシリーズ 「TABOO」(2017)など。近年は映画でも『BEAST(原題)』(2018/未)、『WILD ROSE(原題)』(2018/未)に主演。2017年にBAFTA(英国アカデミー賞)のブレイクスルー・ブリッツ(有望な新人)に選ばれ、2018年英国インディペンデント映画賞最優秀新人賞受賞、本年度BAFTA Scotland Awardsでは『WILD ROSE(原題)』で女優賞を獲得した。



このプロフィールを見ると、
「有望な新人」だの「最優秀新人賞受賞」などという言葉があったので、
〈新人女優かな?〉
と思ったが、年齢を調べてみると、
1989年12月28日生まれなので30歳。(2020年3月現在)
そこそこキャリアもあるのではないかと思い、さらに調べてみると、
2008年、19歳の時、
ミュージカル『カルーセル』に出演した際の、役表現のうまさから、
The Asso siation of Irish Musical Societiesよりベスト女優賞を受賞。
以後、
2011年の『Join my band』など数々の舞台で様々な役柄を演じ続けており、
Royal Academy of Dramatic Artも2013年1月に卒業。
2015年11月、
ケネス・ブラナー:シアターカンパニーにPerdita役で出演した事で、
世界中に配信され、注目された。
そして2016年、
BBCミニシリーズ、ロシアの歴史小説のドラマ化『戦争と平和』に出演し、
心優しい控えめな妹を自然に演じ切り、マスコミ各社から高評価からも高評価を得た。


『戦争と平和』はNHKで放送していたのは憶えていたが、私は観ていなかった。
その後も、ジェシー・バックリーをキーワードに検索していると、
「レネー・ゼルウィガーと主演女優争いを繰り広げた新鋭ジェシー・バックリー」
というタイトルの記事を見つけた。
〈え~、それはないでしょう~、W主演作ではないし~〉
と思って記事を読むと、
今年(2020年)の英国アカデミー賞で、
ジェシー・バックリーは、主演作『ワイルド・ローズ』で、
『ジュディ 虹の彼方に』のレネーと共に主演女優賞にノミネートされているのだという。
カントリー歌手を演じたこの『ワイルド・ローズ』では、
『ジュディ 虹の彼方に』のレネー同様に自ら歌声を披露し、


主題歌「Glasgow (No Place Like Home)」でアカデミー賞主題歌賞のショートリストに選出され、
放送映画批評家協会賞の主題歌賞にもノミネートされてもいる。


ジェシー・バックリーの演技は『ジュディ 虹の彼方に』で実証されているし、
確認済みなのだが、
〈ジェシー・バックリーって、歌手もやれるの?〉
と思ってしまった。
で、ジェシー・バックリーが歌っている動画を探すと、いくつも出てきた。
その中のひとつがコレ。
こんなに歌が上手い人だとは思わなかった。↓


『ジュディ 虹の彼方に』の公式サイトのプロフィール欄には、
映画、『WILD ROSE(原題)』は日本未公開となっていたが、
なんと、日本でも、2020年6月26日に、『ワイルド・ローズ』として公開が決定しているという。


さらに、
2020年3月20日に公開を予定していたが新型コロナウイルスの影響で公開延期になった『ドクター・ドリトル』(ヴィクトリア女王役)や、




チャーリー・カウフマンの新作や、
イギリスと日本を舞台とした渡辺謙主演の映画『Cottontail(原題)』や、


ベネディクト・カンバーバッチ共演の『Ironbark(原題)』といった映画が控えており、
さらには人気犯罪ドラマ『FARGO/ファーゴ』シーズン4への出演も決定しているという。
ジェシー・バックリーには、もう楽しみしかないのである。


最初、私は、このレビューのサブタイトルを、

……レネー・ゼルウィガーの圧巻の演技と歌声……

としようと思っていた。
だが、本作でジェシー・バックリーと出逢い、好きになってしまい、

……ジェシー・バックリーに魅せられてしまった……

と、せざるを得なくなってしまった。(コラコラ)
あと何年生きていられるか分らないが、
ジェシー・バックリーに出逢ったことで、老後が俄然楽しみになってきた。
もう、ジェシー・バックリーから目が離せない。
もし、本作『ジュディ 虹の彼方に』を見に行かれる方がおられましたら、
レネー・ゼルウィガーの演技はもちろん、
ジェシー・バックリーの演技にも注目を……


……………………………………………………


レネー・ゼルウィガー主演の映画なのに、(しかも凄い演技をしているのに)
脇役の女優のことをレビューの半分を使って論じるなんて非常識だし、
普通はありえないことなのだが、
非常識で、普通ではない私は、(笑)
ジェシー・バックリーのことを長々と書いてしまった。

あと何年生きていられるか分らないが、
ジェシー・バックリーに出逢ったことで、老後が俄然楽しみになってきた。
もう、ジェシー・バックリーから目が離せない。

とまで書いている。
そのジェシー・バックリーが主演する映画『ワイルド・ローズ』が、
ついに(6月26日に)公開された。
だが、佐賀での上映館はなく、九州では、

福岡県「KBCシネマ」7月3日公開
大分県「シネマ5」8月1日公開
宮崎県「宮崎キネマ館」8月8日公開
沖縄県「シネマプラザハウス1954」7月31日公開
沖縄県「シネマパレット」8月21日公開


の4県5館のみで、公開日も関東や近畿より遅れての上映である。
仕方がないので、
新型コロナウイルスに細心の注意を払いつつ福岡へ行き、
「KBCシネマ」で、公開初日の7月3日に『ワイルド・ローズ』を見たのだった。



カントリー歌手になることを夢見ているローズことリン・ハーラン(ジェシー・バックリー)。


しかし、
2人の子どもを抱えるシングルマザーで、
刑務所から出所したばかりの彼女にとっては、
夢の舞台は憧れの場所でしかなかった。


家政婦としてローズが働き出した資産家のスザンナ(ソフィー・オコネドー)は、
彼女の歌を聞き、その才能に感動し、彼女をサポートしていく。


卓越した歌唱力とカリスマ性で夢へと一歩ずつ近付いていくローズ。
しかし、不器用にしか生きられない彼女は、夢を追い求めるあまり、
愛する母・マリオン(ジュリー・ウォルターズ)や、


幼い二人の子供たちを傷つけてしまう。


〈夢か、家族か……〉
遂に掴んだチャンスを前に、選択を迫られるローズ。
葛藤する彼女がたどり着いた答えとは……




刑務所を出所するシーンから始まり、
書き下ろした初のオリジナルソングを歌うラストシーンまで、
いつも(ローズである)ジェシー・バックリーの歌声が流れている。

映画『ワイルド・ローズ』冒頭映像↓


ジェシー・バックリーのファンの私としては、
映画『ワイルド・ローズ』を見ている間は、それはそれは“至福のひととき”であった。
〈もっと彼女の歌声を聴いていたい!〉
〈もっと彼女の顔を見ていたい!〉
と思わされるほど、
ジェシー・バックリーに魅了されっ放しの102分だった。


それにしても、なんと素晴らしい歌声。
これほどの歌唱力を持つ女優は、そうはいない。
いや、歌唱力だけではない、
表現力も優れていて、その歌声は聴く者の心に深く刺さり、沁みる。


そして、演技力。
『ジュディ 虹の彼方に』のときとは真逆ともいえる役柄であったが、
〈これほど変われるものか……〉
と思えるほどの別人格を見事に演じ切っていた。
『ジュディ 虹の彼方に』でのジェシー・バックリーは、
ジュディの世話係・ロザリン・ワイルダーを、
やや神経質そうに、シュッとした顔立ち、容姿でスマートに演じ、
本作『ワイルド・ローズ』では、
だらしない性格が顔にも躰にも表れているといった感じで、
口を少しゆがめて話す口調にも工夫が凝らされていた。
いやはや凄い女優がいたものだ。


本作は、(これまでの映画に)いかにもありがちな、
「自分の夢を叶えるサクセスストーリー」という単純なものではなく、
主人公の“挫折”や人生の“難しい選択”などが主要部分を占めており、
夢や憧れだけでは通用しない現実の厳しさが描かれている。


アメリカの音楽であるカントリーを遠いイギリスで歌う難しさや、
カントリーの本場ナッシュビルに乗り込んでいったローズが、
これからの一歩を踏み出すために一時撤退を決めるシーンなど、
リアリティがあったし、共感できた。
そして、
嘘つくことをやめ、
自分の生い立ちや様々な過去を肯定し、
自分が生まれ育ったグラスゴーで根を張ることを決め、
その決意を込め書き下ろした初のオリジナルソングを歌うラストシーンは、
感動の嵐となる。


自分の言葉でメッセージを伝えられるまでに成長したローズ(ジェシー・バックリー)が、
ローズの母親、
ローズの二人の子供、
ローズを支援してきたスザンナなど、
多くの人々が見守る中で歌うラストの5分間に、
胸を熱くしない者はいないだろう。




『ジュディ 虹の彼方に』を見て、
脇役のジェシー・バックリーに魅せられ、
彼女の主演作を福岡まで見に行き、
大きな感動を頂く。
つくづく、映画も人生と同じく“出逢い”だと思った。
素晴らしい女優を発見し、
その女優の出演作を見続けて、
一緒に時代を共有できることの歓び。
ジェシー・バックリーと出逢うことのできた私は、
(自分で言うのも何だが)ずば抜けた幸運の持ち主と言えるだろう。
皆さんにも、その幸運を“おすそ分け”したい。(コラコラ)
映画館で、ぜひぜひ。

ジェシー・バックリーのインタビュー映像の後に、予告編があります。↓


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