一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『時をかける少女』……もうすでに仲里依紗の時代が来ていることを実感……

2010年05月23日 | 映画
映画『時をかける少女』といえば、我々の年代の人間にとっては、1983年7月に公開された大林宣彦監督・原田知世主演の映画である。
当時、まだ20代であった私は、この作品は映画館で見た。
ロケ地は広島県尾道市(一部は竹原市)で、大林宣彦の「尾道三部作」(『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』)の第2作目の作品。
本編もさることながら、エンドロールの時の映像と歌が特に印象に残っている。
原田知世が歌う主題歌のPV風映像は、本編の撮影のあと、それぞれのパートで歌う場面を撮影し、NG場面も挿入したりして編集されたもので、大林宣彦監督の遊び心いっぱいのエンディングに、心の中で拍手喝采したものだった。
ラストに、遠くから駆け寄ってきた原田知世の笑顔が、スクリーンいっぱいに映し出される。
あのラストは、日本映画史に残る名シーンと今でも思っている。


その後、
1997年に、角川春樹監督・中本奈奈主演で映画化され(元角川書店社長が、角川書店とは無関係に制作し、宣伝もほとんどしないまま公開されたため、存在自体を知らない人も多い「幻の作品」)、
2006年に、細田守監督で、アニメ映画が制作され、
2010年の今年(3月13日に主要都市で公開されたのを皮切りに、全国で順次公開中)、谷口正晃監督・仲里依紗主演で、4度目の映像化がなされた。
(映画とは別に、島田淳子、南野陽子、内田有紀、安倍なつみ主演で、4度ほどTVドラマ化もされている)

仲里依紗といえば、4月に見た『パンドラの匣』を思い出す。
現在上映中の『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲』にもゼブラクイーン(相原ユイ)役で出演しているし(すごいコスチュームで話題)、
TBS系の『ヤンキー君とメガネちゃん』というTVドラマでも主演(足立花役)している。
今、最も輝いている若手女優だ。
『パンドラの匣』での演技も素晴らしかったし、彼女が主演した『時をかける少女』もぜひ見たいと思っていた。
3月に公開されたのに、佐賀にはなかなかやって来なかった。
5月の中旬になって、やっとイオンシネマ佐賀大和での公開が決まった。
と、安心していたら、今週になったら1日1回の上映で、28日(金)で終了とのこと。
慌てて映画館に駆けつけた。

原田知世は、1967年11月28日長崎県長崎市生まれ。
仲里依紗は、1989年10月18日長崎県東彼杵郡東彼杵町生まれ。

どちらも長崎県出身というのが、同じ長崎県出身の私としては嬉しい。
仲里依紗は、2006年のアニメ版『時をかける少女』でも、主人公である紺野真琴の声を担当しており、『時をかける少女』に主演するべく生まれついた女優のように思える。


で、今回の作品は、どんなストーリーかというと、


高校卒業間近の芳山あかり(仲里依紗)は、母・和子(安田成美)が薬学者として勤める大学にも無事合格し、新たな生活に胸を弾ませていた。


ところが、和子が交通事故に遭う。
和子は初恋の人・深町一夫にメッセージを伝えるため、時を越える研究をしていた。
「過去に戻って、深町一夫に会わなくては…」と言いながら昏睡状態に陥った母の願いを叶えるため、あかりは、和子が開発した薬を使って1972年4月にタイム・リープすることを決心する。
時空を飛び越えたあかりは、過去の世界に到着。
タイム・リープは成功したと思いきや、なんと誤って1974年2月に飛んでしまっていた。
偶然出会った映画監督志望の大学生・涼太(中尾明慶)とともに深町一夫捜しを始めるのだが、なかなか見つからない。



学生時代の母・和子に会って深町一夫の行方を訊くが、深町一夫そのものを知らないと言う。


長期戦になりそうな気配の中、あかりは四畳半一間の涼太のアパートに同居し、涼太の映画製作を手伝ううちに、やがて涼太に恋心を抱き始める……



ということで、大林宣彦版のリメイクではない。
アニメ版が20年後の物語であったように、
今回の作品でも、2010年の少女の物語として生まれ変わっている。
続編と呼んでもいいだろう。
谷口正晃監督は、たぶん、大林宣彦監督をとても尊敬されているのだろう、随所に大林版へのオマージュと思われる場面が見られる。
たとえば、
原田知世が歌った主題歌(松任谷由実・作詞作曲)。
あのお馴染みの曲を、人気J-POPユニットいきものがかりが挿入歌としてカバーしているのだ。
この曲が本作品で使われているとは知らなかった私は、懐かしさと嬉しさで胸がいっぱいになった。
原田知世が弓を引くシーンは、そのまま仲里依紗にも受け継がれていたし、


なんと言っても、ラストの大写しになる仲里依紗の顔も、大林版を意識したものであると思われた。
その他、大林版を思い出させる場面は多々あり、27年前に大林版を見た人たちにとっては、堪えられない作品になっていると思う。

1970年代の街並みや風俗も、見所のひとつ。
アパート、銭湯、長髪、Gジャン、よしだたくろう、かぐや姫……
ノスタルジーを感じさせる各場面は、現在50代の人たちには特に楽しめると思う。


ストーリーも、それほど破綻はなく、大林版とうまく繋がっており、不自然さはあまり感じさせない。
ただ、深町一夫を探し回る場面がやや単調なのと、大林版のような魅力的な風景描写がなかったのだけが惜しまれる。
ただ、それは、私が大林宣彦監督のファンであることからくる物足りなさかもしれず、若い世代の人々にとっては、そうではないのかもしれない。
全体的に見ても、本作品は傑作の部類に入ると思うし、私としても、見て、とても満足できた作品であった。

成功の第一要因は、やはり主演の仲里依紗だ。
原田知世が演じた役柄とはまったく違ったタイプのキャラクターだったが、弾けるように躍動的に演じていて、とても魅力的だった。
もう仲里依紗の時代が来ていると思わされたし、
これから彼女の主演作がたくさん見られることを予感させられた一作であった。


中尾明慶もイイ演技をしていた。
1970代のファッションや髪型もキマッていたし、あの時代の若者の雰囲気をうまく出していた。


大林版『時をかける少女』を見た人はもちろん、
そうでない人も、
どちらも楽しめる作品に仕上がっている。
今度は、仲里依紗の『時をかける少女』が、伝説になるかもしれない……


佐賀では、イオンシネマ佐賀大和で、5月28日(金)まで公開中。
福岡、長崎では、すでに公開を終えている。(残念!)
熊本では、シネプレックス熊本にて公開中。
宮崎では、宮崎キネマ館にて公開中。
大分では、T・ジョイ パークプレイス大分にて公開中。
     日田シネマテーク・リベルテにて公開中。
鹿児島では、鹿児島ミッテ10にて、5月29日より公開予定。
沖縄では、桜坂劇場にて、6月5日より公開予定。

上映館が近い方は、ぜひぜひ。

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