一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

海抜0メートルから登る北アルプス「白馬岳」②白鳥山~朝日岳(朝日小屋)

2012年07月23日 | 海抜0mから登る北アルプス「白馬岳」単独行
7月23日(月)
午前3時起床。
干していたレインウェアなどをザックに仕舞い、出発準備。
今日は歩行14時間の長丁場。
3:35
ヘッドランプを装着し、白鳥小屋を出発。


真っ暗闇の中、急坂を注意しながら下って行く。
どんどん下って行くので、なんだか下山しているみたい。
白鳥山(1286.9m)を出発し、
この先、下駒ヶ岳(1241m)や菊石山(1209.8m)を通過して行くのだが、
段々標高が下がっているのにお気づきであろう。
アップダウンを繰り返しながら、
それでも標高がなかなか上がらないというのは、気が滅入るものである。


4:30
山の輪郭がはっきりしてくる。


4:37
ヘッドランプを消し、ザックに収納する。

4:58
下駒ヶ岳(1241m)を通過。


5:32
菊石山(1209.8m)を通過。


菊石山を過ぎた辺りに、素晴らしいブナ林があった。
本当に気持ちがイイ。


5:45
黄連の水場を通過。


6:21
黄連山を通過。
黄連山を過ぎた辺りから、今度は、急に花が多くなってくる。
ウラジロヨウラクや、


イワカガミ、


マイヅルソウ、チゴユリなどが、目を楽しませてくれる。


雪渓が現れ、


ロープ場などもあり、


なかなかタフなルートなのだが、軽快に歩いて行く。


アカバナシモツケソウや、


ヤマハハコなどを見ながら歩いていたら、


7:24
いつの間にか栂海山荘に到着。(笑)


白鳥小屋を出発し、約4時間。
花などを撮影しながらゆっくり歩いてきたので、まずまずかな。
「もし栂海山荘に着いて、残りの10時間が歩けないと思ったら、無理せずに栂海小屋でもう一泊してから朝日小屋まで登って来るように……」
という朝日小屋の女将さんからの忠告を思い出したが、
まだまだ元気なので、この先に進むことをあらためて決意する。
栂海山荘の前のテラスて朝食。
7:41
栂海山荘を出発。


7:50
犬ヶ岳(1593m)を通過。


この先は、樹林帯ではなく、ヤセた尾根道歩きとなる。
気分的に解放されたような気分になり、ルンルン気分で歩いて行く。


8:27
「北又の水場」で水を補給。
ここ数日、よく雨が降ったので、水量は十分。
ハイドレーションの3リットルのリザーバーと、
500mlのペットボトル2本に水を満たした。


8:42
北又の水場を出発。
登山道の両側の風景も、アルプスらしさが出てきた。


この辺りから、ツマトリソウや、


ゴゼンタチバナが俄然多くなってきた。


9:28
さわがに山(1612.3m)を通過。


雪渓の残る素晴らしい道を軽快に歩いて行く。


10:50
黒岩山(1623.6m)に到着。
行動食を食べながら、しばし休憩。
ここから先の黒岩平に思いを馳せる。
黒岩平は、「北アルプス最後の楽園」と呼ばれている素晴らしい場所。
栂海新道を歩いた者だけが目にすることができる「秘密の花園」。
ワクワクしてきた。


11:09
黒岩山を出発。
さあ、いよいよ黒岩平だ。


ニッコウキスゲの大群落。


チングルマ、


ハクサンコザクラ、


ミヤマカラマツ、


ミズバショウ、


残雪や水や花々が織りなす自然が創り出した庭園。


この後も、花々は途切れることなく現れる。



11:53
「黒岩平」と書かれた標識のある場所にはベンチがあった。
昼寝でもしたいところだが、今日はまだまだ先がある。


キヌガサソウは私の大好きな花なのだが、
この黒岩平にはこの花の群生地があちこちにあって嬉しい。


サンカヨウのみずみずしい白い花にうっとりする。


13:25
アヤメ平にさしかかると、ヒオウギアヤメの大群落が……


クルマユリなどがお花畑を形成している。
なんて素敵な場所なんだろう。


シナノキンバイ、


ハクサンフウロ、


おっ、この花は今回私がもっとも逢いたかった花……


シラネアオイ。
大感激!


この後も、お花畑は延々と続いていた。


しかも、この黒岩平、アヤメ平を歩いていた間、誰一人として会わなかった。
この広大なお花畑を、まったくの独り占め。
まさに「北アルプス最後の楽園」。
天国を歩いているような気分だった。


長栂山が近づいてくると、イブキジャコウソウが多くなってきた。
黒髪山のイブキジャコウソウよりも色が濃いような気がする。


イワシモツケ。


タカネツメクサ。


14:16
長栂山(2267m)を通過。


14:37
照葉ノ池を左に見ながら歩いて行く。


14:52
吹上のコルを通過。


この辺りからウスユキソウが俄然多くなってきた。


タカネバラ、ミヤマキンバイ、イワオウギ、タカネナデシコなども咲いている。



ハクサンチドリが美しい。


大好きな花・ハクサンイチゲにも逢うことができた。
嬉しい~


15:45
朝日岳(2418.3m)に到着。
ここまでくれば、もう大丈夫。
朝日小屋までは、40分ほど下るだけだ。
しばし寛ぐ。


ハクサンイチゲやシナノキンバイの大群生地を横目に見ながら下って行く。


16:34
朝日小屋に到着。


白鳥小屋を出てから、ちょうど13時間で到着。
高山植物や風景などをゆっくり楽しみながら登ってきたにしては、案外早く着いた。


朝日小屋の受付に行き、
女将さんに「着きました~」と報告。
「おお、よく登ってきたね~」と女将さん。
17時から夕食とのことで、割り当てられた部屋に行き、着替える。
夕食時、みんなの前で、女将さんから
「今日、栂海新道を登ってきた人がいます」
と紹介してもらい、照れくさかった。
ほとんどが団体さんで、単独行の登山者は6名のみ。
単独の6名は同じテーブルに集められていた。
私の前に座っていた女性は、明日、栂海新道を下るとのこと。
栂海山荘で一泊し、親不知の海まで行くのだそうだ。
私が栂海新道を登ってきたと知ると、いろいろと質問してきた。
おかげで楽しく会話しながら食事をすることができた。
「アップダウンの多いタフなルートで、下りと言えどもかなりキツイと思う。雪もまだ残っていて、雪渓を10箇所くらいは横切ったかな。不安を感じたらアイゼンを装着した方がイイと思う。キツイけれど、それ以上の楽しみがあるから、歩いて後悔はない。特に、黒岩平・アヤメ平の辺りは、まさに“北アルプス最後の楽園”。高山植物と風景が素晴らしい。存分に楽しんできて」
栂海新道をひとりで歩くことに不安を感じていたようであったが、
私のアドバイスで、俄然やる気が出た感じだった。
それにしても、女性ひとりで栂海新道を下るとは……
山形県からきた女性であったが、なんて素敵なんだろうと思った。
山では、こんな自立した女性がどんどん増えているような気がする。
その女性から、
「明日は、どちらへ?」
と訊かれたので、
「白馬岳まで登って、“海抜0メートルから登る白馬岳”を完成させたいと思ってます」
と答えると、
「今回は栂海新道を登る自信がなかったので下山で歩くのですが、私もいつか海抜0メートルからの登山に挑戦しますよ」
と頼もしい発言。
女性の目の輝きが美しかった。

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