一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

安部公房原作・勅使河原宏監督作品『他人の顔』より武満徹作曲「ワルツ」

2020年04月10日 | 映画


本来なら映画レビューを書く筈なのであるが、
新型コロナウイルスの感染者が佐賀県でも増えつつある現在、
さすがに映画館へ行くのは躊躇われる。
そこで、
普段、ここにはあまり書いていない、
映画に関する極私的な“よもやま話”を、
新作映画を見ることができるようになるまで、
続けてみたいと思っている。
思いつくままに書くので、まとまりのない文章になると思うが、
寛容の心でお読み頂きたい。


私は、勅使河原宏監督作品が好きで、
その中でも、
安部公房が原作の作品群、
『おとし穴』(1962年)
『砂の女』(1964年)
『他人の顔』(1966年)
『燃えつきた地図』(1968年)
が、特に好きで、
機会があれば見るようにしている。


勅使河原 宏(てしがはら ひろし)(1927年1月28日~2001年4月14日)
日本の芸術家。草月流三代目家元。
映画、いけばな、陶芸、舞台美術、オペラなど様々な分野で活躍した。
妻は女優の小林トシ子。
ATG初の日本映画の監督であり、
安部公房原作の作品群では、
ドキュメンタリータッチを基本にしたシュールレアリズム溢れる映像美で、
世界的にも評価された。



安部 公房(あべ こうぼう)(1924年3月7日~1993年1月22日)
日本の小説家、劇作家、演出家。本名は公房(きみふさ)。
東京府で生まれ、満洲で少年期を過ごす。
高校時代からリルケとハイデッガーに傾倒していたが、
戦後の復興期にさまざまな芸術運動に積極的に参加し、
ルポルタージュの方法を身につけるなど作品の幅を広げ、
三島由紀夫らとともに第二次戦後派の作家とされた。
作品は海外でも高く評価され、世界30数か国で翻訳出版されている。
主要作品は、
小説に、『砂の女』、『他人の顔』、『燃えつきた地図』、『箱男』、『密会』など、
戯曲に、『友達』、『榎本武揚』、『棒になった男』、『幽霊はここにいる』などがある。
演劇集団「安部公房スタジオ」を立ちあげて俳優の養成にとりくみ、
自身の演出による舞台でも国際的な評価を受けた。
晩年はノーベル文学賞の有力候補と目された。



『おとし穴』、『砂の女』、『他人の顔』、『燃えつきた地図』の4作は、
いずれも、
原作・脚本が安部公房、
音楽が武満徹で、
とりわけ武満徹の音楽が優れている。


武満徹というと、前衛的で難解な現代音楽家というイメージがあるが、
(クラシック音楽とは違って)映画音楽には解り易く、美しい旋律の曲も多く、
小林正樹監督の『切腹』(1962年、第17回毎日映画コンクール音楽賞受賞)、
羽仁進監督の『不良少年』(1961年、第16回毎日映画コンクール音楽賞受賞)、
勅使河原宏監督の『砂の女』(1964年、第19回毎日映画コンクール音楽賞受賞)、
勅使河原宏監督の『他人の顔』(1966年、第21回毎日映画コンクール音楽賞受賞)
などの映画音楽では、
いずれも高い評価を得ている。

本日紹介するのは、
勅使河原宏監督の『他人の顔』の挿入歌でありテーマ曲である武満徹作曲「ワルツ」。
作品的には『砂の女』の方が好きなのであるが、
音楽的には『他人の顔』の方が好きなので、


今でも武満徹が作曲した「ワルツ」を聴きたくて映画『他人の顔』も鑑賞する。


村松英子や、






入江美樹が美しく、






作品的にも見る価値のある映画と言える。










武満徹作曲の「ワルツ」は、
ビヤホールの場面では、(当時18~19歳の)前田美波里がドイツ語の歌詞で歌い、


冒頭やその他のシーンでは、弦楽オーケストラで演奏される。
一度聴いたら忘れられなくなる曲である。

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