一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『パーマネント野ばら』 ……美しい港町で起こった、ある切ない恋の物語……

2010年08月19日 | 映画
映画『パーマネント野ばら』の原作は、西原理恵子の漫画だ。
西原理恵子の出身地は、高知県。
(映画とは関係ないけれど)高知県は多くの漫画家を輩出している。
「高知県 漫画家」のキーワードで検索すると、驚くほど多くの漫画家の名が出てくる。
だが、残念なことに、私は漫画をあまり読まないので、その漫画家の名をほとんど知らない。(笑)
その無知な私でも、
横山泰三、横山隆一、青柳裕介、岩本久則、黒鉄ヒロシ、はらたいら、やなせたかし……くらいは知っている。(この大御所たちすべてが高知県出身というのも驚きだ)
なぜ、こんなにも多くの漫画家が高知県から出ているのか……?
西原理恵子の鳥頭紀行シリーズが好きで、昔はよく読んでいたので、西原理恵子は今でも気になる存在であった。
その西原理恵子の原作だということで、映画『パーマネント野ばら』を見る気になった。
ここ数年、西原理恵子の作品は、『いけちゃんとぼく』『女の子ものがたり』『パーマネント野ばら』と、映画化が相次いでいる。
時代が西原理恵子に追いついたのか……
嬉しいことである。

海辺の町にひっそりと佇む、小さな美容室‘パーマネント野ばら’
ここは、一人娘を連れて出戻ったなおこ(菅野美穂)と、その母まさ子(夏木マリ)が切り盛りしている、町にひとつのパーマ屋さん。


町の女たちは日々ここへやってきては、退屈な日常に華を求めるように、少し大袈裟に、お互い様の小さな嘘を交えながら恋にまつわる悲喜こもごものおしゃべりをする。


「野ばらさん」と皆に慕われているまさ子は、家に寄りつかない夫のカズオ(宇崎竜童)に愛想をつかしている。


なおこの友人であるみっちゃん(小池栄子)は、浮気と金の無心ばかりの夫に頭を悩ましていて、


同じくともちゃん(池脇千鶴)は、ギャンブルに溺れて行方不明の旦那を心配している。


皆そんな自分たちを涙目ながらも、明るく笑いとばしている。
「どんな恋でもないよりましやん……」と。
一方、なおこは、高校教師をしているカシマ(江口洋介)と恋をしている。


落ち着いてお互いを優しく思い合っているふたり――
しかし、その恋にも秘密が隠されていた……
(ストーリーはパンフレットより引用し、構成)

この作品、高知県宿毛市小筑紫町栄喜(さかき)で、そのほとんどが撮影されている。
この栄喜漁港が、佐賀県にある呼子漁港にそっくり。
田舎の、静かで、美しい港町。
私はもともと田舎の小さな町でロケされた映画が大好き。
その町の住人になった気持ちで見ることができるし、楽しい。
学生時代に友人と二人で四国一周した時、この宿毛の町にも立ち寄った。
懐かしかったし、いつかまたこの町を訪れて、ロケ地めぐりでもできたらいいな~と思った。
映画の出来もなかなかで、「愛すべき小品」という言葉がぴったりの佳作であった。

菅野美穂
映画主演作としては、北野武監督作品『Dolls』(2002年10月12日公開)以来8年ぶり。
もっぱらTVドラマで活躍しているので、映画出演はきわめて少ない。
最近のTVドラマでは、『曲げられない女』(2010年1月13日~3月17日・日本テレビ)が面白かった。(TVはあまり見ないのだが、このドラマは配偶者が見ていたので、つい横目で見ていたらハマってしまった)
ちょっと変わった役をやらせたら天下一品で、この『パーマネント野ばら』でも、その才能は遺憾なく発揮されている。
映画を見ている時は気づかないのだが、見終わって、ストーリーが全部明らかになった後に振り返ると、彼女の演技が物凄く巧かったことに気づく。


ネタバレになるのでこれ以上は言えないが、何気ない彼女の表情のひとつひとつが、すべて意味があったことに気づかされるのだ。
特にラストの表情は秀逸。


小池栄子
グラビアアイドルから発し、多方面で活躍している彼女であるが、女優としての小池栄子を私が認めたのは『接吻』(2008年)でだった。
この作品での熱演、目力の強さを見て、女優魂が本物であることを認識した。
『人間失格』(2010年)では監督が彼女の魅力を引き出せずに終わり残念だったが、本作『パーマネント野ばら』では、再び彼女の素晴らしい演技を堪能することができた。
西原理恵子の原作に登場するみっちゃんそのもののであった。


池脇千鶴
先日見た『必死剣鳥刺し』では、密かに兼見三左エ門に思いを寄せる亡き妻の姪・里尾を好演していたが、この作品では、男運が極端に悪いという前作とはまったく違った役ながら、巧い演技を見せている。
池脇千鶴演じるともちゃんの子供時代を演じた子役の女の子の存在感も抜群。
この子役の女の子の将来も楽しみ。


夏木マリ
なおこ(菅野美穂)の母・まさ子を熱演。
西原理恵子の原作に登場するまさ子とはかなり印象は違うが、夏木マリ演じるまさ子の方がリアリティがあり、楽しめた。
この夏木マリ、私の若き頃は、妖艶な女性歌手であった。
ヒット曲「絹の靴下」(1973年)は、艶めかしい振り付けとフィンガー・アクションで、当時の若い男たちを虜にした。
その後、多方面で活躍中だが、舞台では一際高い評価を得ている。
映画でもよく見かけるが、その中でも声優として挑んだ『千と千尋の神隠し』(2001年)での老魔女「湯婆婆」は、特に印象に残っている。
近年は、妖艶さに加え、魔女的な怪しさや凄みも加わり、特異な役柄を演ずる女優として、ひっぱりだこの感がある。
この作品でも、彼女の存在感がピカイチであった。


その他、宇崎竜童や江口洋介も控え目な演技で、作品の要所を押さえていた。




とにもかくにも、この映画は女性が主人公。
映画に出てくるどの女性も、何度でも男に酷い目に遭いながらも、愛することを止めない。
愛されることより、愛することを選んで生きている。
弱いようで強い。
切ない映画なのだが、
見終わった後に、
女性はもちろん、
男性も、
ちょっと元気がもらえた気分になる作品だ。


私の場合、見終わった直後より、数日後にグッときた。
人生って、悪くないと思った。

福岡では、小倉昭和館で、
大分では、日田シネマテークリベルデで、現在上映中。
佐世保のアルカスSASEBOで行われる「アジア映画祭 Vol.10」にもラインナップされており、
10月9日(土)10:30~12:10
10月11日(月・祝)13:15~14:55
に上映されることが決まっている。
機会があったら、ぜひぜひ……
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