一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『今夜、ロマンス劇場で』 ……綾瀬はるかが美しく、映画愛に溢れた感動作……

2018年02月16日 | 映画


映画監督を夢見る青年・健司(坂口健太郎)が、
密かに想いを寄せるのは、


通い慣れた映画館・ロマンス劇場の映写室で見つけた、
古いモノクロ映画のお姫様・美雪(綾瀬はるか)。


今は誰も見なくなったその映画を、
毎日のように繰り返し見ていた健司の前に、ある日奇跡が起きる。
美雪が健司の目の前に突然現れたのだ。


その日から二人の不思議な同居生活が始まった。


モノクロの世界しか知らない美雪に、
カラフルな現実世界を案内する健司。


同じ時間を過ごす中で、二人は次第に惹かれ合っていく。


しかし、美雪にはある秘密があった。
現実の世界に来るための代償で、人のぬくもりに触れたら美雪は消えてしまうのだ。


そんな中、美雪は、
映画会社の社長令嬢・塔子(本田翼)が健司に想いを寄せていることを知る。


好きだから触れたい、
でも触れられない……
この切ない真実に、二人はどう向き合い、そんな答えを出すのか……




映画を見た感想はと言うと、
面白かったし、
感動もさせられた。
綾瀬はるかが、とびっきり美しかったし、
もうそれだけで“見る価値あり”だと思った。
もし、この映画を「見ようか」「見まいか」と迷っている方がおられたら、
「見る」ことをお薦めする。
予備知識なしで見た方が、感動が大きいと思うからだ。
映画愛に溢れた映画なので、
映画ファンなら、きっと楽しんでもらえると思う。



ここからは、ちょっとネタバレ気味になります。


だが、不幸にして、
ある程度の予備知識なくしては見ることができないという、
用心深く、疑い深い方がおられましたら、
以下の文章を読んで、判断してもらいたい。

映画館や映画会社、あるいは映画そのもの題材にした作品は案外多い。
洋画の名作には、
『サンセット大通り』(1950年)
『雨に唄えば』(1952年)
『フェリーニの8 1/2』(1963年)
『軽蔑』(1963年)
『映画に愛をこめて アメリカの夜』(1973年)
『カイロの紫のバラ』(1985年)
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年)
などがあるし、
邦画でも、
『蒲田行進曲』(1982年)
『キネマの天地』(1986年)
『虹をつかむ男』(1996年)
『オリヲン座からの招待状』(2007年)
『シグナル〜月曜日のルカ〜』(2012年)
など、思いつくままに挙げても、かなりの数になる。

だから、この手の作品は、アイデアがほぼ出尽くしていて、
過去の作品にどうしても似てしまう。
本作『今夜、ロマンス劇場で』も、
「スクリーンからキャラクターが飛び出すのは『カイロの紫のバラ』の真似ではないか?」
「白黒の世界からカラーの世界へ変化は『カラー・オブ・ハート』のアイデアを盗んでいるのではないか?」
とか、すでにそういう批判をしている映画評論家もいる。
綾瀬はるかの本作での衣裳など見ていると、
(クラシカル&カラフルなドレス姿を25変化している)
『ローマの休日』など、一連のオードリー・ヘプバーンの作品を思い浮かべる人も多いのではないかと思われる。
言い出したらキリがないほど。


では、実際、制作側の意図はどうなのか?
これが、そういった批判はすべて“織り込み済み”というほどに、
あらゆる作品を調べ、参考にしていたのだ。
健司と映画館主との関係は、『ニュー・シネマ・パラダイス』




映画の世界と現実世界を繋ぐファンタジックな設定は、『キートンの探偵学入門』や『カイロの紫のバラ』




王女と身分の違う青年が恋におちるのは、『ローマの休日』




落雷によって変化が生じるのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』




劇中劇「お転婆姫と三獣士」のモデルは、『オズの魔法使い』や『狸御殿』シリーズ




北村一輝が演じるスター俳優・俊藤龍之介の愛称ハンサムガイは、日活のガイシリーズ




そして、美雪と健司のガラス越しのキスシーンは、『また逢う日まで』というように、




むしろ、ありとあらゆる作品の良い所を抽出し、昇華し、
絞り出したような作品になっているのだ。
この脚本を書いた宇山佳佑も素晴らしいし、
演出した武内英樹も優れている。


あらゆる名作を参考にし、
いろいろな要素を詰め込んではいるが、
構造はシンプルで、一言で表現するならば「映画愛」である。
それは、美雪が、映画の中から飛び出して、こちらの世界に来た理由を語る場面に集約されている。
美雪が語った言葉を並べてみる。

「……逢いたかったんだ」

「お前に逢いたかったから……」

「昔はたくさんの人がわたしのことを観てくれた。でも一人いなくなり、二人いなくなり、結局そのうち誰もいなくなってしまった。仕方のないことだと分っていた。それがわたしの宿命だということも。でも――」

「でも怖かったんだ。このまま皆の記憶から消えていくことが……」

「そんなとき、お前はわたしを見つけてくれた」

「こんなわたしでも、まだ誰かを喜ばせることができる。そう思うと、嬉しくてたまらなかった……」

「ずっとあの日が続いてほしかった。でも、もうすぐお前に逢えなくなると知って一日逢いたくなってしまったんだ。逢って、最後に言いたかった。見つけてくれてありがとうって……」


この他にも、本作には名言がちりばめられていて、
映画館主の本多がつぶやいた言葉で、こういうのがある。

「人の記憶に残れる映画なんてほんのわずかだ。あとのほとんどは忘れられて捨てられちまう。誰かを幸せにしたくて生まれてきたはずなのに」

美雪が出演した映画も廃棄されていたのだが、
健司が見つけてくれた。
何度も何度も自分を見てくれた。
「見つけてくれてありがとう」
という言葉は、美雪の言葉であり、
映画自身の言葉でもある。
美雪は謂わば“映画の化身”と言えるのだ。


序盤、健司がつぶやいた、

「どんな映画にもいいところは必ずあるんですよ」

という言葉も忘れがたい。
私も、映画を見るとき、
なるべく“いいところ”を見ようと思っている。
それは、このレビューを書く際の心構えにもなっている。

映画愛に溢れ、
名言がちりばめられ、
綾瀬はるか史上、一番美しい綾瀬はるかを見ることができる映画『今夜、ロマンス劇場で』。
映画館で、ぜひぜひ。
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