森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

大森浜

2016-07-25 | 日記


 久しぶりに、子供の頃暮らした大森浜を尋ねました。
 しかし、残念ながら昔を懐かしむどころか、町の変貌ぶりにただ驚くばかりでした。
 
 かってこの海岸線には、漁師の家がぎっしりと建ち並び、砂浜は磯舟でいっぱいでした。
 男はイカや昆布を獲り、女は割いたイカを吊るしたり、砂浜狭しと昆布を広げて干す。年
寄りは干しあがったイカを、自分の手足を上手に使って伸ばしてスルメに仕上げる。
 夏は毎日のように地引網があったから、引き始まると子供たちはちいさな入れ物を持って
急いで駆けていきます。引き上げる網から銀色の魚が飛び跳ねて落ちるので、それを拾うの
です。カモメに取られる前に。時には「これも 持ってけ~」と漁師のオジサンは大きい魚
投げてくれたものです。

 浜は活気に溢れ、男も女も子供も老人も希望に満ちていました。



 今は、漁師らしき家一軒も、磯舟の1艘も全見当たりません。使われていない船具や網が
放置されているだけ。代わって立派なコンクリートの建物が並んでいて、昔の名残りは全く
ありません。あの大森浜は潰れたのです。

 建物の前を通りかかったオジサンに、少し立ち話をさせてもらいました。
「この大きな建物は何ですか?」
「カルチャーだよ 女が集まってカルチャーやってんのさ それと年寄りのカラオケだよ」
と話す真っ黒に日焼けした笑顔に、一瞬大森浜を感じました。



 気のせいか、いや子供の記憶だから正確ではないのですが、砂浜は半分程に短くなってい
るようです。ドンブカの海は昔から泳げなかったのですが、みんな平気で入っていました。
確かに何度か危ないめに遭いました。可哀そうに流された子もいたのです。



 波打ち際をかなり長い時間かけて歩きました。
 そうそう、いつもこんなドンヨリした空でした。独特の波形と波音、カモメ、黒っぽい砂。
「なんだ 結局何も変わっていないじゃないか」と分かった時から急に落ち着きました。



 夏草や つわものどもが 夢の跡
 夏来ても ただひとつ葉の 一葉かな

 芭蕉がよく似合う おおもりはま よし、また来よう。
                                  動(yurugi)