簾舞通行屋

先月の「秋の輝き」ドライブ（バイクじゃなかったのがくやしい）の途中、
札幌市南区の国道２３０号線旧道沿いに、見事なモミジの木を見つけました。
たぶんヤマモミジです。
私の写真ではその色が表現できていませんが、周りを華やかせて、
思わず立ち寄ってみたくなる、そんなモミジの木でした。

そして木の傍らには、趣のある美しい建物が。
木でできた看板には、「札幌市指定有形文化財　旧黒岩家住宅（旧簾舞通行屋）」
とあります。（簾舞は「みすまい」と読みます。）
ここは、北海道の「開拓」の歴史を物語る場所だったのです。


現在、札幌と函館を結ぶ最短道路として、また、札幌からニセコ、洞爺方向への観光道路として賑わいを見せている国道２３０号線。
このブログでも、何度も通っています。
この道は、北海道の開発のため、函館、札幌を陸路で結ぶ道として、明治２年（早い！）から、着手された道でした。

本州以南と違ってアイヌの人たちが近自然的な暮らしをしていた北海道では、陸路の大街道は存在していなかったのです。
開発を急務と考えた明治政府でしたが、財政が逼迫し、予算がないことから、これを民間委託。なんとお寺、「東本願寺」に依頼したのです。
工事は現在の国道２３０号線。札幌、中山峠、ルスツ、洞爺湖、虻田へと、内陸部を抜ける最短ルート。しかし、札幌・中山峠間は難航を極めるつらい工事となりました。

完成したこの道は、本願寺道路、本願寺街道とも呼ばれたのですが、後から開通した海沿いに苫小牧から札幌にまわってくる札幌本道がメインルートになると、街道は荒れていったのです。

現在の賑わいを再び得たのは、戦後、道路改修が本格的に行われてからでした。



さて、この通行屋ですが、本願寺街道開通当時、札幌の平岸村（現在は地下鉄も通る都会のど真ん中）以南は家もなく、既に知られていた温泉、定山渓までは、２０数ｋｍを休憩所もないままひたすら歩くしか通行方法はなかったそうです。

そこで、駅舎（そう、道の駅です）として建てられたのがこの簾舞通行屋でした。
九州出身の黒岩さんが住み、農地開拓をしながらこの駅舎を守ってきました。

その間、街道が廃れたり、定山渓鉄道が走って鉄道駅ができたり、人口増加で大規模市街地開発が押し寄せてきたりと、様々なことがあり、現在では旧黒岩家住宅・旧簾舞通行屋として、保存されています。

詳しくは「北海道開発局かいはつグラフ　宗門が切り開いた本願寺街道」や、
「ふるさと探見（ＹＯＭＩＵＲＩ　ＯＮＬＩＮＥ）　旧黒岩家住宅」をご覧下さい。
本願寺道路については、Ｗｉｋｉｐｅｄｉａ（ウィキペディア）の「本願寺道路」が詳しくわかりやすいです。



簾舞を行く国道２３０号線は４車線。道の両側には郊外型大型店舗が並び、新興住宅街がひしめく賑わいを見せています。

しかし、この旧道沿いは、昭和３０年代生まれの私にはちょっとほっとするような、ゆっくりした空気が流れています。
札幌市を抜けて中山峠を越えるとき、私はいつもこの旧街道を通ることにしているのです。