レインラン１ 雨の日のリスク

雨のライディングは晴れの日の何倍も疲れます。
バイクで走るには悪い条件がいくつも重なるからです。
　１　視界が悪くなる
　２　スリップしやすくなる
　３　ライダーが濡れる
　４　マシンの状態が変わる
大きく分けると４つのマイナスポイントがあります。
どれも重大な問題ですね。


☆１　視界が悪くなる。

ただでさえ、雨の日は暗く、色が沈みがちで視界は悪化します。
雨粒のせいで遠くも見えにくくなります。
裸眼でもそうなのですが、バイクの場合、視界の低下は特に深刻です。
バイクではゴーグルがヘルメットのシールド越しに視界を確保しますが、これらには自動車にはあるワイパーが付いていません。
つまりワイパーの壊れた車で走っている状態に近い…。これは怖いですね。
先に悪い話を続けると、これが夜になると、そのシールドの水滴に対向車のライトが乱反射して視界を奪い、さらに危険です。
また、雨の夜はライトの光が路面の水に反射して向こう側に逃げてしまうため、ライトを点けても思ったより明るく見えない。
まさに泣きたくなる状況ですね。




☆２　スリップしやすくなる。

特にハイグリップタイプのタイヤを履いている人は要注意。
ドライで圧倒的なグリップ力を誇る溝が最低限しかないスポーツタイヤは、一昔前に比べるとましになったとはいえ、雨は苦手。
ハイパーマシンにスポーツタイヤも組み合わせの人は「雨の日は走らない」ことが多いです。それは根性がないからではなくて、この組み合わせが雨の公道では危険だからです。
ちなみに私が履いているようなツーリングタイヤはトレッドの排水性もよく、普通に走る分にはかなり安心です。
しかし、雨の日はとにかくよくすべる。
道路の白いペイント、マンホールのふた、道を横切る溝のグレーチングのふた、工事の鉄板…。
道路の轍の水溜りでハイドロプレーニング現象が起こることさえあります。
危ない危ない。




☆３　ライダーが濡れる。

体を外に晒して走るのがライダー。
風に吹かれ、雨に打たれます。
体が濡れると、走行風で濡れた体が冷やされ、あっという間に体温を奪われてこごえてしまいます。
手はかじかみ、ブレーキ操作が遅くなり、且つ繊細な操作が難しくなります。
体温低下は疲労を加速させ、体全体がこわばり、極端な場合、停止したときにきちんと足を出すことさえ出来ずに転倒する例もあります。
注意力低下は事故を呼びやすく、まして上記の視界悪化とスリップしやすい状況…。これは危ない。




☆４　マシンの状態が変わる。

雨はライダーだけでなく、バイクをも冷やしていきます。
昔のバイクは水に弱く、電気系がリークして走れなくなることもあったようですが、さすがに最近のバイクでは聞きません。
しかし、サーモスタット付でないラジエターを積んだバイクや（これも今では滅多にありません。）、空冷で強力なオイルクーラーを積んだバイクに乗っている人は要注意。冷却水やオイルがオーバークールを起こし、エンジンが冷えすぎてプラグがかぶったり、潤滑が上手くいかなくてエンジンを痛めたりということもありえます。
（昔の水冷エンジンのバイクは冬の間ラジエターの上半分にガムテープを貼って冷えすぎないようにしていたものです。今でもチューンドバイクに乗る人でオイル温度管理のためにラジエターに遮風板をつけたり、テープを貼って走る人を見かけますね。）

さらに恐ろしいのは、寒い雨の中、長時間走っていて、いきなり一発目のブレーキングをしたとき、ブレーキレバーがくにょっと握りきれてしまい、ブレーキが効かないことがまれにあることです。それは車のブレークペダルでも似たようなことが起きます。すぐにレバーを離し、握り直し、というポンピングをすれば、圧は戻ってブレーキは利くのですが、パニックになり握り続けたままブレーキが効かない状態はこれは恐怖です。（私は１９８８年に当時の愛車GPz400F-Ⅱでそれを体験、転倒しています。）
またそうでなくても、雨の中走っての一発目ブレーキングは思ったより効かないことがあります。
パッドとディスクの間の水分を飛ばしてからでないと本来の制動力を発揮してくれないからです。
タイヤのグリップが落ちているうえにブレーキまで効かなくなっていては危険ですね。




おお、こう書いてくると、「やはり雨の日は危ないのでバイクに乗るのはやめましょう。」と結びたくなってきます。
しかし、雨でも走らなければならないとき、出先で雨に降られて帰らなければならないとき、ありますよね。
また、たまーに、「雨の中を走りたい」という人もいるのです。
さあ、そんなときどうする？

ライテク、レインランシリーズ。
雨の攻略。危険な雨の日をいかに危険を減らして走るか、考えていきます。
次回は実は一番大事な、体を濡らさない、視界を確保する、装備編。

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