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「葵の残葉」奥山景布子

2020年02月12日 10時24分34秒 | 読書(歴史/時代)
「葵の残葉」奥山景布子

三万石の高須松平の家督を継がず尾張徳川家を継いだ慶勝。
その弟たち3人も、それぞれ養子となっていく。
激動の幕末に、官軍・幕府に別れて戦う運命となる。
資料を駆使して、丹念に歴史を掘り起こした作品だ。

生麦事件について
P112
大名たちの行列と異国人の通行との問題は、すでに以前から危惧されていて、久光らは、事前に幕府に「諸外国の機関に向けて、必要な通達を出してほしい」と依頼しており、それについては幕府も「対応する」と返答していたにもかかわらず、実際には何もなされていなかった。つまり、非はイギリスでも薩摩でもなく、幕府にある、という理屈になっているらしい。

P125
尾張徳川家の剣術である柳生心影流は、立ち会いの時にむやみに声を発さない。あくまで沈黙の中に気合いを込める流儀である。(薩摩・示現流と対極だ)

P297
ご一新は、西欧でいうレボリュションとは趣を異にするようだ。
(中略)
レボリュションならば、旧体制の支配者はみな、たいてい投獄ののち殺されると聞く。免職された旧大名たちには、全員、東京での居住が命じられた。それぞれの家に応じて、俸禄もある。
――みな、家ごと隠居というわけだ。

慶勝と忍び・おけいとの対話
P303
「今、何を生業としておる」
「はい。・・・・・・寄席で三味線を」
(本筋とは関係ないが、このやり取りが著者らしくていい)


【ネット上の紹介】
兄弟の誰か一人でも欠けていれば、幕末の歴史は変わった―。石高わずか三万石の尾張高須の家に生まれた四兄弟は、縁ある家の養子となる。それぞれ尾張藩慶勝、会津藩容保、桑名藩定敬、そして慶勝の後を継いだ茂栄。幕末の激動期、官軍・幕府に別れて戦う運命に。埋もれた歴史を活写する傑作長篇小説!新田次郎文学賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、W受賞!
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