たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

藤沢周平著 「時雨のあと」

2019年10月08日 14時55分26秒 | 読書記

戦後まもない昭和20年代、30年代前半、北陸の山村で、幼年期、少年期を過した。
戦禍を逃れ東京から疎開した先、父親の生家の近くに急造りしたみすぼらしい家で育った。
当然のことながら 子供が本を欲しがっても おいそれと買ってもらえる時代では無く、
正月に 付録付きで膨らんだ 小学館の少年少女雑誌を 特別に買ってもらった喜び、感激を 未だに覚えている位である。
1学年1クラスの小さな村立小学校中学校にも 図書室等は無く 
本を 買ってもらって読む、借りて読むという環境は 皆無だったような気がする。
「本は 貴重で大事な物」・・・子供の頃から 骨身に染み付いた言葉だったが 
テレビ時代に入ったことや 仕事優先の暮らしになってからは、
本をたやすく手に入れることが叶うようになったにも拘わらず
逆に 「読書」からは 遠ざかってしまい、 
書棚の本は 飾り物?、図書館にも足を運んだことの無いという人間になってしまっていた。
数年前、自営の仕事を完全に辞めてからのこと、時間がたっぷり有るようになったことも有るが、
ひょんなきっかけで 今更ながら 「読書」の楽しさを知り 
身辺整理雑物廃棄処分対象の書棚の本を改めて読んでみたり 最寄りの図書館に足を運ぶようになっている。
もちろん 読み易い時代小説等 肩の凝らない書ばかりであるが・・・・。、

先日 図書館から借りていた 藤沢周平著 「時雨のあと」(新潮文庫)を 読み終えた。
表題作「時雨のあと」をはじめ、不遇な町人や下級武士を主人公にした 人情味豊かな短編 7作品が収録された書である。

「時雨のあと」

「雪明かり」
部屋住みの菊四郎は継母の芳賀家の養子となっていたが 実家の古谷家には 継母の連れ子(義妹)由乃がいる。婿入りした菊四郎は 実家とは縁が切れていたが 懐いてくれていた由乃が気になっていた。由乃は宮本家に嫁いだが 嫁ぎ先で由乃は酷い仕打ちを受け 瀕死の状態になる。菊四郎は 由乃を救出し幸せにしてやろうと決心するが・・・・、
心温まる、淡い恋の義兄妹の物語である。

「闇の顔」
城下で二人の男が倒れている場面から物語が始まる。事件の真相を探っていく伊並惣七郎、石凪鱗次郎・・・、
その背景に は家老中老間の派閥争いが絡んでいた。

「時雨のあと」
元鳶職で真面目に働いていた安蔵は事故で足が不自由になったしまって以降、博打に興じるようになり 抱え女郎屋で働く 兄を一図に信じる妹みゆきに 頻繁に金を無心する。見かねた元の人足頭金五郎が・・・・。

「意気地なし」
女房に死なれ、乳飲み子を抱え、じじむさい伊作に腹立たしくも、同情するおてつ、兄の大工藤太郎の兄弟子の作次と祝言を挙げることになっていたのだが・・・。

「秘密」
おみつは ぼんやり考え事をするヨボヨボの舅由蔵が気になってしかたがない。病気では無く ある女のことを思い出そうとしていたのだが、過去を遡りながら やっと辿りついた。「思い出したんですね。おじいちゃん」「う、う、思い出した」

「果し合い」
美也には いくらか身体の不自由な大叔父庄司佐之助がいた。佐之助は 若い頃 果し合いをし、足を切られ婿養子縁組も壊れ 部屋住みのまま老いてしまったのだ。美也には 想い人松崎信次郎が有り、縄手達之助の縁談を断ったことから、信次郎は達之助から果し合いを申し込まれた。大叔父佐之助が一肌脱ぎ・・・・・。

「鱗雲」
小関新三郎は 藩境の笠取峠で倒れていた一人の女雪江を助けて家に連れて帰り、看病する。死んだ妹に生き写しで 母親理久も喜ぶが、仇討ちのため江戸から隣藩に向かう途中だったことが分る。新三郎には 父親同士が約束した婚約者、屋代利穂がいたが いつからか藩内の大きな勢力争いに巻き込まれてゆき、利穂は自害してしまう。
仇討ちに野沢城下に向かった雪江も 返り討ちで死んだかも知れない・・・・・。
馴れない畑仕事をしている新三郎。
「晴れた空の半ばを埋めて鱗雲がひろがっている。空気は冷えびえとしただった。・・・・・」
「遠ざかる人影とは逆に こちらへ近づいてくる者がいた。・・・。ほとんど駆けるように近づいてくる。女だった。雪江だ。・・・・。母上、あなたの娘が一人、帰ってきたようです」

「解説」で 藤田昌司氏は 
「この作品集は 最も藤沢氏らしい味わいのある作品集だといえる」と述べている。
その1は 時代背景が全て 江戸時代に設定されていること。
その2は 登場人物がいずれも下級武士、貧しい市井の人間に限られていること。
その3は いずれも 江戸庶民や下級武士の人情の世界を抒情的に描いていること。

短編ながら それぞれに 藤沢作品ならではの のどかな情景描写や細やかな心情描写が豊富で 毎度のことながら 楽しめた。

 


この記事についてブログを書く
« 曇時々晴、のち 雨 | トップ | 「サン・トワ・マミー(Sans ... »

読書記」カテゴリの最新記事