こいぬが、嫌いな訳じゃない
だけど、おまえには
トラウマが、あった
あの子を捨てた
それが、トラウマ
でも、トラウマな
子どものこころは
当たり前に
救いを求める
いや、そうでもないか
こいぬなんて、ぬいぐるみ
子どもの意識なんて
その程度だな
だから、あの子を捨てた
そして、その翌日に
あんな風になった
また、学校の帰り道
まずおとなが、悪い
だから、こいぬを捨てる
おまえの帰り道にね
酷い時代だった
そうだったんだろうな
昭和３０年代なんて
そして、おまえは
癒しを求めていた
ぬいぐるみのね
だから、ちょっと汚い
あの子みたいに
箱には、入っていなかった
道端に佇んでいた
真っ黒っけで
毛もくじゃらで
そして、埃まみれ
あの子みたいには
綺麗ではなかった
子どものぬいぐるみとしては
ちょっとね
でも、癒しにはなる
あの子みたいに
抱っこは、出来なかった
でも、わざと
ゆっくり歩いた
きゅんっきゅんっ
仕方ないよぬ
ついて来ちゃうんだから
かあさん、怒るよな
おまえには、甘いけど
でも、きっと怒るよ
分かってる
また、捨てて来なさいって
言われたら、どうする❓
でも、もう
きゅんっきゅんっ
ついて来ちゃってるよ
おまえにも
癒しが、必要だったんだ
そして、我が家
庭から、入って
「だって
ついて来ちゃったんだ❗️」
かあさんの呆れた顔
そりゃ、そうだよな
あの子の事があって
また、その翌日だ
「随分、汚れてるね」
かあさんの嫌そうな顔
あの子の時の
何倍もだったな…
とぼとぼ、夕方の通学路
また、戻っていた
きゅんっきゅんっ
ごめんね、だめだって
おまえが、悪い
おまえは、悪いやつ
元いた場所に戻った
こいぬを置いて
後は、全力
でも、もう
涙は、なかっかな
悲しかったけど
それは、多分
おまえが、愚か過ぎるから
きっと、おまえ自身に
呆れ果てていたんだろうか
…それからだな
二度といぬには
近づいたこともなかった
おまえが、弱くて
愚かで、薄っぺらい
こいぬに近づいたりしたら
きっと、不幸にするだけ
おとなのいぬは
おまえが、敵だって
きっと、知っているよね
だから、余計近づかない
そんな気持ちだったのかな
…そして、まっしろだった
なんか、ずいぶん
綺麗ないぬだな
とは、思った
ひぃひぃっ❓
ちょっと、泣き方が⁉️
ぴんぴんぴんっ❗️
しっぽを、また
ずいぶん、ぴんとして
威勢よく降る
なんか、ワイパーみたい
意外と、変ないぬ❓
「ねえ、おとうさん
飼っていいよね⁉️」
そうだな、さすがに
こいぬを、三度も
捨てられないもんな…
