初めての記憶は、
どの記憶なんだろう
そんな風に、
考えていた
当たり前だけど、
ものごごろがついた、
そんな時の記憶
間違いなく、きっと、
この記憶だ
初めてのって、思えた
そんな記憶だった
物凄く、朧げで、
遥かに、感じた
その記憶
そうやって、
初めての記憶として、
思い始めた
そして、何度も、
変わらずに、
思い返した
そのまま、ずっと、
思い込んだ
これが、初めての記憶だ
そうやって、必ず、
繰り返し、繰り返して、
思い返して
やはり、きっと、
初めての記憶だと、
そう思っている
…叔父が、いた
自分にとっての、
死
あの結核病棟の、
打ち捨てられた
霊安所の暗がりに、
ただの、ものとして、
ただ、横たわっていた
叔父は、
優しい笑顔だった
父も、祖母も、
兄も、姉も、
姿がなくて、
その意識の映像には、
母の手先
その先の指先が、
差し伸べられて
その先には、
たまが、いた
たまの鳴き声
差し伸べられた
母の指先
たまは…
😸
子どもの自分が、
捨てたあの子
大人の自分が、
一緒に暮らした
しろや、ちび
あの子たちは、みんな
いぬだったけど、
たまは、
ねこだった
…自分の、
初めての記憶
あまり長く、暮らせなかった
叔父や、たま
叔父の笑顔
たまの鳴き声
差し伸べられている
母の、指先…