竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 10

2013年02月17日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

譬喩謌
訓 譬喩(ひゆ)の謌
寄衣
標訓 衣に寄せたる
集歌1296 今造 斑衣服 面就 吾尓所念 未服友
訓読 今造る斑らし衣(ころも)服面(きおも)就(つ)く吾に念(おも)ひは未だ着ぬとも
私訳 今作っている摺り染めの着物、その由緒ある摺り染め着物は立派な貴方に相応しいと思う。私の心に貴方の私への想いを着せるように、貴方は私が造った衣をまだ着ていませんが。
注意 原文の「面就」の「就」は一般に「影」の誤字として「面影」と表記して「面影に」と訓みます。ここでは原文のままに「就」の漢字の意味を尊重して訓んでいます。

集歌1297 紅 衣染 雖欲着 丹穂哉 人可知
訓読 紅(くれなゐ)し衣(ころも)を染めて着(き)に欲(ほ)しし丹(あけのに)し秀(ほ)や人し知るべし
私訳 紅色に衣を染め揚げて着て欲しい。そうすれば、朱の衣に映える貴方の素晴らしさを人が気づくでしょう。

集歌1298 千名人 雖云 織次 我廿物 白麻衣
試訓 千名(ちな)し人(ひと)雖(ただ)に云ふとも織りつがむ我廿物(はたもの)し白き麻(あさ)衣(きぬ)
試訳 多くの人は、私と貴方のことを噂するのですが、私は織り続けましょう。私が織る、たくさんの、貴方が云うようにどのような色にも染まる白い麻の衣を。
注意 原文の「千名人雖云織次我廿物白麻衣」については、初句を「干各」の誤字として、つぎのように改訂するものもあります。ここでは試訓を行っています。なお、伝統では初句と二句は「千名 人雖云」として「千(ちぢ)の名に人は云ふとも」と訓みます。
改訂 干各 人雖云 織次 我廿物 白麻衣
訓読 かにかくに人は云ふとも織り継がむわが機物の白き麻衣
意訳 とかく人は言うにしても、織り続けよう。私の機に織っているこの白麻の布よ。

寄玉
標訓 玉に寄せたる
集歌1299 安治村 十依海 船浮 白玉採 人所知勿
訓読 あぢ群しとをよる海し船浮けて白玉採りし人し知らゆな
私訳 あじ鴨の群れが浮かびうねる海に船を浮かべて白玉を採ったと、人に気付かせないで。

集歌1300 遠近 磯中在 白玉 人不知 見以鴨
訓読 遠近(をちこち)し磯し中なる白玉し人し知らえず見むよしもがも
私訳 あちらこちらの磯の海中にある白玉を人に知られずに、採って見たいものです。

集歌1301 海神 手纏持在 玉故 石浦廻 潜為鴨
訓読 海神(わたつみ)し手に纏き持てし玉ゆゑし磯し浦廻(うらみ)し潜(かづき)するかも
私訳 海神が手首に纏って持っている玉なので、磯浜の浦で潜水して採るのでしょう。

集歌1302 海神 持在白玉 見欲 千遍告 潜為海子
訓読 海神(わたつみ)し持てる白玉見まく欲り千遍(ちへ)し告りし潜(かづき)する海人
私訳 海神の持っている白玉を見たいと思って、何遍も宣言して潜水する海人よ。

集歌1303 潜為 海子雖告 海神 心不得 所見不云
訓読 潜(かづき)する海人(あま)し告るとも海神(わたつみ)し心し得じし見ゆといはなくに
私訳 潜水して玉を採ろうとする海人は宣言しますが、海神の許しを得ないと逢ったと宣言することは出来ません。

寄木
標訓 木に寄せたる
集歌1304 天雲 棚引山 隠在 吾忘 木葉知
試訓 天雲し棚引く山し隠りたる吾し忘れし木し葉知るらむ
試訳 天雲が棚引いている山のように、姿を隠し籠って、忘れられてしまった私。その山の木の葉のことを知っていますか。
注意 原文の「吾忘」の「忘」は、一般に「下心」の誤字として「吾下心」と表記して「わが下こころ」と訓みます。ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌1305 雖見不飽 人國山 木葉 己心 名着念
訓読 見れど飽ず人国山し木し葉し己(おの)が心し懐しみ思ふ
試訳 見つめても見飽きぬ人、その言葉のひびきのような、人国山の木の葉。その木の葉のことは、私は心の底から心惹かれて恋い焦がれます。
注意 集歌1305の歌を集歌1304の歌との組歌として鑑賞しています。

寄花
標訓 花に寄せたる
集歌1306 是山 黄葉下 花牟我 小端見 反戀
訓読 この山し黄葉(もみぢは)下(した)し花を我はつはつに見てなほ恋ひにけり
私訳 この山の黄葉の木の下に咲く花を、私はちらりと見て、反って恋しくなりました。

寄川
標訓 川に寄せたる
集歌1307 従此川 船可行 雖在 渡瀬別 守人有
訓読 この川ゆ船し行くべくあり云へど渡り瀬ごとに守(まも)る人あり
私訳 この川から船で行くことが出来ると云いますが、船で渡る瀬毎にその瀬を管理する人がいますね。貴女。

寄海
標訓 海に寄せたる
集歌1308 大海 候水門 事有 従何方君 吾率凌
訓読 大海(おほうみ)しさもらふ水門(みなと)事あらば何方(いくへ)ゆ君し吾を率(ひき)凌(の)がむ
私訳 大海を航行する船の湊で、事件が起きたらどこへ貴方は私を連れて逃れるのでしょうか。

集歌1309 風吹 海荒 明日言 應久 公随
訓読 風吹きし海し荒りし明日と言ふ久しかるべし君しまにまに
私訳 風が吹いて海が荒れて、明日逢いましょうと貴方は云う。それは待ち通しいことです。でも、貴方の御気に召すままに。

集歌1310 雲隠 小嶋神之 恐者 目間 心間哉
訓読 雲隠る小島し神しかしこけば目こそは隔(へだ)て心隔てや
私訳 雲間に隠れる吉備の小島の神が恐れ多いので逢うことは出来ないが、貴女への恋心は離れてはいません。
右十五首、柿本朝臣人麿之歌集出
注訓 右の十五首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

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