竹取翁と万葉集のお勉強

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笠朝臣金村歌集を鑑賞する  天平五年(733)の歌 贈入唐使謌

2011年01月15日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
天平五年(733)の歌 贈入唐使謌
 天平五年の遣唐使大使は、丹比真人広成です。集歌1455の歌に「公之三舶」とありますから、この歌は笠金村が丹比広成に贈った送別の歌です。同じようにこの天平五年の遣唐使大使に贈る歌として、万葉集には山上憶良が丹比広成に贈った送別の歌もあります。それが、有名な「好去好来の謌」です。
 こうして見ますと、丹比広成は万葉歌人には特別な人だったような感があります。ただ、肝心の丹比広成の歌は万葉集にはなく、漢詩集である懐風藻に三首あるだけです。

天平五年癸酉春閏三月
笠朝臣金村贈入唐使謌一首并短謌
標訓 笠朝臣金村の入唐使に贈れる謌一首并せて短謌

集歌1453 玉手次 不懸時無 氣緒尓 吾念公者 虚蝉之 世人有者 大王之 命恐 夕去者 鶴之妻喚 難波方 三津埼従 大舶尓 二梶繁貫 白浪乃 高荒海乎 嶋傳 伊別徃者 留有 吾者幣引 齊乍 公乎者将往 早還万世

訓読 玉(たま)襷(たすき) 懸(か)けぬ時なく 息の緒に 吾が思ふ公は 現世(うつせみ)の 世の人なれば 大王(おほきみ)の 命(みこと)恐(かしこ)み 夕(ゆふ)されば 鶴(たづ)が妻呼ぶ 難波潟 三津の崎より 大船に 二梶(にかじ)繁(しじ)貫(ぬ)き 白浪の 高き荒海(あるみ)を 島伝ひ い別れ行かば 留(とど)まれる 吾は幣(ぬさ)引き 斎(いは)ひつつ 公をば往かむ はや還(かへ)りませ

私訳 美しい襷を懸けない時がなく心に懸け、常に心に留める私が慕う貴方は、この世の人ですので、大王のご命令を謹んで承って、夕方になると鶴が妻を呼び鳴く難波の潟の三津の湊から、大船に二つの立派な梶を挿し入れて、白波が高く立つ荒海を島伝いに、我々と別れ出航していくと、大和に留まる私は幣を手に取り神を祝いながら、貴方は航海していく。早く、ここへ帰ってきてください。


反謌
集歌1454 波上従 所見兒嶋之 雲隠 穴氣衝之 相別去者
訓読 波の上(へ)ゆ見ゆる小島の雲(くも)隠(かく)りあな息づかし相別れなば

私訳 船が行く先の波の上に見える小島が雲に隠れる。ああ、ため息が出る。貴方と別れてしまうと。


集歌1455 玉切 命向 戀従者 公之三舶乃 梶柄母我
訓読 たまきはる命(いのち)に向ひ恋ひむゆは公が御船の梶柄(かじから)にもが

私訳 霊魂が宿る命に対して無事を祈ることは、貴方が乗る御船の行方を定める梶の柄になるようなものでしょうか。


参考歌 懐風藻より
從三位中納言丹墀真人廣成 三首
五言 遊吉野川     吉野川に遊ぶ
山水隨臨賞          山水 臨むに隨つて賞す
巖谿逐望新          巖谿 望みを逐つて新た
朝看度峰翼          朝に看る 峰を度る翼
夕翫躍潭鱗          夕に翫ぶ 潭に躍る鱗
放曠多幽趣          放曠として 幽趣多く
超然少俗塵          超然として 俗塵少し
栖心佳野域          心を佳野の域に栖ましめて
尋問美稻津          問て美稻の津を尋ねらむる

七言 吉野之作 吉野にして作る
高嶺嵯峨多奇勢        高嶺嵯峨として奇勢は多く
長河渺漫作迴流        長河渺漫として迴流を作す
鍾池超澤異凡類        鍾池超澤 凡類に異り
美稻逢仙同冰洲        美稻逢仙 冰洲に同じ

五言 述懷 懷ひを述ぶ
少無螢雪志          少くして螢雪の志無く
長無錦綺工          長なりて錦綺の工無し
適逢文酒會          適に文酒の會に逢ひ
終恥不才風          終に不才の風を恥づ


 本来は続けて笠朝臣麿の歌を鑑賞するのが良いのですが、笠金村に強く関係すると思われるために車持千年の歌を笠金村歌集関連歌として、次回からしばらく続けさせて頂きます。

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