竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集 集歌1739から集歌1743まで

2021年04月27日 | 新訓 万葉集巻九
万葉集 集歌1739から集歌1743まで

反謌
集歌一七三九 
原文 金門尓之 人乃来立者 夜中母 身者田菜不知 出曽相来
訓読 金門(かなと)にし人の来(き)立(た)てば夜中(やなか)にも身はたな知らず出(い)でてぞ逢ひける
私訳 家の立派な門に人がやって来て立つと、夜中でも自分の都合を考えないで出て行って尋ねてきた人に逢ったことだ。

詠水江浦嶋子一首并短謌
標訓 水江(みずのえ)の浦嶋の子を詠める一首并せて短歌
集歌一七四〇 
原文 春日之 霞時尓 墨吉之 岸尓出居而 釣船之 得乎良布見者 古之 事曽所念 水江之 浦嶋兒之 堅魚釣 鯛釣矜 及七日 家尓毛不来而 海界乎 過而榜行尓 海若 神之女尓 邂尓 伊許藝多 相誂良比 言成之賀婆 加吉結 常代尓至 海若 神之宮乃 内隔之 細有殿尓 携 二人入居而 耆不為 死不為而 永世尓 有家留物乎 世間之 愚人乃 吾妹兒尓 告而語久 須臾者 家歸而 父母尓 事毛告良比 如明日 吾者来南登 言家礼婆 妹之答久 常世邊 復變来而 如今 将相跡奈良婆 此篋 開勿勤常 曽己良久尓 堅目師事乎 墨吉尓 還来而 家見跡 宅毛見金手 里見跡 里毛見金手 恠常 所許尓念久 従家出而 三歳之間尓 垣毛無 家滅目八跡 此筥乎 開而見手歯 如本 家者将有登 玉篋 小披尓 白雲之 自箱出而 常世邊 棚引去者 立走 叨袖振 反側 足受利四管 頓 情消失奴 若有之 皮毛皺奴 黒有之 髪毛白斑奴 由奈由奈波 氣左倍絶而 後遂 壽死祁流 水江之 浦嶋子之 家地見
訓読 春し日し 霞(かす)める時に 墨吉(すみのへ)し 岸に出で居(い)て 釣船し とをらふ見れば 古(いにしへ)し 事ぞ思ほゆる 水江(みづのへ)し 浦島(うらしま)し子し 堅魚(かつを)釣り 鯛釣り矜(ほこ)り 七日(なぬか)まで 家にも来ずて 海境(うなさか)を 過ぎて漕ぎ行くに 海若(わたつみ)し 神し女(をとめ)に たまさかに い漕ぎ向ひ 相(あひ)眺(あとら)ひ 言(こと)し成しかば かき結び 常世(とこよ)に至り 海若(わたつみ)し 神し宮(みや)の 内し重(へ)し 妙なる殿(あらか)に 携(たづさ)はり ふたり入り居(ゐ)て 老(おひ)もせず 死にもせずして 永き世に ありけるものを 世間(よのなか)し 愚人(おろかひと)の 吾妹子に 告(つ)げて語らく しましくは 家し帰りて 父母に 事も告(の)らひ 明日(あす)しごと 吾は来(き)なむと 言ひければ 妹し答へく 常世辺(とこよへ)し また帰り来て 今しごと 逢はむとならば この篋(くしげ) 開くなゆめと そこらくに 堅(かた)めし言(こと)を 墨吉(すみのへ)に 還り来(きた)りて 家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて 恠(あや)しみと そこに思はく 家ゆ出でて 三歳(みとせ)し間(ほど)に 垣もなく 家滅(う)せめやと この箱を 開きて見てば もとし如(ごと) 家はあらむと 玉篋(たまくしげ) 少し開くに 白雲し 箱より出でて 常世辺(とこよへ)に 棚引(たなび)きぬれば 立ち走り 叫び袖振り 反(こひ)側(まろ)び 足ずりしつつ たちまちに 情(こころ)消失(かう)せぬ 若ありし 膚も皺(しわ)みぬ 黒(ぐろ)かりし 髪も白(しろ)けぬ ゆなゆなは 気(き)さへ絶えて 後(のち)つひに 命死にける 水江(みづのへ)し 浦島し子し 家地(いへところ)見ゆ
私訳 春の日の霞んでいる時に、住吉の岸に出て佇み、釣舟が波に揺れているのを見ると、遠い昔のことが偲ばれる。水江の浦の島子が、鰹を釣り、鯛を釣って皆にその腕を誇り、七日間も家に帰らず、海の境を越えて漕いで行くと、海神の神の娘に偶然行き遭って、互いに求め合い、愛し合う約束が出来たので、夫婦の契りを結び、常世に至り、海神の宮殿の奥深くの立派な御殿に、手を取り合って二人で入って暮した。そうして老いもせず、死にもせず、永遠に生きていられたというのに、人の世の愚か者が妻に告げて言うことには、すこしだけ家に帰って、父と母に事情を告げて、明日にでも帰って来ようと云うので、妻が言うことには、この常世の国の方にまた帰って来て、今のように夫婦で暮そうと言うのなら、この箱をあけていけません、きっと。と、そんなにも堅くした約束を、島子は住吉に帰って来て、家はどこかと見るけれども家は見つからず、里はどこかと見るけれども里は見当たらず、不思議がって、そこで思案することには、家を出て三年の間に、垣根も無く家が消え失せてしまうとはと、この箱を開けてみれば、昔のように家はあるだろうと、玉の箱を少し開けると、白い雲が箱から出て来て、常世の国の方まで棚引いて行ったので、立ち走り、叫びながら袖を振り、転げ回り、地団駄を踏みながら、すぐに気を失ってしまった。島子の若かった肌も皺ができ、黒かった髪の毛も白くなった。後々は息さえ絶え絶えになり、挙句の果て死んでしまったという。その水江の浦の島子の家のあったところを見たよ。

反謌
集歌一七四一 
原文 常世邊 可住物乎 劔刀 己之行柄 於曽也是君
訓読 常世辺(とこのへ)し住むべきものを剣太刀(つるぎたち)汝(な)し心から鈍(おそ)やこの君
私訳 常世の国に住むべきはずを、鋭い剣太刀とは違いお前は心根から鈍い奴、ほんにこの人は。

見河内大橋獨去娘子謌一首并短謌
標訓 河内(かふち)の大橋を獨り去(ゆ)く娘子(をとめ)を見たる謌一首并せて短謌
集歌一七四二 
原文 級照 片足羽河之 左丹塗 大橋之上従 紅 赤裳十引 山藍用 摺衣服而 直獨 伊渡為兒者 若草乃 夫香有良武 橿實之 獨歟将宿 問巻乃 欲我妹之 家乃不知久
訓読 級(しな)照(て)る 片足羽(かたしは)川(かは)し さ丹(に)塗(ぬ)りし 大橋し上(へ)ゆ 紅(くれなゐ)し 赤裳裾引き 山(やま)藍(あゐ)もち 摺(す)れる衣(きぬ)着て ただ独り い渡らす子は 若草の 夫(せを)かあるらむ 橿(かし)し実し 独りか寝(ぬ)らむ 問はまくの 欲(ほ)しき我妹(わぎも)し 家の知らなく
私訳 光輝く片足羽川の美しく丹に塗られた大橋の上を、紅色の赤裳を裾に着け山藍で染めた緑色の上衣を着て、ただ独りで渡って行く娘(こ)は、若々しい夫がいるのだろうか、それとも、橿の実のように一つ身で、夜を過すのだろうか。名を聞いてみたいような、私が恋する貴女の氏・素性を知らない。

反謌
集歌一七四三 
原文 大橋之 頭尓家有者 心悲久 獨去兒尓 屋戸借申尾
訓読 大橋し頭(つめ)に家(へ)あらば心(うら)悲(かな)く独り去(い)く子に屋戸(やと)借りましを
私訳 もし、大橋のほとりにあの娘の家があるのなら、何か、もの悲しげに独り去っていくあの娘に、今宵の宿を借りるのですが。

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