竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 最終回

2013年06月30日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

集歌3417 可美都氣努 伊奈良能奴麻乃 於保為具左 与曽尓見之欲波 伊麻許曽麻左礼
訓読 上野(かみつけ)ぬ伊奈良(いなら)の沼の大藺草(おほゐくさ)外(よそ)に見しよは今こそまされ
私訳 上野の伊奈良の沼の大藺草のように近寄れず遠くから見るだけの時より、恋の苦しみは身近に逢った後の今の方がひどい。
柿本朝臣人麿歌集出也
注訓 柿本朝臣人麿の歌集に出るなり

集歌3441 麻等保久能 久毛為尓見由流 伊毛我敝尓 伊都可伊多良武 安由賣安我古麻
訓読 ま遠くの雲居に見ゆる妹が家(へ)にいつか至らむ歩め吾(あ)が駒
私訳 はるか遠くの雲が懸かって見える愛しい貴女の家に、そのうちに着くだろう。歩め、わが駒よ。
柿本朝臣人麿歌集曰、等保久之弖 又曰、安由賣久路古麿
柿本朝臣人麿の歌集に曰はく、
訓読 遠くして 又曰はく、歩め黒駒
私訳 遠くして、また云うには、歩め、黒駒。
参考歌
集歌1271 遠有而 雲居尓所見 妹家尓 早将至 歩黒駒
訓読 遠(とほ)ありに雲居にそ見ゆ妹が家(へ)に早く至らむ歩め黒駒

集歌3470 安比見弖波 千等世夜伊奴流 伊奈乎加毛 安礼也思加毛布 伎美末知我弖尓
訓読 相見ては千年(ちとせ)や去(ゐ)ぬる否(いな)をかも吾(あれ)や然(しか)思(も)ふ君待ちがてに
私訳 貴方に抱かれてから、もう、千年も経ったのでしょうか。違うのでしょう。でも、私はそのように感じます。貴方を待ちかねて。
柿本朝臣人麿歌集出也
注訓 柿本朝臣人麿の歌集に出るなり
注意 左注に「柿本朝臣人麿歌集出也」とありますが、巻十一に載る集歌2539の歌では人麻呂歌集の歌との記述はありません。人麻呂歌集の歌としては、集歌2381の歌が同じ趣旨のものです。万葉集の歌を理解する上で、万葉集の編者が巻十一に載る無名歌の一部を人麻呂歌集の歌と理解していたと思わせる貴重な注訓です。
参考歌
集歌2539 相見者 千歳八去流 否乎鴨 我哉然念 待公難尓
訓読 相見ては千歳(ちとせ)や去(い)ぬる否(いな)をかも我(われ)や然(しか)念(も)ふ公(きみ)待ちかてに

集歌3481 安利伎奴乃 佐恵々々之豆美 伊敝能伊母尓 毛乃伊波受伎尓弖 於毛比具流之母
訓読 あり衣(きぬ)のさゑさゑしづみ家の妹に物言はず来(き)にて思ひ苦しも
私訳 美しい衣を藍染めで藍瓶に沈めるように心が沈み、私の妻である貴女を後に置いたまま声も掛けずに出立して来て、後悔しています。
柿本朝臣人麿歌集中出 見上已説也
注訓 柿本朝臣人麿の歌集の中に出(い)ず 見ること上にすでに説きぬ
参考歌
集歌503 珠衣乃 狭藍左謂沉 家妹尓 物不語来而 思金津裳
訓読 玉衣(たまきぬ)のさゐさゐしづみ家(へ)し妹に物言はず来しに思ひかねつも
私訳 美しい衣を藍染めで藍瓶に沈めるように心が沈み、私の妻である貴女を後に置いたまま声を掛けずに出立して来て、後悔しています。

集歌3490 安都左由美 須恵波余里祢牟 麻左可許曽 比等目乎於保美 奈乎波思尓於家礼
訓読 梓弓(あづさゆみ)末(すゑ)は寄り寝む現在(まさか)こそ人目を多み汝(な)を間(はし)に置けれ
私訳 梓弓の末のように末には寄り添って寝よう。ただ今は、人目が多いのでお前を知り合いと恋人の間の中途半端にしているけど。
柿本朝臣人麿歌集出也
注訓 柿本朝臣人麿の歌集に出るなり
注意 左注に「柿本朝臣人麿歌集出也」とありますが、この歌以外に他に載るものはありません。


万葉集 巻十五より

集歌 3606 多麻藻可流 乎等女乎須疑弖 奈都久佐能 野嶋我左吉尓 伊保里須和礼波
訓読 玉藻刈る乎等女(をとめ)を過ぎて夏草の野島が崎に廬りす吾(わ)れは
私訳 美しい藻を刈る乙女を行き過ぎて、夏草の茂る野島の崎に船宿りする我々は。
柿本朝臣人麿歌曰、敏馬乎須疑弖
左注 柿本朝臣人麿の歌に曰はく、敏馬を過ぎて
又曰、布祢知可豆伎奴
左注 また曰はく、舟近づきぬ
参考歌
集歌250 珠藻刈 敏馬乎過 夏草之 野嶋之埼尓 舟近著奴
訓読 珠藻刈る駿馬を過ぎて夏草し野島し崎に舟近づきぬ

集歌 3607 之路多倍能 藤江能宇良尓 伊時里須流 安麻等也見良武 多妣由久和礼乎
訓読 白栲の藤江の浦に漁りする海人(あま)とや見らむ旅行く吾(あ)れを
私訳 白栲を造る葛(ふぢ)の、その藤江の浦で漁をする海人だろうかと思うだろう。旅を行く私を。
柿本朝臣人麿歌曰、安良多倍乃
左注 柿本朝臣人麿の歌に曰はく、荒栲の
又曰、須受吉都流安麻登香見良武
左注 また曰はく、鱸釣る海人とか見らむ
参考歌
集歌252 荒栲 藤江之浦尓 鈴寸釣 白水郎跡香将見 旅去吾乎
訓読 荒栲し藤江し浦に鱸釣る白水郎(あま)とか見らむ旅行くわれを

集歌 3608 安麻射可流 比奈乃奈我道乎 孤悲久礼婆 安可思能門欲里 伊敝乃安多里見由
訓読 天離る鄙の長道を恋ひ来れば明石の門(と)より家のあたり見ゆ
私訳 大和の京から離れた田舎からの長い道を大和の国を恋しく思って帰って来ると、明石の海峡から大和の家方向が見えました。
柿本朝臣人麿歌曰、夜麻等思麻見由
左注 柿本朝臣人麿の歌に曰はく、大和島見ゆ
参考歌
集歌255 天離 夷之長道従 戀来者 自明門 倭嶋所見
訓読 天離る夷し長道ゆ恋ひ来れば明石し門(と)より大和島そ見ゆ

集歌 3609 武庫能宇美能 尓波余久安良之 伊射里須流 安麻能都里船 奈美能宇倍由見由
訓読 武庫の海の庭よくあらし漁(いざり)する海人(あま)の釣舟波の上ゆ見ゆ
私訳 武庫の海の海上は穏やからしい。出漁している海人の釣船が波の上を見え隠れして行くのが見える。
柿本朝臣人麿歌曰、氣比乃宇美能
左注 柿本朝臣人麿の歌に曰はく、飼飯の海の
又曰、可里許毛能美多礼弖出見由安麻能都里船
左注 また曰はく、刈薦の乱れて出づ見ゆ海人の釣船
参考歌
集歌256 飼飯海乃 庭好有之 苅薦乃 乱出所見 海人釣船
訓読 飼飯し海の庭好くあらし刈薦の乱れ出づそ見し海人し釣船

集歌 3610 安胡乃宇良尓 布奈能里須良牟 乎等女良我 安可毛能須素尓 之保美都良武賀
訓読 安胡の浦に舟乗りすらむ娘子(をとめ)らが赤裳の裾に潮満つらむか
私訳 安胡の浦で遊覧の船乗りをしているだろう官女の人たちの赤い裳の裾に潮の飛沫がかかって、すっかり濡れているでしょうか。
柿本朝臣人麿歌曰、安美能宇良
左注 柿本朝臣人麿の歌に曰はく、安美の浦
又曰、多麻母能須蘇尓
左注 また曰はく、珠裳の裾に
参考歌
集歌40 鳴呼之浦尓 船乗為良武 感嬬等之 珠裳乃須十二 四寶三都良武香
訓読 鳴呼し浦に船乗りすらむ感嬬らし珠裳の裾に潮満つらむか

七夕歌一首
標訓 七夕の歌一首
集歌 3611 於保夫祢尓 麻可治之自奴伎 宇奈波良乎 許藝弖天和多流 月人乎登古
訓読 大船に真楫(まかぢ)繁貫(しじぬ)き海原(うなはら)を漕ぎ出て渡る月人(つきひと)壮士(をとこ)
私訳 大船の艫に立派な楫を刺し貫いて海原を漕ぎ出して、天の河を渡る月の船に乗る勇者よ。
右、柿本朝臣人麿歌
左注 右は、柿本朝臣人麿の歌


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