竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 13

2013年03月10日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

詠鳴鹿謌一首并短謌
標訓 鳴く鹿を詠める歌一首并せて短歌
集歌1761 三諸之 神邊山尓 立向 三垣乃山尓 秋芽子之 妻巻六跡 朝月夜 明巻鴦視 足日木乃 山響令動 喚立鳴毛

訓読 三諸(みもろ)し 神辺し山に 立ち向ふ 三垣の山に 秋萩し 妻し枕かむと 朝月夜 明けまく惜しみ あしひきの 山彦とよめ 呼び立て鳴くも

私訳 三諸の神辺山に向い立つ三垣山に、秋萩に雄鹿が妻を手枕しようとして、朝の月夜が明けるのが惜しくて、葦や桧の茂る山に山彦よ響け。再び、雄鹿が妻を呼び立てて鳴いている。

反歌
集歌1762 明日之夕 不相有八方 足日木之 山彦令動 呼立哭毛
訓読 明日し宵(よひ)逢はざらめやもあしひきし山彦(やまひこ)とよめ呼び立て鳴くも
私訳 明日の宵に逢えないことはない。葦や桧の茂る山に山彦よ響け。再び、雄鹿が妻を呼び立てて鳴いている。
右件謌、或云、柿本朝臣人麻呂作。
注訓 右の件の歌は、或は云はく「柿本朝臣人麻呂の作なり」といへり。


獻弓削皇子謌一首
標訓 弓削皇子に献(たてまつ)れる歌一首
集歌1773 神南備 神依板尓 為杉乃 念母不過 戀之茂尓
訓読 神南備(かむなび)し神依(より)板(いた)にする杉の想ひも過ぎず恋ししげきに
私訳 神南備の神が依る板にする杉の、過ぎる想いも過ぎるとは思わないほどです。この恋心の激しさに。

獻舎人皇子謌二首
標訓 舎人皇子に献(たてまつ)れる歌二首
集歌1774 垂乳根乃 母之命乃 言尓有者 年緒長 憑過武也
訓読 たらちねの母し命(みこと)の言にあれば年し緒長く憑(たの)め過ぎむや
私訳 乳を与えてくれた実母の大切な命令であれば、長い年月をただ頼りにさせたままで済ますでしょうか。

集歌1775 泊瀬河 夕渡来而 我妹兒何 家門 近春二家里
訓読 泊瀬川夕渡り来に吾妹兒(わぎもこ)が家し門し近づきにけり
私訳 泊瀬川を夕刻に渡って来ると、恋しい貴女の子供が待つ家の門が近付いてきた。
右三首、柿本朝臣人麻呂之歌集出。
注訓 右の三首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。

与妻謌一首
標訓 妻に与へたる歌一首
集歌1782 雪己曽波 春日消良米 心佐閇 消失多列夜 言母不往来
訓読 雪こそば春日(はるひ)消(け)ゆらめ心さへ消(き)え失せたれや言(こと)も通はぬ
私訳 積もった雪は春の陽光に当たって解けて消えるように、貴女は私への想いも消え失せたのでしょうか。私を愛していると云う誓いの歌もこの春になっても遣って来ません。

妻和謌一首
標訓 妻の和(こた)へたる歌一首
集歌1783 松反 四臂而有八羽 三栗 中上不来 麻呂等言八子
訓読 松(まつ)返(かへ)りしひにあれやは三栗(みつくり)し中(なか)上(のぼ)り来(こ)ぬ麻呂といふ奴(やつこ)
私訳 松の緑葉は生え変わりますが、貴方は体が不自由になったのでしょうか。任期の途中の三年目の中上がりに都に上京して来ない麻呂という奴は。
貴方が便りを待っていた返事です。貴方が返事を強いたのですが、任期の途中の三年目の中の上京で、貴方はまだ私のところに来ません。麻呂が言う八歳の子より。
右二首、柿本朝臣人麻呂之謌集中出。
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麻呂の歌集の中に出づ。

宇治若郎子宮所謌一首
標訓 宇治若郎子(わくご)の宮所の歌一首
集歌1795 妹等許 今木乃嶺 茂立 嬬待木者 古人見祁牟
訓読 妹らがり今木の嶺に茂り立つ嬬松し木は古人見けむ
私訳 恋人の許に今やって来る。その言葉のひびきのような、今木の嶺に茂り立つ、私の愛しい人が待つと云うような、嶺の端(つま)にある松の木よ。お前は昔、宇治若郎子が君と妻を思い梓と檀の木を切るのを逡巡したのを見たでしょうか。

紀伊國作謌四首
標訓 紀伊国にして作れる歌四首
集歌1796 黄葉之 過去子等 携 遊磯麻 見者悲裳
訓読 黄葉(もみちは)し過ぎにし子らと携(たづさ)はり遊びし礒を見れば悲しも
私訳 黄葉の時に逝ってしまった貴女と手を携えて遊んだ磯を今独りで見ると悲しいことです。

集歌1797 塩氣立 荒磯丹者雖在 往水之 過去妹之 方見等曽来
訓読 潮気(しほけ)立つ荒礒(ありそ)にはあれど往(い)く水し過ぎにし妹し形見とそ来し
私訳 潮気が立つ何も無い荒磯ですが、磯を洗い流れ往く水のように過ぎ去った貴女との思い出と思ってここにやって来ました。

集歌1798 古家丹 妹等吾見 黒玉之 久漏牛方乎 見佐府下玉
訓読 古(いにしへ)に妹(いも)と吾(わ)が見しぬばたまし黒牛潟(くろうしがた)を見れば寂(さぶ)しも
私訳 昔に貴女と私が人目を忍んで寄り添って見た漆黒の黒牛潟を、独りでこうして見ていると寂しいことです。

集歌1799 津嶋 磯之裏未之 真名仁文 尓保比去名 妹觸險
訓読 玉津島(たまつしま)礒し浦廻(うらみ)し真砂(まなご)にも色付(にほひ)て行かな妹し触れけむ
私訳 玉津嶋の磯の砂浜の真砂にも偲んでいきましょう。貴女がこのように触れた砂です。
右五首、柿本朝臣人麻呂之謌集出。
注訓 右の五首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。

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