竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 14

2013年03月17日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

春雜謌
標訓 春の雜歌(くさぐさのうた)
集歌1812 久方之 天芳山 此夕 霞霏微 春立下
訓読 ひさかたし天つ香具山このゆふべ霞たなびく春立つらしも
私訳 遥か彼方の天の香具山よ、この夕べに香具山の一帯に霞が朧げに棚引く、春になったらしい。

集歌1813 巻向之 檜原丹立流 春霞 鬱之思者 名積米八方
訓読 巻向し檜原に立てる春霞おほし思(おも)はばなづみ来めやも
私訳 巻向の檜原に立つ春霞のようにぼんやりあの人を思うと心苦しくなるでしょう。

集歌1814 古 人之殖兼 杉枝 霞霏微 春者来良芝
訓読 古(いにしへ)し人し殖ゑけむ杉し枝し霞たなびく春は来ぬらし
私訳 昔の人(須佐之男命)が殖えた立派な杉の枝に霞が棚引く。春は来たようだ。

集歌1815 子等我手乎 巻向山丹 春去者 木葉凌而 霞霏微
訓読 子らが手を巻向山に春されば木し葉しのぎに霞たなびく
私訳 あの子が私の手を巻く、その巻向山に春がやって来ると木の葉を隠すように霞が棚引く。

集歌1816 玉蜻 夕去来者 佐豆人之 弓月我高荷 霞霏微
訓読 玉かぎる夕さり来れば猟(さつ)人(ひと)し弓月(ゆつき)が嶽(がた)に霞たなびく
私訳 トンボ玉のようなき光が移りゆく夕べになると、狩人が持つ弓の、その弓のように稜線が照る弓月が嶽に霞がおぼろに棚引く。

集歌1817 今朝去而 明日者来牟等 云子鹿丹 旦妻山丹 霞霏微
訓読 今朝(けさ)去(い)きに明日は来(き)なむと云(い)ひし子鹿(こ)に朝妻山(あさづまやま)に霞たなびく
私訳 今朝はこのように貴方は行き去っても、明日はかならず来てくださいと云った、かわいい貴女の朝妻山に霞が棚引く。

集歌1818 子等名丹 關之宜 朝妻之 片山木之尓 霞多奈引
訓読 子らし名に懸(か)けし宜(よろ)しき朝妻(あさづま)し片山(かたやま)岸に霞たなびく
私訳 愛しい貴女の名前を表すのに相応しい朝妻の片山の岸に霞が棚引く。
右、柿本朝臣人麿謌集出。
注訓 右は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。


春相聞
標訓 春の相聞
集歌1890 春日野 犬鶯 鳴別 春眷益間 思御吾
試訓 春日(はるひ)野し犬鶯(おほよしきり)し鳴き別れ春眷(み)ます間(ま)も思ほせわれを
試訳 春の日の輝く野で犬鶯が鳴いて飛び去るように、過ぎゆく春をしみじみ懐かしく思う、その折々にも思いだして下さい、私を。
注意 一般に訓読み万葉集では「犬鶯」を「友鶯」の誤りとします。そこから「友鶯の鳴き別れ」の言葉が有名です。この「友鶯」を採用した結果、新たに歌意を創るために原文の「春眷益間」から「春」の字を削ります。その改訂が次です。
改訂 春日野 友鶯 鳴別 眷益間 思御吾
訓読 春日野の友鶯の鳴き別れ帰ります間も思ほせわれを
意訳 春日野の妻を求めて鳴く鶯のように啼き別れて、お帰りになる間でも、お思いください。私のことを。

集歌1891 冬隠 春開花 手折以 千遍限 戀渡鴨
訓読 冬ごもり春咲く花を手折り持ち千遍し限り恋ひ渡るかも
私訳 冬が春の日に隠れ、その春の咲く花を手で折って持って無限の思いで貴女に恋い焦がれるでしょう。

集歌1892 春山 霧惑在 鶯 我益 物念哉
訓読 春山し霧し惑へる鶯しわれにまさりて物思はめや
私訳 春山の霧に相手を求めてあちこちと飛び迷っている鶯も、私以上に相手のことを想っているでしょうか。

集歌1893 出見 向岡 本繁 開在花 不成不在
訓読 出でて見る向(むこ)つし岡し本繁く咲きたる花し成らずは在らし
私訳 家から出て見る向かいの岡の木の根元にたくさん咲く花に実が実るように、この恋の実が実らないことは決してありません。

集歌1894 霞發 春永日 戀暮 夜深去 妹相鴨
訓読 霞立つ春し長き日恋暮し夜し更けむる妹逢へるかも
私訳 霞が立つ春の長い日を貴女に恋い焦がれて暮らし、夜が更けてくると夢に貴女に逢えるでしょう。

集歌1895 春去 先三枝 幸命在 後相 莫戀吾妹
訓読 春さればまづ三枝(さきくさ)し幸くあらば後(ゆり)にも逢はむな恋そ吾妹(わぎも)
私訳 春がやって来ると、まず咲く、その言葉のひびきではないが、率川の三枝神社の百合が咲くように、その言葉のひびきではありませんが、幸(さく)があるならば、また後(ゆり)に逢いましょう。恋しい私の貴女。
注意 原文の「三枝」については、「ミツマタ」、「ユリ」等の諸説がありますが、ここでは言葉遊びからも「ユリ」を採用しています。
右、柿本朝臣人麿謌集出。
注訓 右は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。


コメント   この記事についてブログを書く
« 今日のみそひと歌 金曜日 | トップ | 今日のみそひと歌 月曜日 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集」カテゴリの最新記事