竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 20

2013年04月28日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

集歌2415 處女等乎 袖振山 水垣 久時由 念来吾等者
訓読 処女(をとめ)らを袖(そで)布留山(ふるやま)し瑞垣(みづかき)し久しき時ゆ思ひけり吾は
私訳 母親と共に住む乙女たちが神寄せの袖を振る布留山の瑞垣の久しい時よ。昔を思い出したよ。私は。

集歌2416 千早振 神持在 命 誰為 長欲為
訓読 ちはやぶる神し持たせる命をば誰がためにかも長く欲(ほ)りせむ
私訳 岩戸を開いて現われた神が授けたこの私の命を、誰のためにこのように長く久しくありたいと願いましょうか。

集歌2417 石上 振神杉 神成 戀我 更為鴨
訓読 石上(いそのかみ)布留(ふる)神杉(かむすぎ)し神さぶる恋をも我(われ)し更(さら)にするかも
私訳 石上の神の坐ます布留山の神杉。その神が祝福する恋を私は猶一層にするでしょう。

集歌2418 何 名負神 幣饗奉者 吾念妹 夢谷見
訓読 如何(いか)ならむ名し負(を)ふ神し手向(たむけ)けせば吾(わ)が思(も)ふ妹(いも)し夢しだに見む
私訳 何という名前の神様に祈ると、私が恋い慕う貴女を夢の中だけでも逢えるのでしょうか。

集歌2419 天地 言名絶 有 汝吾 相事止
訓読 天地(あまつち)し言ふ名し絶えてあらばこそ汝(いまし)と吾(われ)し逢ふことやまめ
私訳 天地と言う名前の世界が無くなってしまったならば、貴女と私とがこのように逢うことも無くなるでしょう。

集歌2420 月見 國同 山隔 愛妹 隔有鴨
訓読 月見れば国し同じし山(やま)隔(へ)なり愛(うつく)し妹し隔(へ)なりたるかも
私訳 月を見るとお互いに住む国は一緒ですが、山が隔てているので愛しい貴女はその山の向こうに隔てられている。

集歌2421 参路者 石蹈山 無鴨 吾待公 馬爪盡 (参は、糸+翏の当字)
訓読 参(まつ)る路(じ)は岩踏む山しなくもがも吾(われ)し待つ君(きみ)馬(むま)し躓(つまづ)くに
私訳 貴方がやって来る路は岩だらけの山がなければよいのですが、私が待つ貴方の馬が躓いてしまう。

集歌2422 石根蹈 重成山 雖不有 不相日數 戀度鴨
訓読 岩根踏みへなれる山しあらねども逢はぬ日まねみ恋ひわたるかも
私訳 岩道を踏み岩の重なるような険しい山は無いのですが、貴女に会わないが日が多いので逢うことが恋しくなっています。

集歌2423 路後 深津嶋山 暫 君目不見 苦有
訓読 道し後(しり)深津(ふかつ)島山(しまやま)暫(しまし)くも君し目見ずば苦しかりけり
私訳 近江路の奥に湊がある島のような高島の山。その言葉のひびきではありませんが、少しの間も、貴方と直接会っていないと心苦しいものです。

集歌2424 紐鏡 能登香山 誰故 君来座在 紐不開寐
訓読 紐鏡(ひもかがみ)能登香(のとか)し山し誰がゆゑし君来ませるに紐解(と)かず寝(ね)む
私訳 紐を通して吊るして懸ける真澄鏡。その紐を「莫解か(なとくか)」と云う言葉のひびきのような、能登川の香しい高円山よ。誰のためでしょうか。鏡の中に貴方の姿が見えるのに、契りの衣の紐を解かずに今日は独りで寝ましょう。

集歌2425 山科 強田山 馬雖在 歩吾来 汝念不得
訓読 山科(やましな)し木幡(こはた)し山し馬あれど歩(かち)より吾(わ)が来(こ)し汝(な)し思(も)ひかねて
私訳 近江路の山科の木幡の山を馬も越えると云うが徒歩で私は来ました。貴女を慕うだけでは逢えないので。

集歌2426 遠山 霞被 益遠 妹目不見 吾戀
訓読 遠山(とほやま)し霞おふひていや遠(とほ)し妹し目見ずば吾(われ)恋ひにけり
私訳 遠くの山波に霞が懸かって、景色がおぼろげに遥かに遠いと思う。そのように関係が遠のき、貴女と直接に逢えないと。私は一層貴女に恋い焦がれます。

集歌2427 是川 瀬ゞ敷浪 布ゞ 妹心 乗在鴨
訓読 この川し瀬々(せせ)ししき波しくしくし妹し心し乗りしけるかも
私訳 この川の瀬々に立つ折り重なるような波が、布が波打つように貴女への気持ちは私の心の中に乗り被さったようです。
注意 原文の「是川」を「うぢかは」と訓むものもありますが、これは集歌2427の歌から集歌2430の歌までの四首が、同時に詠われたとの推定の下に集歌2428の歌の「宇治度」の表記からの推定に因ります。ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌2428 千早人 宇治度 速瀬 不相有 後我孋
訓読 ちはや人宇治し渡りし瀬し早み逢はずこそあれ後(のち)し我(あ)が孋(つま)
私訳 勇壮な物部の八十氏の、その宇治川の渡りの瀬の流れが速いので、渡ることが出来なくてこの度は逢えないのですが、これからも貴女は私の妻です。

集歌2429 早敷哉 不相子故 徒 是川瀬 裳欄潤
訓読 愛(は)しきやし逢はぬ子ゆゑしいたづらしこの川し瀬し裳裾(もすそ)濡らしつ
私訳 ああ、いおしい。逢えない立派な貴方のために、空しくこの川の瀬に私の裳の裾を濡らしました。
注意 原文の「不相子故」と「裳欄潤」とで表記される「子」と「裳」の字で、男歌か、女歌かの議論があります。ここでは「子」を女性と限定する必要が無い立場で訓んでいます。

集歌2430 是川 水阿和逆纏 行水 事不反 思始為
訓読 この川し水泡(みなは)逆巻(さかま)き行く水し事(こと)し反(かへ)らず思ひ始(そ)めてし
私訳 この川の激しい流れで水泡が逆巻いて流れて行く、その流れが元に戻ることがないような、そのような恋心を私は貴女に持ち始めました。


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