竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 2

2012年12月23日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

幸干伊勢國時、留京柿本朝臣人麿作歌
標訓 伊勢国に幸(いでま)しし時に、京(みやこ)に留まれる柿本朝臣人麿の作れる歌
集歌40 鳴呼之浦尓 船乗為良武 感嬬等之 珠裳乃須十二 四寶三都良武香 (感は女+感の当字)
試訓 鳴呼見(あみ)し浦に船乗りすらむ官女(おとめ)らし珠裳の裾に潮(しほ)満つらむか
試訳 あみの浦で遊覧の船乗りをしているでしょう官女の人たちの美しい裳の裾に、潮の飛沫がかかってすっかり濡れているでしょうか。

集歌41 釵著 手節乃埼二 今今毛可母 大宮人之 玉藻苅良哉
試訓 くしろ着く手節(たふせ)の崎に今今(いま)もかも大宮人し玉藻刈るらむ
試訳 美しいくしろを手首に着ける手節の岬で、ただ今も、あの大宮人の麻續王が足を滑らせて玉藻を刈ったように、慣れない磯の岩に足を滑らせて玉藻を刈っているのでしょうか。

集歌42 潮左為二 五十等兒乃嶋邊 榜船荷 妹乗良六鹿 荒嶋廻乎
試訓 潮騒(しほさゐ)に伊良虞(いらご)の島辺(しまへ)漕ぐ船に妹乗るらむか荒き島廻(しまみ)を
試訳 潮騒の中で伊良湖水道の島の海岸を漕ぐ船に私の恋人は乗っているのでしょうか。あの波の荒い島のまわりを。


軽皇子宿干安騎野時、柿本朝臣人麿作歌
標訓 軽皇子の安騎の野に宿(やど)りしし時に、柿本朝臣人麿の作れる歌
集歌45 八隅知之 吾大王 高照 日之皇子 神長柄 神佐備世須登 太敷為 京乎置而 隠口乃 泊瀬山者 真木立 荒山道乎 石根 禁樹押靡 坂鳥乃 朝越座而 玉限 夕去来者 三雪落 安騎乃大野尓 旗須為寸 四能乎押靡 草枕 多日夜取世須 古昔念而

訓読 やすみしし わご大王(おほきみ) 高照らす 日し皇子 神ながら 神さびせすと 太敷かす 京(みやこ)を置きて 隠口(こもくり)の 泊瀬の山は 真木し立つ 荒山道を 石(いは)し根し 禁樹(さへき)おしなべ 坂鳥の 朝越えまして 玉かぎる 夕さりくれば み雪降る 阿騎の大野に 旗(はた)薄(すすき) 小竹(しの)をおしなべ 草枕 旅宿りせす 古(いにしへ)思ひて

私訳 天下をあまねく承知される我が大王の君の天上までも照らし上げる日の御子が神でありながら神らしく統治なされている京を後方に置いて、山に籠る入り口の泊瀬の山には立派な木が立っている険しい山道を行く手をさえぎる大岩や木々を押し倒して坂を鳥が朝に越えるようにして来て、蜻蛉玉のように夕日の光が移り変わる夕刻も過ぎると、雪が降る阿騎の大野に薄や篠笹を押し倒して草を枕にするような旅の宿りをする。昔の出来事を思い出して。

短歌
集歌46 阿騎乃尓 宿旅人 打靡 寐毛宿良自八方 古部念尓
訓読 阿騎の野に宿(やど)る旅人打ち靡き眼(い)も寝(ぬ)らしやも古(いにしへ)思ふに
私訳 阿騎の野に宿る旅人は薄や篠笹のように体を押し倒して自分から先に寝ることができるでしょうか。昔の出来事を思い出すのに。

集歌47 真草苅 荒野者雖有 葉 過去君之 形見跡曽来師
訓読 ま草刈る荒野にはあれど黄葉(もみぢは)し過ぎにし君し形見とそ来し
私訳 本来なら大嘗宮の束草を刈り取る荒野なのですが、このように黄葉の葉が散り過ぎるようにお隠れになった君よ。その形見の御子といっしょに来ました。

集歌48 東 野炎 立所見而 反見為者 月西渡
訓読 東(ひむがし)し野(の)し炎(かぎろひ)し立つそ見てかへり見すれば月西渡る
私訳 夜通し昔の出来事を思い出していて、ふと、東の野に朝焼けの光が雲間から立つのが見えて、振り返って見ると昨夜を一夜中に照らした月が西に渡って沈み逝く。

集歌49 日雙斯 皇子命乃 馬副而 御羯立師斯 時者来向
訓読 日並し皇子し尊の馬並(な)めて御猟(みかり)立たしし時は来向かふ
私訳 日並皇子の尊が馬を並び立てて御狩をなされた、そのような時刻になってきたようです。


万葉集 巻二より

柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時謌二首并短謌
標訓 柿本朝臣人麻呂の石見國より妻に別れ上り来し時の歌二首并せて短歌
集歌131 石見乃海 角乃浦廻乎 浦無等 人社見良目 滷無等 (一云 礒無登) 人社見良目 能咲八師 浦者無友 縦畫屋師 滷者 (一云 礒者) 無鞆 鯨魚取 海邊乎指而 和多豆乃 荒礒乃上尓 香青生 玉藻息津藻 朝羽振 風社依米 夕羽振流 浪社来縁 浪之共 彼縁此依 玉藻成 依宿之妹乎 (一云 波之伎余思 妹之手本乎) 露霜乃 置而之来者 此道乃 八十隈毎 萬段 顧為騰 弥遠尓 里者放奴 益高尓 山毛越来奴 夏草之 念思奈要而 志奴布良武 妹之門将見 靡此山

訓読 石見(いはみ)の海 角(つの)の浦廻(うらみ)を 浦なしと 人こそ見らめ 潟(かた)なしと (一(ある)は云はく、礒なしと) 人こそ見らめ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 潟は (一は云はく、礒は) なくとも 鯨魚(いさな)取り 海辺(うみへ)を指して 和多津(にぎたつ)の 荒礒(ありそ)の上に か青なる 玉藻沖つ藻 朝羽(あさは)振る 風こそ寄せめ 夕羽(ゆふは)振る 浪こそ来寄れ 浪し共(むた) か寄りかく寄り 玉藻なす 寄り寝(ね)し妹を (一は云はく、愛(は)しきよし 妹し手本(たもと)を) 露霜の 置きてし来れば この道の 八十(やそ)隈(くま)ごとし 万(よろづ)たび かへり見すれど いや遠(とほ)に 里は放(さか)りぬ いや高に 山も越え来ぬ 夏草し 思ひ萎(しな)へて 偲(しの)ふらむ 妹し門(かど)見む 靡(ま)けしこの山

私訳 石見の海の津野の浦を船が着く浦ではないと人は見るだろう。潟ではないと人は見るだろう。かまわない、浦はなくても。かまわない、潟はなくても。大きな魚を取る人が海岸を目指し、穏やかな波が打ち寄せる荒磯の上の青々とした玉藻や沖からの流れ藻の、朝は風が吹き寄せ、夕には波が打ち寄せる。その浪とともにそのように寄りこのように寄せる美しい藻のように寄り添って寝た恋人を、露や霜のようにこの地に置いてくると、京への道の沢山の曲がり角ごとに、何度も何度も振り返って見返すけれど、はるか遠くに恋人の里は離れてしまった。とても高い山も越えて来た。夏草のように恋人を思うと心が萎へて、恋人を思い出そう。恋人の家の辺りを見よう。恋人へ靡け、この山の木々の葉よ。

反謌二首
集歌132 石見乃也 高角山之 木際従 我振袖乎 妹見都良武香
訓読 石見(いはみ)のや高角山(たかつのやま)し木(こ)し際(ま)より我が振る袖を妹見つらむか
私訳 石見にある高い津野の山の木々の葉の間から、私が振る袖を恋人は見ただろうか。

集歌133 小竹之葉者 三山毛清尓 乱友 吾者妹思 別来礼婆
訓読 小竹(ささ)し葉はみ山も清(さ)やに乱(さや)げども吾は妹思(も)ふ別れ来(き)ぬれば
私訳 笹の葉は神の宿る山とともに清らかに風に揺られているが、揺れることなく私は恋人を思っています。別れて来たから。

或本反歌曰
標訓 或る本の反歌に曰はく
集歌134 石見尓有 高角山乃 木間従文 吾袂振乎 妹見監鴨
訓読 石見なる高角山の木し間ゆもわが袖振るを妹見けむかも
私訳 石見国にある高角山の木々の間から、私が別れの袖を振るのを恋人の貴女は見ただろうか。

集歌135 角鄣経 石見之海乃 言佐敞久 辛乃埼有 伊久里尓曾 深海松生流 荒磯尓曾 玉藻者生流 玉藻成 靡寐之兒乎 深海松乃 深目手思騰 左宿夜者 幾毛不有 延都多乃 別之来者 肝向 心乎痛 念乍 顧為騰 大舟之 渡乃山之 黄葉乃 散之乱尓 妹袖 清尓毛不見 嬬隠有 屋上乃(一云、室上山) 山乃 白雲間 渡相月乃 雖惜 隠比来者 天傳 入日刺奴礼 大夫跡 念有吾毛 敷妙乃 衣袖者 通而沽奴

訓読 つのさはふ 石見(いはみ)し海の 言(こと)さへく 辛(から)の崎なる 海石(いくり)にぞ 深海松(ふかみる)生(お)ふる 荒礒(ありそ)にぞ 玉藻は生(お)ふる 玉藻なす 靡き寝(ね)し子を 深海松の 深めて思へど さ寝(ね)し夜は 幾だもあらず 延(は)ふ蔦(つた)の 別れし来れば 肝(きも)向(むか)ふ 心を痛み 念(おも)ひつつ 顧(かへ)り見すれど 大舟し 渡(わたり)の山し 黄葉(もみちは)の 散りし乱(まが)ひに 妹し袖 清(さ)やにも見えず 妻ごもる 屋上(やがみ)の (一(ある)は云はく、室上山(むろかみやま)) 山の 雲間より 渡らふ月の 惜(お)しけども 隠(かく)らひ来れば 天伝ふ 入日さしぬれ 大夫(ますらを)と 念(おも)へる吾も 敷栲の 衣(ころも)し袖は 通りて沽(か)れぬ

私訳 岩角が鋭い石見の海の言葉の騒がしい韓國へ伸びる岬にある海の中の石には海底深くに海松が生える。荒磯には美しい藻は生える。その美しい藻のように私に靡き懐いて寝たあの子供を海底深くの海松のように深く愛したけれど、あの子供と寝た夜はそんなにはない。地を延びる蔦のように秋になり根と葉が別れるように別れてくると、心が締め付けられるように心を痛み、恋人を深く心に刻みながら振り返って見るが、大船が渡ってくる湊にある山の黄葉の葉の散り乱ふために、恋人が私に別れに振る袖もはっきりと見えず、妻が籠る屋上の山の雲の間から見える沈み往く月が残念なことに隠れていくと、空を行く太陽の日の光が射してくる。今は大夫に等しい私も貴女と寝たときの衣の袖は形見のために持って来た。

注意 原文の「通而沽奴」の「沽」は、一般に「沾」の誤字として「通りて濡れぬ」と訓みます。その為、末句の歌意が違います。ここでは「通」と「沽」は漢字の意味を尊重しています。

反歌二首
集歌136 青駒之 足掻乎速 雲居曽 妹之富乎 過而来計類
訓読 青(あを)駒(こま)し足掻(あが)きを速み雲居にぞ妹しあたりを過ぎて来にける
私訳 青馬の歩みが速い。そのような早く流れる空にある、魂を伝えると云う雲が、恋人のいる付近を通り過ぎて来ました。
一云、當者隠来計留
一は云はく、あたりは隠り来にける

集歌137 秋山尓 落黄葉 須奭者 勿散乱曽 妹之雷将見
試訓 秋山に落(ふ)る黄葉(もみちは)し須臾(しましく)はな散り乱(まが)ひそ妹(いも)し雷(らひ)見む
試訳 秋山に散る黄葉の葉よ、しばらく間、散り乱れないでくれ、恋人の住むあたりの稲妻を眺めたい。
一云、知里勿乱曽
一は云はく、散りな乱ひそ
注意 原文の「妹之雷将見」の「雷」は、一般には集歌136の歌から類推して「當」の誤字として「妹のあたり見む」と訓みます。この歌は草稿歌と考えていて、道中で聞いた雷鳴から稲妻の詞を思い起こしたと考えます。

或本謌一首并短謌
標訓 或る本の歌一首并せて短歌
集歌138 石見之海 津乃浦乎無美 浦無跡 人社見良米 滷無跡 人社見良目 吉咲八師 浦者雖無 縦恵夜思 潟者雖無 勇魚取 海邊乎指而 柔田津乃 荒礒之上尓 蚊青生 玉藻息都藻 明来者 浪己曽来依 夕去者 風己曽来依 浪之共 彼依此依 玉藻成 靡吾宿之 敷妙之 妹之手本乎 露霜乃 置而之来者 此道之 八十隈毎 萬段 顧雖為 弥遠尓 里放来奴 益高尓 山毛超来奴 早敷屋師 吾嬬乃兒我 夏草乃 思志萎而 将嘆 角里将見 靡此山

訓読 石見(いはみ)し海 津の浦を無(な)み 浦無しと 人こそ見らめ 潟(かた)無しと 人こそ見らめ よしゑやし 浦は無くとも よしゑやし 潟は無くとも 鯨魚(いさな)取り 海辺(うみへ)を指して 柔田津(にぎたつ)の 荒礒(ありそ)し上に か青なる 玉藻沖つ藻 明け来れば 浪こそ来寄れ 夕されば 風こそ来寄れ 浪し共(むた) か寄りかく寄り 玉藻なす 靡き吾(わ)が寝(ね)し 敷栲し 妹し手本(たもと)を 露霜の 置きてし来れば この道し 八十(やそ)隈(くま)ごとに 万(よろづ)たび 顧(かへ)り見すれど いや遠に 里放(さか)り来ぬ いや高に 山も越え来ぬ 愛(は)しきやし 吾(わ)が妻の子が 夏草の 思ひ萎えて 嘆くらむ 角(つの)し里見む 靡けこの山

私訳 石見の海の津野の浦を船が着く浦ではないと人は見るだろう。潟ではないと人は見るだろう。かまわない、浦はなくても。かまわない、潟はなくても。大きな魚を取る人が海岸を目指し、穏やかな波が打ち寄せる荒磯の上の青々とした玉藻や沖からの流れ藻の、朝は風が吹き寄せ、夕には波が打ち寄せる。その浪とともにそのように寄りこのように寄せる美しい藻のように寄り添って寝た恋人を、露や霜のようにこの地に置いてくると、京への道の沢山の曲がり角ごとに、何度も何度も振り返って見返すけれど、はるか遠くに恋人の里は離れてしまった。とても高い山も越えて来た。愛しい私の妻の子供が夏草のように私との別れを思って萎れて嘆いてしまうでしょう。愛しい家族を思い出そう。津の里を見たい。生茂る木々の葉よ靡け開け、この山よ。

反謌一首
集歌139 石見之海 打歌山乃 木際従 吾振袖乎 妹将見香
訓読 石見(いはみ)し海(み)打歌(うつた)し山(やま)の木(こ)し際(ま)より吾が振る袖を妹見つらむか
私訳 石見の海の、その海沿いの宇田の山の木の間際から私が振る袖を恋人の貴女は見ただろうか。
右、謌躰雖同句々相替。因此重載。
注訓 右は、歌体同じと謂へども句々相替れり。因りて此に重ねて載す。


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