竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 9

2013年02月10日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

万葉集 巻四より

柿本朝臣人麿謌四首
標訓 柿本朝臣人麿の歌四首
集歌496 三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨
訓読 御熊野(みくまの)し浦の浜(はま)木綿(ゆふ)百重(ももへ)なす心は思(も)へど直(ただ)に逢はぬかも
私訳 御熊野の有馬の浦の浜の花窟の伊邪那美命をお祭りする幣の木綿の糸が折り重なるように私の気持ちは幾重にも貴女を想っています。直接には会えませんが。

集歌497 古尓 有兼人毛 如吾歇 妹尓戀乍 宿不勝家牟
訓読 古(いにしへ)にありけむ人も吾がごとか妹に恋ひつつ寝(い)ねかてずけむ
私訳 天之日矛の伝説のように昔の人の天之日矛も私のように貴女を恋しく夜も眠れなかったのでしょうか。(そして、私が貴女を追ってきたように阿加流比売神を追って来たのでしょう。)

集歌498 今耳之 行事庭不有 占 人曽益而 哭左倍鳴四
訓読 今のみし行事(わざ)にはあらず古(いにしへ)の人ぞまさりて哭(ね)にさへ泣きし
私訳 男性が女性を邪険にするのは今に始まったことではありません。昔の人の阿加流比売神は相手の男性につれなくされて、今の私以上にもっと恨んで泣いたのでしょう。

集歌499 百重二物 来及毳常 念鴨 公之使乃 雖見不飽有哉
訓読 百重(ももへ)にも来(き)及(し)かぬかもと思へかも君し使(つかひ)の見れど飽かずあらむ
私訳 貴方からの便りが何度でも来て欲しいと思うからなのでしょうか。今日、花窟の伊邪那美命への幣奉呈を行った天皇の使人を見たように、貴方の使いを何度見ても飽きることはありません。


柿本朝臣人麿歌三首
標訓 柿本朝臣人麿の歌三首
集歌501 未通女等之 袖振山乃 水垣之 久時従 憶寸吾者
訓読 未通女等(をとめら)し袖布留山の瑞垣(みずかき)し久しき時ゆ思ひき吾は
私訳 未通女(おとめ)たちが霊寄せの袖を振る布留山の瑞垣の久しい時よ。昔を思い出したよ。私は。

集歌502 夏野去 小牡鹿之角乃 束間毛 妹之心乎 忘而念哉
訓読 夏野行く牡鹿(をしか)し角の束し間も妹し心を忘れて念(おも)へや
私訳 夏の野を行く幼い牡鹿の角のその短いほんのわずかの間も、貴女の気持ちを忘れたと思いますか。

集歌503 珠衣乃 狭藍左謂沉 家妹尓 物不語来而 思金津裳
訓読 玉衣(たまきぬ)のさゐさゐしづみ家し妹に物言はず来にて思ひかねつも
私訳 美しい衣を藍染めるように藍瓶に沈めるように心が沈み、私の妻である貴女を後に置いて声を掛けずに出かけてきて、後悔しています。

柿本朝臣人麿妻歌一首
標訓 柿本朝臣人麿の妻の歌一首
集歌504 君家尓 吾住坂乃 家道乎毛 吾者不忘 命不死者
訓読 君し家(へ)に吾が住(す)む坂の家道(いへぢ)をも吾は忘れじ命死なずは
私訳 貴方の家と私の住んでいた刑坂の家への道も、私は忘れることはありません。この命が死なない限りは。


万葉集 巻七より

詠天
標訓 天を詠める
集歌1068 天海丹 雲之波立 月船 星之林丹 榜隠所見
訓読 天つ海(み)に雲し波立ち月船し星し林に榜(こ)ぎ隠る見ゆ
私訳 天空の海に雲の波が立ち、下弦の三日月の船が星の林の中に、その船を操り見え隠れするのを見る。
右一首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の一首は、柿本朝臣人麿の歌集に出(い)づ。

詠雲
標訓 雲を詠める
集歌1087 痛足河 河浪立奴 巻目之 由槻我高仁 雲居立有良志
訓読 痛足川川波立ちぬ巻目し由槻が嶽に雲居立てるらし
私訳 穴師川には川波が騒ぎ立って来た。巻向の弓月が岳に雲が湧き起こっているらしい。

集歌1088 足引之 山河之瀬之 響苗尓 弓月高 雲立渡
訓読 あしひきし山川し瀬し響るなへに弓月が嶽に雲立ち渡る
意訳 あしひきの山川の瀬音が激しくなるにつれて、弓月が嶽に雲の立ち渡るのが見える。
右二首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

詠山
標訓 山を詠める
集歌1092 動神之 音耳聞 巻向之 檜原山乎 今日見鶴鴨
訓読 鳴神し音のみ聞きし巻向し檜原し山を今日見つるかも
私訳 雷の遠雷を聞くように噂に聞いた。そのような巻向の檜原の山を今日はっきりと眺めました。

集歌1093 三毛侶之 其山奈美尓 兒等手乎 巻向山者 継之宣霜
訓読 三諸しその山並に子らが手を巻向山は継しよろしも
私訳 三室山のその山波の、愛しい子供たちに手枕を巻くと云う、そのような名を持つ巻向山は山波の継づきが良いようです。

集歌1094 我衣 色服染 味酒 三室山 黄葉為在
訓読 我が衣色つけ染めむ味酒三室し山は黄葉(もみち)しにけり
私訳 私の衣を色染めましょう。味酒の三室山は黄葉しました。
注意 原文の「色服染」は、一般に「色取染」の誤記として「色とり染めむ」と訓みますが、ここでは原文のままに訓んでいます。なお、一部に「我衣服 色染」とし「我が衣にほひぬべくも」と訓むものもあります。
右三首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の三首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

詠河
標訓 河を詠める
集歌1100 巻向之 病足之川由 往水之 絶事無 又反将見
訓読 巻向し痛足し川ゆ往く水し絶ゆること無くまたかへり見む
私訳 巻向の痛足川を流れ往く水が絶えることがないように、なんどもなんども振り返りましょう。

集歌1101 黒玉之 夜去来者 巻向之 川音高之母 荒足鴨疾
訓読 ぬばたまし夜さり来れば巻向し川音高しも嵐かも疾き
私訳 星明かりも無い漆黒の夜がやって来ると、巻向の川音が高い。嵐がやって来るようだ。
右二首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

詠葉
標訓 葉を詠める
集歌1118 古尓 有險人母 如吾等架 弥和乃檜尓 插頭折兼
訓読 古(いにしへ)にありけむ人も吾がごとか三輪の檜原(ひはら)に挿頭(かざし)折(を)りけむ
試訳 昔にいらしたと云われる伊邪那岐命も、私と同じでしょうか。三輪の檜原で鬘(かづら)を断ち切って、偲ぶ思いを断ち切ったのでしょうか。

集歌1119 往川之 過去人之 手不折者 裏觸立 三和之檜原者
試訓 往(ゆ)く川し過ぎにし人し手折(たを)らねばうらぶれ立てり三輪し檜原は
試訳 流れいく川のように過ぎて去ってしまった人が、もう、手を合わせて祈ることがないので寂しそうに立っている三輪の檜原の木々は。
注意 ここでは試訓として、仏教の外縛印で合掌をする風景を想像して解釈してみました。なお、人麻呂時代から明治初期までは三輪は大三輪寺を中心とする仏教寺院が立ち並ぶ仏教の聖地です。その仏教聖地に関係するためか、原文は三輪ではなく唯識論の「三和」ですし、集歌1118の歌では「弥和」の表記を使用します。
右二首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

集歌1187 網引為 海子哉見 飽浦 清荒磯 見来吾
訓読 網引(あびき)する海子(あま)とか見らむ飽(あく)し浦清き荒磯(ありそ)を見に来し吾を
私訳 地引網を引く漁師たちと間違えて見るでしょうか。飽の浦の清らかな荒磯を見に来て、浜を通りかかった私を。
一首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の一首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

集歌1247 大穴道 少御神 作 妹勢能山 見吉
訓読 大汝(おほなむち)少御神(すくなみかみ)し作らしし妹背(いもせ)の山を見らくしよしも
私訳 大汝と少御神との神が作られた妹背の山は見るとりっぱなことです。

集歌1248 吾妹子 見偲 奥藻 花開在 我告与
訓読 吾妹子(わぎもこ)し見つつ思はむ沖つ藻し花咲きたらばわれに告げこそ
私訳 愛しい吾妹子よ、遠くから眺めながら貴女を偲びましょう。沖の藻の花が咲いたらならば私に教えてほしい。

集歌1249 君為 浮沼池 菱採 我染袖 沾在哉
訓読 君しため浮沼(うきぬま)池し菱つむとわが染め袖し濡れにけるかも
私訳 貴方のために浮沼の池の菱を摘もうとすると、私が染めた袖が濡れてしまいました。

集歌1250 妹為 菅賽採 行吾 山路惑 此日暮
訓読 妹しため菅(すげ)し賽(さい)採り行きし吾山路迷ひしこの日暮しつ
私訳 恋人のために菅の実が告げる、その根を掘り採りに来た私は、山路に迷ってこの秋の日、一日が暮れてしまった。
右四首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の四首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

集歌1268 兒等手乎 巻向山者 常在常 過往人尓 往巻目八方
訓読 児らし手を巻向山は常にあれど過ぎにし人に行き纏かめやも
私訳 愛しい子供たちが手枕を巻くという巻向山は変わらずにあるけれで、もう、亡くなってしまった人に行き逢って抱きしめることが出来るでしょうか。

集歌1269 巻向之 山邊響而 往水之 三名沫如 世人吾等者
訓読 巻向し山辺(やまへ)響(とよ)みて行く水し水沫(みなあは)ごとし世し人われは
私訳 巻向山のふもとで音を立てて流れ逝く水の水沫のようです。この世に生きている人としての私は。
右二首、柿本朝臣人麿謌集出
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麿の歌集に出(い)づ。

集歌1271 遠有而 雲居尓所見 妹家尓 早将至 歩黒駒
訓読 遠くありて雲居(くもゐ)に見ゆる妹し家(へ)に早く至らむ歩め黒駒
私訳 遠くにあり、雲の彼方に見える貴女の家に早く行き着こう。歩め黒駒よ。
右一首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の一首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

旋頭歌
標訓 旋頭歌(せどうか)
集歌1272 釼 従鞘納野迩 葛引吾妹 真袖以 着點等鴨 夏草苅母
訓読 剣(つるぎ)大刀(たち)鞘(さや)ゆ入野に葛(ふぢ)引く吾(わぎ)妹(も) 真(ま)袖(そで)もち著(つ)けてむとかも夏草(なつくさ)刈るも
私訳 剣太刀を鞘に入れる、その言葉のひびきのような清々しい入野で藤の花蔓を引くかわいい子。 立派な袖付きの着物を着ている。暑い夏に夏草を刈っているのに。

集歌1273 住吉 波豆麻君之 馬乗衣 雑豆藤 漢女乎座而 縫衣叙
訓読 住吉し波豆麻(はずま)し君し馬(うま)乗(のり)衣(ころも) さひづらふ漢女(あやめ)をすゑて縫へる衣ぞ
私訳 住吉の波豆麻の君の馬乗衣はね、囀るように話す漢女を雇って縫った衣ですよ。

集歌1274 住吉 出見濱 柴莫苅曽尼 未通女等 赤裳下 閨将往見
訓読 住吉し出見(いでみ)し浜し柴な刈りそね 未通女等(をとめら)し赤裳し裾し濡れてゆく見ゆ
私訳 住吉の出見の浜の柴を刈らないで、恋人に逢うために未通女が赤裳の裾を濡らして行くのが見えるから。

集歌1275 住吉 小田苅為子 賤鴨無 奴雖在 妹御為 私田苅
訓読 住吉し小田し刈らす子(こ)賤(しず)かも無きし 奴(しず)あれど妹し御為(みため)し私(わたくし)田(た)刈る
私訳 住吉の小田を刈りとっている貴方は下男がいないのでしょう。いや、貴方には下男がいても恋人のためといって寄り添って恋人の田を一緒に刈るのでしょう。

集歌1276 池邊 小槻下 細竹苅嫌 其谷 君形見尓 監乍将偲
訓読 池し辺(へ)し小槻(をつき)下(しも)し細竹(しめ)な刈りそね それをだに君し形見に見つつ偲はむ
私訳 池の辺の小さい槻の根元の細竹を刈らないで、それだけでも、あの人との出会いの思い出として思いだして見て心に思い浮かべましょう。

集歌1277 天在 日賣菅原 草苅嫌 弥綿 香鳥髪 飽田志付勿
訓読 天つある姫(ひめ)菅原(すがはら)し草な刈りそね 蜷(みな)し腹(わた)か黒き髪し芥(あくた)し着(つ)くも
私訳 天上にある姫菅原の草を刈らないで、蜷貝の腹わたような真っ黒な髪に芥が着き、白髪になるよ。

集歌1278 夏影 房之下庭 衣裁吾妹 裏儲 吾為裁者 差大裁
訓読 夏蔭し房し下(した)には衣(きぬ)裁(た)つ吾妹(わぎも) 心(うら)設(ま)けてわがため裁たばやや大(おほ)に裁て
私訳 夏の木蔭の妻屋の内で衣を裁つ愛しい吾妹よ、心を私に寄せて私のために衣を裁つのならば、はっきりその心を裁って表してください。

集歌1279 梓弓 引津邊在 莫謂花 及採 不相有目八方 勿謂花
訓読 梓弓引津し辺(へ)なる莫告藻(なのりそ)し花 採むまでに逢はざらめやも莫告藻し花
私訳 梓弓を引く、その引津の海辺にある莫告藻の花よ。その貴女の名乗りの花を採むまでは逢うことが出来ないのでしょうか。莫告藻の花よ。

集歌1280 撃日刺 宮路行丹 吾裳破 玉緒 念委 家在牟
訓読 うち日さす宮路を行くにわが裳破れぬ 玉し緒し思ひ委(たく)せし家にあらましを
私訳 朝日の輝き日がさす宮路を行くと私の裳は破れてしまった。それなら貴方が身に付ける玉の緒に恋の思いを託して家にいたのに。

集歌1281 君為 手力勞 織在衣服叙 春去 何色 摺者吉
訓読 君しため手(た)力(ちから)疲(か)れし織りたる衣(きぬ)ぞ 春さらばいかなる色し摺りてば吉けむ
私訳 貴方がために手の力も疲れて織った衣です。春になったらどのような色に摺り染めると喜んでもらえるでしょうか。

集歌1282 橋立 倉椅山 立白雲 見欲 我為苗 立白雲
訓読 梯立(はしたて)し倉椅(くらはし)山し立つる白雲 見まく欲りわがするなへに立つる白雲
私訳 梯立の倉椅山に立ち昇る白雲よ、恋人に逢いたいと私が思うたびに立ち昇る白雲よ。

集歌1283 橋立 倉椅川 石走者裳 壮子時 我度為 石走者裳
訓読 梯立(はしたて)し倉椅(くらはし)川し石(いは)し橋はも 壮子(さかり)時我(われ)し渡りて石し橋はも
私訳 梯立の倉椅川の石の橋よ、貴女の許へ通った男盛りの時に私が渡った石の橋よ。

集歌1284 橋立 倉椅川 河静菅 余苅 笠裳不編 川静菅
訓読 梯立(はしたて)し倉椅(くらはし)川し川ししづ菅 わが刈て笠にも編まむ川ししづ菅
私訳 梯立の倉椅川の川の秘めやかな菅よ、私が刈って笠にも編むこともない川の秘めやかな菅よ。

集歌1285 春日尚 田立臝 公哀 若草 麗無公 田立臝
訓読 春(はる)日(ひ)すら田し立ち疲(か)る君しかなしも 若草し妻無き君し田し立ち疲る
私訳 春の日でも田仕事に立ち疲れる貴方はかわいそうだ、労わってくれる若草のような初々しい妻も無い貴方が田仕事に立ち疲れるよ。

集歌1286 開木代 来背社 草勿手折 己時 立雖榮 草勿手折
訓読 山城(やましろ)し久世(くせ)し社(やしろ)し草な手折(たおり)そ おのが時立ち栄ゆとも草な手折りそ
私訳 山城の久世の社の草を手折らないで、貴方の時代と立ち栄えても草を手折らないで。

集歌1287 青角髪 依網原 人相鴨 石走 淡海縣 物語為
訓読 青みづら依網(よさみ)し原し人し逢はむかも 石(いは)走る淡海(あふみ)県(あがた)し物がたりせむ
私訳 青みづらの依網の原であの人と逢はないかな、そうすれば、出かけて行った石走る淡海県の物語をしたいのに。

集歌1288 水門 葦末葉 誰手折 吾背子 振手見 我手折
訓読 水(みづ)し門(と)し葦し末葉(うらは)し誰(たれ)し手折(たおれ)し わが背子(せこ)し振る手し見むとわれそ手折し
私訳 湊に生える葦の末葉を誰が手折ったのでしょうか。私の愛しい貴方が振る手を見たいと私が手折りました。

集歌1289 垣越 犬召越 鳥獦為公 青山 等茂山邊 馬安君
訓読 垣越し犬召し越し鳥狩(とかり)する君 青山しと茂(も)す山辺(やまへ)し馬息(やす)め君
私訳 垣根越しに犬を呼び寄せて鳥狩をする貴方、青き山のこのように茂る山辺に馬を休ます貴方。

集歌1290 海底 奥玉藻之 名乗曽花 妹与吾 此何有跡 莫語之花
訓読 海(わた)つ底沖(おく)つ玉藻し名告藻(なのりそ)し花 妹とわれ此処にしありと莫告藻(なのりそ)し花
私訳 人目に付かない海の底の沖の美しい玉藻の名告藻の花、恋人と私とここにいるとお互いに名乗る莫告藻の花。

集歌1291 此岡 莫苅小人 然苅 有乍 君来座 御馬草為
訓読 この岡し草刈る小人(わらは)然(しか)な刈りそね 在りつつも君し来まして御(み)馬(ま)草(くさ)にせむ
私訳 この岡で草刈るこどもよ、そんなに草を刈るな、 このままにしているとあの人が遣っていらっしゃって御馬の草にするでしょう。

集歌1292 江林 次宍也物 求吉 白栲 袖纏上 宍待我背
訓読 江(え)林(はやし)し宿(やど)る猪鹿(しし)やも求めし吉しし 白栲(しろたえ)し袖纏き上げて猪鹿待つわが背
私訳 入り江近くの林に棲む猪や鹿を獲るのに良いのだろうか、白栲の袖を纏き上げて猪や鹿を待つ愛しい貴方。

集歌1293 丸雪降 遠江 吾跡川楊 雖苅 亦生云 余跡川楊
訓読 霰(あられ)降(ふ)り遠江(とほつあふみ)し吾跡(あと)川(かわ)楊(やなぎ) 刈りぬともまたも生(お)ふといふ吾跡川楊
私訳 霰が降る遠江の吾跡川の楊よ。刈りとってもまたも生るといふ吾跡川の楊よ。

集歌1294 朝日在 向山 月立所見 遠妻 持在人 看乍偲
訓読 朝日つく向かつ山し月立ちし見し 遠妻(とほつま)し持ちたる人し見つつ思はむ
私訳 朝日が昇る、その向こうの山に月が昇るのが見える、遠く離れて住む妻を持っている人がその風景を見て離れて住む妻を思い出している。
右廿三首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の二十三首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

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