竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集巻四を鑑賞する  集歌760から集歌779まで

2012年01月05日 | 万葉集 旧読解
万葉集巻四を鑑賞する


大伴坂上郎女従竹田庄贈賜女子大嬢謌二首
標訓 大伴坂上郎女の竹田(たけたの)庄(たところ)より女子(むすめ)の大嬢(おほをとめ)に贈賜(おく)れる謌二首
集歌760 打渡 竹田之原尓 鳴鶴之 間無時無 吾戀良久波
訓読 うち渡す竹田(たけだ)し原に鳴く鶴(たづ)し間(ま)無く時(とき)無し吾が恋ふらくは

私訳 広々と広がる竹田の野原に啼く鶴の声が間無く時を択ばず聞こえるように、間無く時を択ばず私は貴女を心に留めています。


集歌761 早河之 湍尓居鳥之 縁乎奈弥 念而有師 吾兒羽裳可怜
訓読 早河(はやかは)し瀬に居(ゐ)る鳥し縁(よし)を無み念(おも)ひてありし吾が児はもあはれ

私訳 流れの早い川の瀬に居る鳥のように、こちらから逢う機会は無いものと思っていました私の貴女(わが子)よ、実に心残りです。


紀女郎贈大伴宿祢家持謌二首  女郎名曰小鹿也
標訓 紀女郎(きのいらつめ)の大伴宿祢家持に贈れる謌二首  女郎(いらつめ)の名を曰はく小鹿なり
集歌762 神左夫跡 不欲者不有 八也多八 如是為而後二 佐夫之家牟可聞
訓読 神さぶと否(いな)にはあらね早(はや)多(さは)は如(か)くして後(のち)に寂(さぶ)しけむかも

私訳 歳を経て年老いたと拒むのではありません。既にそのような歳だからと、そんな理由で恋を拒むとしたら後で悔いが残るでしょう。

注意 原文の「八也多八」を、現在は「八多也八多」と創作して鑑賞します。


集歌763 玉緒乎 沫緒二搓而 結有者 在手後二毛 不相在目八方
試訓 玉し緒を沫緒(まつを)に搓(よ)りて結べらばありて後にも逢はざらめやも
試訳 玉を貫く紐の緒を輪の緒とし縒って結んだら、こうした後も、首から下げる玉の紐が再び緒を結ぶように、再び逢わないことがあるでしょうか。

注意 原文の「沫緒」は「あわを」と訓むのが正統です。ここでは首飾りの紐の緒が輪を作り末に結び合う姿から「まつを」と試訓を行っています。


大伴宿祢家持和謌一首
標訓 大伴宿祢家持の和(こた)へたる謌一首
集歌764 百年尓 老舌出而 与余牟友 吾者不厭 戀者益友
訓読 百年(ももとし)に老舌(おひした)出(い)でてよよむとも吾は厭(い)とはじ恋ひは益(ま)すとも

私訳 百歳になり年老い口を開けたままで舌を出しよぼよぼになっても、私は嫌がることはありません。恋心が増しても。


在久邇京思留寧樂宅坂上大嬢大伴宿祢家持作謌一首
標訓 久邇の京(みやこ)に在(あ)りて寧樂(なら)の宅(いへ)に留(とど)まれる坂上大嬢(おほをとめ)を思(しの)ひて大伴宿祢家持の作れる謌一首
集歌765 一隔山 重成物乎 月夜好見 門尓出立 妹可将待
訓読 一重山(ひとへやま)隔(へ)なれるものを月夜(つくよ)好(よ)み門(かど)に出(い)で立ち妹か待つらむ

私訳 間には一重の山だけを隔てているだけなのだが。この月夜が芳しいと、家の外に出て立って愛しい貴女は私を待っているだろうか。


藤原郎女聞之即和謌一首
標訓 藤原郎女(ふぢはらのいらつめ)の之を聞きて即ち和(こた)へたる謌一首
集歌766 路遠 不来常波知有 物可良尓 然曽将待 君之目乎保利
訓読 道(みち)遠(とほ)し来(こ)じとは知れるものからに然(しか)ぞ待つらむ君し目を欲(ほ)り

私訳 道のりが遠くやっては来ないと思っていても、それでもそのように待っているでしょう。貴方の姿に逢いたくて。


大伴宿祢家持更贈大嬢謌二首
標訓 大伴宿祢家持の更に大嬢(おほをとめ)に贈れる謌二首
集歌767 都路乎 遠哉妹之 比来者 得飼飯而雖宿 夢尓不所見来
訓読 都路(みやこぢ)を遠(とほ)みか妹しこのころは祈誓(うけひ)て寝(ぬ)れど夢に見え来(こ)ぬ

私訳 都への道のりを遠いと感じるのか。愛しい貴女を、近頃は願って寝るのですが夢の中に見えて来ません。


集歌768 今所知 久邇乃京尓 妹二不相 久成 行而早見奈
訓読 今知らす久邇(くに)の京(みやこ)に妹に逢はず久しくなりぬ行きて早見な

私訳 今、統治なされる久邇の都にいて、愛しい貴女に逢わないことが久しくなった。奈良の貴女の許に行って早く逢いたい。


大伴宿祢家持報贈紀女郎謌一首
標訓 大伴宿祢家持の紀女郎(きのいらつめ)に報(こた)へ贈れる謌一首
集歌769 久堅之 雨之落日乎 直獨 山邊尓居者 欝有来
訓読 ひさかたし雨し降る日をただ独り山辺(やまへ)に居(を)れば欝(いぶせ)かりけり

私訳 遥か彼方からの雨の降る日を、ただ独りで山辺にいると、うっとしいことです。


大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢謌五首
標訓 大伴宿祢家持の久邇の京(みやこ)より坂上大嬢(おほをとめ)に贈れる謌五首
集歌770 人眼多見 不相耳曽 情左倍 妹乎忘而 吾念莫國
訓読 人(ひと)眼(め)多(た)み逢はなくのみぞ情(こころ)さへ妹を忘れて吾が念(おも)はなくに

私訳 人目が多いので逢わないだけです。気持ちまでも貴女を忘れたと私は思ってもいません。


集歌771 偽毛 似付而曽為流 打布裳 真吾妹兒 吾尓戀目八
訓読 偽(いつわ)りも似(に)つきてぞする顕(うつ)しくも真(まこと)吾妹子(わぎもこ)吾に恋ひめや

私訳 偽りも本当らしくするものです。実際には、真に私の愛しい貴女は私に恋い慕っているでしょう。


集歌772 夢尓谷 将所見常吾者 保杼毛友 不相志思 諾不所見武
訓読 夢にだに見えむと吾は解(ほ)どけとも逢(あ)はずし思(おも)ゆ諾(うべ)見えざらむ
私訳 夢の中だけでも逢いたいと私は衣の紐を解いたけれど、夢では貴女を抱けないと思う。なるほど、それで夢に貴女の姿が見てきません。

注意 男女の関係があると想定した時、原文の「見」と「相」の意味合いが微妙です。逢うのか、抱くのか、その意味合いで歌の鑑賞が変わります。


集歌773 事不問 木尚味狭藍 諸苐等之 練乃村戸二 所詐来
訓読 事(こと)とはぬ木(き)すら紫陽花(あじさゐ)諸苐(もろと)らし練(ねり)の村戸(むらと)に詐(あざむ)かえけり

私訳 物事も告げない木でさえアジサイの花のように色変わる。弟たちの練り上げた策略に欺かれてしまった。

注意 原文の「諸苐等之」の「苐」は、一般に「弟」の誤記とします。なお、原文表記では「苐」、「荑」、「茅」は異字体の関係にあり、印刷の関係で「茅」の用字で表記する場合もあります。なお、「苐」は「テイ」の訓音を持ちますから「弟」と「若芽」の両方の意味合いと、木や味狭藍との植物の言葉遊びで「苐」を用字した可能性があります。


集歌774 百千遍 戀跡云友 諸苐等之 練乃言羽志 吾波不信
訓読 百千遍(ももちたび)恋ふと云ふとも諸苐(もろと)らし練(ねり)のことばし吾は信(たの)まじ
私訳 百遍も千遍も恋い慕っていると云っても、弟たちの練り上げたお告げを私は信用しません。

注意 原文の「諸苐等之」の「苐」は集歌773の歌と同様に「弟」の誤記とします。また「練乃言羽志」の「志」は「者」の誤記とします。


大伴宿祢家持贈紀女郎謌一首
標訓 大伴宿祢家持の紀女郎に贈れる歌一首
集歌775 鶉鳴 故郷従 念友 何如裳妹尓 相縁毛無寸
訓読 鶉鳴く故(ふ)りにし郷(さと)ゆ念(おも)へども何ぞも妹に逢ふ縁(よし)も無き

私訳 すっかり面影も無いように寂れてしまって鶉が鳴くようなるような古き里、そんな昔から貴女を慕っているのですが、どのような訳か、愛しい貴女に逢う術がありません。


紀女郎報贈家持謌一首
標訓 紀女郎の家持に報(こた)へ贈れる歌一首
集歌776 事出之者 誰言尓有鹿 小山田之 苗代水乃 中与杼尓四手
訓読 事(こと)出(で)しは誰が言(こと)にあるか小山田(をやまだ)し苗代(なはしろ)水(みづ)の中淀(なかよど)にして

私訳 最初に会いたいと云い出したのは誰の言葉でしょうか、山の田の苗代の水が澱むように途中で会いに来ることを躊躇されて。


大伴宿祢家持更贈紀女郎謌五首
標訓 大伴宿祢家持の更らに紀女郎に贈れる歌五首
集歌777 吾妹子之 屋戸乃籬乎 見尓徃者 盖従門 将返却可聞
訓読 吾妹子し屋戸(やと)の籬(まがき)を見に行かばけだし門(かと)より返(かへ)してむかも

私訳 愛しい貴女の屋敷の垣根を見に行くと、きっと、中にも入れてくれずに門から私を追い返すのでしょうね。


集歌778 打妙尓 前垣乃酢堅 欲見 将行常云哉 君乎見尓許曽
訓読 うつたへに前垣(まえがき)の姿見まく欲(ほ)り行かむと云へや君を見にこそ

私訳 必ずしも貴女の屋敷の垣根だけを見てみたくて行くのではありません、貴女に逢いたくいくのです。


集歌779 板盖之 黒木乃屋根者 山近之 明日取而 持将参来
訓読 板葺(いたふき)し黒木(くろき)の屋根(やね)は山近し明日(あした)取りてし持ちて参(ま)ゐ来(こ)む

私訳 板葺きの黒木の屋根の新嘗宮のある恭仁(くに)の都は平山(ならやま)に近いので、明日、黒木に因む尾花を取って貴女の許に持参しましょう。



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