竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

続き

2009年05月26日 | 万葉集 竹取翁の歌を鑑賞する
続き


集歌3745 伊能知安良婆 安布許登母安良牟 和我由恵尓 波太奈於毛比曽 伊能知多尓敝波
訓読 命(いのち)あらば逢ふこともあらむ吾(あ)がゆゑにはだな思ひそ命だに経(へ)ば
私訳 命があればまた貴方と逢うこともあるでしょう、私のためにそんなにひどく思い込めないで、命さへ永らえれば。

集歌3746 比等能宇々流 田者宇恵麻佐受 伊麻佐良尓 久尓和可礼之弖 安礼波伊可尓勢武
訓読 人の植(う)うる田は植ゑまさず今さらに国別れして吾(あ)れはいかにせむ
私訳 いつもなら貴方が植える田は田植えもされないように、貴方が編纂すべき万葉集を編纂する人もいなくて、今は他国と住む場所を別れて、私はどうしたらよいのでしょう。

集歌3747 和我屋度能 麻都能葉見都々 安礼麻多無 波夜可反里麻世 古非之奈奴刀尓
訓読 吾(あ)が宿の松の葉見つつ吾(あ)れ待たむ早帰りませ恋ひ死なぬとに
私訳 私の家の松の葉を見ながら私は貴方を待ちましょう、早くお帰り下さい、待ち臨む心が死なないように。

集歌3748 比等久尓波 須美安之等曽伊布 須牟也氣久 波也可反里万世 古非之奈奴刀尓
訓読 他国(ひとくに)は住み悪(あ)しとぞ言ふ速(すむや)けく早帰りませ恋ひ死なぬとに
私訳 よその国は住みにくいと云います、すぐに早くお帰り下さい、待ち臨む心が死なないように。

集歌3749 比等久尓々 伎美乎伊麻勢弖 伊都麻弖可 安我故非乎良牟 等伎乃之良奈久
訓読 他国(ひとくに)に君をいませていつまでか吾(あ)が恋ひ居らむ時の知らなく
私訳 よその国に貴方を住まわせて、いつまででしょうか、私は貴方を慕っています。再び会える時を知りませんが。

集歌3750 安米都知乃 曽許比能宇良尓 安我其等久 伎美尓故布良牟 比等波左祢安良自
訓読 天地の底(そこ)ひのうらに吾(あ)がごとく君に恋ふらむ人は実(さね)あらじ
私訳 天地の底のその裏まで、そんな果てしない世界中に私のように貴方を尊敬して慕っている人はけっしていません。

集歌3751 之呂多倍能 安我之多其呂母 宇思奈波受 毛弖礼和我世故 多太尓安布麻弖尓
訓読 白栲の吾(あ)が下衣(したころも)失はず持てれ吾(わ)が背子直(ただ)に逢ふまでに
私訳 白栲の私の万葉集の草稿を失わないで持っていて下さい、私の尊敬する貴方、直接にお逢いするまで。

集歌3752 波流乃日能 宇良我奈之伎尓 於久礼為弖 君尓古非都々 宇都之家米也母
訓読 春の日のうら悲しきに後れ居(ゐ)て君に恋ひつつうつしけめやも
私訳 春の日の物悲しさに気持ちが沈んでいると、貴方を恋しく思って生きてる実感がありません

集歌3753 安波牟日能 可多美尓世与等 多和也女能 於毛比美太礼弖 奴敝流許呂母曽
訓読 逢はむ日の形見にせよと手弱女(たおやめ)の思ひ乱(みだ)れて縫へる衣(ころも)ぞ
私訳 貴方に再び逢う日までの形見にして下さいと、力不足の私が思い乱れて編纂した万葉集の草稿です。
右九首、娘子
注訓 右は九首、娘子

集歌3754 過所奈之尓 世伎等婢古由流 保等登藝須 多我子尓毛 夜麻受可欲波牟
訓読 過所(くわそ)なしに関飛び越ゆる霍公鳥(ほととぎす)髣髴(おほ)しが子にも止まず通はむ
私訳 手形を持たずに関所を飛び越える霍公鳥よ、おぼろげに目に浮かぶあの方の許に過去が懐かしいと絶えず通うのだろうか。

集歌3755 宇流波之等 安我毛布伊毛乎 山川乎 奈可尓敝奈里弖 夜須家久毛奈之
訓読 愛(うるは)しと吾(あ)が思ふ妹を山川を中(なか)に隔(へな)りて安けくもなし
私訳 すばらしいと私が尊敬する貴方を山や川を間に挟んで隔たっていると、気が休まりません。

集歌3756 牟可比為弖 一日毛於知受 見之可杼母 伊等波奴伊毛乎 都奇和多流麻弖
訓読 向ひ居て一日(ひとひ)もおちず見しかども厭(いと)はぬ妹を月わたるまで
私訳 向かい合って一日も欠かさずに会っていても厭になることがない貴方を、幾月も渡ってしまうまで逢えなくなって。

集歌3757 安我未許曽 世伎夜麻故要弖 許己尓安良米 許己呂波伊毛尓 与里尓之母能乎
訓読 吾(あ)が身こそ関山越えてここにあらめ心は妹に寄りにしものを
私訳 私の体だけは貴方から離れて関所や山を越えてここにあるが、私の気持ちは貴方に寄り添っているのだけど。

集歌3758 佐須太氣能 大宮人者 伊麻毛可母 比等奈夫理能未 許能美多流良武
訓読 さす竹(たき)の大宮人は今もかも人なふりのみ好みたるらむ
私訳 力強く成長する竹のように発展する都の人達は、今でも漢詩や仏典の流行だけを好んでいるようだ。

集歌3759 多知可敝里 奈氣杼毛安礼波 之流思奈美 於毛比和夫礼弖 奴流欲之曽於保伎
訓読 たちかへり泣けども吾(あ)れは験(しるし)なみ思ひわぶれて寝(ぬ)る夜しぞ多き
私訳 繰り返し泣いているけど私には貴方に逢える現実がなくて、思い悲しんで寝る夜が多いことです。

集歌3760 左奴流欲波 於保久安礼杼母 毛能毛波受 夜須久奴流欲波 佐祢奈伎母能乎
訓読 さ寝(ぬ)る夜は多くあれども物(もの)思(も)はず安く寝(ぬ)る夜は実(さね)なきものを
私訳 寝る夜は幾夜もありますが、物思いをせずに気持ちよく寝る夜はまったくありません。

集歌3761 与能奈可能 都年能己等和利 可久左麻尓 奈里伎尓家良之 須恵之多祢可良
訓読 世の中の常(つね)の道理(ことわり)かくさまになり来(き)にけらし据(すゑ)し多(ま)ねから
私訳 世の中の普通の人の感情の自然な道理は、このような姿になってくるらしい。貴方に心を預ける回数が多くなったから。

集歌3762 和伎毛故尓 安布左可山乎 故要弖伎弖 奈伎都々乎礼杼 安布余思毛奈之
訓読 吾妹子に逢(あ)ふ坂山(さかやま)を越えて来て泣きつつ居れど逢ふよしもなし
私訳 私の尊敬する貴方に逢う坂や山を越えて来て泣き暮らしているが、貴方に逢う方法がありません。

集歌3763 多婢等伊倍婆 許登尓曽夜須伎 須敝毛奈久 々流思伎多婢毛 許等尓麻左米也母
訓読 旅と云へば事にぞやすき術(すべ)もなく苦しき旅も事にまさめやも
私訳 草枕のような旅のようなものと云へば物事は簡単ですが、その草枕の苦しい旅も、どう編纂して良いのか判らない万葉集の編纂に比べて勝るでしょうか。

集歌3764 山川乎 奈可尓敝奈里弖 等保久登母 許己呂乎知可久 於毛保世和伎母
訓読 山川を中(なか)にへなりて遠くとも心を近く思ほせ吾妹(わぎも)
私訳 山や川を間に挟んで隔たって遠くにいますが、私の気持ちは近くにあると想ってください、私の尊敬する貴方。

集歌3765 麻蘇可我美 可氣弖之奴敝等 麻都里太須 可多美乃母能乎 比等尓之賣須奈
訓読 真澄鏡(まそかがみ)懸(か)けて偲(しぬ)へと奉(まつ)り出す形見のものを人に示(しめ)すな
私訳 見たいものを見せると云う真澄鏡を榊に懸けて、「鏡よ。あの人を偲び見せよ。」と祈願して取り出す貴方の形見の品を、他の人には見せないでください。

集歌3766 宇流波之等 於毛比之於毛波婆 之多婢毛尓 由比都氣毛知弖 夜麻受之努波世
訓読 愛(うるは)しと思ひし思はば下紐に結ひつけ持ちてやまず偲(しの)はせ
私訳 この万葉集の草稿をすばらしいと私が思ったお思いでしたら、常に身に着けて飽きることなく万葉集を偲んで下さい。
右十三首、中臣朝臣宅守
注訓 右は十三首、中臣朝臣宅守

集歌3767 多麻之比波 安之多由布敝尓 多麻布礼杼 安我牟祢伊多之 古非能之氣吉尓
訓読 魂(たましひ)は朝夕(あしたゆふへ)に給(たま)わるふれど吾(あ)が胸痛(いた)し恋の繁(しき)きに
私訳 貴方の万葉集の編纂の精神を朝に夕べに心を通わせて頂いていますが、私の気持ちは心痛いのです、貴方を慕う気持ちが激しくて。

集歌3768 己能許呂波 君乎於毛布等 須敝毛奈伎 古非能未之都々 祢能未之曽奈久
訓読 このころは君を思ふと術(すべ)もなき恋のみしつつ哭(ね)のみしぞ泣く
私訳 近頃は貴方のことを思うと、どうしようもありません。尊敬の念を持って万葉集の編纂の難しさを怨みながら泣いています。

集歌3769 奴婆多麻乃 欲流見之君乎 安久流安之多 安波受麻尓之弖 伊麻曽久夜思吉
訓読 ぬばたまの夜(よる)見し君を明くる朝(あした)逢はずまにして今ぞ悔しき
私訳 暗闇の夜の夢に見る貴方を、夜が明ける日中は遠く離れて住んでいるためにお目にかかれないままにして、今はそれが残念です。

集歌3770 安治麻野尓 屋杼礼流君我 可反里許武 等伎能牟可倍乎 伊都等可麻多武
訓読 あぢ真野に宿れる君が帰り来む時の迎へをいつとか待たむ
私訳 配流地のあぢの群れが鳴き騒ぐ原野に宿泊されている貴方が帰ってくる時のお迎えは何時かと待っています。
注意 普段の解説は「安治麻野」を味真野と訓読みして越前市味真野を示しますが、万葉集では「あぢ」はアジ鴨を指します。私は「あぢ真野」を一般名称としてアジ鴨の棲む原野としています。

集歌3771 宮人能 夜須伊毛祢受弖 家布々々等 麻都良武毛能乎 美要奴君可聞
訓読 宮人の安寝(やすい)も寝(ね)ずて今日(けふ)今日と待つらむものを見えぬ君かも
私訳 私は宮人たちがぐっすり寝る夜も安眠できずに、貴方が帰ってくるのは今日か今日かと待っているのに、お見えにならない貴方です。

集歌3772 可敝里家流 比等伎多礼里等 伊比之可婆 保等保登之尓吉 君香登於毛比弖
訓読 帰りける人(ひと)来(き)たれりと言ひしかばほとほと死にき君かと思ひて
私訳 帰って来る人が来たと云ったので、ほとんど死にそうになりました。貴方かと思って。

集歌3773 君我牟多 由可麻之毛能乎 於奈自許等 於久礼弖乎礼杼 与伎許等毛奈之
訓読 君が共(むた)行かましものを同じこと後(おく)れて居(を)れど良(よ)きこともなし
私訳 貴方と一緒に行けばよかったものを、居残っていても同じこと、ここに残っていても良いことはなにもありません。

集歌3774 和我世故我 可反里吉麻佐武 等伎能多米 伊能知能己佐牟 和須礼多麻布奈
訓読 吾(あ)が背子が帰り来(き)まさむ時のため命残さむ忘れたまふな
私訳 私の大切な貴方が帰って来られる時のために、私の命を残しましょう、私をお忘れにならないで下さい。
右八首、娘子
注訓 右は八首、娘子

集歌3775 安良多麻能 等之能乎奈我久 安波射礼杼 家之伎己許呂乎 安我毛波奈久尓
訓読 あらたまの年の緒長く逢はざれど異(け)しき心を吾(あ)が思はなくに
私訳 新霊のよみがえる年月長く貴方に逢わないけれど、和歌から漢詩への浮気心を私は思ってもいません。

集歌3776 家布毛可母 美也故奈里世婆 見麻久保里 尓之能御馬屋乃 刀尓多弖良麻之
訓読 今日もかも都なりせば見まく欲(ほ)り西の御厩(みまや)の外(と)に立てらまし
私訳 今日もまた、貴方が都にいたならばと逢いたく思い、西の馬屋の外に立っているのに。
右二首、中臣朝臣宅守
注訓 右は二首、中臣朝臣宅守

集歌3777 伎能布家布 伎美尓安波受弖 須流須敝能 多度伎乎之良尓 祢能未之曽奈久
訓読 昨日(きのふ)今日(けふ)君に逢はずてする術(すべ)のたどきを知らに哭(ね)のみしぞ泣く
私訳 昨日も今日も貴方に逢うことなく行う万葉集の編纂ですが、その編纂する方法が判らなくて怨みながら泣いています。

集歌3778 之路多倍乃 阿我許呂毛弖乎 登里母知弖 伊波敝和我勢古 多太尓安布末弖尓
訓読 白栲の吾(あ)が衣手を取り持ちて斎(いは)へ吾(わ)が背子直(ただ)に逢ふまでに
私訳 神に祈って白栲の私の衣の中の手による草稿を取り持って、その完成を祈って下さい。私の尊敬する貴方、直接にお目にかかるまで。
右二首、娘子
注訓 右は二首、娘子

 どうでしたか、都で引き継いだ万葉集後編「宇梅乃波奈」の編纂に苦戦する中臣宅守から伊豆国に流された丹比国人への便りになったでしょうか。これは呆れた私訳ですので、正統な意訳とはまったく違う空想の世界です。アハハ、そうかい。と御笑納下さい。
なお、橘奈良麻呂の変で失権していた孝謙天皇は天平宝字八年に恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱を平定して称徳天皇として復権しますが、そのときに伊豆国に流された丹比国人が都に戻ってきた記事やその後に彼が詠ったとした和歌は記録や万葉集には見えません。既に、丹比国人は暗殺されたか、病死していたのでしょう。

コメント   この記事についてブログを書く
« 竹取翁の歌のお勉強 長歌の... | トップ | 竹取翁の歌のお勉強 長歌の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

万葉集 竹取翁の歌を鑑賞する」カテゴリの最新記事