竹取翁と万葉集のお勉強

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後撰和歌集(原文推定、翻文、解釈付)巻七

2020年07月26日 | 後撰和歌集 原文推定
後撰和歌集(原文推定、翻文、解釈付)
奈々末幾仁安多留未幾
巻七

秋歌下
安幾乃宇多之多

歌番号三五一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 布知者可末幾累比止奈美也多知奈可良志久礼乃安眼女尓奴良之曽女川留
定家 布知袴幾累人奈美也立奈可良志久礼乃雨尓奴良之曽女川留
和歌 ふちはかま きるひとなみや たちなから しくれのあめに ぬらしそめつる
解釈 藤袴着る人なみや立ちながら時雨の雨に濡らしそめつる

歌番号三五二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 安幾可世尓安飛止之安部者々那春々幾以川礼止毛奈久本尓曽以天个留
定家 秋風尓安飛止之安部者花春々幾以川礼止毛奈久本尓曽以天个留
和歌 あきかせに あひとしあへは はなすすき いつれともなく ほにそいてける
解釈 秋風にあひとしあへば花薄いづれともなく穂にぞ出でける

歌番号三五三
可武部為乃於保武止幾々左以乃美也乃宇多安者世尓
寛平御時幾左以乃宮乃哥合尓
寛平御時、后宮の歌合に

安利八良乃武祢也奈
在原棟梁
在原棟梁

原文 者那春々幾曽与止毛春礼者安幾可世乃不久可止曽幾久比止利奴留与八
定家 花春々幾曽与止毛春礼者秋風乃布久可止曽幾久比止利奴留与八
和歌 はなすすき そよともすれは あきかせの ふくかとそきく ひとりぬるよは
解釈 花薄そよともすれば秋風の吹くかとぞ聞く一人寝る夜は

歌番号三五四
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 者那寸々起本尓以天也寸幾久左奈礼者三尓奈良武止者堂乃万礼奈久尓
定家 者那寸々起本尓以天也寸幾草奈礼者身尓奈良武止者堂乃万礼奈久尓
和歌 はなすすき ほにいてやすき くさなれは みにならむとは たのまれなくに
解釈 花薄穂に出でやすき草なれば身にならむとは頼まれなくに

歌番号三五五
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 安き可世尓佐曽者礼和多留可利可祢者久毛為者留可尓遣不曽幾己由留
定家 秋風尓佐曽者礼和多留雁可祢者雲為者留可尓遣不曽幾己由留
和歌 あきかせに さそはれわたる かりかねは くもゐはるかに けふそきこゆる
解釈 秋風に誘はれわたる雁が音は雲ゐはるかに今日ぞ聞こゆる

歌番号三五六
己之乃可多尓於毛不比止者部利个留止幾尓
己之乃方尓思不人侍个留時尓
越の方に思ふ人侍ちける時に

川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安幾乃与尓可利可毛奈幾天和多留奈利王可於毛不比止乃己止川天也世之
定家 秋乃与尓雁可毛奈幾天和多留奈利王可思不人乃事川天也世之
和歌 あきのよに かりかもなきて わたるなり わかおもふひとの ことつてやせし
解釈 秋の夜に雁かも鳴きて渡るなり我が思ふ人の事づてやせし

歌番号三五七
堂以之良春
題之良春
題しらす

川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安幾可世尓幾利止比和遣天久留可利能千世尓加者良奴己恵幾己由奈利
定家 安幾風尓霧止比和遣天久留可利能千世尓加者良奴声幾己由奈利
和歌 あきかせに きりとひわけて くるかりの ちよにかはらぬ こゑきこゆなり
解釈 秋風に霧飛び分けて来る雁の千世に変らぬ声聞こゆなり

歌番号三五八
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 者乃於毛不止川幾比乃由久毛志良左利川加利己曽奈幾天安幾止川計川礼
定家 物思止月日乃由久毛志良左利川加利己曽奈幾天秋止川計川礼
和歌 ものおもふと つきひのゆくも しらさりつ かりこそなきて あきとつけけれ
解釈 物思ふと月日の行くも知らざりつ雁こそ鳴きて秋と告げつれ

歌番号三五九
也万止尓万可利个留徒以天尓
也万止尓万可利个留徒以天尓
大和にまかりけるついでに

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 加利可祢乃奈幾川留奈部尓可良己呂毛多川太乃也万者毛美知志尓个利
定家 加利可祢乃奈幾川留奈部尓唐衣多川太乃山者毛美知志尓个利
和歌 かりかねの なきつるなへに からころも たつたのやまは もみちしにけり
解釈 雁が音の鳴きつるなへに唐衣竜田の山はもみぢしにけり

歌番号三六〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾可世尓左曽者礼和多留加利可祢者毛乃於毛不比止乃也止遠与可奈无
定家 秋風尓左曽者礼渡加利可祢者物思人乃也止遠与可南
和歌 あきかせに さそはれわたる かりかねは ものおもふひとの やとをよかなむ
解釈 秋風に誘はれ渡る雁が音は物思ふ人の宿をよかなん

歌番号三六一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 多礼幾計止奈久可利可祢曽和可也止乃於者奈可春恵遠寸幾可天尓之天
定家 誰幾計止鳴雁金曽和可也止乃於花可末遠過可天尓之天
和歌 たれきけと なくかりかねそ わかやとの をはなかすゑを すきかてにして
解釈 誰れ聞けと鳴く雁が音ぞ我が宿の尾花が末を過ぎがてにして

歌番号三六二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 以幾可部利己々毛加之己毛多比奈礼也久留安幾己止尓加里/\止奈久
定家 往還利己々毛加之己毛旅奈礼也久留秋己止尓加里/\止奈久
和歌 ゆきかへり ここもかしこも たひなれや くるあきことに かりかりとなく
解釈 往き還りここもかしこも旅なれや来る秋ごとにかりかりと鳴く

歌番号三六三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾己止尓久礼止加部礼者堂乃万奴遠己恵尓多天川々加利止乃美奈具
定家 秋己止尓久礼止加部礼者堂乃万奴遠声尓多天川々加利止乃美奈具
和歌 あきことに くれとかへれは たのまぬを こゑにたてつつ かりとのみなく
解釈 秋ごとに来れど帰れば頼まぬを声に立てつつかりとのみ鳴く

歌番号三六四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 飛多寸良尓和可於毛者奈具尓遠乃礼左部加利/\止乃美奈幾和多留良无
定家 飛多寸良尓和可於毛者奈具尓遠乃礼左部加利/\止乃美奈幾和多留良无
和歌 ひたすらに わかおもはなくに おのれさへ かりかりとのみ なきわたるらむ
解釈 ひたすらに我が思はなくに己れさへかりかりとのみ鳴き渡るらん

歌番号三六五
比止乃加利者幾尓个利止毛不寸遠幾々天
人乃加利者幾尓个利止申寸遠幾々天
人の「雁は来にけり」と申すを聞きて

美川祢
美川祢
みつね(凡河内躬恒)

原文 止之己止尓久毛地万止者奴加利可祢者己々呂川可良也安幾遠志留良武
定家 年己止尓雲地万止者奴加利可祢者心川可良也秋遠志留良武
和歌 としことに くもちまとはぬ かりかねは こころつからや あきをしるらむ
解釈 年ごとに雲路まどはぬ雁が音は心づからや秋を知るらむ

歌番号三六六
也万止尓万可利个留止幾加礼己礼止毛尓天
也万止尓万可利个留時加礼己礼止毛尓天
大和にまかりける時、かれこれともにて

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安満乃可者加利曽止和多留左本也万乃己春恵者武部毛以呂川幾尓个里
定家 天河加利曽止和多留左本山乃己春恵者武部毛色川幾尓个里
和歌 あまのかは かりそとわたる さほやまの こすゑはうへも いろつきにけり
解釈 天の河雁ぞと渡る佐保山の梢はむべも色づきにけり

歌番号三六七
可祢也春乃安曾无左己无乃之由宇之由宇尓者部利个留止幾
武左之乃遠保无武万武可部尓満可利堂川比
仁者可尓佐者留己止安利天加者利仁於奈之川可佐乃
之由宇之由宇尓天武可部尓万加利天安不佐可与利
寸以之无遠可部之天以比遠久利者部利个留
兼輔朝臣左近少将尓侍个留時武左之乃御武万
武可部尓満可利堂川日仁者可尓佐者留己止安利天加
者利仁於奈之川可佐乃少将尓天武可部尓万加利天
安不佐可与利随身遠可部之天以比遠久利侍个留
兼輔朝臣、左近少将に侍りける時、
武蔵の御馬迎へにまかり立つ日、
にはかに障ることありて、代りに同じ司の
少将にて迎へにまかりて、逢坂より
随身を帰して言ひ送り侍りける

布知八良乃多々不左乃安曾无
藤原忠房朝臣
藤原忠房朝臣

原文 安幾々利乃堂知乃々駒遠飛久止幾者己々呂尓乃利天幾美曽己比之幾
定家 秋幾利乃堂知乃々駒遠飛久時者心尓乃利天君曽己比之幾
和歌 あききりの たちののこまを ひくときは こころにのりて きみそこひしき
解釈 秋霧のたちのの駒をひく時は心に乗りて君ぞ恋ひしき

歌番号三六八
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

安利八良乃毛止可多
在原元方
在原元方

原文 以曽乃可美布留乃々久左毛安幾者奈保以呂己止尓己曽安良多万利个礼
定家 以曽乃神布留乃々草毛秋者猶色己止尓己曽安良多万利个礼
和歌 いそのかみ ふるののくさも あきはなほ いろことにこそ あらたまりけれ
解釈 石上布留野の草も秋はなほ色ことにこそあらたまりけれ

歌番号三六九
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾乃々乃尓之幾乃己止毛美由留可奈以呂奈幾川由者曽女之止遠毛不尓
定家 秋乃野々錦乃己止毛見由留哉色奈幾川由者曽女之止思尓
和歌 あきののの にしきのことも みゆるかな いろなきつゆは そめしとおもふに
解釈 秋の野の錦のごとも見ゆるかな色なき露は染めじと思ふに

歌番号三七〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾乃々尓以可奈留川由乃遠幾川女者知々乃久左者乃以呂加者留良无
定家 安幾乃々尓以可奈留川由乃遠幾川女者知々乃草葉乃色加者留良无
和歌 あきののに いかなるつゆの おきつめは ちちのくさはの いろかはるらむ
解釈 秋の野にいかなる露の置き積めば千々の草葉の色変るらん

歌番号三七一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 伊川礼遠可和幾天志乃者武安幾乃々尓宇川呂者武止天以呂加者留久左
定家 伊川礼遠可和幾天志乃者武秋乃々尓宇川呂者武止天色加者留草
和歌 いつれをか わきてしのはむ あきののに うつろはむとて いろかはるくさ
解釈 いづれをかわきて偲ばむ秋の野に移ろはむとて色変る草

歌番号三七二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

幾乃止毛乃利
紀友則
紀友則

原文 己恵堂天々奈幾曽志奴部幾安幾々利尓友万止者世留志可尓者安良子止
定家 声堂天々奈幾曽志奴部幾秋幾利尓友万止者世留志可尓者安良子止
和歌 こゑたてて なきそしぬへき あききりに ともまとはせる しかにはあらねと
解釈 声立てて泣きぞしぬべき秋霧に友まどはせる鹿にはあらねど

歌番号三七三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 多礼幾个止己恵多可左己尓左遠之可乃奈可/\之与遠飛止利奈久良无
定家 誰幾个止声高砂尓左遠之可乃奈可/\之夜遠飛止利奈久良无
和歌 たれきけと こゑたかさこに さをしかの なかなかしよを ひとりなくらむ
解釈 誰れ聞けど声高砂にさを鹿の長々し夜を一人鳴くらん

歌番号三七四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美飛止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 宇知者部天可个止曽多乃武三祢乃末川以呂止留安幾乃可世尓宇川留奈
定家 打者部天影止曽多乃武峯乃松色止留秋乃風尓宇川留奈
和歌 うちはへて かけとそたのむ みねのまつ いろとるあきの かせにうつるな
解釈 うちはへて影とぞ頼む峯の松色どる秋の風にうつるな

歌番号三七五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 者川之久礼布礼者也万部曽於毛本由留以川礼乃可多可万川毛美川良无
定家 者川之久礼布礼者山部曽於毛本由留以川礼乃方可万川毛美川良无
和歌 はつしくれ ふれはやまへそ おもほゆる いつれのかたか まつもみつらむ
解釈 初時雨降れば山辺ぞ思ほゆるいづれの方かまづもみづらん

歌番号三七六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 以毛可比毛止久止武春不止太川多也満以末曽毛美知乃尓之幾遠利个累
定家 以毛可比毛止久止武春不止太川多山今曽紅葉乃錦遠利个累
和歌 いもかひも とくとむすふと たつたやま いまそもみちの にしきおりける
解釈 妹が紐解くと結ぶと竜田山今ぞ紅葉の錦織りける

歌番号三七七
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 可利奈幾天左无幾安之多乃川由奈良之太川多乃也万遠毛美多寸毛乃者
定家 雁奈幾天寒幾朝乃露奈良之龍田乃山遠毛美多寸物者
和歌 かりなきて さむきあしたの つゆならし たつたのやまを もみたすものは
解釈 雁鳴きて寒き朝の露ならし竜田の山をもみだす物は

歌番号三七八
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 三留己止尓安幾尓毛奈留可奈堂川多比女毛美知曽武止也也満毛幾留良无
定家 見留己止尓秋尓毛奈留哉堂川多比女毛美知曽武止也山毛幾留良无
和歌 みることに あきにもなるかな たつたひめ もみちそむとや やまもきるらむ
解釈 見るごとに秋にもなるかな竜田姫もみぢ染むとや山も着るらん

歌番号三七九
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

美奈毛堂乃武祢由幾乃安曾无
源宗于朝臣
源宗于朝臣

原文 安川左由美以留佐乃也満者安幾々利乃安多留己止尓也以呂万左留良无
定家 梓弓以留佐乃山者秋幾利乃安多留己止尓也色万左留覧
和歌 あつさゆみ いるさのやまは あききりの あたることにや いろまさるらむ
解釈 梓弓入佐の山は秋霧のあたるごとにや色まさるらん

歌番号三八〇
者良可良止知以可奈留己止可者部利个无
者良可良止知以可奈留己止可侍个无
はらからとちいかなることか侍りけん

与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす

原文 幾美止和礼以毛世乃也満毛安幾久礼者以呂加者利奴留毛乃尓曽安利个留
定家 君止我以毛世乃山毛秋久礼者色加者利奴留物尓曽安利个留
和歌 きみとわれ いもせのやまも あきくれは いろかはりぬる ものにそありける
解釈 君と我妹背の山も秋来れば色変りぬる物にぞありける

歌番号三八一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

毛止可多
毛止可多
もとかた(在原元方)

原文 遠曽久止具以呂川久也万乃毛美知者々遠久礼左幾堂川々由也遠久良无
定家 遠曽久止具色川久山乃毛美知者々遠久礼左幾堂川々由也遠久良无
和歌 おそくとく いろつくやまの もみちはは おくれさきたつ つゆやおくらむ
解釈 遅く疾く色づく山のもみぢばは遅れ先立つ露や置くらん

歌番号三八二
堂川多也万遠己由止天
堂川多山遠己由止天
竜田山を越ゆとて

止毛乃利
止毛乃利
とものり(紀友則)

原文 加久者可利毛美川留以呂乃己遣礼者也尓之幾堂川多乃也満止以不良武
定家 加久許毛美川留色乃己遣礼者也錦堂川多乃山止以不良武
和歌 かくはかり もみつるいろの こけれはや にしきたつたの やまといふらむ
解釈 かくばかりもみづる色の濃ければや錦たつたの山といふらむ

歌番号三八三
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 可良己呂毛堂川多乃也満乃毛美知者々毛乃於毛不飛止乃多毛止奈利个利
定家 唐衣堂川多乃山乃毛美知者々物思人乃多毛止奈利个利
和歌 からころも たつたのやまの もみちはは ものおもふひとの たもとなりけり
解釈 唐衣竜田の山のもみぢ葉は物思ふ人の袂なりけり

歌番号三八四
毛留也万遠己由止天
毛留山遠己由止天
守山を越ゆとて

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安之比幾乃也満乃也満毛利毛留也万毛々美知世左寸留安幾者幾尓遣利
定家 葦引乃山乃山毛利毛留山毛紅葉世左寸留秋者幾尓遣利
和歌 あしひきの やまのやまもり もるやまも もみちせさする あきはきにけり
解釈 あしひきの山の山もり守山も紅葉せさする秋は来にけり

歌番号三八五
堂以之良春
題之良春
題しらす

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 加良尓之幾多川多乃也万毛以満与利者毛美知奈可良尓止幾者奈良奈无
定家 唐錦多川多乃山毛今与利者毛美知奈可良尓止幾者奈良奈无
和歌 からにしき たつたのやまも いまよりは もみちなからに ときはならなむ
解釈 唐錦竜田の山も今よりはもみぢながらに常盤ならなん

歌番号三八六
堂以之良春
題之良春
題しらす

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 加良己呂毛堂川多乃也満乃毛美知八々波多毛乃毛奈幾尓之幾奈利个利
定家 加良衣堂川多乃山乃毛美知八々波多物毛奈幾錦奈利个利
和歌 からころも たつたのやまの もみちはは はたものもなき にしきなりけり
解釈 唐衣竜田の山のもみぢ葉は織機物もなき錦なりけり

歌番号三八七
飛止/\毛呂止毛尓者万川良遠満可留美知尓
也満乃毛美知遠己礼可礼与美者部利个留尓
人/\毛呂止毛尓者万川良遠満可留美知尓
山乃毛美知遠己礼可礼与美侍个留尓
人々もろともに浜づらをまかる道に、
山の紅葉をこれかれよみ侍りけるに

堂々美祢
堂々美祢
たたみね(壬生忠岑)

原文 以久幾止毛衣己曽三和可祢安幾也万乃毛美知乃尓之幾与曽尓多天礼八
定家 以久木止毛衣己曽見和可祢秋山乃毛美知乃錦与曽尓多天礼八
和歌 いくきとも えこそみわかね あきやまの もみちのにしき よそにたてれは
解釈 いく木ともえこそ見わかね秋山の紅葉の錦よそに立てれば

歌番号三八八
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与三比止毛
与三人毛
よみ人も

原文 安幾加世乃宇知不久可良尓也万毛乃毛奈部天尓之幾尓遠利加部寸可奈
定家 秋風乃宇知吹可良尓山毛乃毛奈部天錦尓遠利加部寸哉
和歌 あきかせの うちふくからに やまものも なへてにしきに おりかへすかな
解釈 秋風のうち吹からに山ものもなへて錦にをりかへす哉

歌番号三八九
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与三比止毛
与三人毛
よみ人も

原文 奈止佐良尓安幾可止々者武加良尓之幾太川多乃也万乃毛美知寸留与遠
定家 奈止佐良尓秋可止々者武加良尓之幾太川多乃山乃紅葉寸留与遠
和歌 なとさらに あきかととはむ からにしき たつたのやまの もみちするよを
解釈 なとさらに秋かとゝはむからにしきたつたの山の紅葉するよを

歌番号三九〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与三比止毛
与三人毛
よみ人も

原文 安多奈利止和礼者三奈久尓毛美知者遠以呂乃加者礼安幾之奈个礼八
定家 安多奈利止我者見奈久尓毛美知者遠色乃加者礼留秋之奈个礼八
和歌 あたなりと われはみなくに もみちはを いろのかはれる あきしなけれは
解釈 あだなりと我は見なくにもみぢ葉を色の変れる秋しなければ

歌番号三九一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 多満加徒良可川良幾也満乃毛美知者々於毛加个尓乃美々衣和多留可奈
定家 玉加徒良葛木山乃毛美知者々於毛加个尓乃美々衣和多留哉
和歌 たまかつら かつらきやまの もみちはは おもかけにのみ みえわたるかな
解釈 玉かづら葛木山のもみぢ葉は面影にのみ見えわたるかな

歌番号三九二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安幾々利乃堂知之加久世者毛美知者々於保川可奈久天知利奴部良奈利
定家 秋霧乃堂知之加久世者毛美知者々於保川可奈久天知利奴部良也
和歌 あききりの たちしかくせは もみちはは おほつかなくて ちりぬへらなり
解釈 秋霧の立ちし隠せばもみぢ葉はおぼつかなくて散りぬべらなり

歌番号三九三
加々美也万遠己由止天
鏡山遠己由止天
鏡山を越ゆとて

曽世以本宇之
曽世以本宇之
そせいほうし(素性法師)

原文 加々美也万也万加幾久毛利志久留礼止毛美知安可久曽安幾者三衣遣流
定家 加々美山々加幾久毛利志久留礼止毛美知安可久曽秋者見衣遣流
和歌 かかみやま やまかきくもり しくるれと もみちあかくそ あきはみえける
解釈 鏡山山かきくもりしぐるれど紅葉あかくぞ秋は見えける

歌番号三九四
止奈利尓春美者部利个留止幾奈可川幾乃与宇可以世可以部乃幾久尓
和多遠幾世尓徒可者之堂利个礼者万多乃安之多於利天加部寸止天
止奈利尓春美侍个留時九月八日伊勢可家乃菊尓
和多遠幾世尓徒可者之堂利个礼者又乃安之多於利天加部寸止天
隣に住み侍りける時、九月八日、伊勢が家の菊に
綿を着せにつかはしたりければ、又の朝折りて返すとて

以世
伊勢
伊勢

原文 加春志良寸幾美可与者比遠乃者部徒々奈多々留也止乃川由止奈良奈无
定家 加春志良寸君可与者比遠乃者部徒々奈多々留也止乃川由止奈良南
和歌 かすしらす きみかよはひを のはへつつ なたたるやとの つゆとならなむ
解釈 数知らず君が齢を延ばへつつ名立たる宿の露とならなん

歌番号三九五
加部之
返之
返し

布知八良乃万佐多々
藤原雅正
藤原雅正

原文 川由多尓毛名多々留也止乃幾久奈良者者奈乃安留之也以久与奈留良无
定家 露多尓毛名多々留也止乃菊奈良者花乃安留之也以久与奈留良无
和歌 つゆたにも なたたるやとの きくならは はなのあるしや いくよなるらむ
解釈 露だにも名立たる宿の菊ならば花の主人やいく世なるらん

歌番号三九六
奈可川幾乃己々奴可徒留乃奈久奈利尓个礼者
九月九日徒留乃奈久奈利尓个礼者
九月九日、鶴の亡くなりにければ

以世
伊勢
伊勢

原文 幾久乃宇部尓越幾為留部久毛安良奈久尓知止世乃三遠毛川由尓奈寸加奈
定家 菊乃宇部尓越幾為留部久毛安良奈久尓知止世乃身遠毛川由尓奈寸加奈
和歌 きくのうへに おきゐるへくも あらなくに ちとせのみをも つゆになすかな
解釈 菊の上に置きゐるべくもあらなくに千歳の身をも露になすかな

歌番号三九七
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 幾久乃者奈可川幾己止尓佐幾久礼者飛左之幾己々呂安幾也志留良无
定家 幾久乃花長月己止尓佐幾久礼者飛左之幾心秋也志留良无
和歌 きくのはな なかつきことに さきくれは ひさしきこころ あきやしるらむ
解釈 菊の花長月ごとに咲き来れば久しき心秋や知るらむ

歌番号三九八
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 名尓之於部者奈可川幾己止尓幾美可多女加幾祢乃幾久者尓本部止曽於毛不
定家 名尓之於部者奈可月己止尓君可多女加幾祢乃菊者尓本部止曽思
和歌 なにしおへは なかつきことに きみかため かきねのきくは にほへとそおもふ
解釈 名にし負へば長月ごとに君がため垣根の菊は匂へとぞ思ふ

歌番号三九九
保可乃幾久遠宇川之宇部天
保可乃幾久遠宇川之宇部天
ほかの菊を移し植ゑて

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 布留左止遠和加礼天佐个留幾久乃者奈堂比奈可良己曽尓保不部良奈礼
定家 旧里遠別天佐个留菊乃花堂比奈可良己曽尓保不部良奈礼
和歌 ふるさとを わかれてさける きくのはな たひなからこそ にほふへらなれ
解釈 ふる里を別れて咲ける菊の花旅ながらこそ匂ふべらなれ

歌番号四〇〇
越止己乃飛左之宇万天己佐利个礼者
越止己乃飛左之宇万天己佐利个礼者
男の久しうまで来ざりければ

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 何尓幾久以呂曽女加部之尓保不良无者奈毛天者也寸幾美毛己奈久尓
定家 何尓菊色曽女加部之尓保不覧花毛天者也寸君毛己奈久尓
和歌 なににきく いろそめかへし にほふらむ はなもてはやす きみもこなくに
解釈 何に菊色染めかへし匂ふらん花もてはやす君も来なくに

歌番号四〇一
川久与尓毛美知乃知留遠三天
月与尓紅葉乃知留遠見天
月夜に紅葉の散るを見て

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 毛美知者乃知利久留三礼者奈加川幾乃安利安个乃川幾乃加川良奈留良之
定家 毛美知者乃知利久留見礼者長月乃安利安个乃月乃桂奈留良之
和歌 もみちはの ちりくるみれは なかつきの ありあけのつきの かつらなるらし
解釈 もみぢ葉の散り来る見れば長月の有明の月の桂なるらし

歌番号四〇二
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 伊久知者多遠礼者可安幾乃也万己止尓可世尓美多留々尓之幾奈留良无
定家 伊久知者多遠礼者可秋乃山己止尓風尓美多留々錦奈留良无
和歌 いくちはた おれはかあきの やまことに かせにみたるる にしきなるらむ
解釈 いく千機織ればか秋の山ごとに風に乱るる錦なるらん

歌番号四〇三
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 奈遠左利尓安幾乃也満徒遠己衣久礼者遠良奴尓之幾遠幾奴飛止曽奈幾
定家 奈遠左利尓秋乃山部遠己衣久礼者遠良奴錦遠幾奴人曽奈幾
和歌 なほさりに あきのやまへを こえくれは おらぬにしきを きぬひとそなき
解釈 なほざりに秋の山辺を越え来れば織らぬ錦を着ぬ人ぞなき

歌番号四〇四
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 毛美知者遠和个川々由个者尓之幾々天以部尓加部留止比止也三留良无
定家 毛美知者遠和个川々由个者錦幾天家尓帰止人也見留良无
和歌 もみちはを わけつつゆけは にしききて いへにかへると ひとやみるらむ
解釈 もみぢ葉を分けつつ行けば錦着て家に帰ると人や見るらん

歌番号四〇五
堂以之良春
題之良春
題しらす

川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 宇知武礼天為左和幾毛己可加々美也満己衣天毛美知乃知良武加遣三武
定家 宇知武礼天為左和幾毛己可加々美山己衣天毛美知乃知良武加遣見武
和歌 うちむれて いさわきもこか かかみやま こえてもみちの ちらむかけみむ
解釈 うち群れていざ我妹子が鏡山越えて紅葉の散らむ影見む

歌番号四〇六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 也満可世乃布幾乃満尓/\毛美知者々己乃毛加乃毛尓知利奴部良奈利
定家 山可世乃布幾乃満尓/\毛美知者々己乃毛加乃毛尓知利奴部良也
和歌 やまかせの ふきのまにまに もみちはは このもかのもに ちりぬへらなり
解釈 山風の吹きのまにまにもみぢ葉はこのもかのもに散りぬべらなり

歌番号四〇七
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾乃与尓安女止幾己江天布利川留八加世尓美多留々毛美知奈利遣利
定家 秋乃夜尓雨止幾己江天布利川留八風尓美多留々紅葉奈利遣利
和歌 あきのよに あめときこえて ふりつるは かせにみたるる もみちなりけり
解釈 秋の夜に雨と聞こえて降りつるは風に乱るる紅葉なりけり

歌番号四〇八
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 多知与利天三留部幾飛止乃安礼者己曽安幾乃者也之尓々之幾之久良女
定家 立与利天見留部幾人乃安礼者己曽秋乃林尓々之幾之久良女
和歌 たちよりて みるへきひとの あれはこそ あきのはやしに にしきしくらめ
解釈 立ち寄りて見るべき人のあればこそ秋の林に錦敷くらめ

歌番号四〇九
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 己乃毛止尓遠良奴尓之幾乃川毛礼留者久毛乃者也之乃毛美知奈利个利
定家 己乃毛止尓遠良奴錦乃川毛礼留者雲乃林乃毛美知奈利个利
和歌 このもとに おらぬにしきの つもれるは くものはやしの もみちなりけり
解釈 木のもとに織らぬ錦の積もれるは雲の林の紅葉なりけり

歌番号四一〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安幾加世尓知留毛美知者々遠三奈部之也止尓遠利之久尓之幾奈利遣利
定家 秋風尓知留毛美知者々遠三奈部之也止尓遠利之久錦奈利遣利
和歌 あきかせに ちるもみちはは をみなへし やとにおりしく にしきなりけり
解釈 秋風に散るもみぢ葉は女郎花宿に織り敷く錦なりけり

歌番号四一一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 安之飛幾乃也満乃毛美地八知利尓个利安良之乃佐幾尓三天万之毛乃遠
定家 葦引乃山乃毛美地八知利尓个利嵐乃佐幾尓見天万之物遠
和歌 あしひきの やまのもみちは ちりにけり あらしのさきに みてましものを
解釈 あしひきの山の紅葉は散りにけり嵐の先に見てましものを

歌番号四一二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 毛美知波乃布利之久安幾乃也万徒己曽多知天久也之幾尓之幾奈利个礼
定家 毛美知波乃布利之久秋乃山部己曽多知天久也之幾尓之幾奈利个礼
和歌 もみちはの ふりしくあきの やまへこそ たちてくやしき にしきなりけれ
解釈 もみぢ葉の降り敷く秋の山辺こそ立ちて悔しき錦なりけれ

歌番号四一三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 堂川多加者以呂久礼奈衣尓奈利尓个利也満乃毛美知曽以満者知留良之
定家 堂川多河色紅尓奈利尓个利山乃毛美知曽今者知留良之
和歌 たつたかは いろくれなゐに なりにけり やまのもみちそ いまはちるらし
解釈 竜田河色紅になりにけり山の紅葉ぞ今は散るらし

歌番号四一四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

徒良由幾
徒良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 堂川多加者安幾尓之奈礼者也万知可美奈可留々美川毛毛美知志尓个利
定家 龍田河秋尓之奈礼者山知可美奈可留々水毛紅葉志尓个利
和歌 たつたかは あきにしなれは やまちかみ なかるるみつも もみちしにけり
解釈 竜田河秋にしなれば山近み流るる水も紅葉しにけり

歌番号四一五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 毛美知者乃奈可留々安幾者可者己止尓尓之幾安良不止飛止也三留良无
定家 毛美知葉乃奈可留々秋者河己止尓錦安良不止人也見留良无
和歌 もみちはの なかるるあきは かはことに にしきあらふと ひとやみるらむ
解釈 もみぢ葉の流るる秋は河ごとに錦洗ふと人や見るらん

歌番号四一六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 堂川多加者安幾者三川奈久安世奈々无安可奴毛美知乃奈可留礼八於之
定家 堂川多河秋者水奈久安世奈々无安可奴紅葉乃奈可留礼八於之
和歌 たつたかは あきはみつなく あせななむ あかぬもみちの なかるれはをし
解釈 竜田河秋は水なくあせななんあかぬ紅葉の流るれば惜し

歌番号四一七
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

布无也乃安左也寸
文室朝康
文屋朝康

原文 那美和遣天三留与之毛可奈和多川美乃曽己乃三留女毛々見知々留也止
定家 浪和遣天見留与之毛哉和多川美乃曽己乃見留女毛々見知々留也止
和歌 なみわけて みるよしもかな わたつみの そこのみるめも もみちちるやと
解釈 浪分けて見るよしもがなわたつみの底のみるめも紅葉散るやと

歌番号四一八
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

布知八良乃於幾可世
藤原興風
藤原興風

原文 己乃者知留宇良尓那美堂川安幾奈礼者毛美知尓者奈毛左幾万可日个利
定家 己乃葉知留浦尓浪堂川秋奈礼者毛美知尓花毛左幾万可日个利
和歌 このはちる うらになみたつ あきなれは もみちにはなも さきまかひけり
解釈 この葉散る浦に浪立つ秋なれば紅葉に花も咲きまがひけり

歌番号四一九
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 和多川美乃加美尓多武具留也満飛女乃奴左遠曽比止者毛美知止以日个留
定家 和多川美乃神尓多武具留山姫乃奴左遠曽人者毛美知止以日个留
和歌 わたつみの かみにたむくる やまひめの ぬさをそひとは もみちといひける
解釈 わたつみの神にたむくる山姫の幣をぞ人は紅葉といひける

歌番号四二〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 飛具良之乃己恵毛以止奈久幾己由留八安幾由不久礼尓奈礼者奈利个里
定家 飛具良之乃声毛以止奈久幾己由留八秋由不久礼尓奈礼者奈利个里
和歌 ひくらしの こゑもいとなく きこゆるは あきゆふくれに なれはなりけり
解釈 ひぐらしの声もいとなく聞こゆるは秋夕暮れになればなりけり

歌番号四二一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 可世乃遠止乃加幾利止安幾也世女川良无布幾久留己止仁己恵乃和日之幾
定家 風乃遠止乃限止秋也世女川良无布幾久留己止仁声乃和日之幾
和歌 かせのおとの かきりとあきや せめつらむ ふきくることに こゑのわひしき
解釈 風の音の限りと秋やせめつらん吹き来るごとに声のわびしき

歌番号四二二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 毛美知波尓多万礼留加利乃奈美多尓八川幾乃加个己曽宇徒留部良奈礼
定家 毛美知波尓多万礼留加利乃奈美多尓八月乃影己曽移留部良奈礼
和歌 もみちはに たまれるかりの なみたには つきのかけこそ うつるへらなれ
解釈 もみぢ葉にたまれる雁の涙には月の影こそ移るべらなれ

歌番号四二三
安飛之利天者部利个留於止己乃飛佐之宇止者寸者部利个連者
奈可川幾者可利尓川可八之个留
安飛之利天侍个留於止己乃飛佐之宇止者寸侍个連
奈可月者可利尓川可八之个留
あひ知りて侍りける男の久しう訪はず侍りければ、
長月ばかりにつかはしける

宇己无
右近
右近

原文 於保可多乃安幾乃曽良多尓和比之幾尓毛乃遠毛日曽不留幾美尓毛安留可奈
定家 於保可多乃秋乃曽良多尓和比之幾尓物思日曽不留君尓毛安留哉
和歌 おほかたの あきのそらたに わひしきに ものおもひそふる きみにもあるかな
解釈 おほかたの秋の空だにわびしきに物思ひ添ふる君にもあるかな

歌番号四二四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 和可己止久毛乃於毛日遣良之々良川由乃与遠以多川良尓越幾安可之川々
定家 和可己止久物思日遣良之々良川由乃与遠以多川良尓越幾安可之川々
和歌 わかことく ものおもひけらし しらつゆの よをいたつらに おきあかしつつ
解釈 わがごとく物思ひけらし白露の世をいたづらに置き明かしつつ

歌番号四二五
安飛之利天者部利个留飛止乃知/\万天己寸奈利尓个礼八
於止己乃於也幾々天奈保満可利止部止毛宇之遠之布止
幾々天乃知尓万天幾多利遣礼者
安飛之利天侍个留人乃知/\万天己寸奈利尓个礼八
於止己乃於也幾々天猶満可利止部止申遠之布止
幾々天乃知尓万天幾多利遣礼者
あひ知りて侍りける人、後々まで来ずなりにければ、
男の親聞きて、なほまかり訪へと申し教ふと
聞きて、後にまで来たりければ、

多比良乃己礼毛知乃安曾无乃无寸女
平伊望朝臣女
平伊望朝臣女

原文 安幾布可美与曽尓乃美幾久志良川由乃堂可己止乃波尓加々留奈留良无
定家 秋布可美与曽尓乃美幾久志良川由乃堂可己止乃波尓加々留奈留良无
和歌 あきふかみ よそにのみきく しらつゆの たかことのはに かかるなるらむ
解釈 秋深みよそにのみ聞く白露の誰が言の葉にかかるなるらん

歌番号四二六
加礼尓个留於止己乃安幾止部利个留尓
加礼尓个留於止己乃秋止部利个留尓
かれにける男の秋訪へりけるに

武可之乃之也宇幾与宇天无乃安己幾
武可之乃承香殿乃安己幾
むかしの承香殿のあこき(昔承香殿安己幾)

原文 登不己止乃安幾志毛満礼尓幾己由留者加利尓也和礼遠比止乃多乃女之
定家 登不己止乃秋志毛満礼尓幾己由留者加利尓也我遠人乃多乃女之
和歌 とふことの あきしもまれに きこゆるは かりにやわれを ひとのたのめし
解釈 訪ふごとの秋しもまれに聞こゆるはかりにや我を人の頼めし

歌番号四二七
毛美知止以呂己幾左以天止遠遠无奈乃毛止尓川可者之天
紅葉止色己幾左以天止遠女乃毛止尓川可者之天
紅葉と色濃き裂いでとを女のもとにつかはして

美奈毛止乃止々乃不
美奈毛止乃止々乃不
みなもとのととのふ(源整)

原文 幾美己不止奈美堂尓奴留々和可曽天止安幾乃毛美知止以川礼万佐礼利
定家 君己不止涙尓奴留々和可袖止秋乃毛美知止以川礼万佐礼利
和歌 きみこふと なみたにぬるる わかそてと あきのもみちと いつれまさけり
解釈 君恋ふと涙に濡るる我が袖と秋の紅葉といづれまされり

歌番号四二八
堂以之良寸
題之良寸
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 帝累川幾乃安幾志毛己止尓佐也个幾者知留毛美知者遠与留毛三与止可
定家 帝累月乃秋志毛己止尓佐也个幾者知留毛美知者遠与留毛見与止可
和歌 てるつきの あきしもことに さやけきは ちるもみちはを よるもみよとか
解釈 照る月の秋しもことにさやけきは散るもみぢ葉を夜も見よとか

歌番号四二九
布留美也乃奈為之尓加祢也春乃安曾无志乃飛天加与者之者部利遣流
布美遠止利天加幾川个天奈為之尓川可八之个留
故宮乃内侍尓兼輔朝臣志乃飛天加与者之侍
遣流布美遠止利天加幾川个天内侍尓川可八之个留
故宮の内侍に兼輔朝臣忍びてかよはし侍りける
文を取りて書きつけて、内侍につかはしける

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 奈止和可三志多波毛美知止奈利尓个无於奈之奈个木乃衣多尓己曽安礼
定家 奈止和可身志多波毛美知止成尓个无於奈之奈个木乃枝尓己曽安礼
解釈 なとわか身したはもみちと成りにけんおなしなけきの枝にこそあれ
和歌 など我が身下葉紅葉となりにけん同じなげ木の枝にこそあれ

歌番号四三〇
安幾也美奈留与加礼己礼毛乃可多知之者部留安比多
加利乃奈幾和多利者部礼个礼八
秋也美奈留夜加礼己礼毛乃可多知之侍安比多
加利乃奈幾和多利侍个礼八
秋闇なる夜、かれこれ物語りし侍る間、
雁の鳴き渡り侍りければ

美奈毛止乃和多春
源和多春
源わたす(源済)

原文 安可々良波三留部幾毛乃遠加利可祢乃以川己者可利尓奈幾天由久良无
定家 安可々良波見留部幾物遠加利可祢乃以川己許尓奈幾天由久良无
和歌 あかからは みるへきものを かりかねの いつこはかりに なきてゆくらむ
解釈 明からば見るべき物を雁が音のいづこばかりに鳴きて行くらん

歌番号四三一
幾毛乃者奈於礼利止天日止乃以比者部礼个礼者
菊花於礼利止天人乃以比侍个礼者
菊の花折れりとて人の言ひ侍りければ

与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす

原文 以多川良尓川由尓遠可留々者奈可止天己々呂毛志良奴飛止也於利个无
定家 徒尓露尓遠可留々花可止天心毛志良奴人也於利个无
和歌 いたつらに つゆにおかるる はなかとて こころもしらぬ ひとやをりけむ
解釈 いたづらに露に置かるる花かとて心も知らぬ人や折りけん

歌番号四三二
三乃奈利以天奴己止奈止奈个幾者部利个留己呂
幾乃止毛乃利加毛止与利以可尓曽止々比遠己世者部利遣礼者
可部之己止尓幾久乃者奈遠々利天川可八之个留
身乃奈利以天奴己止奈止奈个幾侍个留己呂
紀友則加毛止与利以可尓曽止々比遠己世侍遣礼者
返事尓菊花遠々利天川可八之个留
身の成り出でぬことなど嘆き侍りけるころ、
紀友則がもとより、「いかにぞ」と問ひおこせて侍りければ、
返事に菊の花を折りてつかはしける

布知八良乃多々由幾
藤原忠行
藤原忠行

原文 衣多毛者毛宇川呂不安幾乃者奈三礼者々天者加計奈久奈利奴部良也
定家 枝毛葉毛宇川呂不秋乃花見礼者々天者加計奈久奈利奴部良也
和歌 えたもはも うつろふあきの はなみれは はてはかけなく なりぬへらなり
解釈 枝も葉も移ろふ秋の花見れば果ては蔭なくなりぬべらなり

歌番号四三三
可部之
返之
返し

止毛乃利
止毛乃利
とものり(紀友則)

原文 志川久毛天与者比乃不天不者奈々礼者知与乃安幾尓曽可个者之个良无
定家 志川久毛天与者比乃不天不花奈礼者知与乃秋尓曽影者之个良无
和歌 しつくもて よはひのふてふ はななれは ちよのあきにそ かけはしけらむ
解釈 雫もて齢延ぶてふ花なれば千代の秋にぞ影は繁らん

歌番号四三四
衣无幾乃於本无止幾安幾乃宇多女之安利个礼者多天万川利个留
延喜御時秋哥女之安利个礼者多天万川利个留
延喜御時、秋歌召しありければたてまつりける

川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 安幾乃川幾比加利左也計美毛三知者乃於川留可个左部三衣和多留可奈
定家 秋乃月比加利左也計美毛三知者乃於川留影左部見衣和多留哉
和歌 あきのつき ひかりさやけみ もみちはの おつるかけさへ みえわたるかな
解釈 秋の月光さやけみもみぢ葉の落つる影さへ見えわたるかな

歌番号四三五
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 安幾己止尓徒良遠者奈礼奴加利可年者々留可部留止毛加部良左良奈无
定家 秋己止尓徒良遠者奈礼奴加利可年者春帰止毛加部良左良南
和歌 あきことに つらをはなれぬ かりかねは はるかへるとも かへらさらなむ
解釈 秋ごとに列を離れぬ雁が音は春帰るとも帰らざらなん

歌番号四三六
於止己乃者奈可川良由者无止天幾久安利止幾久止己呂尓
己比尓徒可者之多利遣礼者者奈尓久波部天
徒可者之遣流
男の「花鬘結はん」とて、菊ありと聞く所に
乞ひにつかはしたりければ、花に加へて
つかはしける

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 美奈飛止尓於良礼尓个利止幾久乃者奈幾美可多女尓曽川由者遠幾个留
定家 美奈人尓於良礼尓个利止菊乃花君可多女尓曽川由者遠幾个留
和歌 みなひとに をられにけりと きくのはな きみかためにそ つゆはおきける
解釈 みな人に折られにけりと菊の花君がためにぞ露は置きける

歌番号四三七
堂以之良春
題之良春
題しらす

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 布久可世尓満可寸留不祢也安幾乃与乃川幾乃宇部与利遣不者己久良无
定家 吹風尓満可寸留舟也秋乃与乃月乃宇部与利遣不者己久良无
和歌 ふくかせに まかするふねや あきのよの つきのうへより けふはこくらむ
解釈 吹く風にまかする舟や秋の夜の月の上より今日は漕ぐらん

歌番号四三八
毛美知乃知利川毛礼留幾乃毛止尓天
毛美知乃知利川毛礼留木乃毛止尓天
紅葉の散り積もれる木のもとにて

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 毛美知者々知留己乃毛止尓止満利个利寸幾由久安幾也以川知奈留良武
定家 毛美知者々知留己乃毛止尓止満利个利過行秋也以川知奈留良武
和歌 もみちはは ちるこのもとに とまりけり すきゆくあきや いつちなるらむ
解釈 もみぢ葉は散る木のもとにとまりけり過ぎ行く秋やいづちなるらむ

歌番号四三九
和寸礼尓个留於止己乃毛美知遠々利天遠久利天者部利个礼八
和寸礼尓个留於止己乃毛美知遠々利天遠久利天侍个礼八
忘れにける男の紅葉を折りて贈りて侍りければ

与美比止毛
与美人毛
よみ人も

原文 遠毛比以天々止布尓八安良之安幾者川留以呂乃加幾利遠三寸留奈留良无
定家 思以天々問尓八安良之秋者川留色乃限遠見寸留奈留良无
和歌 おもひいてて とふにはあらし あきはつる いろのかきりを みするなるらむ
解釈 思ひ出でて訪ふにはあらじ秋果つる色の限りを見するなるらん

歌番号四四〇
奈可川幾乃徒己毛利乃比毛美知尓比於遠川个天
遠己世天者部利个礼者
長月のつごもりの日、紅葉に氷魚をつけて
おこせて侍りけれは

知可奴可武寸女
知可奴可武寸女
ちかぬかむすめ(藤原千兼女)

原文 宇知也満乃毛美知遠三寸八奈可川幾乃寸幾由久比遠毛志良寸曽安良末之
定家 宇治山乃紅葉遠見寸八長月乃寸幾由久比遠毛志良寸曽安良末之
和歌 うちやまの もみちをみすは なかつきの すきゆくひをも しらすそあらまし
解釈 宇治山の紅葉を見ずは長月の過ぎ行く日をも知らずぞあらまし

歌番号四四一
那加川幾川己毛利尓
九月川己毛利尓
九月つこもりに

川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)

原文 那加川幾乃安利安个乃川幾者安利奈可良者可奈久安幾八寸幾奴部良也
定家 長月乃在明乃月者安利奈可良者可奈久秋八寸幾奴部良也
和歌 なかつきの ありあけのつきは ありなから はかなくあきは すきぬへらなり
解釈 長月の有明の月はありながらはかなく秋は過ぎぬべらなり

歌番号四四二
於奈之川己毛利尓
於奈之川己毛利尓
同じつごもりに

美川祢
美川祢
みつね(凡河内躬恒)

原文 以徒可多尓与者奈利奴良无於本川可那安遣奴加幾利八安幾曽止於毛者无
定家 以徒方尓夜者奈利奴良无於本川可那安遣奴加幾利八秋曽止於毛者无
和歌 いつかたに よはなりぬらむ おほつかな あけぬかきりは あきそとおもはむ
解釈 いづ方に夜はなりぬらんおぼつかな明けぬ限りは秋ぞと思はん
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