竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 15

2013年03月24日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

寄鳥
標訓 鳥に寄せる
集歌1896 春去 為垂柳 十緒 妹心 乗在鴨
訓読 春されば垂り柳しとををにも妹し心し乗りしけるかも
私訳 春がやってくると芽吹いて垂れ下がる柳の枝がとをを(たわむ)、その言葉のひびきではありませんが、とををにも(気持ちは寄りかかり)愛しい貴女は私の心に乗り覆ったようです。
注意 西本願寺本では集歌1896の歌は標題「寄鳥」の次に位置しますが、おおむね、集歌1895の歌の左注「右柿本朝臣人麿謌集出」の前に置きます。ここでは、西本願寺本を尊重しています。


秋雜謌
標訓 秋の雑歌(くさぐさのうた)
七夕
標訓 七夕
集歌1996 天漢 水左閇而 照舟 竟舟人 妹等所見寸哉
訓読 天つ川水(みなも)しさへに照らす舟(ふな)竟(わた)る舟人(ふなひと)妹と見えきや
私訳 天の川の水面もさへも輝かすような舟。天の川を渡った舟人は恋人に逢ったでしょうか。

集歌1997 久方之 天漢原丹 奴延鳥之 裏歎座津 乏諸手丹
訓読 久方し天つ川原にぬえ鳥しうら歎(な)げましつすべなきまでに
私訳 遥か彼方の天の川原のぬえ鳥のように悲しく泣いて嘆いています。どうしようもなくて。

集歌1998 吾戀 嬬者知遠 往船乃 過而應来哉 事毛告火
訓読 吾(わ)が恋ふる嬬(つま)は知り遠く往(い)く舟の過ぎに来(く)べしや事(こと)も告ぐるか
私訳 私の恋しい恋人が気付く遠く天の川を渡って行く船が通り過ぎて行く。逢えないことを告げるのだろうか。

集歌1999 朱羅引 色妙子 数見者 人妻故 吾可戀奴
訓読 朱(あか)らひくしきたへし子をしば見れば人妻ゆゑに吾恋ひぬべし
私訳 朱に染まる美しい織姫をたびたび眺めても、貴女は人の妻だから私は恋心を秘めましょう。

集歌2000 天漢 安渡丹 船浮而 秋立待等 妹告与具
訓読 天つ川安し渡りに舟浮けに秋立つ待つと妹し告(つ)げこそ
私訳 天の川の安の渡しに船を浮かべて、川を渡る秋の季節を待っていると、愛しい恋人に告げてほしい。

集歌2001 従蒼天 往来吾等須良 汝故 天漢道 名積而叙来
訓読 大空ゆ通ふ吾すら汝(な)しゆゑに天つ川路をなづみにぞ来し
私訳 大空を自由に行き来する、そんな私ですが、貴女のために天の川の通い路を苦労して遣って来ました。

集歌2002 八千戈 神自御世 乏麗 人知尓来 告思者
訓読 八千戈(やちほこ)し神し御世(みよ)より乏(とも)し妻(つま)人知りにけり告ぐと思へば
私訳 八千戈の神の時代からなおざりにされた妻。人は知ってしまった、そのなおざりにされた人妻に私が恋をしていると告げようとすると。

集歌2003 吾等戀 丹穂面 今夕母可 天漢原 石枕巻
訓読 吾(わ)が恋ふる丹し秀(ほ)し面(おもは)今夕(こよひ)もか天つ川原し石(いは)枕(まくら)まく
私訳 私が恋をする赤く染まる美しい貴女の顔。今宵も天の川原で貴女の代わりに石を手枕にする。

集歌2004 己麗 乏子等者 竟津 荒磯巻而寐 君待難
訓読 己(おの)が妻乏(とも)しき子らは竟(わた)る津し荒礒(ありそ)枕(ま)きに寝(ぬ)君待ちかてに
私訳 貴方の妻、そのなおざりにされている恋人は、貴方の船が渡って来る、今は寂しい岸で石を手枕として寝ている。貴方を待ちわびて。

集歌2005 天地等 別之時従 自麗 然叙手而在 金待吾者
訓読 天地と別れし時ゆ己(おの)が妻然(しか)ぞ手にある秋待つ吾は
私訳 神代の天と地が別れた時から自分の妻をこのように手の内に抱ける秋。その秋を私は待っている。
注意 原文の「然叙手而在」の「手」は一般に「年」の誤字として「然(しか)ぞ年にある」と訓みますが、ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌2006 孫星 嘆須麗 事谷毛 告余叙来鶴 見者苦弥
訓読 彦星(ひこほし)し嘆(なげ)かす妻し事(こと)だにも告(つ)げにぞ来つる見れば苦しみ
私訳 彦星が逢えないことを嘆いている妻に、逢えないことすらを告げずに帰って来るのを見ると心苦しいことです。

集歌2007 久方 天印等 水無河 隔而置之 神世之恨
訓読 ひさかたし天つ印(しるし)と水無(みな)し川(かは)隔(へだ)てに置きし神代し恨(うら)めし
私訳 遥か彼方の天の約束の印として水の流れない天の川を隔てて二人を置いた神代の時代が恨めしいことです。

集歌2008 黒玉 宵霧隠 遠鞆 妹傳 速告与
訓読 ぬばたまし夜霧に隠(こも)り遠(とほ)くとも妹し伝へは早く告(つ)げこそ
私訳 漆黒の夜霧に閉じ込められ隠れていて遠くても、恋人への逢えなくなった連絡は早く告げるべきです。

集歌2009 汝戀 妹命者 飽足尓 袖振所見都 及雲隠
訓読 汝(な)し恋ふる妹し命(みこと)は飽き足らに袖振る見えつ雲隠(くもがく)るまで
私訳 貴方が恋している恋人の御方は、貴方との別れに飽き足らなくて袖を振っているのを見える。雲に姿が隠れるまで。

集歌2010 夕星毛 往来天道 及何時鹿 仰而将待 月人壮
訓読 夕星(ゆふつつ)も通ふ天道(あまぢ)をいつまでか仰ぎに待たむ月人(つきひと)壮士(をとこ)
私訳 夕星が移り行く天の道を、年に一度の逢う日をいつまでかと仰いで待っている月人壮士。

集歌2011 天漢 己向立而 戀等尓 事谷将告 麗言及者
訓読 天つ川い向ひ立ちに恋しらに事(こと)だに告(つ)げむ妻し言ふまでは
私訳 天の川に向い立って恋しいあまり、逢えないことだけでも告げましょう。直接逢って、貴女を妻と言うまで。

集歌2012 水良玉 五百部集乎 解毛不及 吾者于可太奴 相日待尓
試訓 みら玉し五百重(いほへ)集(あつ)めを解(と)きも得ず吾(あれ)は行(う)かたぬ逢はむ日待つに
試訳 天空の美しく輝く星がたくさん集まったのを散らすことが出来なくて、(天の川が流れるので)私は出かけることが出来ない。貴女が逢うでしょう、その日を待っているのに。

注意 一般に原文の表記は次のように改訂して解釈します。試訓と試訳は、原文からの実験です。
改訂 水良玉 五百都集乎 解毛不見 吾者年(又は「干」)可太奴 相日待尓
訓読 しら玉の五百(いほ)つ集(つど)ひを解きも見ず吾(わ)は寝かてぬ(又は「離れてぬ」)逢はむ日待つに

集歌2013 天漢 水陰草 金風 靡見者 時来之
訓読 天つ川水(みず)蔭(かげ)草(くさ)し秋風し靡かふ見れば時は来にし
私訳 天の川よ、川辺の草が秋風に靡くのを見ると、そのときはやってきたようです。

集歌2014 吾等待之 白芽子開奴 今谷毛 尓寶比往奈 越方人迩
訓読 吾(わ)が待ちし秋萩咲きぬ今だにもにほひし行かな彼方(をちかた)人に
私訳 私が待ちわびていた秋萩が咲きました。今こそ、衣を染めていきましょう。彼方に住む人のために。

集歌2015 吾世子尓 裏戀居者 天河 夜船滂動 梶音所聞
訓読 吾(わ)が背子にうら恋ひ居(を)れば天つ川夜船(よふね)漕ぐなる楫し音聞こゆ
私訳 私の愛しい貴方に秘めやかに恋していると、天の川に夜船を漕ぐ楫の音が聞こえる。

集歌2016 真氣長 戀心自 白風 妹音所聴 紐解往名
訓読 ま日(け)長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音(ね)聞こゆ紐解(と)き往(い)かな
私訳 長い日々を恋しく想う心に、秋風に乗って恋人の声が聞こえてきた。恋人の着物の紐を解きに往きましょう。

集歌2017 戀敷者 氣長物乎 今谷 乏之牟可哉 可相夜谷
訓読 恋ひしくは日(け)長きものを今だにも乏(とも)しむべしや逢ふべき夜だに
私訳 貴女を恋しく想う日々は長い日々ですが、今だけなのに、残念なことです。貴女に逢うべき今宵ですが。

集歌2018 天漢 去歳渡代 遷閇者 河瀬於踏 夜深去来
訓読 天つ川去年(こぞ)し渡りゆ遷(うつ)ろへば川瀬を踏みし夜ぞ更(ふ)けにける
私訳 天の川の去年川を渡った場所が川の流れの変わりで遷ってしまったので、川の瀬を踏み渡るのに夜が更けてしまった。

集歌2019 自古 擧而之服 不顧 天河津尓 年序経去来
訓読 古(いにしへ)ゆ挙(あ)げにし服(はた)も顧(かへり)みず天つ川津に年ぞ経にける
私訳 古くから行ってきた服を織ることも忘れてしまって、天の川の渡りの湊で彦星を待って年月が経ってしまった。

集歌2020 天漢 夜船滂而 雖明 将相等念夜 袖易受将有
訓読 天つ川夜船(よふね)し漕ぎに明けぬとも逢はむと思(も)ふ夜袖交(か)へずあらむ
私訳 天の川よ、夜船を漕ぎ続けて夜が明けてきても貴女に逢おうと想う。夜に貴女と床で衣の袖をお互いに交わしたい。

集歌2021 遥嬢等 手枕易 寐夜 鶏音莫動 明者雖明
訓読 遠妻(とほつま)と手枕(たまくら)交(か)へて寝(ね)たる夜し鶏(とり)がねな鳴き明(あ)けば明けぬとも
私訳 遠くに住む恋人と手枕を交えて寝た夜は、鶏の音よ、するな。夜明けが明けても。

集歌2022 相見久 厭雖不足 稲目 明去来理 舟出為牟 麗
訓読 相見らく飽(あ)き足(た)らねどもいなのめし明(あ)けさりにけり舟出せむ妻
私訳 お互いに逢った時は飽きることはありません。稲穂を数えられるような明るい時がやってきたら、帰りの船出をしましょう。恋人よ。

集歌2023 左尼始而 何太毛不在者 白栲 帶可乞哉 戀毛不遏者
訓読 さ寝(ね)そめに幾許(いだく)もあらねば白栲し帯(おび)乞(こ)ふべしや恋も遏(とど)めずば
私訳 抱き合って寝てそれほどでもないのに、身づくろいの着物の白栲の帯を求めるのでしょうか。恋の行いを抑えきれないのに。

集歌2024 万世 携手居而 相見鞆 念可過 戀奈有莫國
訓読 万世(よろづよ)し携(たづさ)はり居(ゐ)に相見とも思ひ過ぐべき恋なあらなくに
私訳 永遠の月日を手を取り合って体の関係を持っていても、恋の想いが満足するような、そんな簡単な恋ではありません。

集歌2025 万世 可照月毛 雲隠 苦物叙 将相登雖念
訓読 万世(よろづよ)し照るべき月も雲隠(くもがく)り苦しきものぞ逢はむと思へど
私訳 永遠に照るはずの月が雲に隠れて辛いことです。今宵、貴女に逢おうと思うと。

集歌2026 白雲 五百遍隠 雖遠 夜不去将見 妹當者
訓読 白雲し五百重(いほへ)隠(かく)りて遠くとも夜(よる)去らず見む妹し辺(あたり)は
私訳 白雲がたくさん折り重なって隠して遠くても、一晩中見つめましょう。貴女の住むあたりを。

集歌2027 為我登 織女之 其屋戸尓 織白布 織弖兼鴨
訓読 我がためと織女(たなばたつめ)しその屋(や)戸(と)に織(お)る白栲し織りてけむかも
私訳 今度逢う時にと、私のためと織女がその家で織る白栲はもう織り終わったでしょうか。

集歌2028 君不相 久時 織服 白妙衣 垢附麻弖尓
訓読 君し逢はず久(ひさ)しき時ゆ織(お)る服(はた)し白妙(しろたへ)衣(ころも)垢付くまでに
私訳 貴方に逢わない日々が長くなったようです。私が織る服の白く美しい衣に汚れが付くまでに。

集歌2029 天漢 梶音聞 孫星 与織女 今夕相霜
訓読 天つ川楫し音聞こゆ彦星(ひこほし)し織女(たなばたつめ)と今夕(こよひ)逢ふらしも
私訳 天の川に楫の音が聞こえます。彦星が織女と今夕に逢うようです。

集歌2030 秋去者 河霧 天川 河向居而 戀夜多
訓読 秋されば河(かは)し霧(き)らふる天つ川河し向き居(ゐ)に恋ふる夜(よ)ぞ多(おほ)き
私訳 秋がやって来ると河に霧が立ち込る天の川よ。そんな河に向かって遣って来る恋人を慕っている夜が多いことです。

集歌2031 吉哉 雖不直 奴延鳥 浦嘆居 告子鴨
訓読 よしゑやし直(ただ)ならずともぬえ鳥しうら嘆(な)げ居(を)りし告(つ)げむ子もがも
私訳 えい、仕方がない、直接に逢えなくても。星明かりもない漆黒の夜のぬえ鳥のように、ただ嘆いていますと告げるあの娘女です。

集歌2032 一年迩 七夕耳 相人之 戀毛不遏者 夜深往久毛
訓読 一年(ひととし)に七夕(ひちせき)のみし逢ふ人し恋も遏(とど)ずば夜し更(ふ)けゆくも
私訳 一年に一度七夕の夜に逢う人も恋を抑えきれずに夜は更けて往くよ。

集歌2033 天漢 安川原 定而 神競者 磨待無
試訓 天つ川八湍(やす)し川原し定まりに神(かみ)競(きそは)へば磨(まろ)し待たなく
試訳 天の八湍の川原で行うのが決まりとなっているからと、この天の河原で天照大御神と建速須佐之男命とが大切な誓約(うけひ)をされていると、それが終わるまで天の川を渡って棚機女(たなはたつめ)に逢いに行くのを待たなくてはいけませんが、年に一度の今宵はそれを待つことが出来ません。
注意 集歌2033は難訓歌として、未だ、訓読み及び意訳が判明した歌ではないことになっています。ただし、「而」を真仮名として「ニ」と訓むと、このように一義的に確定します。

此謌一首庚辰年作之。
注訓 この歌一首は庚辰の年に作れり
右、柿本朝臣人麿之謌集出。
注訓 右は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

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