竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 17

2013年04月07日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

旋頭謌
標訓 旋頭謌(せどうか)
集歌2351 新室 壁草苅迩 御座給根 草如 依逢未通女者 公随
訓読 新室(にひむろ)し壁草刈りしに坐し給はね 草し如寄り合ふ未通女(をとめ)は公(きみ)しまにまに
私訳 新室の壁を葺く草刈りに御出で下さい。刈った草を束ね寄り合うように寄り添う未通女は貴方の御気の召すままに。

集歌2352 新室 踏静子之 手玉鳴裳 玉如 所照公乎 内等白世
訓読 新室(にひむろ)し踏む静(しづ)む子し手玉(ただま)鳴らすも 玉し如照らせる公(きみ)を内にと申せ
私訳 新室を足踏み鎮める娘子が手玉を鳴らす。玉のように美しく周囲を照らすような立派な貴方を新室の中に御入り下さいと申し上げろ。

集歌2353 長谷 弓槻下 吾隠在妻 赤根刺 所光月夜迩 人見點鴨
訓読 長谷し斎槻(ゆつき)し下しわが隠せる妻 茜さし照れる月夜(つくよ)に人見てむかも
私訳 長谷の斎槻の里に私が奪って隠した恋人。茜色に輝いている月夜の明かりの下で人は気づいてしまうだろうか。
一云、人見豆良牟可
一(ある)は云はく、
訓読 人見つらむか
私訳 人は気づいたでしょうか。

集歌2354 健男之 念乱而 隠在其妻 天地 通雖先 所顕目八方
試訓 健男(ますらを)し思ひ乱れに隠せるその妻 天地(あまつち)し通(かよ)ひ先(さ)くとも顕れめやも
試訳 立派な男が恋に想いを乱れて、奪って隠したその恋人。天と地とが行き通い昔のように一つに重なったとしても、見つかることがあるだろうか。
一云、大夫乃 思多鶏備弖
一(ある)は云はく、
訓読 大夫(ますらを)の思ひたけびて
私訳 立派な男子が心を決めいきり立って
注意 原文の「通雖先」の「先」は、一般には「光」の誤字とし「通雖光」から「通り光るとも」と訓みますが、ここでは「先」の言葉の意味を尊重して原文のままに訓んでいます。

集歌2355 恵得 吾念妹者 早裳死耶 雖生 吾迩應依 人云名國
訓読 愛(うつ)くしとわが念(も)ふ妹は早も死なぬか 生けりともわれに寄るべしと人し云はなくに
私訳 愛おしいと私が恋い焦がれる貴女は早く死なないだろうか。私が生きていても、貴女が私に「心を寄せますよ」と云う人もないので。(そうしないと、恋に私は死んでしまう。)

集歌2356 狛錦 紐片釼 床落迩祁留 明夜志 将来得云者 取置得
訓読 高麗錦紐し片(かた)太刀(たち)床落ちにける 明日し夜し来むとし云はば取り置き得(と)らむ
私訳 高麗錦の太刀の飾りの片方の紐が床に落ちている、貴方が明日の夜に訪ねて来ると云うのなら取って置きましょう。

集歌2357 朝戸出 公足結乎 閏露原 朝起 出乍吾毛 裳下閏奈
訓読 朝戸出し公(きみ)し足結(あゆひ)を濡らす露原 はやく起き出でつつわれも裳裾濡らさな
私訳 朝早く帰って行く貴方が結ぶ足結を濡らす露の野原、早く起きて出て私も途中まで見送って裳裾を濡らしましょう。
注意 原文の「閏」は意味において「潤」の当て字です。なお、この「閏」の字に「閨」の意味合いを持たせた可能性があります。

集歌2358 何為 命本名 永欲爲 雖生 吾念妹 安不相
訓読 何せむに命しもとな永く欲りせむ 生けりとも吾(あ)が念(も)ふ妹し易く逢はなくに
私訳 どうして、この命をむやみに長く欲しがりましょう。生きていても私が慕う貴女にたやすくには逢えないのだから。

集歌2359 息緒 吾雖念 人目多社 吹風 有數ゞ 應相物
訓読 息し緒しわれは念(おも)へど人目多(た)みこそ 吹く風しあらばしばしば逢ふべきものを
私訳 深くため息をついて私は貴女を慕っているけど、人目が多くて。もし、私がそのため息のような吹く風だったなら、何度も貴女に逢えるはずなのに。

集歌2360 人祖 未通女兒居 守山邊柄 朝ゞ 通公 不来哀
訓読 人し祖(おや)未通女(をとめ)児(こ)据ゑて守(もる)山辺(やまへ)から 朝(あさ)な朝(さ)な通ひし公(きみ)し来ねばかなしも
私訳 人の親が未通女の子供を家に置き見守る、その言葉のひびきではないが、守山のあたりから、毎朝毎朝、通ってくるあの御方がやって来ないと哀しいことです。

集歌2361 天在 一棚橋 何将行 穉草 妻所云 足牡嚴  (穉はネ+尸に平の当字)
訓読 天しある一つ棚橋(たなはし)いかにか行かむ 稚草(わかくさ)し妻そといはば足(あし)牡厳(よそひ)せむ
私訳 天にある一枚板の棚橋をどのように渡って行きましょう。若草のような若く美しい妻の所へと云へば足飾りをして装っていきましょう。
注意 原文の「穉草」の表記において「穉(当字表記)」の本来の字が中国語にも現在の日本語にも伝わっていなくて、難訓となっています。そこで、文字の似た「穉(=稚)」の字を当て、意味は若草であろうとして解釈しています。原文の「穉草」の本来の文字が訓めた場合に、歌意が変わる可能性があります。また、原文の「足牡嚴」の「牡嚴」は「荘厳」と同じで、仏教用語で仏殿・仏像を装い飾るとの意味があります。

集歌2362 開木代 来背若子 欲云余 相狭丸 吾欲云 開木代 来背
訓読 山城し久世し若子(わくご)し欲しと云ふ余(われ) 逢うさわに吾(われ)し欲しといふ山城し久世
意訳 山城の久世の若い御方が欲しいと云う私。逢っただけで私を欲しいと云う山城の久世。
注意 原文の「開木代」は、巻七の集歌1286の歌と同様に伝統で「山城」と訓みますが、その「開木」を「山」と訓む根拠は不明です。そのため、奈良時代のままに訓読みされているかは、不安定です。
参考歌
集歌1286 開木代 来背社 草勿手折 己時 立雖榮 草勿手折
訓読 山城し久世(くせ)し社(やしろ)し草な手折(たおり)そ おのが時と立ち栄ゆとも草な手折りそ
私訳 山城の久世の社の草を手折らないで、貴方の時代だとして立ち栄えても草を手折らないで。

右十二首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の十二首は、柿本朝臣人麿の歌集に出(い)づ


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