竹取翁と万葉集のお勉強

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竹取翁の歌のお勉強 長歌のもじり歌 その21

2009年05月07日 | 万葉集 竹取翁の歌を鑑賞する
竹取翁の歌のお勉強 長歌のもじり歌 その21

原文 我丹所来為 水縹 絹帶尾 引帶成 韓帶丹取為
訓読 我れに来なせと 水縹(みずはだ)の 絹の帯を 引き帯(び)なし 韓(から)を帶に取らし(21)
私訳 私の方に来なさいと水色の絹の帯を引き戻す帯として、韓国(からくに)を帯で絡め取って

長歌のもじり歌に、外国に海を越えて赴く夫を領巾で引き寄せる女性を見ました。その情景に合わせて、万葉集から歌を拾って見ました。それが、集歌871の歌です。
この集歌871の歌は標と和歌が一体となり、後の伊勢物語の世界につながるものです。なお、歌の「韓を帶に取らし」は欽明二十三年の調吉士伊企儺の妻の大葉子が韓国から救助の領巾を振り、その救助に向かった大伴連狭手彦の伝説を元にしています。

(大伴旅人)
大伴佐提比古郎子 特被朝命奉使藩國 艤棹言歸 稍赴蒼波 妾也松浦(佐用嬪面) 嗟此別易 歎彼會難 即登高山之嶺 遥望離去之船 悵然断肝黯然銷魂 遂脱領巾麾之 傍者莫不流涕 因号此山曰領巾麾之嶺也 乃作謌曰
標訓 大伴佐提比古の郎子(いらつこ)、特に朝命を被(こほむ)り、使を藩國に奉る。艤棹して言に歸き、 稍蒼波に赴く。妾(つま)松浦(佐用嬪面(さよひめ))、此の別るる易(やす)きを嗟(なげ)き、彼の會ふの難(かた)きを歎(なげ)く。即ち高山の嶺に登りて、遥かに離れ去く船を望み、悵然みて肝を断ち、黯然みて魂を銷す。遂に領巾(ひれ)を脱ぎて麾(ふ)る。傍(かたはら)の者涕を流さずといふこと莫(な)し。これに因りて、この山を号けて領巾(ひれ)麾(ふる)の嶺(をか)と曰ふ。乃ち、謌を作りて曰はく

集歌0871 得保都必等 麻通良佐用比米 都麻胡非尓 比例布利之用利 於返流夜麻能奈
訓読 遠人(とほつひと)松浦(まつら)佐用姫(さよひめ)夫恋(つまこひ)に領巾(ひれ)振りしより負(お)へる山の名
私訳 遠くはなれた人を待つ、その松浦の佐用姫は恋人恋しさに領巾を振ったことから、その名にちなんだ山の名よ

後人追和
標訓 後(のち)の人の追ひて和(こた)へたる
集歌0872 夜麻能奈等 伊賓都夏等可母 佐用比賣何 許能野麻能閇仁 必例遠布利家[牟]
訓読 山の名と言ひ継げとかも佐用姫(さよひめ)がこの山の上(へ)に領巾(ひれ)を振りけむ
私訳 山の名前と云い継げと、佐用姫がこの山の頂で領巾を振ったのだろうか

最後人追和
標訓 最後(いとのち)の人の追ひて和へたる
集歌0873 余呂豆余尓 可多利都夏等之 許能多氣仁 比例布利家良之 麻通羅佐用嬪面
訓読 万世(よろづよ)に語り継げとしこの岳(おか)に領巾(ひれ)振りけらし松浦(まつら)佐用姫(さよひめ)
私訳 万年の後の世まで語り継げと、この丘で領巾を振ったらしい松浦の佐用姫よ

最々後人追和二首
標訓 最最後(いといちのち)の人の追ひて和へたる二首
集歌0874 宇奈波良能 意吉由久布祢遠 可弊礼等加 比礼布良斯家武 麻都良佐欲比賣
訓読 海原(うなはら)の沖行く船を還(かへ)れとか領巾(ひれ)振らしけむ松浦(まつら)佐用姫(さよひめ)
私訳 海原の沖を行く船にこちらに還れとして領巾を振られたのだろうか、松浦の佐用姫よ

集歌0875 由久布祢遠 布利等騰尾加祢 伊加婆加利 故保斯苦阿利家武 麻都良佐欲比賣
訓読 行く船を振り留(とど)みかね如何(いか)ばかり恋しくありけむ松浦(まつら)佐用姫(さよひめ)
私訳 行く船を領巾を振って引き留めることが出来なくて、どれほどに恋人が恋しいだろうか、松浦の佐用姫よ

この歌群については色々と解説がありますが、素人感覚ではこれらの歌はすべて大伴旅人の作品です。
大伴旅人は、天平二年四月以前と同年七月下旬の二回以上は松浦を訪れたようです。四月以前の時には、地元の若い乙女たちを見て「松浦河に遊ぶ」の歌を創っています。「松浦河に遊ぶ」の歌は江南の子夜四時のような男女の想いの掛け合いの発展と回想の組み合わせを取っていますが、この「松浦佐用姫の歌」は序の文と和歌が相互に絡み合う形をしていますし、詠いだしの和歌を次々に発展させています。ある種、物語性を持った連歌なのです。これらの歌は一種の実験歌と思いますので未消化の面もありますが、和文で文章を綴ることを知らず漢文の読めない人々には随筆のような連歌の和歌と思ったかもしれません。

 正直、旅人の大宰府時代の歌々は、どのように鑑賞するべきなのか、良く判りません。旅人以前には無いことを彼が行っているのですが、それで、非常に難しいです。

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