竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 21

2013年05月05日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

集歌2431 鴨川 後瀬静 後相 妹者我 唯不今
訓読 鴨川し後瀬(のちせ)静(しづ)けむ後し逢ふ妹には我し今ならずとも
私訳 鴨川よ。やがて流れの激しい瀬も穏やかになるでしょう。次は逢いましょう。私は貴女に今は逢えませんが。

集歌2432 言出 云忌ゞ 山川之 當都心 塞耐在
訓読 言(こと)し出し云(い)はばゆゆしみ山川したぎつ心し塞(せ)かへたりけり
私訳 貴女を愛していると言葉に出して云ったから忌むことになり、このように山も川も暴れている。私は貴女に逢えない思いで塞ぎこんでいる。

集歌2433 水上 如數書 吾命 妹相 受日鶴鴨
訓読 水し上(へ)し数(かぞ)書(か)くごとき吾(わ)が命妹(いも)し逢はめと祈誓(うけ)ひつるかも
私訳 水の上に筆で数を書くような空しい私の命。貴女に逢わせろと神に祈ります。

集歌2434 荒磯越 外往波乃 外心 吾者不思 戀而死鞆
訓読 荒礒(ありそ)越し外(ほか)行く波し外(ほか)心(こころ)吾(われ)は思はじ恋ひに死ぬとも
私訳 川の流れの荒い岩を越えて流れて行く波のように、異心を私は思うことはありません。貴女を慕って恋に死ぬとしても。

集歌2435 淡海ゞ 奥白浪 雖不知 妹所云 七日越来
訓読 淡海(あふみ)し海(み)沖つ白波知らずとも妹(いも)がりといはば七日(なぬか)越え来む
私訳 淡海の海の沖の白浪の恐ろしさを知らなくても、貴女の住む場所といへば七日かかっても山川を越えて来ます。

集歌2436 大船 香取海 慍下 何有人 物不念有
訓読 大船し香取(かとり)し海し慍(いかり)下(おろ)しいかなる人か物(もの)思(も)はずあらむ
私訳 大船が高島の香取の入江に碇を下ろす。その言葉のひびきではないが、逢えないことへの怒りを下す。どのような人が、逢えない恋人に物思いをしないことがあるでしょうか。

集歌2437 奥藻 隠障浪 五百重浪 千重數ゞ 戀度鴨
訓読 沖し藻し隠(かく)さふ波し五百重(いほへ)波(なみ)千重(ちへ)しくしくし恋ひわたるかも
私訳 沖に生える藻を隠し、目から遮る波。その波が幾重にも重なり合い布のようにうねっているように、数えきれぬほどに貴女に恋い焦がれています。

集歌2438 人事 暫吾妹 繩手引 従海益 深念
訓読 人事(ひとこと)し暫(しま)しぞ吾妹(わぎも)綱手(つなて)引く海(うみ)ゆまさりて深くしぞ思(も)ふ
私訳 人が貴女を好きになるのほんのしばらくのあいだです、貴女。ですが、私は、船を引き寄せる綱手を引く海より益して、貴女に引き寄せられ、心深く貴女を愛しています。

集歌2439 淡海 奥嶋山 奥儲 吾念妹 事繁
訓読 淡海(あふみ)し海(み)奥し島山(しまやま)奥まけて吾(わ)が思(も)ふ妹し事(こと)し繁けく
私訳 淡海の海の奥にある高島の島のような山の、その遥か遠くまでに私が貴女を思う気持ちはしきりに募ります。

集歌2440 近江海 奥滂船 重下 蔵公之 事待吾序
訓読 近江(あふみ)し海(み)沖漕ぐ船しいかり下ろし隠(こも)りて公(きみ)し事待つ吾ぞ
私訳 近江の海の沖を漕ぎ行くような大船が碇を下ろして浦に籠るように、家に籠って、仕事で離れている貴方の訪れを待つ私です。

集歌2441 隠沼 従裏戀者 無乏 妹名告 忌物牟
訓読 隠沼(こもりぬ)し下ゆ恋ふれば羨(と)もなかし妹し名(な)告(の)りつ忌(い)むべきものを
私訳 隠沼の下から水が湧き上るように心に秘めて貴女を慕っていると、恋心が物足りないと思うことがない。その貴女の名前を口に出してしまった。つつしむべきなのに。

集歌2442 大土 採雖盡 世中 盡不得物 戀在
訓読 大地(おほつち)し取り尽(つく)さめど世し中し尽(つく)しえぬものし恋にしありけり
私訳 大きな山の土も採り尽くすことはあるでしょうが、この世の中で尽くしきれないものは貴女への恋でしょう。

集歌2443 隠處 澤泉在 石根 通念 吾戀者
訓読 隠処(こもりど)し沢(さわ)泉(たづみ)なる岩し根し通(とほ)してぞ思ふ吾(わ)が恋ふらくは
私訳 人目につかない隠れたところの沢の泉にある岩を通して水が流れ出るように、表には出しませんが、密やかに私は貴女を恋しています。

集歌2444 白壇 石邊山 常石有 命哉 戀乍居
訓読 白真弓(しらまゆみ)石上(いそへ)し山し常磐(ときは)なる命なれやも恋ひつつ居らむ
私訳 私は白真弓の矢羽の羽易(はかい)の石上の山の常盤のような岩のような丈夫な命でしょうか。貴女を慕って苦しくも恋しています。
注意 物部氏の祖である邇藝速日命が天羽(あまのは)羽矢(はや)を神武天皇に見せた事由から、物部氏に因んで石上の山は「矢羽を交換」(=羽易)したことから羽易山とも云います。その石上山の別称である羽易山から「白壇(=白真弓)」の詞が使われています。また、柿本一族の本拠は石上山の“辺(ほとり)”です。

集歌2445 淡海ゞ 沈白玉 不知 従戀者 今益
訓読 淡海(あふみ)の海(み)沈(しづ)く白玉知らずして恋ひせしよりは今こそ益(まさ)れ
私訳 淡海の海の底深くにあるような白玉のような白肌の貴女を知らないで恋をしていたときより、それを知った今はもっと恋しくなります。

集歌2446 白玉 纏持 従今 吾玉為 知時谷
訓読 白玉し纏(ま)きてぞ持てる今よりし吾(わ)が玉にせむ知れる時だに
私訳 白玉のような白肌の貴女を、玉を紐に通して手に纏い持つように抱きしめた今からは、貴女を私の大切な宝物にしましょう。人も気付くでしょうから。

集歌2447 白玉 従手纏 不忌 念 何畢
訓読 白玉し手に纏(ま)きしより忌(いと)はじと思ひきらきし何か終(をは)らむ
私訳 白玉のような白肌の貴女を、玉を紐に通して手に纏い持つように抱きしめたときから、きっと、貴女を嫌いになることないと思った気持ちは、どうして終わるでしょうか。
注意 原文の「不忌」は、一般に「不忘」と表記します。ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌2448 烏玉 間開乍 貫緒 縛依 後相物
訓読 烏玉(ぬばたま)し間(あひだ)開(あ)けつつ貫(ぬ)ける緒もくくり寄すれば後(のち)しあふもの
私訳 星明かりもない漆黒の夜の間、解いていた衣を通す紐の緒も、朝になり衣をくくり寄せれば結びあうように、再び、逢うものです。
注意 原文の「烏玉」は、一般に「白玉」と表記します。ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌2449 香山尓 雲位桁曳 於保ゞ思久 相見子等乎 後戀牟鴨
訓読 香具山(かぐやま)に雲居たなびきおほほしく相見し子らを後(のち)恋ひむかも
私訳 香具山に霧雲が立ち込めたように、わずかに抱き合ったあの娘を、これからも恋い焦がれます。

集歌2450 雲間従 狭陘月乃 於保ゞ思久 相見子等乎 見因鴨
訓読 雲間よりさ渡る月の鬱(おほほ)しく相見し子らを見むよしもがも
私訳 雲の間から時より顔を見せる月がわずかのように、わずかに抱いたあの娘にもう一度会う機会が欲しい。


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