竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌1503から集歌1507まで

2021年02月19日 | 新訓 万葉集巻八
紀朝臣豊河謌一首
標訓 紀朝臣(きのあそみ)豊河(とよかは)の謌一首
集歌一五〇三 
原文 吾妹兒之 家乃垣内乃 佐由理花 由利登云者 不謌云二似
訓読 吾妹児(わぎもこ)し家の垣内(かきつ)のさ百合(ゆり)花(はな)後(ゆり)と云へるは謌(うた)はずに似る
私訳 私の愛しい貴女の家の垣の内にある百合の花、その後(ゆり)と貴女が私に云うのは、まるで、貴女が私に「謌」の字の如く「可(愛して)可(愛して)と言わない」のことと同じです。
注意 原文の「不謌云二似」は読解が不能として標準解釈では「不欲云二似」と校訂し「否と云うに似る」と訓じます。この時、原文の「謌」とは違い言葉遊びの洒落が消えます。

高安謌一首
標訓 高安(たかやす)の謌一首
集歌一五〇四 
原文 暇無 五月乎尚尓 吾妹兒我 花橘乎 不見可将過
訓読 暇(いとま)無(な)み五月(さつき)をすらに吾妹児が花橘を見ずか過ぎなむ
私訳 物事が多く暇がない。この五月までも、私の愛しい恋人の貴女の家に咲く花橘を眺めることなく、時は過ぎて行くのでしょう。

大神女郎贈大伴家持謌一首
標訓 大神(おほみわの)女郎(いらつめ)の大伴家持に贈りたる謌一首
集歌一五〇五 
原文 霍公鳥 鳴之登時 君之家尓 徃跡追者 将至鴨
訓読 霍公鳥(ほととぎす)鳴きしすなはち君し家(へ)に往(い)けと追(お)ひしは至りけむかも
私訳 ホトトギスが「カツコヒ、カツコヒ」と啼いたので、さっそく、貴方の家に行きなさいと追い遣りました、そのホトトギスは貴方の家に着いたでしょうか。

大伴田村大嬢与妹坂上大嬢謌一首
標訓 大伴田村大嬢(おほをとめ)の妹(いろ)坂上大嬢(おほをとめ)に与(くみ)したる謌一首
集歌一五〇六 
原文 古郷之 奈良思乃岳能 霍公鳥 言告遣之 何如告寸八
訓読 古郷(ふるさと)し奈良思(ならし)の岳(をか)の霍公鳥(ほととぎす)言(こと)告(つ)げ遣(や)りしいかに告(つ)げきや
私訳 故郷にある奈良思の岳に棲むホトトギスに「カツコヒ」と愛の誓いを告げて貴方の許に遣りましたが、どのように告げたでしょうか。

大伴家持擧橘花贈坂上大嬢謌一首并短謌
標訓 大伴家持の橘の花を擧(こぞ)りて坂上大嬢に贈りたる謌一首并せて短謌
集歌一五〇七 
原文 伊加登伊可等 有吾屋前尓 百枝刺 於布流橘 玉尓貫 五月乎近美 安要奴我尓 花咲尓家里 朝尓食尓 出見毎 氣緒尓 吾念妹尓 銅鏡 清月夜尓 直一眼 令覩麻而尓波 落許須奈 由来登云管 幾許 吾守物乎 宇礼多伎也 志許霍公鳥 暁之 裏悲尓 雖追雖追 尚来鳴而 徒 地尓令散者 為便乎奈美 擧而手折都 見末世吾妹兒
訓読 いかといかと ある吾が屋前(やと)に 百枝(ももえ)さし 生ふる橘 玉に貫(ぬ)く 五月(さつき)を近み あえぬがに 花咲きにけり 朝(あさ)に日(け)に 出(い)で見るごとに 気(いき)し緒に 吾が念(おも)ふ妹に 真澄鏡(まそかがみ) 清(きよ)き月夜(つくよ)に ただ一目 見するまでには 落(ち)りこすな 雪(ゆき)と云ひつつ 幾許(ここだく)も 吾が守(も)るものを うれたきや 醜(しこ)霍公鳥 暁(あかとき)し うら悲しきに 追へど追へど なほし来鳴きて いたづらに 地(つち)に散らせば すべをなみ 擧(あげ)て手(た)折(を)りつ 見ませ吾妹児(わぎもこ)
私訳 どのようになるのかと思っている、私の家に沢山の枝を伸ばし育つ橘の樹。薬狩りでの薬玉を紐に通し祝う五月も近づき、あふれるばかりに橘の花は咲きました。朝も昼も庭に出て見る度に、心底から私が慕う愛しい貴女が、見たいものを見せると云う真澄鏡のように曇りない清らかな月夜に、一目だけでもこの花橘を見るまでは、花よ、散らないで。雪が降る様だと云いながら、これほどに私が見守っているのだが、残念なことに、憎らしいホトトギスが、暁のなんとなくもの悲しいころあいに、追っても追っても、それでも飛び来て啼いて、無用に地に花を散らすと、どうしようもないので、花枝を掲げ挙って手折りました。御覧下さい、私の愛しい恋人の貴女。
注意 原文の「由来登云管」は、標準解釈では「由米登云管」と校訂し「夢と云いつつ」、「擧而手折都」は「攀而手折都」と校訂し「攀じて手折りつ」と訓じます。また、標題の「擧」も同じく「攀」に校訂します。

コメント (2)   この記事についてブログを書く
« 万葉集 集歌1498から集歌1502... | トップ | 資料編 墨子 巻五 非攻上 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (jikan314)
2021-02-19 17:42:44
いつも拝見しております。
ホトトギスが「カツコヒ、カツコヒ」と啼いたので
と有り、かつこひと鳴いたならホトトギスではなく、カッコウとなるのでは?と思いました。
その点についてお教え頂ければ幸いです。
ご質問について (作業員)
2021-02-19 18:07:03
万葉集時代、漢文ではホトトギス鳥を、和文ではカッコウ鳥を、霍公鳥と理解していたようです。
ただし、万葉人は托卵観察などからホトトギス鳥とカッコウ鳥とは全く別な鳥であることは理解しています。
逆に大陸人がホトトギス鳥とカッコウ鳥との区分が完全に出来ていたのかは不明です。不明ですが、中国故事ではホトトギス鳥は不如帰去と啼くのが約束です。

コメントを投稿

新訓 万葉集巻八」カテゴリの最新記事