竹取翁と万葉集のお勉強

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柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌 22

2013年05月12日 | 柿本朝臣人麻呂歌集及び万葉集に載る歌集
柿本朝臣人麻呂の歌並びに人麻呂歌集の歌

集歌2451 天雲 依相遠 雖不相 異手枕 吾纏哉
訓読 天雲し寄り合ひ遠(きは)み逢(あ)はずとも異(こと)手枕(たまくら)し吾(われ)纏(ま)かめやも
私訳 天の雲が流れ寄り合う世界の果てのように遠く逢うことが出来ないが、他の女性と同衾することを私がするでしょうか。

集歌2452 雲谷 灼發 意追 見乍為 及直相
訓読 雲だにもしるくし発(た)たば心遣(こころや)り見つつもせむを直(ただ)に逢ふまでに
私訳 貴女の気持ちは判りませんが、人の魂と云う雲だけでもはっきりと湧き発ってきたら私の気持ちを見せてあげられるのですが、直接に貴女に逢うように。
注意 原文の「見乍為」は、一般に「見乍居」と表記します。ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌2453 春楊 葛山 發雲 立座 妹念
訓読 春楊(はるやなぎ)葛城山(かつらぎやま)し立つ雲し立ちても坐(ゐ)ても妹をしぞ思ふ
私訳 春に楊の芽が萌え立ち、その葛城山に雲が立ち上る。その言葉の響きではないが、立っても座っても、また、時が経っても、今、この時も、貴女のことだけを想っています。

集歌2454 春日山 雲座隠 雖遠 家不念 公念
訓読 春(はる)日(ひ)山(やま)雲居(くもひ)隠(こも)りて遠(とほ)けども家し思はず君をしぞ思ふ
私訳 春の日の射す山に雲が覆っていて遥か遠いのですが、大和の故郷の家を思い出さずに貴方だけを想っています。
注意 人麻呂と隠れ妻との相聞歌の一部とみている関係でこのような訓みです。一般には「春日山」は、地名として「かすがやま」と訓みます。

集歌2455 我故 所云妹 高山之 峯朝霧 過兼鴨
訓読 我がゆゑし云はれし妹し高山(かくやま)し峯(みね)し朝霧過ぎにけむかも
私訳 私のために色々噂された貴女は、天の香具山の峰に朝霧が晴れるように噂も通り過ぎたでしょうか。

集歌2456 烏玉 黒髪山 ゞ草 小雨零敷 益ゞ所念
訓読 烏玉(ぬばたま)し黒髪山し山(やま)草(かや)し小雨降りしきしくしく思ほゆ
私訳 私の黒髪のように烏羽根のように黒光りして美しい黒髪山の山の草に小雨が降りしきり、その雨が降りしきるように益々貴方のことを想っています。

集歌2457 大野 小雨被敷 木本 時依来 我念人
訓読 大野らし小雨降りしく木(こ)の下(もと)し時と寄(よ)り来(こ)ね我が思(も)へる人
私訳 大野に小雨が降りしきって木の下に雨宿りするように、ちょうど、泊まって行く頃合いを見計らって私の家に遣って来て下さい。私の愛する貴方。

集歌2458 朝霜 消ゞ 念乍 何此夜 明鴨
訓読 朝霜し消(け)なば消(け)ぬべし思ひつついかにこの夜し明(あか)してむかも
私訳 朝霜は消えるなら消えてしまえ、消えぬ貴方への恋を想いながらどのようにこの夜を独りで明かしましょうか。

集歌2459 吾背兒我 濱行風 弥急 ゞ事 益不相有
訓読 吾が背兒が浜行く風しいや急(はや)み急(はや)みき事(こと)しまして逢はざらむ
私訳 私の愛しい貴方の子供が浜へ行く、その浜風がとても早いように、急な出来事のために貴方に逢うことが出来ません。

集歌2460 遠妹 振仰見 偲 是月面 雲勿棚引
訓読 遠(とほ)き妹振放(ふりさ)け見つつ偲(しの)ふらむこの月し面(おも)し雲な棚引く
私訳 遠い場所にいる愛しい貴女。見上げて貴女を偲びましょう。貴女の面影を写すこの月を、隠すだろう雲よ、棚引いてはいけない。

集歌2461 山葉 追出月 端ゞ 妹見鶴 及戀
訓読 山し端(は)し追出(おひいづ)る月しはつはつに妹をぞ見つる恋ほしきまで
私訳 山の端から追い出されるように出る月がわずかに見えるように、わずかに貴女の姿を見ました。恋い焦がれた思いで。
注意 原文の「追出月」の訓みには「オヒイヅルツキノ」、「オフミカヅキノ」、「イデクルツキノ」等があります。ここでは「オヒイヅルツキノ」と訓んでいます。なお、原文の「端〃」に「初〃」の意味合いがあるのなら、妹なる女性が「月を初めて迎えた」と云う意味合いもあります。

集歌2462 我妹 吾牟念者 真鏡 照出月 影所見来
訓読 我妹子し吾(われ)む思はば真澄鏡(まそかがみ)照り出づる月し影(かげ)し見え来(こ)ね
私訳 私の愛しい貴女よ。私を愛しているならば、願うものを見せると云う真澄鏡に、照り出ている月の光のようにはっきりと姿を見せに来ておくれ。

集歌2463 久方 天光月 隠去 何名副 妹偲
訓読 久方(ひさかた)し天(あま)光(て)る月し隠(かく)りなば何にな副(そ)へて妹し偲(しの)はむ
私訳 遥か彼方の天空に光る月が雲に隠れたならば、何と比べて貴女を想い偲びましょうか。

集歌2464 若月 清不見 雲隠 見欲 宇多手比日
訓読 若月(みかづき)し清(さや)にも見えず雲隠(くもかく)り見まくぞ欲(ほ)しきうたてこのころ
私訳 貴女の姿が三日月のようにはっきりと見えず雲に隠れている。貴女の姿を見たいと思う嘆かわしいこの頃。
注意 歌で女性の比喩に月が使われるとき、女性が「月のもの」で物忌みに籠っているとも解釈が可能です。

集歌2465 我背兒尓 吾戀居者 吾屋戸之 草佐倍思 浦乾来
訓読 我が背児に吾(わ)が恋ひ居(を)れば吾が屋戸(やと)し草さへ思ひうら乾(ふ)れにけり
私訳 私の愛しい貴方の子供に愛しさが募っていると、私の家の草までもが貴方を慕って、打ち萎びれてきました。

集歌2466 朝茅原 小野印 室事 何在云 公待
訓読 浅茅原(あさぢはら)小野し標結(しまゆ)ふ室事(むつこと)をいかなりと云ひて君し待たなむ
私訳 巻向の浅茅ガ原の小野に縄張りの標を結ぶ室(=小屋)、その言葉のひびきではないが、私との室事(=睦事)をどうしましょうと云って貴方がその小野で私を待っているでしょう。
注意 原文の「室事」は一般に「空事」と表記しますが、ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌2467 路邊 草深百合之 後云 妹命 我知
訓読 道し辺(へ)し草(くさ)深(ふか)百合(ゆり)し後(ゆり)し云ふ妹し命(いのち)し我(われ)知らめやも
私訳 道の傍らの草深くに咲く百合の花の、その言葉のひびきではないが、後(古語で「ゆり」)でと云う愛しい貴女の運命を私は知らない。
注意 原文の「妹命」は「母命」のように「妹の命(みこと)」とも訓めます。このとき、歌意は変わります。
試訓 道し辺(へ)し草(くさ)深(ふか)百合(ゆり)し後(ゆり)し云ふ妹し命(みこと)し我(われ)は知るらむ
試訳 道の傍らの草深くに咲く百合の花の、その言葉のひびきではないが、後(古語で「ゆり」)でねと云う愛しい貴女のことを、本当は、私はよく知っている。

集歌2468 潮葦 交在草 知草 人皆知 吾裏念
訓読 潮(しほ)し葦(あし)交(まじ)れる草し知草(しりくさ)し人皆知りぬ吾が下思(したおもひ)
私訳 淡海の潮の岸辺の葦に交じって茂る草の知草のように、人は皆知ってしまった。私の秘めた貴女への想いを。
注意 原文の「潮葦」は、一般に「湖葦」と表記します。ここでは原文のままに訓んでいます。

集歌2469 山萬苣 白露重 浦経 心深 吾戀不止
訓読 山萬(やま)苣(ちさ)し白露(しらつゆ)重(しげ)みうらぶれて心し深く吾(わ)が恋止(や)まず
私訳 沢山の山萬苣(ちしゃ=野菜)が白露の重みで葉を垂れるように、心も深く想いを貴女に垂れて、私の貴女への恋心は止むことがありません。

集歌2470 潮核 延子菅 不竊隠 公戀乍 有不勝鴨
私訓 潮(しほ)しさね延(は)ふる小菅(こすが)ししのびずて君し恋ひつつありかてぬかも
私訳 淡海の潮の中に根を延ばす小菅の根をひそかに隠すことが出来ないように、恋心を隠すことが出来ず、貴方に恋い焦がれて、日々を過ごし難いことです。
注意 原文の「潮」は「湖」の誤字とされているため、次のように解釈が違います。
改訂 湖 核延子菅 不竊隠 公戀乍 有不勝鴨
訓読 湖(みなと)にさ根(ね)延(は)ふ子菅(こすげ)しのびずて(又は「ぬすまはず」)君に戀ひつつありかてぬかも


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