竹取翁と万葉集のお勉強

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竹取翁の歌のお勉強 古今和歌集との比較 中

2009年04月08日 | 万葉集 竹取翁の歌を鑑賞する
竹取翁の歌のお勉強 古今和歌集との比較 後

「古今和歌集との比較 前」から中編です。ここから、御来場のお方は、お手数ですが「古今和歌集との比較 前」に戻られてから以下を眺めるのをお勧めします。


神無月(かむなづき)時雨(しぐれ)時雨れて(B06)
意訳 秋十月の神無月に時雨が降り続いて

衛門大尉大伴宿禰稲公
集歌1553 鍾礼能雨 無間零者 三笠山 木末歴 色附尓家里
訓読 時雨(しぐれ)の雨間(あまま)無くし降れば三笠山(みかさやま)木末(こぬれ)あまねく色付きにけり
意訳 時雨が絶え間なく降るので、三笠山は梢がすべて色付いて黄葉したよ。
解説 秋、黄葉の時期の時雨が絶え間なく降る情景を眺めています。素人の歌読みです。眺め方のご批判は、手加減してお願いいたします。


冬の夜の庭も斑(はだ)れに零(ふ)る雪の猶消えかへり(B07)
意訳 冬の夜の庭にもまだらに降る雪もなおも消えかけて

駿河采女
集歌1420 沫雪香 薄太礼尓零登 見左右二 流倍散波 何物之花其毛
訓読 沫雪(あわゆき)かはだれに降ると見るさへに流らへ散るは何の花ぞも
意訳 沫雪をまだら模様に空から降るのを見るように、空から流れ散るのは何の花でしょうか
解説 冬の庭に静かにちらりちらり降る、すぐに解けてしまいそうな沫雪を眺めています。私は、古今と同じ情景と解釈しました。


年毎(としごと)に時につけつつあはれてふ事を云ひつつ(B08)
意訳 毎年に機会があるごとに心にしみじみ思うことを云いながら

笠朝臣金村
集歌0908 毎年 如是裳見壮鹿 三吉野乃 清河内之 多藝津白浪
訓読 毎年(としのは)にかくも見てしかみ吉野の清き河内の激(たぎ)つ白浪
意訳 毎年のようにこのように見てみたいものだ。吉野の清い流れの河内に湧き立つ白波よ
解説 「年毎」の言葉に対して、パブロフの犬状態での反応です。御幸での吉野の川の流れを「あはれ」と私は感じましたが、さて、私は風流でしょうか。


公をのみ千代にと斎(いは)ふ世の人の思ひ(B09)
意訳 高貴な貴方だけは千代に栄えて下さいとお祈りする世の人の願い

日並皇子尊の舎人
集歌0183 吾御門 千代常登婆尓 将榮等 念而有之 吾志悲毛
訓読 吾が御門千代(ちよ)永久(とことは)に栄えむと念(おも)ひてありし吾し悲しも
意訳 わが皇子がおいでになる宮が千代に永遠に栄えるだろうと念じていた私は、大変に悲しいことだ。
解説 「公をのみ」の言葉の解釈と「千代にと」との言葉への響きから、集歌0183の歌です。無理やりの万葉集の歌かもしれません。


駿河の不盡(ふじ)の峯の燃ゆる思ひも飽かずして(B10)
意訳 駿河の国の富士の嶺で燃える炎のように私の想いは絶えることはありません

高橋連虫麿の歌
詠不盡山謌一首并短謌
標訓 不尽山を詠める歌一首并びに短歌
集歌0319 奈麻余美乃 甲斐乃國 打縁流 駿河能國与 己知其智乃 國之三中従 出立有 不盡能高嶺者 天雲毛 伊去波伐加利 飛鳥母 翔毛不上 燎火乎 雪以滅 落雪乎 火用消通都 言不得 名不知 霊母 座神香聞 石花海跡 名付而有毛 彼山之 堤有海曽 不盡河跡 人乃渡毛 其山之 水乃當焉 日本之 山跡國乃 鎮十方 座祇可間 寳十方 成有山可聞 駿河有 不盡能高峯者 雖見不飽香聞
訓読 なまよみの 甲斐(かひ)の国 うち寄する 駿河(するが)の国と こちごちの 国のみ中ゆ 出(い)で立てる 不尽(ふじ)の高嶺(たかね)は 天雲も い行きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びも上(のぼ)らず 燃ゆる火を 雪もち消(け)ち 降る雪を 火もち消(け)ちつつ 言ひも得ず 名付けも知らず 霊(くす)しくも 座(いま)す神かも 石花(せ)の海と 名付けてあるも その山の つつめる海ぞ 不尽河(ふじかは)と 人の渡るも その山の 水の激(たぎ)ちぞ 日の本の 大和の国の 鎮(しづめ)とも 座(いま)す神かも 宝とも 生(な)れる山かも 駿河なる 不尽の高嶺は 見れど飽かぬかも
意訳 なまよみの甲斐の国と、浪打ち寄せる駿河の国と、あちこちの国の真ん中にそびえたつ富士の高峰は、天雲も流れ行くのをはばかり、空飛ぶ鳥も山を飛び越えることもせず、山頂に燃える火を雪で消し、また、降る雪を燃える火で溶かし消し、どう表現したらよいのか、名の付け方も知らず、貴くいらっしゃる神のようです。石花の海と名付けているのも、その山を取り巻く海だよ。富士川として人が渡る川も、その山の水の激しい流れだよ。日の本の大和の国の鎮めといらっしゃる神とも、国の宝ともなる山でしょうか。駿河にある富士の高嶺は見ても見飽きることはないでしょう。
解説 これは古今の歌の言葉のままです。


別るる涕(B11)
意訳 貴女との別れの時の涙

太宰師大伴卿
集歌0453 吾妹子之 殖之梅樹 毎見 情咽都追 涕之流
訓読 吾妹子が植ゑし梅の木見るごとに情(こころ)咽(む)せつつ涙し流る
意訳 私の妻が植えた梅の木を見るたびに心もむせるように涙が切に流れます
解説 万葉集の歌の中で「涙」や「涕」の言葉を使った歌は沢山ありそうですが、標を除くと二十数首しかありません。その中での別れの涙の歌を、無理やり引っ張り出しました。逢えない恋人を恋しくて泣くのではなく、恋人との永久の別れの涙と解釈しました。


藤衣穢(おれ)る心も(B12)
意訳 美しい藤の花のような衣が汚れてしまったような心で

読み人知れず
集歌2971 大王之 塩焼海部乃 藤衣 穢者雖為 弥希将見毛
訓読 大君の塩焼く海部(あま)の藤衣(ふぢころも)穢(なれ)はすれどもいやめづらしも
意訳 大君のために塩を焼く海部の藤衣は古びてしまっているか、なぜか、興味をひかれます。
解説 「藤衣」と「穢(おれ)る」の言葉に反応しての集歌2971の歌です。個人的には、「藤の衣が穢(おれ)る」の意味合いから、この歌に藤原氏ではない紀氏の紀貫之の鬱積を感じています。それで、「古歌奉りし時の目録の その長歌」はもじり歌ですが、更に彼の感情を託したと思っています。


八千種の言(こと)の葉ごとに(B13)
意訳 沢山の木の葉のような言葉ごとに

大伴宿禰家持
集歌4314 八千種尓 久佐奇乎宇恵弖 等伎其等尓 佐加牟波奈乎之 見都追思努波奈
訓読 八千種(やちくさ)に草木を植ゑて時ごとに咲かむ花をし見つつ偲はな
意訳 色々に草木を植えて季節ごとに咲く花を見ながら、その花々を鑑賞しましょう。
解説 「八千種」と「ことの葉」の音からの集歌4314の歌です。


天皇(すべらぎ)の詔(おほ)せ畏(かしこ)み(B14)
意訳 天皇のご命令をつつしんで承って

雪宅麿
集歌3644 於保伎美能 美許等可之故美 於保夫祢能 由伎能麻尓末尓 夜杼里須流可母
訓読 天皇(おほきみ)の命(みこと)畏(かしこ)み大船の行きのまにまに宿りするかも
意訳 天皇のご命令を謹みて承り大船の航行に合わせて旅の宿りをするでしょう。
解説 「すべらぎ」は万葉集的には「大王」、「大皇」か「天皇」の用字が相当です。この言葉は大和言葉では「おほきみ」になります。そこで、天皇の勅命を拝した遣新羅使の歌から、この歌を択んで見ました。


伊勢の海の浦の潮貝(しほがひ)採(ひ)ろひ集めとれりとすれど(B15)
意訳 伊勢の海にある入り江の海底の貝を採って集めようとするけれど

読み人知らず
集歌1322 伊勢海之 白水郎之嶋津我 鰒玉 取而後毛可 戀之将繁
訓読 伊勢(いせ)の海の白水郎(あま)の島津(しまつ)が鰒玉(あはびたま)採りて後(のち)もか恋の繁けむ
意訳 伊勢の海の海人の志摩の津の真珠玉。その手に入れにくい玉を採った後でも恋は激しいだろうか。
解説 私は古今の歌に、伊勢の海の入り江の海の中から海人が貝を拾い上げる景色を見ました。そして、その景色に相応しい万葉集の集歌1322の歌を拾い上げてみました。


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