竹取翁と万葉集のお勉強

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後撰和歌集 巻19 歌番号1309から1313まで

2024年05月31日 | 後撰和歌集 現代語訳

歌番号一三〇九

原文 止遠幾久尓部満可利个留止毛多知尓飛宇知尓

曽部天川可八之个留

読下 遠き国へまかりける友だちに、火打ちに

添へてつかはしける

 

原文 与美飛止之良寸

読下 詠み人知らす

 

原文 己乃多比毛和礼遠和寸礼奴毛乃奈良八宇知美武多比尓於毛比以天奈无

和歌 このたひも われをわすれぬ ものならは うちみむたひに おもひいてなむ

読下 このたびも我を忘れぬ物ならばうち見むたびに思ひ出でなん

解釈 この度の旅立ちで、私のことを忘れることがないければ、火打石を撃つたびに、ちょっとでも私の面影を思い出して欲しいものです。

 

歌番号一三一〇

原文 美也己尓者部利个留於奈己遠以可奈留己止止可者部利个无

己々呂宇之止天止々女遠幾天伊奈者乃久尓部万可利个礼八

読下 京に侍りける女子を、いかなる事か侍りけん、

心憂しとて、留め置きて、因幡国へまかりければ

 

原文 武寸免

読下 むすめ(女)

 

原文 宇知寸天々幾美之以奈者乃川由乃美者幾衣奴者可利曽安利止多乃武奈

和歌 うちすてて きみしいなはの つゆのみは きえぬはかりそ ありとたのむな

読下 うち捨てて君し因幡の露の身は消えぬばかりぞ有りと頼むな

解釈 私を打ち捨てて貴方が行ってしまった因幡の国、都に残った私は稲葉に置く儚い露のような身の上でこの世から消えてしまいそうで、私が元気でいると期待しないでください。

 

歌番号一三一一

原文 以世尓満可利个留飛止止久以奈无止己々呂毛止

奈可留止幾々天堂比乃天宇止奈止々良寸留

物可良堂々武加美尓加幾天止良寸留奈遠八

武万止以比个留尓

読下 伊勢にまかりける人、とく往なんと、心もと

なかると聞きて、旅の調度など取らする

ものから、畳紙に書きて取らする、名をば

馬といひけるに

 

原文 与美飛止之良寸

読下 詠み人知らす

 

原文 於之止於毛不己々呂者奈久天己乃多比者由久宇万尓武知遠於本世川留可奈

和歌 をしとおもふ こころはなくて このたひは ゆくうまにむちを おほせつるかな

読下 惜しと思ふ心はなくてこのたびは行く馬に鞭をおほせつるかな

解釈 急な出立のために別れを惜しむと思う気持ちは持つ余裕はなくて、この度の旅立ちは、まるで歩き行く馬にさらにせかして鞭打つようなものでした。

 

歌番号一三一二

原文 加部之

読下 返し

 

原文 武万

読下 むま(馬)

 

原文 幾美可手遠加礼由久安幾乃寸恵尓之毛乃可比尓者奈川武万曽加奈之幾

和歌 きみかてを かれゆくあきの すゑにしも のかひにはなつ うまそかなしき

読下 君が手をかれ行く秋の末にしも野飼ひに放つ馬ぞ悲しき

解釈 貴方と繋ぐ手が離れて行く、その言葉の響きではありませんが、草木が枯れて行く秋の末には霜の野となり、その寒い野で飼うために放たれる馬は可愛そうです、(それと同じように、「馬」と名を持つ私が旅立つ貴方から野に放たれたようで、心細いものがあります。)

 

歌番号一三一三

原文 於奈之以部尓比左之宇者部利个留於无奈乃美乃々

久尓々於也乃者部利个留止不良日尓万可利个留尓

読下 同じ家に久しう侍りける女の、美濃

国に親の侍りける、訪ぶらひにまかりけるに

 

原文 布知八良乃幾与多々

読下 藤原きよたた(藤原清正)

 

原文 以末者止天多知可部利由久布留左止乃布和乃世幾知尓美也己和寸留奈

和歌 いまはとて たちかへりゆく ふるさとの ふはのせきちに みやこわするな

読下 今はとて立ち帰り行くふるさとの不破の関路に都忘るな

解釈 今はもう旅立ちの時ですと、貴女は親の住む美濃の国へと立ち帰り行きますが、その道中の古い歴史をもつ不破の関の路にあっても、都のことを忘れないでください。

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