竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌51から集歌55

2020年01月09日 | 再読、今日のみそひと...
従明日香宮遷居藤原宮之後、志貴皇子御作謌
標訓 明日香宮より藤原宮へ遷居(うつ)りし後に、志貴皇子の御(かた)りて作らせし歌
集歌五一 
原文 采女乃 袖吹反 明日香風 京都乎遠見 無用尓布久
訓読 采女の袖吹きかへす明日香(あすか)風(かぜ)京都(みやこ)を遠み無用(いたづら)に吹く
私訳 采女の袖を吹き返す明日香からの風よ。古い明日香の宮はこの新しい藤原京から遠い。風が采女の袖を振って、心を過去に呼び戻すかのように無用に吹いている。

藤原京御井歌
標訓 藤原京の御井(みゐ)の歌
集歌五二 
原文 八隅知之 和期大王 高照 日之皇子 麁妙乃 藤井我原尓 大御門 始賜而 埴安乃 堤上尓 在立之 見之賜者 日本乃 青香具山者 日経乃 大御門尓 春山路 之美佐備立有 畝火乃 此美豆山者 日緯能 大御門尓 弥豆山跡 山佐備伊座 耳高之 青菅山者 背友乃 大御門尓 宜名倍 神佐備立有 名細 吉野乃山者 影友乃 大御門徒 雲居尓曽 遠久有家留 高知也 天之御蔭 天知也 日御影乃 水許曽婆 常尓有米 御井之清水
訓読 やすみしし 吾(あ)が大王(おほきみ) 高照らす 日し皇子 荒栲の 藤井が原に 大御門(おほみかど) 始め給ひに 埴安(はにやす)の 堤し上に 在(あ)り立(た)たし 見し給へば 日し本の 青(あを)香具山(かぐやま)は 日し経(たて)の 大御門に 春し山路 繁(しみ)さび立てり 畝火の この瑞山(みずやま)は 日し緯(よこ)の 大御門に 瑞山と 山さびいます 耳成(みみなし)し 青(あを)菅山(すがやま)は 背友(そとも)の 大御門に 宜(よろ)しなへ 神さび立てり 名くはしし 吉野の山は 影友(かげとも)の 大御門と 雲居にそ 遠くありける 高知るや 天し御蔭(みかげ) 天知るや 日し御影(みかげ)の 水こそば 常にあらめ 御井(みゐ)し清水(ましみず)
私訳 天下をあまねく統治されるわが大王の天の神の国まで高く照らす日の御子の、人の踏み入れていない神聖な藤井ガ原に新しい宮城を始めなさって、埴安の堤の上に御出でになりお立ちになって周囲を御覧になると、大和の青々とした香具山は日の縦の線上の宮城の春の山路のように木々が繁り立っている、畝傍のこの瑞々しい山は日の横の線上の宮城の瑞山として相応しい山容をしている、耳成の青々とした菅の山は背面の宮城に相応しく神の山らしくそそり立っている、名も相応しい吉野の山は日の指す方向の宮城から雲が立ち上るような遠くにある。天の神の国まで高く知られている天の宮殿、天の神も知っている日の御子の宮殿の水こそは常にあるだろう。御井の清水よ。

短歌
集歌五三 
原文 藤原之 大宮都加倍 安礼衝哉 處女之友者 之吉召賀聞
訓読 藤原し大宮仕へ生(あ)れつぐや処女(おとめ)し友は扱(こ)き召(よば)ふかも
私訳 この藤原の宮城に仕えるために生まれてきたのでしょう、その家の子たる娘女たちは、お仕えするためにお召になるでしょう。
注意 原文の「之吉召賀聞」は、標準解釈では「乏吉呂賀聞」と校訂し「羨しきろかも」と訓じます。
左注 右歌、作者未詳
注訓 右の歌は、作る者いまだ詳(つばび)らかならず

大寶元年辛丑秋九月、太上天皇幸于紀國時謌
標訓 大寶元年辛丑の秋九月に、太上天皇(おほきすめらみこと)の紀國(きのくに)に幸(いでま)しし時の謌
集歌五四 
原文 巨勢山乃 列々椿 都良々々尓 見乍思奈 許湍乃春野乎
訓読 巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ思(しの)はな巨勢の春野を
私訳 巨勢山に点々と連なる椿の緑の葉の木を、つくづくしっかり眺めながらその春の花の姿を想い浮かべましょう。巨勢の春の野に咲く椿を。
左注 右一首坂門人足
注訓 右の一首は、坂門(さかとの)人足(ひとたり)。
注意 「巨勢山」は奈良県市古瀬付近の山です。

集歌五五 
原文 朝毛吉 木人乏母 亦打山 行来跡見良武 樹人友師母
訓読 あさもよし紀人(きひと)乏(とも)しも亦打山(まつちやま)行き来(く)と見らむ紀人羨(とも)しも
私訳 朝も麻も美しい、その紀国の人は国の人との別れに思いが満ちたらなくても、この真土山を都への行きと還りに眺めるのでしょう、その緑豊かな紀国の人は羨ましいことです。
左注 右一首調首淡海
注訓 右の一首は、調(つきの)首(おびと)淡海(あはみ)。
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万葉雑記 色眼鏡 番外雑話 万葉集の短歌読み直しの今後について

2019年12月25日 | 再読、今日のみそひと...
万葉雑記 色眼鏡 番外雑話 万葉集の短歌読み直しの今後について

 読み直しの万葉集 短歌の鑑賞は昨日で終わりです。
 今後のこのブログは、短歌と長歌の読み直しをしたものを合わせて、巻一から本来の万葉集原本の形で、読み直しを行います。なお、これはすでにキンドルで全五巻本として紹介しているものを五首に分割して紹介するものですので、キンドルで眺めていらっしゃる人には申し訳ありません。今回でのものにあらたなものはありません。
ブログ掲載としては、原則として月曜日から金曜日までは万葉集の読み直しをそれぞれ順に五首の扱い、日曜日はすでに初めています古今和歌集と後撰和歌集の原文推定を巻毎に載せます。原文推定については順調に作業が終われば、これは令和二年中には掲載が完了する見込みです。ただ、後撰和歌集の原文推定については予定稿が未了のため延びる可能性があります。
 土曜日については予備日とし特別に計画はありません。何か、面白いテーマを見つけたら、それを載せるかもしれませんが、今のところは・・・の感じです。
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再読、今日のみそひと謌 火

2019年12月24日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 火

二月十日、於内相宅餞渤海大使小野田守朝臣等宴謌一首
標訓 二月十日に、内相の宅(いへ)にして渤海大使小野田守朝臣等に餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4514 阿乎宇奈波良 加是奈美奈妣伎 由久左久佐 都々牟許等奈久 布祢波々夜家無
訓読 青海原(あおうなはら)風波(かぜなみ)靡き行くさ来さつつむことなく船は速けむ
私訳 青海原は風に波が靡き、貴方が行くも帰るも差し障りもなく、船足は速いでしょう。

七月五日、於式部少輔大原今城真人宅、餞因幡守大伴宿祢家持宴謌一首
標訓 七月五日に、式部少輔大原今城真人の宅(いへ)にして、因幡守大伴宿祢家持を餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4515 秋風乃 須恵布伎奈婢久 波疑能花 登毛尓加射左受 安比加和可礼牟
訓読 秋風の末吹き靡く萩の花ともにかざさず相(あひ)か別れむ
私訳 秋風が枝先に吹いて靡く萩の花、その花枝を共にかざしましょう。これから互いに別れて行くのだから。

三年春正月一日、於因幡國廳、賜饗國郡司等之宴謌一首
標訓 三年春正月一日に、因幡國(いなばのくに)の廳(ちやう)にして、饗(あへ)を國郡(くにのこほり)の司等(つかさたち)に賜(たま)はりて宴(うたげ)せし謌一首
集歌4516 新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰
訓読 新しき年の始(はじめ)の初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よこと)
私訳 新しい年の始めの初春の今日、その今日に降るこの雪のように、たくさん積もりあがれ、吉き事よ。

これで最後となりました。
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再読、今日のみそひと謌 月

2019年12月23日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 月

集歌4509 波布久受能 多要受之努波牟 於保吉美乃 賣之思野邊尓波 之米由布倍之母
訓読 延ふ葛(くず)の絶えず偲はむ王(おほきみ)の見しし野辺には標(しめ)結ふべしも
私訳 野辺に延びる葛の蔓が絶えないように御偲びする王が眺められた高円の野辺に農民に荒らされないように禁制の標を結ぶべきでしょう。

集歌4510 於保吉美乃 都藝弖賣須良之 多加麻刀能 努敝美流其等尓 祢能未之奈加由
訓読 王(おほきみ)の継ぎて見すらし高円(たかまと)の野辺見るごとに哭(ね)のみし泣かゆ
私訳 葬られた場所から王が今も見ていられるでしょう。高円の野辺を見るたびに亡くなられたことを怨みながら泣けてしまう。

属目山齊作謌三首
標訓 山齊(しま)を属目(み)て作れる謌三首
集歌4511 乎之能須牟 伎美我許乃之麻 家布美礼婆 安之婢乃波奈毛 左伎尓家流可母
訓読 鴛鴦(おしとり)の住む君がこの山斎(しま)今日見れば馬酔木(あしび)の花も咲きにけるかも
私訳 おしどりが棲む、私の大切な貴方のこの庭園を今日見ると、馬酔木の花も咲いていることです。

集歌4512 伊氣美豆尓 可氣左倍見要氏 佐伎尓保布 安之婢乃波奈乎 蘇弖尓古伎礼奈
訓読 池(いけ)水(みず)に影さへ見えて咲きにほふ馬酔木(あしび)の花を袖に扱入(こき)れな
私訳 池の水面に影までも映して咲き誇る馬酔木の花を袖にしごき取って入れましょう。

集歌4513 伊蘇可氣乃 美由流伊氣美豆 氏流麻埿尓 左家流安之婢乃 知良麻久乎思母
訓読 礒影の見ゆる池(いけ)水(みず)照るまでに咲ける馬酔木(あしび)の散らまく惜しも
私訳 磯岩の影が水面に見える池の水面を輝かすほどに咲いた馬酔木の花が散っていくことが惜しいことです。
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再読、今日のみそひと謌 金

2019年12月20日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 金

集歌4504 宇流波之等 阿我毛布伎美波 伊也比家尓 伎末勢和我世古 多由流日奈之尓
訓読 うるはしと我が思ふ君はいや日(ひ)異(け)に来ませ我が背子絶ゆる日なしに
試訳 立派な方と私が思う貴方は、毎日でもおいでいただきたい。私の大切な「宇梅乃波奈」の歌集の世界が、一日でも絶える日がないように。

集歌4505 伊蘇能宇良尓 都祢欲比伎須牟 乎之杼里能 乎之伎安我未波 伎美我末仁麻尓
訓読 礒の浦に常夜日も来住む鴛鴦の惜しき我が身は君がまにまに
試訳 中臣清麿様のお宅の池の岸に毎日のように来て住む鴛鴦を口惜しく思う私の心は、貴方の御心のままにしてください。お許しあれば、毎日のように通って来て、私が見たい「宇梅乃波奈」です。

依興各思高圓離宮處作謌五首
標訓 興に依りて各(おのがじし)高円の離宮(とつみや)処(ところ)を思(しの)ひて作れる歌五首
集歌4506 多加麻刀能 努乃宇倍能美也波 安礼尓家里 多々志々伎美能 美与等保曽氣婆
訓読 高円(たかまと)の野の上の宮は荒れにけり立たしし君の御代(みよ)遠そけば
私訳 高円の野の高台にある宮の屋敷は荒れてしまったようだ。屋敷を建てられた皇子の生前の時代は遠くなったので。

集歌4507 多加麻刀能 乎能宇倍乃美也波 安礼奴等母 多々志々伎美能 美奈和須礼米也
訓読 高円(たかまと)の峰の上の宮は荒れぬとも立たしし君の御名忘れめや
私訳 高円の高台にある宮の屋敷は荒れ果てたとしても皇子のお名前は忘れるでしょうか。

集歌4508 多可麻刀能 努敝波布久受乃 須恵都比尓 知与尓和須礼牟 和我於保伎美加母
訓読 高円(たかまと)の野辺延ふ葛(くず)の末つひに千代に忘れむ我が王(おほきみ)かも
私訳 高円の野辺に生える葛の蔓が長く延びるように千代の後に忘れられるような我が王の御名でしょうか。

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