竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌1413から集歌1417まで

2021年01月26日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一四一三 
原文 庭津鳥 下鷄乃垂尾乃 乱尾乃 長心毛 不所念鴨
訓読 庭つ鳥(とり)下鶏(しと)の垂(たり)尾(を)の乱(みだれ)尾(を)の長き心も念(おも)ほえぬかも
私訳 庭にいる地上に降りた鶏の垂れた尾羽が乱れる、その尾羽のように心も乱れ、貴女と末永くと思う気持ちも、今は願うことが出来ない。

集歌一四一四 
原文 薦枕 相巻之兒毛 在者社 夜乃深良久毛 吾惜責
訓読 薦(こも)枕(まくら)相(あひ)纏(ま)きし子もあらばこそ夜(よ)の更(ふ)くらくも吾(あ)が惜(を)しみ責(せ)む
私訳 薦で造った枕を共にして二人で抱き合って寝た貴女が居たからこそ、夜が更けていくことを私は慈しみかつ残念に思ったのです。

集歌一四一五 
原文 玉梓能 妹者珠氈 足氷木乃 清山邊 蒔散染
訓読 玉梓の妹は珠かもあしひきの清(きよ)き山辺(やまへ)に蒔(ま)けば散り染(そ)む
私訳 玉梓の使いが知らせをもたらした貴女は、まるで大切な珠や渡来の毛氈です。寒さ厳しい木々の茂る清らかな山に貴女の灰を撒くと、山は珠や毛氈のように美しく黄葉に染まりました。

或本謌曰
標訓 或る本の歌に曰はく、
集歌一四一六 
原文 玉梓之 妹者花可毛 足日木乃 此山影尓 麻氣者失留
訓読 玉梓し妹は花かもあしひきのこの山(やま)蔭(かげ)に蒔(ま)けば失せぬる
私訳 玉梓の使いが知らせをもたらした貴女は、花なのかもしれません。足や檜の生えるこの山陰に貴女の灰を撒くと、灰とともにこの花も散り失せるでしょう。

羈旅謌
標訓 羈旅(たび)の謌
集歌一四一七 
原文 名兒乃海乎 朝榜来者 海中尓 鹿子曽鳴成 可怜其水手
訓読 名児(なご)の海を朝榜(こ)ぎ来れば海中(わたなか)に鹿子(かこ)ぞ鳴くなるあはれその水手(かこ)
私訳 名児の海を朝に船を操ってやって来ると、海の中に鹿が鳴いている。しみじみと感動する、舟を漕ぐように泳ぐその鹿よ。
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万葉集 集歌1408から集歌1412まで

2021年01月25日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一四〇八 
原文 狂語香 逆言哉 隠口乃 泊瀬山尓 廬為云
訓読 狂語(たはごと)か逆言(おとづれこと)か隠口(こもくり)の泊瀬(はつせ)し山に廬(いほり)すといふ
私訳 たわけた話なのでしょうか、逆言なのでしょうか。人が隠れるという隠口の泊瀬の山に貴女は籠っていると人は云っています。

集歌一四〇九 
原文 秋山 黄葉可怜 浦觸而 入西妹者 待不来
訓読 秋山し黄葉(もみち)あはれびうらぶれて入りにし妹は待てど来まさず
私訳 秋山の黄葉は可怜で美しいが、なぜかうら寂しい。秋山の美しい黄葉に引かれて行った愛しい貴女は、待っていても帰ってきません。

集歌一四一〇 
原文 世間者 信二代者 不徃有之 過妹尓 不相念者
訓読 世間(よのなか)はまこと二(ふた)代(よ)は往(ゆ)かざらし過ぎにし妹に逢はなく念(おも)へば
私訳 人のこの世は、本当に二世代に渡って長く生きることは出来ないようです。逝き過ぎていった貴女に逢えないと思うと。

集歌一四一一 
原文 福 何有人香 黒髪之 白成左右 妹之音乎聞
訓読 福(さきはい)しいかなる人か黒髪し白くなるまで妹し声を聞く
私訳 幸福な人とは、どのような人でしょうか。黒髪が白髪に変わるまで愛しい妻の声を聞くことでしょうか。

集歌一四一二 
原文 吾背子乎 何處行目跡 辟竹之 背向尓宿之久 今思悔裳
訓読 吾が背子を何処(いづち)行かめと辟(さき)竹(たけ)し背向(そがひ)に寝(ね)しく今し悔(くや)しも
私訳 私の愛しい貴女が何処に行くことがあるでしょうかと、捩れ竹のように曲げた背を向けて夜を寝たことが、今は残念で悔いが残ります。

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万葉集 集歌1403から集歌1407まで

2021年01月22日 | 新訓 万葉集巻七
旋頭謌
標訓 旋頭謌(せどうか)
集歌一四〇三 
原文 三幣帛取 神之祝我 鎮齊杉原 燎木伐 殆之國 手斧所取奴
訓読 御幣帛(みぬさ)取り神(みわ)し祝(ほふり)が斎(いは)ふ杉原(すぎはら) 薪(たきぎ)伐(き)り殆(ほとほと)しくに手斧(てをの)取らえぬ
私訳 立派な幣帛を手に取って三輪の神官が祭る杉原よ。薪伐りの人は、神官に見つかって、もう少しのところで手斧を取られるところであった。

挽謌 雑歌
標訓 挽謌(ばんか) 雑歌(ざふか)
集歌一四〇四 
原文 鏡成 吾見之君乎 阿婆乃野之 花橘之 珠尓拾都
訓読 鏡なす吾が見し君を阿婆(あば)の野し花橘し珠に拾(ひり)ひつ
私訳 鏡のように私が見つめていた貴女を、阿婆の野の花咲く橘の珠のような、その芳しい霊(たま)を心に思い浮かべる。

集歌一四〇五 
原文 蜻野叨 人之懸者 朝蒔 君之所思而 嗟齒不病
訓読 蜻蛉野(あきつの)と人し懸(か)くれば朝(あさ)蒔(ま)きし君し思ほえて嘆(なげ)きはやまず
私訳 「あの秋津野」と人が口に出すと、朝、野に遺骨を撒いた貴女のことが思い出されて、悲しみは尽きない。

集歌一四〇六 
原文 秋津野尓 朝居雲之 失去者 前裳今裳 無人所念
訓読 秋津野(あきつの)に朝居(あさゐ)し雲し失(う)せゆけば昨日(きのふ)も今日(けふ)も亡(な)き人念(おも)ほゆ
私訳 秋津野に、朝、棚引く雲が消え失せていくと、昨日も今日も亡くなった人を思い出します。

集歌一四〇七 
原文 隠口乃 泊瀬山尓 霞立 棚引雲者 妹尓鴨在武
訓読 隠口(こもくり)の泊瀬(はつせ)し山に霞立ち棚引く雲は妹にかもあらむ
私訳 人が隠れるという隠口の泊瀬の山に霞が立っている。その棚引く雲は貴女なのでしょうか。
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万葉集 集歌1398から集歌1402まで

2021年01月21日 | 新訓 万葉集巻七
寄船
標訓 船に寄せる
集歌一三九八 
原文 神樂聲浪乃 四賀津之浦能 船乗尓 乗西意 常不所忘
訓読 楽浪(ささなみ)の志賀津し浦の船乗りに乗りにし心(こころ)常(つね)忘(わす)らえず
私訳 楽浪の志賀の海の湊で船に乗り込むように、私の心に乗り込んだ貴女の気持ちを何時も忘れられない。

集歌一三九九 
原文 百傳 八十之嶋廻乎 榜船尓 乗西情 忘不得裳
訓読 百(もも)伝(つた)ふ八十(やそ)し島廻(しまみ)を榜(こ)ぐ船に乗りにし情(こころ)忘れかねつも
私訳 百につながる八十、そのたくさんの島々を操り進む船に乗るように、私の心に乗り込んだ貴女の気持ちを忘れることが出来ない。

集歌一四〇〇 
原文 嶋傳 足速乃小舟 風守 年者也經南 相常齒無二
訓読 島伝ふ足(あし)速(はや)の小舟(をふね)風守り年はや経なむ逢ふとはなしに
私訳 島を伝って行く船足の速い小舟のように風の様子をうかがって、年はむなしく過ぎしまうのだろう。遠くから見守るだけで、貴女に逢うことはなくて。

集歌一四〇一 
原文 水霧相 奥津小嶋尓 風乎疾見 船縁金都 心者念杼
訓読 水(みな)霧(き)らふ沖つ小島に風を疾(いた)み船寄せかねつ心は念(おも)へど
私訳 霧雨にかすむ沖の小島に風が激しいので船を寄せることが出来なかった。心には貴女に逢うことを願ったのだけど。

集歌一四〇二 
原文 殊放者 奥従酒甞 湊自 邊著經時尓 可放鬼香
訓読 こと放(さ)けば沖ゆ放(さ)けなむ湊(みなと)より辺(へ)著(つ)かふ時に放(さ)くべきものか
私訳 特別に遠ざけるなら、沖で遠ざけてください。湊に入って岸辺に着こうとする時に遠ざけるものでしょうか。

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万葉集 集歌1393から集歌1397まで

2021年01月20日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一三九三 
原文 豊國之 間之濱邊之 愛子地 真直之有者 何如将嘆
訓読 豊国(とよくに)し間(ひま)し浜辺(はまへ)し真砂子(まなこ)土(つち)真直(まなほ)しあらば何か嘆かむ
私訳 豊国にある静かな浜辺の真砂子の土、その愛しい貴女よ。貴女の気持ちが私にまっすぐであればどうして嘆くことがあるでしょう。
注意 原文の「間之濱邊之」は標準解釈では「聞之濱邊之」と校訂して「企救の浜辺の」と訓じます。ここでは原文の「間」の漢字の意味を尊重して、そのままに訓じています。

寄藻
標訓 藻に寄せたる
集歌一三九四 
原文 塩満者 入流礒之 草有哉 見良久少 戀良久乃太寸
訓読 潮満てば入りぬる礒し草なれや見らく少く恋ふらくの多(た)き
私訳 潮が満ちると水中に入ってしまう磯の海草なのでしょうか、出会うことが少なく、恋い慕うことが多い。

集歌一三九五 
原文 奥浪 依流荒礒之 名告藻者 心中尓 疾跡成有
訓読 沖つ浪寄する荒礒(ありそ)し名告藻(なのりそ)は心しうちに疾(やまひ)となれり
私訳 沖に立つ浪が打ち寄せる荒磯に生える名告藻。その言葉のように貴方は名を告げました(=愛の告白)。それは私の心の内に悩みとなりました。

集歌一三九六 
原文 紫之 名高浦乃 名告藻之 於礒将靡 時待吾乎
訓読 紫(むらさき)し名高(なたか)し浦の名告藻(なのりそ)し礒に靡かむ時待つ吾を
私訳 紫の高貴な色の名が高い。その言葉のひびきのような名高の入り江の名告藻が磯で打ち靡く、その言葉のように私の名を告げた貴女が私に打ち靡く時を待つ私です。

集歌一三九七 
原文 荒礒超 浪者恐 然為蟹 海之玉藻之 憎者不有手
訓読 荒礒(ありそ)越す浪は恐(かしこ)ししかすがに海し玉藻し憎(にく)くはあらずて
私訳 荒磯を越していく浪は恐ろしい(=娘を見守る母親)。だからと云って、海の美しい藻が憎いのではありません。

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