竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
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万葉集 集歌1658から集歌1663まで

2021年04月05日 | 新訓 万葉集巻八
藤原后奉天皇御謌一首
標訓 藤原(ふじわらの)后(きさき)の天皇(すめらみこと)に奉(たてま)つりしし御謌(おほみうた)一首
集歌一六五八 
原文 吾背兒与 二有見麻世波 幾許香 此零雪之 懽有麻思
訓読 吾が背子とふたり見ませば幾許(いくばく)かこの降る雪し嬉しくあらまし
私訳 私の愛しい幼い貴方と二人で眺めたら、どれほどに、この降る雪が嬉しかったでしょう。
注意 原文の「藤原后奉」は、標準解釈では「藤皇后奉」と校訂し作歌した人物を変更します。この歌の作歌者の「藤原后」とは藤原長娥子で、校訂した場合の「藤皇后」は藤原光明子となります。そこが校訂する意図でもあります。

他田廣津娘子謌一首
標訓 他田(をさだの)廣津娘子(ひろつのをとめ)の謌一首
集歌一六五九 
原文 真木乃於尓 零置有雪乃 敷布毛 所念可聞 佐夜問吾背
訓読 真木の上(へ)に降(ふ)り置ける雪のしくしくも念(おも)ほゆるかもさ夜(よ)問(と)へ吾が背
私訳 りっぱな木の上に降り積もる雪のように、次から次と貴方を恋い慕っています。夜に、私の許に妻問うてください。私の愛しい貴方。

大伴宿祢駿河麿謌一首
標訓 大伴宿祢駿河麿(するがまろ)の謌一首
集歌一六六〇 
原文 梅花 令落冬風 音耳 聞之吾妹乎 見良久志吉裳
訓読 梅の花落(ち)らす冬風(あらし)し音(おと)のみに聞きし吾妹(わぎも)を見らくしよしも
私訳 梅の花を散らす冬の嵐の音だけを聞いて、そのような噂に聞く私の愛しい貴女に遇うのがうれしい。

紀少鹿女郎謌一首
標訓 紀(きの)少鹿(をしかの)女郎(いらつめ)の謌一首
集歌一六六一 
原文 久方乃 月夜乎清美 梅花 心開而 吾念有公
訓読 久方(ひさかた)の月夜(つくよ)を清(きよ)み梅の花心し開けて吾が念(も)へる公
私訳 遥か彼方の月のその月夜が清らかで、梅の花の花開くように心の思いを開いて、私がお慕いする貴い御方です。

大伴田村大娘与妹坂上大娘謌一首
標訓 大伴田村大娘(おほをとめ)の妹(いろ)坂上大娘(おほをとめ)に与(くみ)したる謌一首
集歌一六六二 
原文 沫雪之 可消物乎 至今 流經者 妹尓相曽
訓読 沫雪(あわゆき)し消(け)ぬべきものを今までに流らへぬるは妹に逢はむそ
私訳 沫雪のように恋心はすぐに融けて消えてしまうはずなのに、今に至るまで心に残り胸の内を流れ続けるのは愛しい恋人に逢いたいがため。
注意 原文の「至今」は標準解釈では「尓」の一字を補字して「至今尓」と校訂します。ただ、訓じは同じです。

大伴宿祢家持謌一首
標訓 大伴宿祢家持の謌一首
集歌一六六三 
原文 沫雪乃 庭尓零敷 寒夜乎 手枕不纒 一香聞将宿
訓読 沫雪(あわゆき)の庭に降り敷き寒(さむ)き夜を手枕(たまくら)纏(ま)かず独(ひと)りかも寝(ね)む
私訳 沫雪が庭に降り積もり寒い夜を、恋人の手枕を身に絡めることなく独りだけで寝る。


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万葉集 集歌1653から集歌1657まで

2021年04月02日 | 新訓 万葉集巻八
縣犬養娘子依梅發思謌一首
標訓 縣犬養(あがたのいぬかひの)娘子(をとめ)の梅に依せて思ひを發(おこ)せる謌一首
集歌一六五三 
原文 如今 心乎常尓 念有者 先咲花乃 地尓将落八方
訓読 今し如(ごと)心を常に念(おも)へらばまづ咲く花の地(つち)に落(ふ)らめやも
私訳 今のように気持ちを平静に保っていたのなら、人を慕う時に真っ先に咲く恋の花(乙女の体)、その恋の花を地に散らしたでしょうか。

大伴坂上郎女雪謌一首
標訓 大伴坂上郎女の雪の謌一首
集歌一六五四 
原文 松影乃 淺茅之上乃 白雪乎 不令消将置 言者可聞奈吉
訓読 松蔭(まつかげ)の浅茅(あさぢ)し上の白雪(しらゆき)を消(け)たずて置かむことはかも無き
私訳 松の木陰の浅茅の上の白雪を融け消さないで、そのまま留め置くことは出来ないでしょうか。


冬相聞
標訓 冬の相聞
三國真人人足謌一首
標訓 三國真人(みくにのまひと)人足(ひとたり)の謌一首
集歌一六五五 
原文 高山之 菅葉之努藝 零雪之 消跡可曰毛 戀乃繁鶏鳩
訓読 高山(たかやま)し菅(すが)し葉(は)凌(しの)ぎ降る雪し消(け)ぬと云ふかも恋の繁けく
私訳 高い山で菅の葉を押し靡かせて降る雪のように解けて消えると云うべきか、この貴女を慕う気持ちのときめきを。

大伴坂上郎女謌一首
標訓 大伴坂上郎女の謌一首
集歌一六五六 
原文 酒杯尓 梅花浮 念共 飲而後者 落去登母与之
訓読 酒杯(さかづき)に梅の花浮け思ふどち飲みての後(のち)は落(ち)りぬともよし
私訳 酒盃に梅の花びらを浮かべ、風流を共にするものが酒を飲んだ後は、花が散ってしまっても良い。

和謌一首
標訓 和(こた)へたる謌一首
集歌一六五七 
原文 官尓毛 縦賜有 今夜耳 将欲酒可毛 散許須奈由米
訓読 官(つかさ)にも許(ゆる)したまへり今夜(こよひ)のみ飲まむ酒(さけ)かも散りこすなゆめ
私訳 天皇は「酒は禁制」とおっしゃっても、太政官はお許しくださっている。今夜だけ特別に飲む酒です。梅の花よ、決して散ってくれるな。
左注 右、酒者、宮禁制称京中閭里不得集宴。但親々一二飲樂聴許者。縁此和人作此發句焉。
注訓 右は、酒は、宮の禁制(きんせい)して称(い)はく「京(みやこ)の中(うち)の閭里(さと)に集宴(うたげ)することを得ざれ。ただ親々一二(はらからひとりふたり)の飲樂(うたげ)を許すは聴く」といへり。此の縁(えにし)に和(こた)ふる人此の發句(はつく)を作れり。
注意 左注の「宮禁制称京中閭里不得集宴」の「宮」は、標準解釈では「官」と校訂します。ただし、校訂して「官」としますと歌の内容と左注の内容に矛盾が生じます。
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万葉集 集歌1648から集歌1652まで

2021年04月01日 | 新訓 万葉集巻八
紀少鹿女郎梅謌一首
標訓 紀(きの)少鹿女郎(をしかのいらつめ)の梅の謌一首
集歌一六四八 
原文 十二月尓者 沫雪零跡 不知可毛 梅花開 含不有而
訓読 十二月(しはす)には沫雪(あわゆき)降ると知らねかも梅の花咲く含(ふふ)めらずして
私訳 梅の花は、十二月には沫雪が降るとは知らないのだろう。その梅の花が咲いている。莟のままでいないで。

大伴宿祢家持雪梅謌一首
標訓 大伴宿祢家持の雪の梅の謌一首
集歌一六四九 
原文 今日零之 雪尓競而 我屋前之 冬木梅者 花開二家里
訓読 今日(けふ)降りし雪に競(きほ)ひて我が屋前(やど)し冬木(ふゆき)し梅は花咲きにけり
私訳 今日降った雪と競ったからか、私の家の冬枯れした樹に梅の花が咲きました。

御在西池邊肆宴謌一首
標訓 西の池の邊(ほと)りに御在(いま)して肆宴(うたげ)したまひし謌一首
集歌一六五〇 
原文 池邊乃 松之末葉尓 零雪者 五百重零敷 明日左倍母将見
訓読 池し辺(へ)の松し末葉(うらは)に降る雪は五百重(いほへ)降りしけ明日(あす)さへも見む
私訳 池のほとりの松、その言葉の響きのような松の梢の葉に降る雪は、幾重にもその枝に降り積もれ。明日もまたその姿を眺めよう。

大伴坂上郎女謌一首
標訓 大伴坂上郎女の謌一首
集歌一六五一 
原文 沫雪乃 比日續而 如此落者 梅始花 散香過南
訓読 沫雪(あわゆき)のこのころ續(つ)ぎてかく落(ふ)らば梅し初花(はつはな)散りか過ぎなむ
私訳 沫雪がこの季節に次ぎ次ぎとこのように降るのなら、梅の初花は、その花を散らすか花の盛りを過ぎてしまうでしょう。

他田廣津娘子梅謌一首
標訓 他田(をさたの)廣津娘子(ひろつのをとめ)の梅の謌一首
集歌一六五二 
原文 梅花 折毛不折毛 見都礼杼母 今夜能花尓 尚不如家利
訓読 梅の花折(を)りも折らずも見つれども今夜(こよひ)の花になほ如(し)かずけり
私訳 梅の花の手折ったものや手折らないそのままの花の姿を眺めたとしても、今夜、貴方が訪ねる床に咲く花には、到底、及びませんよ。
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万葉集 集歌1643から集歌1647まで

2021年03月31日 | 新訓 万葉集巻八
若櫻部朝臣君足雪謌一首
標訓 若櫻部(わかさくらべの)朝臣(あそみ)君足(きみたり)の雪の謌一首
集歌一六四三 
原文 天霧之 雪毛零奴可 灼然 此五柴尓 零巻乎将見
訓読 天(あま)霧(き)らし雪も降らぬかいちしろくこの斎柴(いつしば)に降らまくを見む
私訳 空を霧に立ち込めて、そこに雪も降ってこないだろうか。ひたすらにこの厳かな斎柴に雪が降り包むのを見たい。

三野連石守梅謌一首
標訓 三野連(みののむらぢ)石守(いはもり)の梅の謌一首
集歌一六四四 
原文 引攀而 折者可落 梅花 袖尓古寸入津 染者雖染
訓読 引き攀(よ)ぢて折(を)らば落(ち)るべし梅の花袖に扱入(こき)れつ染(し)まば染むとも
私訳 引き捩って枝を折れば花は散るでしょう。その梅の花を袖に枝からしごき入れた。衣が梅の花に染まるなら染まるのも良い。

巨勢朝臣宿奈麻呂雪謌一首
標訓 巨勢朝臣(こせのあそみ)宿奈麻呂(すくなまろ)の雪の謌一首
集歌一六四五 
原文 吾屋前之 冬木乃上尓 零雪乎 梅花香常 打見都流香裳
訓読 吾が屋前(やど)し冬木(ふゆき)の上に降る雪を梅し花かとうち見つるかも
私訳 私の家の冬枯れした樹の上に降る雪を、梅の花かとつい見間違えた。

小治田朝臣東麻呂雪謌一首
標訓 小治田朝臣(をはりたのあそみ)東麻呂(あづままろ)の雪の謌一首
集歌一六四六 
原文 夜干玉乃 今夜之雪尓 率所沾名 将開朝尓 消者惜家牟
訓読 ぬばたまの今夜(こよひ)し雪にいざ濡れな明(あ)けむ朝(あした)に消(け)なば惜しけむ
私訳 漆黒の今夜の雪に、さあ、濡れよう。夜が明ける朝に雪が融け消えていたら心残りでしょう。

忌部首黒麻呂雪謌一首
標訓 忌部首(いむへのおひと)黒麻呂(くろまろ)の雪の謌一首
集歌一六四七 
原文 梅花 枝尓可散登 見左右二 風尓乱而 雪曽落久類
訓読 梅の花枝にか散ると見るさへに風に乱れて雪ぞ降り来る
私訳 梅の花、枝にと花が散っていると眺めるのにまして、風に交じって雪が降って来た。

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万葉集 集歌1638から集歌1642まで

2021年03月30日 | 新訓 万葉集巻八
天皇御製謌一首
標訓 天皇(すめらみこと)の御製歌(おほみうた)一首
集歌一六三八 
原文 青丹吉 奈良乃山有 黒木用 造有室者 雖居座不飽可聞
訓読 あをによし奈良の山なる黒木(くろき)もち造れる室(むろ)は座(ま)せど飽かぬかも
私訳 木々の葉色も青々と匂うように美しい奈良の山にある黒木を使って造った大嘗の室は、このように建てられていても見飽きることはありません。
左注 右、聞之御在左大臣長屋王佐保宅肆宴御製。
注訓 右は、聞かく「左大臣長屋王の佐保の宅(いへ)に御在(いでま)せる肆宴(とよのあかり)のきこしめす御製(おほみうた)なり」といへり。
注意 続日本紀とは相違しますが、この二首は神亀元年十一月二十三日の大嘗祭が完了した時の歌です。

太宰帥大伴卿冬日見雪憶京謌一首
標訓 太宰帥大伴卿の冬の日に雪を見て京(みやこ)を憶(おも)へる謌一首
集歌一六三九 
原文 沫雪 保杼呂保杼呂尓 零敷者 平城京師 所念可聞
訓読 沫雪(あわゆき)しほどろほどろに降り敷しけば平城(なら)し京(みやこ)し思ほゆるかも
私訳 沫雪が庭にまだら模様に降り積もると、奈良の京を思い出されます。

太宰帥大伴卿梅謌一首
標訓 太宰帥大伴卿の梅の謌一首
集歌一六四〇 
原文 吾岳尓 盛開有 梅花 遺有雪乎 乱鶴鴨
訓読 吾が岳(おか)に盛(さか)りに咲ける梅の花残れる雪を乱(まが)へつるかも
私訳 私が眺める岳に花の盛りとばかりに咲いている梅の花よ。枝に融け残った雪を梅の花と間違えたのだろうか。

角朝臣廣辨雪梅謌
標訓 角朝臣(つのあそみ)廣辨(ひろべ)の雪の梅の謌
集歌一六四一 
原文 沫雪尓 所落開有 梅花 君之許遣者 与曽倍弖牟可聞
訓読 沫雪(あわゆき)に落(ふ)らえて咲ける梅し花君し許(と)遣(や)らばよそへてむかも
私訳 沫雪に降られたか、だから咲いている梅の花。その花を貴方の許に贈ったなら、花にこの見る風景を想像されるでしょうか。

安倍朝臣奥道雪謌一首
標訓 安倍朝臣(あべのあそみ)奥道(おきみち)の雪の謌一首
集歌一六四二 
原文 棚霧合 雪毛零奴可 梅花 不開之代尓 曽倍而谷将見
訓読 たな霧(き)らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬし代(しろ)に擬(そ)へてだに見む
私訳 地には霧が一面に広がり、そこに雪も降って来ないだろうか。梅の花が咲かない代わりに、雪を梅の花に擬えてだけでも、この景色を眺めたい。

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