竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集 集歌1784から集歌1788まで

2021年05月10日 | 新訓 万葉集巻九
万葉集 集歌1784から集歌1788まで

贈入唐使謌一首
標訓 入唐使に贈れる歌一首
集歌一七八四 
原文 海若之 何神乎 齊祈者歟 徃方毛来方毛 船之早兼
訓読 海神(わたつみ)しいづれし神を祈(いの)らばか行くさも来(く)さも船し早けむ
私訳 海神のどの神にお願いすれば良いのでしょうか。行きも帰りも船が早く行きつきます様にと。
左注 右一首、渡海年紀未詳。
注訓 右の一首は、渡海の年紀はいまだ詳(つばひ)らかならず。

神龜五年戊辰秋八月謌一首并短哥
標訓 神亀五年戊辰秋八月の歌一首并せて短歌
集歌一七八五 
原文 人跡成 事者難乎 和久良婆尓 成吾身者 死毛生毛 君之随意常 念乍 有之間尓 虚蝉乃 代人有者 大王之 御命恐美 天離 夷治尓登 朝鳥之 朝立為管 群鳥之 群立行者 留居而 吾者将戀奈 不見久有者
訓読 人と成る ことは難(かた)きを わくらばに 成れる吾(あ)が身は 死(しに)も生(いき)も 君しまにまと 念(おも)ひつつ ありし間(あひだ)に 現世(うつせみ)の 世し人なれば 大王(おほきみ)し 命(みこと)恐(かしこ)み 天離る 鄙治めにと 朝鳥し 朝立ちしつつ 群鳥(むらとり)し 群立(むらた)ち行かば 留(と)まり居(ゐ)て 吾は恋ひむな 見ず久(ひさ)ならば
私訳 人として生まれてくることは難しいのに、たまたま人間として生まれてきた私の体は死ぬも生きるも貴方の御心のままと思ってきましたが、私はこの現世の人の世を生きる人間ですから、貴方が大王のご命令を謹んで承って、都から遠く離れた田舎を治めるためにと、朝鳥のように朝に旅に立ち、群鳥のように供を連れ、集団になって行くと、都に留まっている私は恋しくなってしまうでしょう。貴方に会うことが久しく絶えてしまうと。

反謌
集歌一七八六 
原文 三越道之 雪零山乎 将越日者 留有吾乎 懸而小竹葉背
訓読 み越道(こしぢ)し雪降る山を越えむ日は留(と)まれる吾を懸(か)けて偲(しの)はせ
私訳 越の国への道で、雪が降り積もるような山を越える日は留まっている私を、心に懸けて思い出してください。

天平元年己巳冬十二月謌一首并短謌
標訓 天平元年己巳冬十二月の歌一首并せて短謌
集歌一七八七 
原文 虚蝉乃 世人有者 大王之 御命恐弥 礒城嶋能 日本國乃 石上 振里尓 紐不解 丸寐乎為者 吾衣有 服者奈礼奴 毎見 戀者雖益 色色山上復有山者 一可知美 冬夜之 明毛不得呼 五十母不宿二 吾歯曽戀流 妹之直香仁
訓読 現世(うつせみ)の 世し人なれば 大王(おほきみ)し 命(みこと)恐(かしこ)み 礒城嶋(しきしま)の 日本(やまと)し国の 石上(いそのかみ) 振(ふる)し里に 紐解(と)かず 丸寝(まるね)をすれば 吾が衣(き)る 服(ころも)は穢(なれ)ぬ 見るごとに 恋はまされど 色(いろ)に出(い)でば 人知りぬべみ 冬し夜し 明(あ)かしもえぬを 寝(い)も寝(ね)ずに 吾はぞ恋ふる 妹し直香(ただか)に
私訳 現世の世を生きる人なので、大王の御命令を謹んで承って、礒城嶋の大和の石上の布留の里に上着の紐を解くこともせず、ごろ寝をすると、私が着る服はよれよれになった。貴女が紐を結んだこの衣を見る度に恋心は増さるけど、表情に出せば人は知るでしょう。冬の長き夜の明かし難いのを寝るに寝られず、私は恋慕う、愛しい貴女の目に映る姿に。

反謌
集歌一七八八 
原文 振山従 直見渡 京二曽 寐不宿戀流 遠不有尓
訓読 布留山(ふるやま)ゆ直(ただ)に見わたす京(みやこ)にぞ寝(い)も寝(ね)ず恋ふる遠くあらなくに
私訳 石上の布留山から、直接に見渡せる奈良の京に居る、夜に寝ることも出来ずに貴女を慕う。そんなに遠くでもないのに。
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万葉集 集歌1779から集歌1783まで

2021年05月07日 | 新訓 万葉集巻九
万葉集 集歌1779から集歌1783まで

藤井連和謌一首
標訓 藤井連の和(こた)へたる謌一首
集歌一七七九 
原文 命乎志 麻勢久可願 名欲山 石踐平之 復亦毛来武
訓読 命(いのち)をし真幸(まさき)くもがも名欲山(なほりやま)石(いは)踏(ふ)み平(なら)しまたまたも来(こ)む
私訳 命を大切にして無事で居て欲しい。名欲山の岩を踏みしめて、きっと、再び、ここにやって来るでしょう。

鹿嶋郡苅野橋別大伴卿謌一首并短謌
標訓 鹿嶋郡(かしまのこほり)の苅野(かるの)の橋にして大伴卿に別れたる謌一首并せて短謌
集歌一七八〇 
原文 牝牛乃 三宅之酒尓 指向 鹿嶋之埼尓 狭丹塗之 小船儲 玉纒之 小梶繁貫 夕塩之 満乃登等美尓 三船子呼 阿騰母比立而 喚立而 三船出者 濱毛勢尓 後奈居而 反側 戀香裳将居 足垂之 泣耳八将哭 海上之 其津乎指而 君之己藝歸者
訓読 牝牛(ちちうし)の 官家(みやけ)し坂に さし向ふ 鹿島し崎に さ丹塗りし 小船(をふね)を設(ま)け 玉(たま)纏(まき)し 小梶(をかぢ)繁(しじ)貫(ぬ)き 夕潮(ゆふしほ)し 満ちの留(とど)みに 御船子(みふなこ)を 率(あとも)ひ立てて 喚(よ)び立たてて 御船(みふね)出(い)でなば 浜も狭(せ)に 後れ並み居て 反(こい)側(まろ)び 恋ひかも居(を)らむ 足(あし)垂(たり)し 泣(な)くのみや哭(ね)かむ 海上(うなかみ)し その津を指して 君し漕ぎ帰(い)かば
私訳 乳を採る牝牛を飼う官家のある坂に向かい立つ鹿島の崎に、丹を塗った官の使う小船を用意して、小さな梶を艫に取り付けて、夕潮が満潮になり、御船の水手達を引き連れ立て、呼び立てて、御船が出港すると、浜も狭いほどに後に残される人たちは並んで居て、悲しみに転げまわって貴方のことを慕うでしょう。寝転びて足をバタバタして泣くだけして貴方との別れを恨むでしょう。下総海上にある、その湊を目指して貴方が乗る船が漕ぎ行くと。

反謌
集歌一七八一 
原文 海津路乃 名木名六時毛 渡七六 加九多都波二 船出可為八
訓読 海(うみ)つ路(ぢ)の和(な)きなむ時も渡らなむかく立つ波に船出すべしや
私訳 海路を行くに凪である時を択んで渡るでしょう。このように波立っている波間に船出をするべきでしょうか。
左注 右二首、高橋連蟲麻呂之謌集中出。
注訓 右の二首は、高橋連虫麻呂の歌集の中に出づ。

与妻謌一首
標訓 妻に与へたる歌一首
集歌一七八二 
原文 雪己曽波 春日消良米 心佐閇 消失多列夜 言母不往来
訓読 雪こそば春日(はるひ)消(け)ゆらめ心さへ消(き)え失せたれや言(こと)も通はぬ
私訳 積もった雪は春の陽光に当たって解けて消えるように、貴女は私への想いも消え失せたのでしょうか。私を愛していると云う誓いの歌もこの春になっても遣って来ません。

妻和謌一首
標訓 妻の和(こた)へたる歌一首
集歌一七八三 
原文 松反 四臂而有八羽 三栗 中上不来 麻呂等言八子
訓読 松(まつ)返(かへ)りしひてあれやは三栗(みつくり)し中(なか)上(のぼ)り来(こ)ぬ麻呂といふ奴(やつこ)
私訳 松の緑葉は生え変わりますが、貴方は体が不自由になったのでしょうか。任期の途中の三年目の中上がりに都に上京して来ない麻呂という奴は。
貴方が便りを待っていた返事です。貴方が返事を強いたのですが、任期の途中の三年目の中の上京で、貴方はまだ私のところに来ません。麻呂が言う八歳の子より。
左注 右二首、柿本朝臣人麻呂之謌集中出。
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麻呂の歌集の中に出づ。
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万葉集 集歌1774から集歌1778まで

2021年05月06日 | 新訓 万葉集巻九
万葉集 集歌1774から集歌1778まで

獻舎人皇子謌二首
標訓 舎人皇子に献(たてまつ)れる歌二首
集歌一七七四 
原文 垂乳根乃 母之命乃 言尓有者 年緒長 憑過武也
訓読 たらちねの母し命(みこと)の言にあれば年し緒長く憑(たの)め過ぎむや
私訳 乳を与えてくれた実母の大切な命令であれば、長い年月をただ頼りにさせたままで済ますでしょうか。

集歌一七七五 
原文 泊瀬河 夕渡来而 我妹兒何 家門 近春二家里
訓読 泊瀬川夕渡り来て吾妹子(わぎもこ)が家し門し近づきにけり
私訳 泊瀬川を夕刻に渡って来て、恋しい恋人の家の門が近付いてきた。
左注 右三首、柿本朝臣人麻呂之歌集出。
注訓 右の三首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。

石川大夫遷任上京時、播磨娘子贈謌二首
標訓 石川大夫の任を遷(うつ)さえて京(みやこ)に上(のぼ)りし時に、播磨の娘子(をとめ)の贈れる謌二首
集歌一七七六 
原文 絶等寸笶 山之岑上乃 櫻花 将開春部者 君乎将思
訓読 絶等寸(たゆとき)し山し岑(を)し上(へ)の桜花(さくらはな)咲かむ春へは君を思(しの)はむ
私訳 散ると縁が切れてしまう、山の丘の上に咲く桜の花よ。次に桜が咲くでしょう春には、貴方のことを思い出し偲びましょう。

集歌一七七七 
原文 君無者 奈何身将装餝 匣有 黄楊之小梳毛 将取跡毛不念
訓読 君なくはなぞ身(み)装(よそ)はむ匣(くしげ)なる黄楊(つげ)し小櫛(をぐし)も取らむとも思(も)ず
私訳 貴方が居なくては、どうして、私は着飾りましょう。匣にしまい込んである黄楊のかわいい櫛も取り出そうとは思いません。

藤井連遷任上京時、娘子贈謌一首
標訓 藤井連の任を遷(うつ)さえて京(みやこ)に上(のぼ)りし時に、娘子(をとめ)の贈れる謌一首
集歌一七七八 
原文 従明日者 吾波孤悲牟奈 名欲山 石踏平之 君我越去者
訓読 明日よりは吾は恋ひむな名欲山(なほりやま)石(いは)踏(ふ)み平(なら)し君が越え去(い)なば
私訳 明日からは私は貴方を懐かしむでしょう。名欲山の岩を踏みしめて貴方が越えて都に去って行ったならば。

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万葉集 集歌1769から集歌1773まで

2021年05月05日 | 新訓 万葉集巻九
万葉集 集歌1769から集歌1773まで

集歌一七六九 
原文 如是耳志 戀思度者 霊剋 命毛吾波 惜雲奈師
訓読 かくのみし恋ひしわたればたまきはる命も吾(あれ)は惜しけくもなし
私訳 このように貴女に恋心を持ち続けたならば、霊魂が宿る心臓が止まっても私は惜しくもありません。

大神大夫任長門守時、集三輪河邊宴謌二首
標訓 大神大夫の長門守に任(ま)けらし時に、三輪河の邊(ほとり)に集ひて宴(うたげ)せる謌二首
集歌一七七〇 
原文 三諸乃 神能於婆勢流 泊瀬河 水尾之不断者 吾忘礼米也
訓読 三諸(みもろ)の神のお座(ば)せる泊瀬川水脈(みを)し絶えずは吾(われ)忘れめや
私訳 三諸の神々がいらっしゃる泊瀬川の水の流れが絶えないように、思い出を絶って、私が貴方を忘れるでしょうか。

集歌一七七一 
原文 於久礼居而 吾波也将戀 春霞 多奈妣久山乎 君之越去者
訓読 後(おく)れ居(ゐ)て吾(われ)はや恋ひむ春霞たなびく山を君し越え去(ゐ)なば
私訳 大和の国に残されて居て、私は貴方のことを慕うでしょう。春の霞が棚引く山を貴方が越えて去って行ったらならば。
左注 右二首、古集中出
注訓 右の二首は、古き集(しふ)の中(うち)に出(い)づ。

大神大夫任筑紫國時、阿倍大夫作謌一首
標訓 大神大夫の筑紫國に任(ま)けらし時に、阿倍大夫の作れる謌一首
集歌一七七二 
原文 於久礼居而 吾者哉将戀 稲見野乃 秋芽子見都津 去奈武子故尓
訓読 後(おく)れ居(ゐ)て吾(あれ)はや恋ひむ稲見野(いなみの)の秋萩見つつ去(ゐ)なむ子故に
私訳 大和の国に残されて居て、私はあの人のことを慕うでしょう。稲見野の秋萩を眺めながら去って行くあの人のために。

獻弓削皇子謌一首
標訓 弓削皇子に献(たてまつ)れる歌一首
集歌一七七三 
原文 神南備 神依板尓 為杉乃 念母不過 戀之茂尓
訓読 神南備(かむなび)し神依(より)板(いた)にする杉の想ひも過ぎず恋ししげきに
私訳 神南備の神が依る板にする杉の、過ぎる想いも過ぎるとは思わないほどです。この恋心の激しさに。

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万葉集 集歌1764まで集歌1768まで

2021年05月04日 | 新訓 万葉集巻九
万葉集 集歌1764まで集歌1768まで

七夕謌一首并短哥
標訓 七夕の歌一首并せて短歌
集歌一七六四 
原文 久堅乃 天漢尓 上瀬尓 珠橋渡之 下湍尓 船浮居 雨零而 風不吹登毛 風吹而 雨不落等物 裳不令濕 不息来益常 玉橋渡須
訓読 久方の 天つ川原に 上つ瀬に 玉橋渡し 下つ瀬に 船浮け据ゑ 雨降りて 風吹かずとも 風吹きて 雨降らずとも 裳濡らさず やまず来ませと 玉橋渡す
私訳 遥か彼方の天の川原の上流の瀬に美しい橋を渡し、下流の瀬に船橋を浮かべ据えて、雨が降って風が吹かずとも、風が吹いて雨が降らなくても裳の裾を濡らすでしょうが、その裳を濡らさないように嫌がらずにいらっしゃいと美しい橋を私が渡します。

反謌
集歌一七六五 
原文 天漢 霧立渡 且今日々々々 吾待君之 船出為等霜
訓読 天つ川霧立ちわたる今日今日と吾が待つ君し船出すらしも
私訳 天の川に霧が立ち渡っている。霧ではっきりは見えないが、今日か今日かと私が待つ貴方が船出をするらしい。
左注 右件謌、或云、中衛大将藤原北卿宅作也
注訓 右の件(くだり)の歌は、或は云はく「中衛大将藤原北卿の宅(いへ)の作なり」といへり。

相聞
標訓 相聞

振田向宿祢退筑紫國時謌一首
標訓 布留(ふるの)田向(たむけの)宿祢(すくね)の筑紫國に退(まか)りし時の謌一首
集歌一七六六 
原文 吾妹兒者 久志呂尓有奈武 左手乃 吾奥手尓 纒而去麻師乎
訓読 吾妹子(わぎもこ)は釧(くしろ)にあらなむ左手(ひだりて)の吾(あ)が奥(おく)し手に纏(ま)きて去(い)なましを
私訳 愛しい貴女が釧であったなら左手の私の人が見ることのない袖の奥の二の腕に纏って連れ去って行くのですが。

抜氣大首任筑紫時、娶豊前國娘子紐兒作謌三首
標訓 抜氣大首(ぬきけのおびと)の筑紫に任(ま)けらえし時に、豊前國の娘子(をとめ)紐兒(ひものこ)を娶(ま)きて作れる謌三首
集歌一七六七 
原文 豊國乃 加波流波吾宅 紐兒尓 伊都我里座者 革流波吾家
訓読 豊国(とよくに)の香春(かはる)は吾家(わぎへ)紐(ひも)し児(こ)にいつがり居(を)れば香春は吾家
私訳 豊国の香春の郷は私の家です。紐児に気持ちがつながっていると、香春の郷は私の家です。

集歌一七六八 
原文 石上 振乃早田乃 穂尓波不出 心中尓 戀流此日
訓読 石上(いそのかみ)布留(ふる)の早稲田(わさだ)の穂には出でず心しうちに恋ふるこの日
私訳 石上の布留の早稲田の穂のようにはっきりと出ないが、心の内に貴女に恋する。貴女に会った今日は。

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