Xenos Audio

オーディオと音楽について

次期スピーカー構想(その6)

2007年02月16日 01時03分43秒 | オーディオ
この連載はあと4,5回続ける予定なのですが、書きながら自分の理想を練っているうちに気付いたことがあります。それは、“そんなスピーカーない”若しくは“あっても自分には高価で買えない”ということです。あくまで理想を書くだけだからいいのかな?
オーディオという趣味は良し悪しが数字で簡単に断定できる程、シンプルなものではありません。しかし、「何をやっても自由だから何も主張しない。」のでは面白くもなんともない。個々の嗜好の多様性と科学としてのオーディオの妥協点の熱いすり合わせが楽しいのです。理論としてはAの方が良いらしいけど音はBの方が好きだなという、頭脳とセンスの食い違いを楽しむというべきか…。
商売がからむとかなり嫌らしいのでこれは省くとして、あくまで趣味として「俺の~方式が最高!」なんて語っている人を見ると私は嫌悪感よりも“楽しさ”を感じます。
(と、フルレンジ型礼賛の方の某Blogとホーン型マルチアンプ礼賛の某HPを最近読んで思いました。)

さて、今回はキャビネットの話です。
指向性が広いことをよしとするならば四角四面のキャビネットにメリットが少ないのは明らかです。特に中高域については、バッフルは小さく、そして滑らかな曲線で構成されていなければなりません。もちろんホーン型のように指向性を絞るのであれば回折の影響が小さくなるので四角四面でも問題は少ないといえるでしょう。低域はバッフルの大きさが中低域に好ましい強調(バッフルコンペンセーション)を与えることもありますし、ネットワークでそれを作っているメーカーさえあります。そもそも低域ユニットに対しては十分なキャビティがある方が質の良い低音が得られやすいようです。それは言い換えるならばスピーカー設計の計算式におけるQを0.7にするよりも0.5にするほうが聴覚上好ましいという意味のようです。
低域の質感に関してはチューニングを低くとったバスレフが一番好きです。ただし、ポートが後方または下方を向いていることが条件です。パッシヴラジエータも独特の良さを感じます。密閉型はどうしても抑圧されているように聴こえます。ユニット後方からの音を2m以上の時間差をかけて再生するやり方は生理的に好きにはなれません。低音は若干時間差を置いて再生したほうが聴感上の量感が出るということを承知しているつもりであっても、です。
低域のキャビネットは大きく、中高域のキャビネットは小さく、と考えると両立するデザインは難しいです。自然と今日のハイエンド系スピーカーのデザインになっていくと思います。

キャビネットの重量そのものについてこだわりはありません。ただし重いということは材質の密度が高く、大抵の場合、“硬い”ということも示しています。私はキャビネット、特にフロントバッフルは硬くあるべきと考えています。というのはユニットの反作用を受け止めるのは実質的にフロントバッフルであるとみなしているからです。
“ボイスコイルに働く力を受け止めるのはマグネットであり、このマグネット部分の重量増加が反作用を最も効果的に受け止める方法である”とし「デッドマス」と言われる金属の重量物をマグネットに付加するのが所謂ユニウェーブの理論の一つです。実際にこの理論に対しては何の齟齬もないように思えます。
マグネットで生じた力はフレームを通してフロントキャビネットに伝わると考えると問題になるのはコンプライアンスです。マグネットとフレームとフロントバッフルの剛性が十分に高く、そしてそれぞれの結合におけるコンプライアンスもまた十分に高いものであるとして初めてフロントバッフルの重さそのものがマグネットを支えることになります。

100kgの綿の上でジャンプするのと100kgの石の上でジャンプするのとでは全く違うように、キャビネットが重いだけでは不十分で、そこに硬いという条件が揃わなければ重さを生かすことにはなりません。そこが木質系素材の弱点であるといえます。ですから私は金属系あるいは石系のキャビネットを支持します。あくまで“重量という視点から見て”理論的に考えた話であって、決して木質系素材の美しい響きを否定するものではありませんので悪しからず…