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クズ

2017-09-05 00:03:02 | フラワー・園芸

福岡県飯塚市筑豊緑地にて

 

野山や雑木林などで、他の植物を覆いつくすようにして繁茂する植物、クズ(葛)“Pueraria montana” 。

グングンつるを伸ばし、葉ばかりが生い茂って花のイメージはないが、

夏から秋にかけ、フジの花によく似た、いかにもマメ科らしい花をささやかに咲かす。

ススキハギキキョウ,オミナエシ,フジバカマ,ナデシコと同じく秋の七草のひとつ。

日本全国に分布し、強健で繁茂力が旺盛で、放置された空地や休講田畑でも生い茂る。

日本から家畜飼料やガーデニング用として海外へも流出したが、

増え過ぎにより在来種を駆逐し、外国では侵略的外来種に指定されて、駆除対称になっている。

 

 

福岡県添田町にて

 

上にも書いたように、辺りを覆い尽くすように葉ばかりが生い茂り、

ありふれた植物なため、じっくり観察することもなく、ふだんは花を見つけることはない。

だが、この時期、地面に散った花びらで開花に気付く。

花びらが落ちている場所で、周辺のクズをよおく見ると、花を見つけることができる。

垂れさがったつるに花穂をつけてくれていれば見つけやすいが、

他の樹木を覆っている上部など、下からでは確認できないような場所に咲かせていることも多く、

また、フジやハギのように、びっしりと花を咲かせないため、うっそうとした場所では見つけにくい。

花が終わると、マメ科らしく、枝豆にそっくりな鞘をつける。

 

 

咲きはじめの花穂(左)と、未成熟の花穂(右)

添田町にて

 

クズの繁殖力は異様に強く、

つるは他の植物に巻きついて上へ伸びるのみならず、

地面を這って横方向にもグングン伸びる匍匐(ほふく)性もあり、

他の植物の上部を覆い尽くせば、今度はカクンと垂れさがって伸びる下垂性もあり、

とにかく辺り一面を器用に覆いつくしてしまう。

山道などを走れば、ガードレールや電柱、鉄塔などに巻きついている光景を見たことがあるだろう。

ときに道路標識などを覆ってしまって、標識が見えなくなっていることもある。

草刈機で刈っても、伸びた上部は絡まったまま残るため、

高所作業車などを用いて取り除かなければならない。

除草作業をする人にとっては、もっとも厄介な植物ではなかろうか。

  

 

左:雑木林から道路にまで伸びてきたクズ 福岡県行橋市にて

右:ビワの木を覆うクズ 福岡県篠栗町にて

 

 

ユキヤナギの植え込みを覆って伸びるクズ(左)と、雑木林を覆いつくしたクズ(右)

飯塚市 筑豊緑地にて

 

繁茂力が旺盛であるが、かなり美味しいようで、草食動物や昆虫たちの格好の餌ともなる。

葉の多くは食害に遭ったり、寄生されたりしていて無傷の株はなく、

野生のシカやウサギの居る場所では、クズの葉は美味そうに貪られるという。

自分が子どもの頃、長崎の祖父の家に牛が居たが、

このクズの葉を与えると、ものすごい勢いで食べていたのを覚えている。

最近知ったのだが、クズはかつて、家畜の飼料用にも栽培されていたらしい。

あのときの牛の食べっぷりを思い出すと、なるほどとうなずける。

 

 

クズは葉の形にバリエーションがある。

大分県中津市耶馬渓にて

 

その繁茂力で厄介がられるクズではあるが、古くから日本では重宝されてきた。

つるは編み物の材料などとして利用され、葉は柏餅のように饅頭などの装飾に用いられ、

そして、なんといっても、根を利用した食品や薬品。

根から取れる澱粉を精製して、葛粉が作られ、

その葛粉で、くずきりや葛もち,葛湯などが作られる。

また、風邪の初期症状を抑える漢方薬として葛根湯(かっこんとう)があるが、

これもクズの根を乾燥させた生薬から作られている。

“クズ”の名は、古く葛粉の産地だった奈良県の地名に由来するとか。

 

 

クズの根を使用して作られる、食品や薬品

 

くずきりや葛もちなど、特に夏場に食べる和菓子。

冬だと、葛湯や葛根湯にお世話になるか。

鍋にくずきりを入れる人も居るが、あれは自分は好かん。

黒蜜で食べるのがくずきりじゃろう?

鍋にはマロニーにしなさいよと。

・・・まあ、そんな身近なクズ。

「え?この草が、くずきりの材料なん?!」みたいな感じで、

実はこの植物がクズだってことを、知らないひとがけっこう多い。

都会や、よく整備された閑静な住宅街に住んでいるひとを除けば、おそらく誰もが目にするであろう植物。

もし知らなかったならば、明日からちょっと違った目でこのクズを見られるだろう。

あー、こいつの根っこから葛もちができるんだ・・・ってね。

 

以下はクズギャラリー。

あんまり、きれいなものが撮れなかった。

 

 

 

 

飯塚市 筑豊緑地にて

 

 

 

 

大分県中津市耶馬渓にて

 

 

添田町にて

 

 

同じマメ科のヤマハギとのコラボ

飯塚市 筑豊緑地にて

 

クズの葉に居たバッタ(ツユムシ?)。

脚が一本もげていてかわいそう・・・。

大分県中津市耶馬渓にて。

 



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