詩・機械設計・森林蘇生・猫/POETRY/Machine design

杉山を自然林に戻したい。
黒っぽい杉山を見るたびに子供の頃見た青い自然林を想う。山のことのみならず生活ブログです。

2014年06月21日 12時36分55秒 | 
  梅雨


雨が降るからとて
歩きながら雨の歌を
唄わねばならんというものではなかろう
と おふくろが言う
それはそうじゃがと
 儂が言う                             
                           
歌を好きじゃというからは
歩きながら雨の歌を唄えば
気が晴れるじゃろう
と 儂が言う

雨の歌を唄うたとて
ずぶ濡れの雨の中で
気が晴れるわけは無かろうが
と おふくろが言う

突然久しぶりの帰省で
昨夜は色々叱られて
朝からジャジャ降りだというのに
にわかの墓参の道すがら
次々と追い抜いて行く自動車の音を気にしながら
危なげの無い足元の濡れを
見ながら
儂は歩く
葉桜が揺れ
燕が飛ぶ

歴史のある町が沈黙するようになったのは
時代がこの田舎町を去って
大都会に稼ぎを求め
儂のように
故里をすてたからだ
本心は 帰って来て この地方で
父祖のならいを継ぎ
お宮を敬い
田を植え
秋は豊穣感謝のお祭り
来年はもっと収穫の多い年であるようにと
祈願して勇気を奮い起こし                         
筋肉に血がみなぎる日々のようで
あって欲しかったのだ

過ぎた日々や過ぎつつある今の
取り返しのつかない筈の時刻を
眺めているのみの瞬間にはしたくない
親は二人とも老人になったが・・・
(数日後には梅雨の干ぬまがあるらしい)             
 
おふくろは儂の前を歩く
親父さまは無口な八十歳                           
雨は大粒になるばかり
うつむいているのではないが
視線を落とし気味に
雨の中を三人で歩く
                      

                        二〇〇一.六.二十三
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