チャオプラヤ河岸の25時

ビジネスマンの日記帳

特異な国

2024-02-25 02:51:21 | インポート

 アジアの様々な都市、否、世界のどんな街と比較しても日本は特異な国だ。先ずその静けさと清潔さにどんな外国人も驚くはずだ。都市に車が溢れていようとも、クラクションを鳴らす人は滅多にいない。ひっきりなしに鳴っている外国の街から来れば、驚異的な別世界に感じるだろう。空気は澄み、歩道には穴もゴミもなく平坦、誰もが信号を守る、夜間の独り歩きにも問題はない、この日本の当たり前は外国では少しも当たり前ではない。そんな都市はアジアの何処にもなかった。何故に生れた違いか知らないがこの稀有な国は存在自体が文化遺産級、それはもっと日本人に自覚されて良いかもしれない。

 日本人には八百万の神々が共存し、あらゆる自然物に神が宿るとする神道の宗教観が無意識に根付いている。仏教文化と融合しながら、融通無碍な心性が自然に形成されている。唯一神の信仰の故に柔軟性を欠く世界とはベースがまったく異なる。無宗教と云うよりも神々が溢れ個別が希薄になる、そんなところが正しい表現なのかもしれない。日常を律するに唯一神の指示や説教などは必要とせず、悠久の時間軸と人智を超えるものへの畏敬や謙虚さがあれば、秩序は維持できて人は人で居られると云う証左だろう。特異な国、日本。世界も似たようなものと考えないことだ。

 労働力不足を背景に特定研修生制度などで外国人の流入は更に増加することが予想されている。既に四百万人規模で存在する在日外国人、いずれは人口の1割に到達するだろう。埼玉県川口市、群馬県太田市、東京の葛西など特に比率が高い地域も目立っている。川口市ではクルド人とトルコ人との衝突で深刻な治安懸念が出ている。一方でAIやロボットの高度化で様々な労働が必要で無くなる時代は直ぐそこにある。入国管理を緩和する必要性は、実はない。

 特異な日本、それは伝播の力を持っているのだろうか?もともとが工作員天国の日本、街にモスクが増え、得体のしれない外国発の新興宗教が活動し、様々な難民が定着する、そんな風景にこの国が耐性を持っているのか確かめられたことは一度もない。自己中思考を何より嫌悪する日本の文化が、我の強さを当然とした文化にどう対応するのかは大きな問題だ。多様性の受容などと云う綺麗ごとでは済まない風景が欧米の日々の現実に展開されている。接点に起こる化学変化で特異な国がどう変わるのか、衝突と矛盾は止揚できるものなのか、あまりその結果を見てみたいとは思わない。不安定化した世界、東アジアにまで動乱が及べば計算外で桁違いの流入があり得る。特異な国にとって、それは破壊的なものになりかねない。先ずは、平和を祈念する。

 

 

                                   川口

 

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中国からの脱出

2024-02-16 10:52:48 | インポート

 中国経済の瓦解が進む。日系企業も製造を中心に撤収や縮小が相次ぎ、アップル、サムスン、フォックスコン、VW、ソニー、キャノン、ブリジストン、IBMなど内外のグローバル企業のほとんどは極端な縮小計画を進捗させている。外資の投資集中によって急成長した中国だったが、今やそのエンジン部分の企業に多大な不安を抱かせる政策のオンパレード、それが主要な原因だ。デフレ突入後、共産党政権は知能すら感じさせない意味不明な経済対策ばかり。唯一目立った経済対策とは、不況や失業を喧伝する者は厳しく処罰する、という公安部の声明だった。話にならない。昨年、外資の中国直接投資額は前年比82%減、30年前の水準に墜落した。

 共産主義の本旨とは生産手段、つまり土地と企業の共有=国有化にある。宗旨から外れた政策は単なる一時的方便であり、何れは本旨に沿った場所に回帰することになる。宗旨を外れれば共産主義のロジック自体が成り立たなくなり、共産党権力の自己否定になるからだ。それを理解したうえで日系企業が進出したのかは大いに疑問だが、投資歓迎が見え透いた詐術であることくらいは見抜かねばならない。株式市場と云う大掛かりな偽舞台すら用意するのが彼等のやり口だが、そこは自由な取引の場ではなく国が平気で価格介入する。更には、企業の所有権を意味するはずの株式の所有など、生産手段の国有を本旨にする国の中で何か意味を為すはずもない。全ては市場経済の見せかけ、株式自体が詐術と云うことになる。

 寡占、独占、国家独占、帝国主義諸国間戦争、という経緯を辿るはず、と資本の危険性をマルクスは主張した。が、現実には帝国主義や全体主義、国家独占資本はロシアや中国の専売になり、生産手段は人民から取り上げ共産党幹部の私腹を肥やす「私有財産」となった。社会主義の変質ではなく、もともとのイデオロギーが階級間憎悪を前提にする思想のために原理的に醜悪な統治形態にしか辿り着けない。道徳や芸術、創造性や人間性と云った側面は社会の中で衰弱し、プロパガンダとマヌーバーがそれに替わる。結果、諸国間戦争の主役は独裁を肯定するイデオロギーと共産主義の妄想を振りかざすオルガルヒや極度に腐敗した共産党中央になり、植民地帝国主義並みの侵略を得意技にするようになる。

 経済成長や人民の豊かさの実現よりも党の支配の安全性こそが課題であり、党の私的な軍である人民解放軍や武装公安はひたすら人民の弾圧の為に準備されてきた。労働者の最大の敵は共産主義である、とされる理由だ。権力機構全体が必然的に非道徳的存在になり果てていく、それが歴史の中で共産主義国家で等しく起きた現実だ。その憎悪と監視の帝国の完成形はロシアであり中国である、その事実は必ず世界の共通認識になるだろう。

 寝ぼけた日系企業が撤退に遅れを取った場合を除き、中国の経済破綻が日本に及ぼす影響は意外に少ない。直接投資は数年前から急低下し、目立たぬようにASEANやインドへのリスク回避行動が始まっているからだ。中国企業に貸し込んでいる日本の銀行も少なく、つまりはまともな人間は彼の国を最初から信頼していなかったと云うことだろう。諸事情で中国に製造拠点を置かざるを得なかった企業にとっても、撤収のラストチャンスはこの今と云うことになる。ウクライナ戦争後、ロシアは撤退する外資の全資産を没収した。余程の愚昧でなければ台湾有事からの同様な展開を予測できないはずはない。

 中国への日系企業の長年の貢献は既に過剰な時間が流れ、完了とすべき時だ。中国に残っている課題は中国の統治者自身の哲学、統治思想の問題でしかなく、外資の貢献による一気の底上げが必要な時代は終わっている。天の時が終わり、代わりに迎えるのはマルクス主義を教条にした無教養な習近平の「中国の夢」。それを実現せんとする施策の全て、それは人民にとっても外資にとっても正に「中国の悪夢」でしかない。

 

 

 

                                 川口

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フェイクとの対決

2024-02-07 15:39:08 | インポート

 ハリファックス卿はイギリスのチェンバレン政権で外務大臣を務め、チャーチル戦時内閣ではアメリカ大使に赴任していた。チェンバレン同様のナチス融和派だった。だが、不戦の平和とは降伏しか意味せず、いずれバッキンガム宮殿や国会にハーケンクロイツの旗を掲揚することになる、とのチャーチルの有名な国会演説とそれへの国民の圧倒的支持を受け、以降は徹底抗戦を掲げた戦時内閣方針に従った。

 ウクライナでも同様の国論の分裂があることは容易に想像できる。ナチスとの仲介者がムッソリーニのイタリアであったように、ハンガリーやベラルーシがこれ以上の破壊と死者を避けるための「平和」を融和派に持ちかけていることは間違いないだろう。イギリスの国民は屈辱的な主権放棄の平和より血みどろの対決を選び、チェンバレン以下の融和派を退けたことがナチスの世界支配を阻止する力になった。

 目先の平和が何を意味するのか、それに対する想像力は政治家より国民の洞察力の方が正鵠を得ている場合がある、と云う事例だ。チェンバレンやハリファックスがナチスに内通していたとは思わないが、ナチスにとっては利用価値のある平和の主張だった。ウクライナでも現状の戦線位置で停戦を、と云うのがロシアとロシア同調者の言い分だ。だが、占領地に居座る為に平和を云う者をウクライナ人が拒絶するのは余りに当然だ。それを平和とは云はない。

 チェンバレン政権が妥協を繰り返す間、ナチスは満足するどころかポーランドへの電撃戦を着々と準備していた。そして今日、親ロシア派や怪しげな平和主義の浸透を許した末に侵略を受けたウクライナ。この先何度かは指導部内の浄化を進めていくことになる。それは寧ろ必要不可欠な過程になる。ロシアのフェイク情報を真に受ける輩とゼレンスキー等が同じ戦線に立つことなどはできない。

 戦争を直ちに終わらせることは可能だ。ただプーチンがウクライナから出て行くだけで良く、その日に戦争は終わる。継続しているのは、ただロシアの侵略が止まないためである。様々なプロパガンダやフェイク情報による画策はこの単純な本質から離れていることを特徴にしている。ロシアの情報戦に加担する国会議員や学者が多いのも日本の現実、よくよく曇りのない眼を磨かねばならない。知は力、テレビ情報も議員もまったくの愚昧、そのくらいの認識でいないと意図したフェイクには操られる。

 

 

                                     川口

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広州恒大の清算

2024-01-30 14:29:24 | インポート

 香港の高等法院は昨日、中国不動産取引額2位の広州恒大に対し清算を命令する判決を出した。負債総額は50兆円以上、債務超過額は20兆円規模とされている。

 広州恒大の資産の大半は本土側に在り、今後は中国共産党の意向次第となり清算が順調に進むかどうかは不透明だ。だが資産売却によって債権者に何割かでも返済されなければ、香港を窓口とし中国が海外から大量の資金調達を行って投資に廻す、と云う従来のビジネスモデルは破綻することになる。詐術以外に新たな投資家を集める術がなくなるからだ。

 中国共産党が恒大の資産売却を妨害すれば今後の資金調達が不可能になり、だからと云って実質的に投げ売りになる資産売却を許可すれば、更に不動産市場の価格暴落を引き起こす。つまり、どちらに転んでも中国の大規模な転落は避けようがない。更には広州恒大はまだ序の口に過ぎず、今後取引高1位の碧珪園や本命の地方融資平台の破綻処理が控えてもいる。形だけでも司法が機能している「らしき風景」を作り出しておきたいのだろうが、ここまで来れば何を選択しようと悪手になる。

 無法を旨とする中国共産党、確かに強権で破産宣言や資産整理をさせないことならできる。だが、それは負債の解消とは何の関係もない。前払い契約の物件は完成させ、必ず消費者に引き渡せその金は融資する、が共産党の不動産業者への指示だ。つまり完工させても企業への新規入金はゼロであり、個人から国に債権者が移動するに過ぎない。完工すべき前払い物件は2,000万件もあり、さしもの国家財務も大幅に悪化する。今後処理を要する不良債権は兆の単位でなく、京の単位になると概算されてもいる。課題の先送りの結果、共産党主導の野放図な借金は国家の財布でもどうにもならい規模にまで膨張している。負担は投資家と国民に押し付ける、他の何かになる可能性は極端に低い。

 中国の急成長は野放図な借金の賜物であり、担保は根拠不明な共産党の暗黙の保障と無誤謬神話だった。無いことにされるはずのその党と国家の大失敗の後、では一体何を担保とするのだろう。最早世界からの投資が中国に集まることはない。踏み倒すことが分かっている相手に誰も金は貸さない。

 如何に共産党が強権を振り回そうと、経済は自律的運動理論によって落ち着くべきところに向って市場が動作する。だれもそれを人為的には阻止できない。上海市場や香港市場の株も暴落を続けているが、売買停止をしようが、買い支えようが、企業の中長期的価値自体はどうにもならない。下手に強権を繰り出せば、市場は貯め込んだエネルギーで激烈な反撃をすることになる。市場経済を下部構造にし、とてつもない急成長をしてきた中国。何故にそれが可能であったのか、いくら経済音痴の習近平でも今それが理解できなければただの愚人だ。

 

 

                                        川口

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中国国家統計局

2024-01-18 16:58:53 | インポート

 「中国経済は絶対に大丈夫、最後は国家統計局がなんとかしてくれる」、という笑えない小咄がある。それくらい中国の統計数値の信頼性は低い。その統計局が昨年のGDPは5・2%の成長だったとの発表を早くも出してきた。が、世界の誰もその数値など信用していない。そのままの数字を使うのは日本のマスコミくらい、ほとんどのまともな経済専門家は相手にもしない。そもそも2週間足らずでGDPの巨大な数値集計などできるはずがない。日本や欧米では3か月以上を費やし、正確な集計を目指すものだ。

 全土の大都市をゼロ・コロナでロックダウンさせ、マイナス成長が確実とされた昨年ですら統計局はGDPが成長したと云い張っていた。小咄通り、頼りになる官庁だ。今年、愚策中の愚策であるゼロ・コロナ政策こそ止めたものの、大幅に都市若年層失業者が増え、不動産不況、金融危機も半端な姿ではない。倒産企業や外資の逃避が大幅増加、輸出入もロシア向け以外は大きく縮小した。5・2%成長などは馬鹿らしくて聞いていられない、それが中国人の本音だろう。

 中国国家統計局は若年失業率が20%を超えた昨年7月からは、なんと失業統計自体の発表を止めた。だが今日、突然新基準での失業率と称して14%台の数字を発表した。余りにひどい数字の為、失業の定義や母数の基準を変えたのだ。過去との比較すらできなくする、最早これは統計と云えない。国民を欺く為の宣伝機関以外の何かではないことを自白している。

 食えるのならば支持する、それが長年の中国王朝と人民との関係であり王朝盛衰の姿だ。さしもの中国もこのまま習近平の統治が続けば食えない人民が溢れ、行く末はかなり怪しいものになる。人民を干上がらせるのなら共産党独裁は存在意味を為さず、カルト的な愛国教育もその効力を失う。市場経済のルールを守り、民主的政権に変化することができない限り、中国はこのまま「中所得国の罠」に落ち必ず衰退する。その時、同時に共産党政権の存立基盤を失うことになる。つまり、共産党政権を存続させたいのなら共産党政権であることは止めねばならない。習近平がその矛盾の構図を洞察出来るはずもないが・・。

 

 

                                   川口

 

 

 

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反知性主義

2024-01-16 14:57:03 | インポート

 情けないことに欧州や中東の戦争拡大の危機を前に、国内は無様にも政治とカネの空騒ぎ、肝心な外交議論は無いに等しい。政治にはカネが掛かるから、と云ういつもの言い訳も情けない。政治に掛かっているわけではなく、自身の選挙対策に金を掛けているに過ぎない。政策研究に駆け回る為ならまだしも、飲み食いと高額歳費のためにだけ議員をしている者も沢山いることだろう。裏金造りに同情の余地は一切ない。さっさと脱税案件で処理すれば良いだけのことだ。

 台湾で親米の総統が選出されたことで東アジア情勢の急変は無くなった。しかし習近平が表看板である偉大なる中国の夢を諦めるはずもなく、今後の動向には神経質な展開が予測されている。人民解放軍の腐敗や権力争いの為、即武力統一には踏み出せないのが習の悩みだ。天の時が味方すれば必ず台湾の占領に向う、ハイブリッド戦線では既に熾烈を極めた攻撃を行っている以上は今更撤退はない。

 1997年、広東省深センの広大な3階建てビルの中の電気街を歩いていた。店頭の商品の安さには驚愕する他なかった。単三電池が1グロス9元、1個あたり1円で店頭に並んでいた。何をどうすれば1円で販売できるのか意味不明だ。原材料費以下で店頭に並べるには仕入れ価格がゼロでなければならない。であれば盗品なのか、品質不良の廃棄品なのか?とにかく常識に掛からない価格のオンパレード。こんな異次元の世界と交流を深め、相互依存の経済関係を切り結ぶ、それは一体何を意味するのかは明らかだった。バブル破裂後の日本のデフレは際限無く長期化するはず、と。コスト競争をすれば圧倒的に中国が勝つ、ウイグルやチベットの奴隷労働まで含めれば労務費など計算するような比率にならないはず。せめて日本の労務費は釘付けにし、利益管理費も大幅に縮小しなければ市場の土俵にすらも上れない。日本の製造が追い込まれるはずのそんな近未来図は明らかに見えていた。

 天安門事件によって欧米から強烈に拒絶されていた中国を救ったのは日本による天皇訪中だった。中国の国際社会復帰を外務省が画策し、中国は豊かにすれば必然的に民主化される、との謎理論で政権やマスコミに天皇訪中賛成の世論誘導を迫っていた。その間の具体的な姿が秘密解除された公文書に克明に記されている。宮沢政権にはそもそも方針も見識も無く、ただ外務省が主導した大変な間違いであった。

 バブル後の30年に及ぶ日本のデフレは漸く脱出口に辿り着いた。だが、この間にGDPは2位から4位に後退し、賃金はほとんど上昇できなかった。そのデフレ不況の終焉は中国の人件費上昇による必然的な調整、と云う側面を持っている。最早馬鹿げたコスト競争をする必要はない、その安堵感が市場にあることは大きい。異世界と接点を持つと云うこと、それとの友好なるものがもたらす影響、それはどこまで考え抜かれたものなのか長らく疑問だった。結論は意外なものだった。要するに政権も官僚も、無論経団連も、何も真剣に考えてはいなかった、何の洞察力も無い無能だったと云うことだ。

 習近平の中国、その今後を読み間違えることがあってはならない。如何に日系企業の中国依存を減らし、如何に中国から脱出させるか、今こそ政治が大方針を掲げるべき局面だ。この今、小銭での空騒ぎに夢中な国会とマスコミ、余りに反知性的な風景だ。

 

 

                                  川口

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日本の立地

2024-01-12 15:56:15 | インポート

 イスラエル・ハマス戦争の波紋が拡大を続けている。ハマスを支援するイランの関係組織、ヒズボラとフーシはイスラエルとの衝突を繰り返し、今では紅海とペルシャ湾で商船やタンカーを攻撃する事態になっている。日本の石油の90%はこの湾岸からの輸入に頼っており、地域の不安定化はいずれ甚大な影響が及ぶことを意味する。

 ロシアはこの第二戦線により欧米の関心がウクライナから離れるため、イランとの関係強化には余念がない。何らかの意思疎通がイランとの間にあることに疑念の余地はない。さしものアメリカも複数の戦線を支援するだけの体力に疑問があり、更にロシアの盟友の中国・北朝鮮がアジアで第三戦線を開けばそれぞれの地域に任す、以外の選択肢はおそらく無くなる。

 プーチンはこの状況下で今まで控えていた北方領土の訪問を必ず実行する、と昨日表明した。第三戦線が必ずしも半島や台湾で開かれるものとは限らない、と日本をけん制したと云うことになる。平和ボケ日本の足下はかなり怪しくなりつつある。ロシア、中国、イラン、北朝鮮の悪の枢軸4か国の内、3か国とは海の国境を接する隣国であり、イランの軍事的影響下にある中東にエネルギーを依存している、日本の立地が如何にリスクに囲まれているものかが露になっている。ボケてはいられないのだ。

 枢軸4ヶ国は阿吽の呼吸以上に緻密に連携している、そのように考えれば次の発火点は必ずアジアになる。自分のことは自分で守ってくれ、その時にアメリカが吐く台詞も分かり切っている。一体日本はどうするのか、そんな議論がまったく聞こえないままでスキャンダルに塗れた国会、懸念は深まる。

 

 

                                川口

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中国の現実

2024-01-08 22:56:11 | インポート

 中国経済の変調規模が半端なものではない、そんな姿が日々に伝えられるようになってきた。シャドーバンク大手の中植の破産申請、中国商工銀行(ICBC)、中国建設銀行の破綻、金融危機が既に始まっている。不良債権の始末をつけずゾンビ企業を増やせば当然にそうなる。これに伴って大量の失業者の発生、公務員の大幅給与引き下げなどもあり、さしもの消費力が急速に冷え込んでいる。この事態に対し中国共産党が採った対策は、不況を喧伝する者は逮捕すると云うものだった。終わっている。

 アップル、サムスン、ホシデンなども中国大型工場の閉鎖を決めた。フォックスコンなどもベトナム、インドに工場を移転しつつあり、不動産業界だけでなく膨大な雇用を支えてきた製造の衰退が著しい。広東省東莞市だけで昨年1年で3,500社が倒産し、1日当り10万人もの失業者が増え続けている。上場会社も1年で46社が上場廃止、正に崩壊状態である。

 習近平の経済音痴ぶりは驚異的なもの。ゾンビ状態の国営企業を優遇し、一方で民間企業が力を持つことを警戒し、成功したアリババやテンセントなどを徹底的に迫害した。更には学習塾の禁止、ゲーム産業の制限など、雇用を消滅させる為の政策がオンパレード状態だった。とどめは極端なゼロ・コロナ政策による大都市のロックダウン、中国経済は一気に沈没に舵を切った。

 外資がこんな中国を見限ってASEANやインドに脱出するのは当然だが、危機的なのは中国企業が大量にベトナムなどに逃避していることだ。豊かになる前に急激な高齢化が進む中国、このタイミングで毛沢東の真似事に執着する習が権力を独占している悲劇。これまでの強みであった豊富で安い労働力、自由もどきの資本市場、良くも悪しきもの環境規制の杜撰さ、それらは全て失われているのに。

 国も地方も巨大な債務を押し付け合うばかり、まともな財政政策の実行は既に不可能になっている。未だバブルの清算は1割程度しか調整されておらず、金融破綻の連鎖はこれから本格化する。明らかな共産党の失政による経済の瓦解、賢くもない習近平の選択肢は抗議する失業した人民を武装警察で弾圧し、顔認証システムで監視強化する、の一択になるだろう。つまり、住むべき世界ではない。

 

 

                                     川口

 

 

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EV化に遅れた?

2024-01-06 16:40:33 | インポート

 中国経済の崩壊が様々に話題になっている。言い尽くされた不動産バブルや一帯一路の失敗、極端なゼロコロナ政策による消費の瓦解、加えて政府肝いりのEV戦略が怪しさを増している。習近平の政策は結果的にほとんどが中国の自滅を促進するものにしかならなかった。評判以上の無知蒙昧と云うしかない。

 確かにEV車の輸出台数は世界一、既にテスラを追い越している。国家戦略として世界の自動車産業の主導権を奪いたい、との意欲は十分に伺えた。内燃機関の技術で日本や欧米に追い付く可能性は全くないが、EVであれば必須のリチウムやレアアースの国内資源を活用し、圧倒的な価格競争力を武器にできると云う思惑だった。

 だが、既にEVが販売で40%近いシェアを持った中国国内の様子から、EVが様々な課題を抱えていることが証明されてしまった。リチウム電池は温度差に弱く、氷点下では走行可能距離が半分近くになってしまう。依然として地方では電気供給スタンドは十分に普及しておらず、仮にスタンドがあっても充電まで4時間以上待たねばならず直ぐに長蛇の列になる、電池自体が重く車体重量が1・5倍になるためエネルギー消費は多く、タイヤの劣化が著しく早くなる、などその内容は商品として致命的だ。更に電池は充放電を繰返せば蓄電能力は減っていき、中古車は重い電池を100万円ほどでまた買って新品交換しなければ売り物にはならない。要するに現段階のEV車は大きな玩具、未完成品に過ぎない。発火事故も多く今や消費者からも見限られリチウムの市場価格まで暴落しているのが実態だ。

 中国都市部の大気汚染状態を見れば何でもいいからEV化を進める、の方向性にも一定の合理性があるように見える。だが、流行のSDG’sの観点で見ればEV製造工程での二酸化炭素排出量はガソリン車より多い。更にはリチウムの再資源化や無毒化処理の技術は確立できていない。単なる流行に踊っているだけで中身は検討されていなかったと云うしかない。発電エネルギーは原子力か火力かにせよ、電気代はかつての倍以上のコストにもなっている。一体国家主導で何をやっているのか意味が分からない。

 中国政府の補助金もこれまでは1台当たり100万円近くも支出されたが、今月からはそれもなくなる。その補助金目当てで販売数を偽装報告するディーラーが横行、市場は中身の怪しい数字に踊った。1,000社近くが立ち上がったEVメーカーは現在激しい倒産ラッシュ、100社以下に急速に淘汰され失業者を大量に吐き出している。激しいコスト競争により、テスラのような大手ですら利益は出せなくなっている。それが中国におけるEVの現在地だ。EVによって日本や欧州車を駆逐しようとした戦略、それは莫大な負の資産を中国に残すだけのことに終わるだろう。

 まともなEV車はこれから誕生することになる。中国の失敗を見届け分析し、その改善ではなく全く異次元の発想で電気化や水素化を市場に提供していくことになる、おそらく日本のメーカーによって。立ち遅れた日本のEV化、というマスコミの論調は笑止なことこの上ない。無駄に資源を消費しない、末端ニーズと関係のない軽薄な製造戦略を持たない、そんな日本の質がいずれ似て非なる物全てを市場から駆逐することになる、確実に。

 

 

                             川口

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ベルレーヌ

2023-12-30 21:33:07 | インポート

 「秋の日のビォロンの ため息の身に染みてひたぶるに・・」、はベルレーヌの「落ち葉」上田敏訳の有名な冒頭だ。1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦の際、フランス国内のレジスタンスに向け反撃準備指令の暗号としても使われた。決行の数日前からBBCのラジオでこれが朗読され作戦実施を予告した。決行当日は後段の「鐘の音に胸ふたぎ 色変えて涙ぐむ過ぎし日の思い出や・・」が放送された。後段の朗読は8時間以内に正式作戦名「ネプチューン」が開始され、ノルマンディー上陸作戦が確実に実行されるという符牒になっていた。

 ベルレーヌの詩の朗読を合図にフランスのレジスタンスは各地で一斉にドイツ軍への反攻を開始、連合軍の反撃を側面支援した。史実は概ねそのような展開だ。何の戦術的合理性もない独ソ戦での双方の膨大な人的損失から3年、このネプチューン作戦によってドイツの敗勢は更に確実となり、ようやく終戦にと向うことになった。

 第二次世界大戦という表現には少し抵抗感がある。第二次ヨーロッパ戦争、その表現の方がすっきりと事の本質を表現するような気がする。ヨーロッパの歴史は絶え間ない衝突であり、残虐な民族間エスニック・クレンジング、宗教戦争、ナチズム対ユダヤ・ボルシェビッキの憎悪イデオロギー同士の対決、などを繰り返した血まみれの歴史だ。それは単なる二次に過ぎず、当然三次も四次もあり得る、と云う的確な表現になる。ヨーロッパ全域での平和とは何時どのくらいの間実現していたのか、答えは暫く考えねばならないほどだ。根本的にアジア的な構造とはまったく異なっている。戦争の都度に残る残留応力のような憎悪の記憶と恐怖の圧力。それは些細な衝撃を契機とし、応力解放を求める次の戦争の動機になる。

 アジアの島国である天恵、ボルシェビッキ・イデオロギーへの信仰者が存在する以外、ヨーロッパの蓄積された応力とアジアとではその質量において比較にならない。ただ一点、中国が懸念材料だ。思想史的な遅れが露な中国、東洋文化の優位を口にしながらマルクス・レーニン主義に根幹を依存する無様な姿を未だに晒す。西洋をルーツにした全体主義思想に汚染されたまま、帝国主義的な領土拡張主義を肥大化させる。それは今後もアジアの震源地であり続ける他ない。故に、何処にも似ていない日本を守ることの意義、それは文明史的にとてつもなく大きい。平和は平和ボケの克服以外には守りようもないが、アジアにおける日本の責務は自明だ。

 

 

                                   川口

 

 

 

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