たけちゃん活動・生活日誌

県議としての活動に追われてきましたが、引退後の生活の様子や、感じていることを発信しています・・・。

「森林づくり県民税」更新への意見

2017年08月29日 | 長野県政
 「森林づくり県民税」の更新の在り方等を審議している「みんなで支える森林づくり県民会議」は、9月1日開催する会議において、知事への報告書をまとめるとしていることから、委員の一人として意見をまとめ、8月25日に提出しました。
 以下、その内容を報告します。

「森林づくり県民税」更新への意見
                                                        竹内 久幸

 全国的には、ほぼ同趣旨の税は既に37県で導入されていて、国も平成30年度から「森林環境税」(仮称)の導入を、既に税を導入している府県との併存を前提に検討していることや、長野県では大北森林組合の補助金不適正受給問題で森林税の一部が不正受給されていたこともあり、県民中には更新に否定的な意見もあります。
 こうした県民意見を受け止めながら、全国的には、これまで同趣旨の税を廃止した県はなく、しかも、国が「森林環境税」(仮称)を検討している中、税の併存・運用で全国知事会が足並みが揃っている状況で、本県が「不祥事」を理由に税を止めることは、あってはならないと思います。
 無論、不祥事に対する対応や二度と同じことを起こさない毅然とした取り組みは当然ですし、その取り組みは、しっかりと行うことを求めます。
 しかし、本県は全国でも3番目に森林面接が多く、民有林は小規模面積所有者が多く、想定した整備が計画通りに進んでいない現状にあることや、樹齢が伐採時期を迎え「森林県から林業県」を目指すことを表明している本県にとって、林業の育成や再造林事業をしっかり位置付け、なおかつ、県民参加や森林税が身近に見える税の仕組みが必要であると考えます。
 但し、税の更新にあたっては、特に二期目に国の制度改正の影響や集約化が進まなかったこと、税による搬出間伐も進まなかったことを踏まえ、確実に整備が進む制度設計とすることが問われています。
 また、国が導入しようとしている「森林環境税」との役割分担の明確化や、森林法改正による市町村との「林地台帳整備」との連携が今後必要となりますが、本県の「森林づくり県民税」の更新時と重なることから、更新にあたっては、既存の税の見直すべき事業を見直し、国の税の全容等が明きからになった時点で、必要により再び見直すことを提案したい。
 以上の前提に立って、以下に主な意見を掲載致します。

〇 この間示された「森林税を継続した場合の間伐目標面積」7.200~7.950haの精度より高めるとともに 集約化、団地化が確実に進み目標が達成できるよう、二期目に、集約化、団地化が予定通り進まなかった原因を究明し、確実に推進できる仕組み作りを行うこと。
 例えば林地台帳の作成の推進策や組織の構築、「集約化専門員」の配置(県職員か一般財源での嘱託職員の雇用)、交付金の見直し、一般財源での組等事業者への森林GIS等整備への補助制度の創設等。

〇 「里山整備のための推進策」で示された、里山整備事業は、現状の1箇所当たりの間伐面積1ha以上を0.1ha以上に。また、里山集約化事業は、「境界明確化等条件整備事業」として、1事業地当たりの集約化面積10ha以上を面積要件なしに緩和することは賛成です。
 ただ、里山整備事業の要件を0.1ha以上とした場合に、請け負う事業者 があるのか心配なことから、補助制度の検討が必要ではないかと思います。
 新たな「境界明確化等条件整備事業」では、面積要件の撤廃とともに、 交付金の見直し(増額)【再掲】も検討して欲しいと思います。
 
〇 搬出間伐への支援では、間伐作業と木材の搬出作業を一体的に行う「搬出間伐(作業路整備を含む)」への支援を追加するとともに、自立的な里山活動を行う意欲的な地域には、遊歩道整備や機材導入に必要な経費を支援する等々の提案が行われましたが、基本的に賛成です。
 ただ、「意欲的な地域」とは県条例による「里山整備利用地域」を指していると思われますが、現状では指定地域が限られているため、示された「多目的利用のための森林整備面積の目安」を小学校単位と想定し150地区としていることから、目標達成のためには、「遊歩道整備や機材導入」への支援だけでなく、さらに支援策を加えるべきであると思います。
 この事業は、本県の森林整備の将来にとっても大変重要であり、そのための地域組織整備と県民参加のため、重点的に取組むべきだと思います。
 
〇 また、森林税は基本的に森林所有者に一割負担を求めていますが、現実には市町村への支援金により「上乗せ負担」が行われていることから、ほとんどの場合、間伐では森林所有者の負担はありません。
 しかし、間伐作業と木材の搬出作業を一体的に行う「搬出間伐」支援を行った場合、税を使って森林所有者が搬出材の売却による利益を得るのではとの疑問に対しては、この事業を活用する場合は、森林事業者に販路を努力義務とし、一割負担を森林所有者に求める制度とすべきと思います。
 
〇 里山整備のほか、多様な取組が確実に実施されるよう、「森林づくり支援金」制度が位置づけられ運用されてきましたが、二期目に入り多様な取組が行われて来ており、更新にあたっては、里山に限定せず、さらに多様な取組を推進する仕組みが必要だと思います。
 但し、現状で多くの部分を占める松くい虫対策や緩衝帯整備については、県民要望が多いことから、支援金とは別の項目に分け当面重点的に取組むべき。この場合一般財源での松くい虫対策予算との違いの整理や、一般財源の予算の増額も必要だと思います。
 
〇 「森林県から林業県」を確実に推進するため、主伐の推進と再造林をセットにした補助制度の創設が必要ではないか。また、再造林の効率化を図り推進するために、コンテナ苗木を活用する場合の補助制度も必要であると思います。
 さらに、海外も含めた木材の販路開拓を推進するため一般財源での予算の増額が必要であると思います。
 
〇 県民の関心を高めるため、公募型の「信州の木活用モデル地域支援事業」の予算を増額し、採用件数を増やすとともに、「税の見える化」事業として、多くの県民が触れる場所に、税を使った事業であることを示す、ベンチ等の木質製品を、県が直接整備する枠を設けるべきだと思います。
 
〇 建設部が行っている「木造建築担い手育成啓発事業」は、キヤリア教育の一環として、中学校へ大工技能者を派遣しイス等の制作を行う木育授業は人気が高いが、キット費用等に対する国の補助金が打ち切られることから、存続が危ぶまれています。  
 この事業は、木育という観点で「木育推進事業」に相応しい内容であり、継続するためにも、「木育推進事業」の中に位置づけるべきだと思います。
 
 
参考資料 (他県の例)

岡山県
・森林整備を推進するための担い手の確保と木材の利用促進、
・作業道の開設や補修、間伐材の搬出、松食い虫被害林の整備や伐倒・薬剤による駆除、人家裏等の危険木の除去にも使用。
・地域林業の中核を担う林業事業体の経営改善を支援するため中小企業診断士を派遣する事業。
・木材関係団体の県産材製品販路拡大のため、中国・韓国への販路拡大のための出展を支援する事業。
・税を使って県が直接駅等にベンチを整備
 
宮崎県
・台風等により堆積した流木の除去や巨樹古木の診断、治療。
・害虫防除等の実施。
・スギ花粉の発生抑制のため花粉の少ないスギ品種への転換等
 
熊本県
・森林の広域的機能の発揮に向けた取組として、針広混交林化促進事業、未来の森林植林加速化緊急事業、シカ等森林被害防止対策事業、特定鳥獣適+ 正管理事業等に税の8割を使用。
・3期目の取り組みでは、新たに、森林の境界の明確化や森林情報の提供など森林所有者に対する森林整備の働きかけ、耕作放棄地の森林化の推進、森林を守り育てる地域リーダーの育成、森林や木材を活用した農山村の地域づくり等の事業を加えた。
・平成27年度にモデル事業として知事から認定された8つの重点地区に、市町村や地域の林業事業体等関係者で構成する「地域協議会」を組織し、所有者等を調査し働きかける「集約化専門員」を配置し、費用について支援を行っている。
 ・熊本県では、県内の森林資源が主伐可能な段階に入っていることから、再造林を推進するため、低コスト林業の実現に向け、「主伐・植栽一貫作業システムによる確実な再造林の推進」に取り組んでいる。
 
富山県
・里山整備や竹林整備、野生動物との棲み分け、風雪被害木の復旧整備。
・混交林での危険木の流出防止対策、保全林での実のなる木の育成。
・海岸林で激増している松食い虫被害対策。
 
石川県
・放置竹林の除去等
・緩衝帯の整備
 
愛媛県
・特徴的な事業は、「優良種苗確保事業」「主伐推進緊急再造林対策事業」「木製ダム設置実証事業」「自然公園等施設整備事業」「えひめ材住宅普及啓発事業」「原木乾しいたけ、乾たけのこ等生産促進事業」「県産材製品市場開拓促進事業」「都市近郊林保全事業」がある。
 この内、「主伐推進緊急再造林対策事業」で、主伐が進まないことから、1リッポー当たり、主伐跡地を再造林することを条件に900円助成(福岡県は850円)していること。
 
高知県
・国庫補助事業の対象とならない森林の保育間伐を行う事業に1haあたり8万円の補助(個人の場合は10アールから)が受けられるという制度を平成25年から行っていることでした。

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