五輪施設の後利用問題への対応
1994年2月の第17回冬季大会が、ノルウエーのリレハンメルで開催され閉会した数日後、五輪旗が塚田長野市長へ引き継がれ長野へ来ました。
そして、長野大会開催に向けて準備して来た長野市も施設整備等について建設に着手し、1995年には、各種五輪施設の建設がはじまりました。
私も同年9月に、市議会議員選挙が行われ4期目の当選をさせていただき、五輪大会開催と、その後の対応についての取り組みが最重点課題となりました。
五輪施設整備の進捗状況は1995年10月12日にはアイスホッケーB会場安全祈願式、既に着工していたボブスレー・リュウージュ会場は11月9日に竣工式、スピードスケート会場は11月24日には大屋根リフトアップオープンセレモニー、翌年の1996年9月7日にはフィギアスケート会場竣工式と着々と準備が進められていました。
建設中のエムウェーブ(スピートスケート会場)
こうした中、私も参加した「オリンピック施設後利用計画検討市民会議」の答申が行われ、長野市はオリンピック局内に「施設活用推進室」を設置し、1997年の9月市議会を前に五輪施設の後利用について、管理運営形態も含め一定の方針を示しました。
その内容は、次の通りです。
■ホワイトリング(フィギヤスケート会場)=後利用=総合体育館。管理運営に対する考え方=スポーツの体系的な振興を図る。委託先=長野市体育協会。
■アクアウイング(アイスホッケーB会場)=通年型屋内プール。後利用等=上記と同じ。
■南長野運動公園(開閉会場)=野球を中心としたスポーツ施設。後利用等=上記と同じ。
■ビックハット(アイスホッケーA会場)=スポーツやイベントなどの多目的ホール。管理運営形態=文化コンベンション施設と連携した有効的利用。効率性、民間サービス的な経営感覚が必要。委託先=商工振興公社。
■エムウーブ(スピードスケート会場)=冬季はアイスアリーナ。他のシーズンは定常的に集客が図れる利用を検討。経営に関する考え方=民間の経営感覚を生かし、施設全体を一体化として効率的な運営が必要。国・県の財政援助を働きかける。
■スパイラル(ボブ・リージュ会場)=冬季は競技大会や選手育成に利用。レジャー用のソリ等を導入し有効利用を図る。周辺施設を含めた利用を検討する。
建設中のビッグハット(アイスホッケー会場)
また、この検討の過程では市議会としても全国の様々な施設の視察を行い、後利用後の施設の活用について、開閉開式場(オリンピックスタジアム)に毎年プロ野球が呼べる施設整備や、エムウェーブやビックハットへ各種コンサートや大相撲が呼べ、各種展示場として使い安い条件整備等々について提案し実現させました。
(私は、エムウェーブの屋根の南斜面を活用した太陽光発電を提案し費用を試算して頂きましたが、当時は費用対効果面から採用されませんでした。)
この五輪後の施設の後利用方針を受け、スケートリンクの維持がエムウェーブのみに止まっていたことから、当時五輪招致を契機に盛んになって来ていた少年のアイスホッケーチーム保護者等から、もう一つスケートリンクを残すべきとの要望が相次ぎ、市では後になって一定期間、ビックハットを開放するとともに、エムウェーブの400mリンク内に、必要に応じて新たにリンクを設置しました。
また、これらの876億円(国322・県54・起債427億円・市一般財源69億円)の施設整備費の内、市の起債が177億円となることから、その内約50%が、当時盛んに使われた「有利な起債」によって国から交付税措置されるのかが論議となりました。
さらに、五輪大会開催により施設整備や関連道路整備、大会運営費等、長野市がオリンピック大会開催により借金した金額により、将来、財政再建団体にならないよう真剣な論議が行われました。
そして、長野市が五輪開催により借金返済(公債費)は、平成14~15年でピークを迎えるが15%台に抑えたい、それ以降は減少するとの市のシュミレーションによる説明がなされました。
建設中のホワイトリンク(フィギュアスケート会場)
五輪大会開催前の12月定例市議会で、私は会派を代表して質問し、次の様なやりとりをしています。
当時のことが良く分かると思いますので主な項目を若干紹介します。
■ オリンピック・パラリンピック開催を通じ後世に残すものらついて
竹内質問
(1)「一校一国運動」と子ども達の国際交流基金
(2)開催都市として世界平和への貢献
(3)環境に対する取り組み
(4)ボランティアの活動
(5)パラリンピックを通じて後世に何を残すか。
塚田市長答弁
(1)世界の子ども達との交流、友好親善のため「子ども達のための国際協力基金」を設置したい。
(2)国連での停戦決議、NAOCでの対人地雷被害者の救済とピースアピールなどの取り組みが行われているが、一過性のものに終わらせることなく、毎年2月7日をオリンピック記念平和の日として集会を行いアピールをして行きたい。
(3)環境については、環境調和都市を目指していきたい。
(4)ボランティアは、今後いろいろな分野で活躍頂けると思う。今後開催される大きなイベントや災害時での対応等、大きな遺産として残ると思う。
(5)パラリンピックを通じて人に優しい街づくりに積極的に取り組んで行きたい。また、障害者スポーツの普及に努めたい。
建設中のスパイラル(ボブスレーリュージュ会場)
■ オリンピック後の施設運営について
竹内質問
(1)エムウェーブ以外にもアイスホッケーやフィギュアの国際大会が呼べるリンクを残すべき。
(2)残した場合の経済波及効果は。
(3)大会後の各種スポーツイベント等の招致状況は。
(4)新幹線開業後の活性化対策と観光振興計画の見通し。
塚田市長答弁
(1)市内アイスホッケーチームは平成3年の10チームから28チームに増加している。もう一つのリンクを残すことについては、今後のアイスホッケー人口の動向、リンクの維持管理費も含め検討を進めたい。
(2)大会開催による経済波及効果は、冬季スポーツに限らず1.5倍から1.7倍あると言われている。
(3)大会後のイベントが確定しているのは、平成10年にリュージュのワールドカップ。ボブスレーの全国大会。ワールドスプリント・スピードスケート世界選手権大会。11年には、スピードスケートとフィニアの国体。12年には、スピードスケートとホッケーの中学生全国大会。世界種目別スピード選手権大会が予定されている。
(4)新幹線開業後、長野駅が県内の玄関口になって来たので広域観光を推進したい。また、市内の滞留時間を延ばすため街角ミニ博物館を増やすなど物語性のあるものを増やしたい。各種イベントの招致についても、今のところ2003年までに約90団体、約20万人の国際大会や全国大会が予定されている。
■ 選手村・メディア村の大会後の対応について
竹内質問
(1)選手村の分譲計画は。
(2)選手村・メディア村等の通学区域は。
塚田市長答弁
(1)選手村の後利用は、国に70戸、県の職員住宅に290戸、民間住宅に124戸の484戸を10月ぐらいまでに、それぞれ売却する。一般市民への売却については、5階建てで3DKが100戸、土地造成による戸建て分譲住宅が80戸あり、平成10年5月頃にはモデルルームを作り分譲受付をしたい。
教育長答弁
(2)選手村後の今井ニュータウンに入居する児童は過去の実績を基に試算すると小学生児童が245人程度、中学生徒が122人程度予想される。通学区域は昭和小、川中島中が該当するが昭和小については今年度学級数25学級であり今井ニュータウンによりさらに増加することから、川中島地区小学校通学区域等研究協議会で検討し早急に結論を出したい。朝陽メディア村と柳町メディア村については、朝陽小、城山小、柳町中が通学区域となるが、現時点では受入可能と考えている。