たけちゃん活動・生活日誌

県議としての活動に追われてきましたが、引退後の生活の様子や、感じていることを発信しています・・・。

タクシーの料金と格差社会

2007年10月14日 | Weblog

 10月13日の朝日新聞の報道に「タクシー値上げ申請、取り下げ続々 客離れを警戒という記事がありました。

 その内容は、「料金の値上げを申請したタクシー業者が、国土交通省による審査中に申請を取り下げる動きが出てきた。運転手の待遇改善や燃料費高騰を理由に申請したものの、値上げをきっかけに利用客が離れることへの警戒感が高まっているとみられる。タクシー運賃は全国90地区ごとに上限運賃が決まっている。値上げは、地区全体のタクシー台数に占める申請業者のタクシー保有台数(申請率)が70%以上になれば国交省が審査、認可する。条件を満たした50地区の審査が昨年9月から始まり、国交省はすでに10地区の値上げを認めた。ところが最近、申請しながら、取り下げる業者が出始めた。昨年11月に審査が始まった石川県金沢地区では8月以降、申請取り下げが相次ぎ、申請率は10%を下回った。また金沢地区との隣接地域を中心に取り下げが相次いだ石川地区も、申請率が50%を切った。」というものです。

 しかし、10月10日の朝日新聞は「タクシー、地方都市で事故多発 規制緩和がひずみ生む」として、次の内容を報じています。

 「02年2月のタクシーの規制緩和以降、タクシーが人身事故を起こす割合が首都圏より宮城、福岡といった地方の大都市でより増える傾向にあることがわかった。全国的に横ばいの自家用車やトラックに比べ、タクシーは事故割合が増え続けている。なかでも新規参入などによる競争の激化で運転手の収入減や労働環境の悪化が著しい地方の都市で、しわ寄せがより鮮明に表れている。

 規制緩和で新規参入やタクシーの増車が容易になり、多様なサービスや料金体系が生まれた一方で、安全面のひずみも生まれていることが裏付けられた。待遇改善のため国土交通省は申請が出ている各地で運賃の値上げを認めつつある。

 国交省が公表している都道府県別のタクシーの台数や走行距離の統計資料と、相手よりタクシー側の責任がより重い人身事故の件数をもとに、朝日新聞が集計した。その結果、1日の走行距離に占める客を乗せて走った距離の割合「実車率」の低下と走行距離当たりの事故件数の変化に相関関係がうかがえる地域が多かった。実車率が低いと1日の売り上げが減るため、運転手は客を見つけようと急いだり注意力が散漫になったりしがちとされる。

 関連が際だっていたのは東北最大の都市・仙台を抱える宮城県。01年度に比べて05年度の実車率が3ポイント下がる一方、走行距離当たりの事故件数は01年に比べて約3割増えた。宮城県は01年以降、新規参入と既存業者の増車で約1000台タクシーが増加。1日の売り上げが大幅に減り、激しい客の奪い合いや長時間労働を強いられている。

 福岡県、札幌市やその周辺、新潟県などでも全国平均より実車率が落ちた一方で走行距離当たりの事故件数が1割以上増えていた。実車率がほぼ横ばいで、距離当たりの事故件数が微減や横ばい傾向にある東京都や神奈川県とは対照的だ。

 流し営業が主体の都市部でも、首都圏より地方の方が限られた利用客を巡って競争が激しくなりがちなためとみられている。」というもの。

 長野県内では規制緩和により長野市が全国的にも激戦区とされ、乗車運賃や介護タクシーなどのサービス競争を繰り広げて来た。そして、こうした競争の結果、ドライバーの年収は200万円に満たないとされ、今や年金生活者でないと働けないとも言われている。

 こうした状況に県議会の公共交通等調査特別委員会は、3月に行った報告書で、タクシーを公共交通としてとらえ、健全なタクシー輸送が確保されるよう「国に対しても法整備等について働き掛けるべき」ことを求めるとともに、「県は、『観光』及び『福祉』分野におけるタクシー輸送の積極的な活用について、国(運輸局)、タクシー事業者等と連携して取り組むべきである。更には、高齢者による事故が多発している現状を踏まえ、運転免許証返納支援制度を確立しタクシー割引等の支援策を講じるべきである。」と求めています。

 しかし、こうした取り組みも規制緩和という競争原理の中では、公的関与は難しいのが現状です。

 規制緩和により過当競争が地域に生まれ、給与や労働条件が悪化している現状を国土交通省も認め、この間、料金値上げを認める姿勢に転じましたが、長野市でも幾つかのタクシー会社が値上げを行いましたが、競争を意識し逆に値上げをしない会社が出て来るなど、タクシードライバーをめぐる状況は「ハラハラドキドキ」の日々が続いていると思います。

 利用者にとっては運賃は安い方が良いに決まっていますが、これまで政府が「改革」の名のもとに進めてきた規制緩和は、このまま放置しておけば、格差社会をさらに拡大し、利用者にも跳ね返って来るのではと考えさせられています。