竹とんぼ

先達の秀句を味わいながら
自得の一句を求めて多作多捨です
古希すぎの晩学で楽しみながらの遅々緩歩です

づかづかと来て踊子にさゝやける 高野素十

2018-10-10 | 



づかづかと来て踊子にさゝやける 高野素十

【踊】 おどり(ヲドリ)
◇「盆踊」 ◇「阿波踊」 ◇「踊子」 ◇「踊唄」 ◇「踊太鼓」 ◇「踊笠」 ◇「踊櫓」
盆踊のこと。盆とその前後に寺の境内や広場などに老若男女が集まって踊る。本来盆に招かれた精霊を慰める踊であったものが、娯楽になっている。

例句 作者

どうでもいいやうに踊りて手練なる 西村和子
ひとところ暗きを過ぐる踊の輪 橋本多佳子
満潮に踊の足をあらひけり 森 鴎外
踊の灯幾つも見つつ北へ汽車 岡田飛鳥子
あと戻り多き踊にして進む 中原道夫
人の世のかなしきうたを踊るなり 長谷川素逝
ヤッチクサッサ拳をかたく踊りけり 今井飛佐
羽田より踊る阿呆になりにゆく 島崎省三
いくたびも月にのけぞる踊かな 加藤三七子
足をかう手をかう首をかう踊れ 角田竹冷

踊りの輪考の背ひょいと現るる  たけし

づかづかと来て踊子にさゝやける 高野素十

俳句で「踊子」といえば、盆踊りの踊り手のこと。今夜あたりは、全国各地で踊りの輪が見られるだろう。句の二人は、よほど「よい仲」なのか。輪のなかで踊っている女に、いきなり「づかづか」と近づいてきた男が、何やらそっと耳打ちをしている。一言か、二言。女は軽くうなずき、また先と変わらぬ様子で輪のなかに溶けていく。気になる光景だが、しょせんは他人事だ……。夜の盆踊りのスナップとして、目のつけどころが面白い。盆踊りの空間に瀰漫している淫靡な解放感を、二人に代表させたというわけである。田舎の盆踊りでは句に類したこともままあるが、色気は抜きにしても、重要な社交の場となる。踊りの輪のなかに懐しい顔を見つけては、「元気そうでなにより」と目で挨拶を送ったり、「後でな……」と左手を口元に持っていき、うなずきあったりもする。こういう句を読むと、ひとりでに帰心が湧いてきてしまう。もう何年、田舎に帰っていないだろうか。これから先の長くはあるまい生涯のうちに、果たして帰れる夏はあるのだろうか。『初鴉』(1947)所収。(清水哲男)
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